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5.自分が気持ち悪い

Penulis: 専業プウタ
last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-21 20:05:28

「ただ、名門アイリー公爵家ともなると、結婚相手の選定は難しくなるはずだと余計なお節介を口にしてしまいました」

 私は初めて人間らしく狼狽えるロバートを見た。

 彼はいつも何を考えているか分からなくて私を不安にさせた。

 そのせいで私は彼を逆らえない巨大な存在のように感じていた。

(自分の失言に狼狽える、普通の男だわ⋯⋯)

「選定? 家の為の結婚をしなければならないと考えた事はありません。アイリー公爵家と縁を持ちたい家門は多いですが、こちらは必要としてませんので。将来的に我が妹がオリタリア帝国の皇后になりますが、ロバート国王は我が家門の心配を? それともオリタリア帝国の行く末を心配なさってるのでしょうか」

 淡々と語るランスロット様の言葉の通りだ。

 アイリー公爵家はオリタリア帝国の皇家より歴史が深い伝統のある名家だ。

 その上、レベッカ様は次期皇太子妃に内定している。

 カイゼル・オリタリア皇帝陛下は近々譲位する事を考えているともっぱらの噂だから、レベッカ様が帝国の女性最高地位である皇后に即位する日も近い。

 富と権力を持ち平和と安寧を築いているオリタリア帝国のアイリー公爵家に対して、ロバートの物言いは的外れで失礼だ。

「し、支度金を用意できないのではないかと心配しているのです。カリナの両親は亡くなっていて、預けられた親戚の叔母の家は貧しく借金まみれです。カリナも王宮での給与は全て借金返済に回してました」

 私は自分のプライベートな事情をロバートに知られていることに驚いた。

「支度金? お金の話をするのは下品だというのが父上からの教えなのです。オリタリア帝国とスペンサー王国では常識が違うのでしょうか?」

 ランスロット様がほくそ笑む。

 威圧感、飄々とした態度。

 彼を前にするとロバートが私を自由にできる国王ではなく、どこにでもいる男に見える。

「いえ⋯⋯ただ、カリナはその⋯⋯僕と⋯⋯」

「いい加減、私の妻になる女性を恋人のように呼ぶのはやめて頂けませんでしょうか。辛抱強いと自負しておりましたが、流石に我慢の限界かもしれません」

 瞬間、ランスロット様の琥珀色の瞳に強い殺気のようなものを感じた。

「失礼しました。カリナ嬢の育ちについて調査が不十分なのではないかと、余計な心配をしてしまった次第です」

 ロバートは先程私に口説くように迫った時とは異なり、全く私と目を合わせようとしなかった。

 私の産まれたブロワ領地は貧民街が占める割合が多く貧しかった。

 十分な医療設備もなく、戦火の中で感染症が流行るとあっという間に広がり多くの人が亡くなった。それは私の両親も例外ではなかった。

 スペンサー王家に助力を頼んでも無視されたと聞いた。

 きっと、スペンサー王家にとっては足手纏いの取るに足らない領地。

 ロバートにとっての私と同じだ。

「ふっ、私は自分の見たもの聞いたものを1番に信じます。カリナは真っ直ぐに美しく育ってくれました。彼女の両親は神かもしれませんね」

 不意に私を抱き寄せた時に香った気品のあるランスロット様の香りに身を委ねたくなった。私の両親を褒めてくれた人などいない。私自身も幼い時に亡くした両親の記憶がほとんどない。しかし、領民からも不甲斐ない領主だったと責められ蔑まれていた。

 ランスロット様の言葉がリップサービスだとは分かっていても嬉しかった。

 後ろから足早に彼の補佐官が近づいて来る。

「アイリー公爵殿下、そろそろお時間です」

「分かった、今行く。ロバート国王陛下も参りましょう」

 見上げたランスロット様の表情はいつものように無表情で何を考えているのか分からない。

 私は気がつけば、ランスロット様の赤い礼服の裾を握っていた。

「どうしたのだ?」

 どうしたも何も尋ねたいことは沢山あった。

 (いつから私の正体を知っていたのか、本当に私なんかと婚約するつもりなのか⋯⋯)

「レベッカ様と中庭で待ち合わせているのですが、どこに行けば良いのか分からなくて⋯⋯」

「それはレベッカ自身も分かっていないと思うぞ。咄嗟の言動だろう。相変わらずだな⋯⋯」

 ランスロット様が少し笑った気がした。

 私は彼が笑うのを見るのが初めてで食い入るように見てしまった。

 彼がそっと手を挙げると近くにいた赤い髪をしたメイドが近づいていくる。

「カリナを彼女の部屋に案内してくれ。カリナ⋯⋯レベッカも後で部屋に向かわせるようにするから少し休むと良い。顔が真っ青だ⋯⋯」

「カリナ様、こちらです」

 私は赤髪のメイドに案内されるがままについて行こうとした。

 チラリと見るとロバートは明らかに動揺した顔をしている。

「カリナ嬢! 後程、最近のスペンサー王国の事についてでも雑談の時間でも持ちませんか?」

 急に私に敬語を使い始めるロバートは私の知っている彼とは別人に見えた。

「その時は私も同席させて頂きます。さあ、ロバート・スペンサー国王陛下こちらに」

 冷ややかにも聞こえるランスロット様の声に促されるように、ロバートは彼についていった。

(会談があるって言ってたっけ⋯⋯)

 オリタリア帝国の皇位継承権1位のヘンゼル皇太子の結婚。

 当然、招待されているのは諸外国のトップに立つ人間だ。

 各国から国賓が集まる機会は稀だから、同時に国交の機会が設けられているのだろう。

 メイドに案内されるまま部屋に辿り着く。

「こちらです。カリナ様、どうぞゆっくりお休みください」

 扉が開かれ案内された部屋に息を呑んだ。

 スペンサー王国で私が監禁されていた王妃の部屋と同等とも言える広い部屋。

 天蓋付きのベッドに高価な調度品。

 急に海の底に落とされたように息ができなくなった。

 監禁されていた時の自分の愚かさがフラッシュバックする。

 不自然な状況に疑問を抱きながらも耳を塞ぎ、ただロバートの愛を求め続けた日々。

 1日中お腹を撫でながら、重い扉が開くのを待っていた時間。

(気持ち悪い⋯⋯過去の自分がどうしようもなく気持ち悪い⋯⋯)

「はぁ、はぁ⋯⋯」

「カリナ様、大丈夫ですか? お気を確かに! カリナ様⋯⋯」

 気が遠くなっていって、私はそのまま意識を失ったようだ。

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