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第1111話

Author: かおる
凌駕だけでなく、星も、自分の耳を疑っていた。二人とも、しばらくのあいだ謙信を呆然と見つめる。

星は、信じられないという顔のまま問いかけた。

「……今、なんて言いました?」

謙信は、辛抱強く同じ言葉を繰り返した。

「一兆円です」

星は、さらに念を押した。

「藤原さん、本気で言ってるんですか?冗談じゃなくて?」

「信じられないようでしたら、今すぐ契約書にサインしていただいても構いませんよ」

謙信は、淡々とそう答えた。

星はまだ疑いを捨てきれず、食い下がる。

「取り分が一割っていう以外に、そちらの旦那様から何か条件は?」

謙信は、やわらかく微笑んで首を振った。

「特にはありません」

星は少しだけ躊躇し、さらに踏み込む。

「……その旦那様って、どういうお名前なんですか?どこのグループの経営者なんでしょう」

謙信の視線が、ごく自然を装いながら、すっと仁志のほうへ流れた。

そして、ゆっくりと言った。

「星野さんには……Rさんとお呼びいただければ」

「Rさん?」

星が眉をひそめる。

謙信は、事情をかいつまんで説明した。

「諸々の都合がありまして、今は身元を公
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