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7.彼女は僕のもの(ロバート視点)

Penulis: 専業プウタ
last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-23 20:07:02

 ロバート・スペンサーは、カリナとの馴れ初めを思い出していた。

 彼女は彼にとって唯一王でもない自分を求めてくれる必要な存在だった。

 スペンサー王国の地下資源を狙い、いつ戦争を仕掛けてくるか分からないサマルディー王国。

 2カ国は話し合いで解決できないくらい多くの問題でぶつかり合ってきた。

 貴族たちからのすすめもあり、人質としてエミリアーナ・サマルディー王女を娶る事に決めた。

 当時22歳のエミリアーナ・サマルディーの初対面の印象はあまり良いものではなかった。

 彼女は贅沢を好み、暇さえあれば宝石を買い漁った。

 臣下にはキツくあたり、スペンサー王国の貴族と友好関係を築こうともしない。

 政略結婚とはいえ、彼女と夫婦を続けなければならない事を思うとため息が漏れた。

 一大行事である国婚を終え、深夜に王妃の寝室に行くとエミリアーナは中が透けて見えそうな夜着を着てベッドに横たわっていた。

 まだ、今日の最後の行事である初夜が残っていると思うとため息が漏れた。

「ロバート、面倒に思うなら何もしなくても良いのですよ。するだけ無駄ですから⋯⋯」

「するだけ無駄とは、もしかして不妊の王女をサマルディー王国は送り込んで来たのか?」

「正解ですわ。勘はよろしいけれど、大切な事実に気がつくのが遅すぎますわね。その少しの遅れが命取りですわよ」

 エミリアーナはベッド横の引き出しから小瓶を取り出して、ベッドに赤いサラっとした液体を垂らした。

「馬の血です。初夜が滞りなく行われ、私が純潔を失った証が必要ですから。まあ、私はとっくに純潔など失ってますわ。そもそも幼い頃に受けた暴行が原因でこのような体になったのですから⋯⋯」

 エミリアーナは周囲の人間を深淵に引き摺り込むような暗い瞳をしていた。

 王女に暴行? 一体誰が⋯⋯何がサマルディー王国で起こっているのだろう。

「なぜ、今、種明かしをしているのだ? 待てど暮らせど跡継ぎができない事で我が国が混乱することを見越して、そなたが嫁いで来たのであろう?」

 サマルディー王国が一夫多妻制をとっているのに対し、我がスペンサー王国は一夫一妻制をとっている。

 女性の貞操に対する考え方も厳しいので、妻以外の女と子でも作ろうものなら国民の反感を買う。

「私が復讐したい相手はあなたではないからですわ。私には時間がないのです。私の侍女のカリナを使って子を作ってくださいな」

「冗談だろ? 髪の色、目の色が同じだからそれで誤魔化せとでも?」

 僕は得意げに提案して来た彼女を一笑した。エミリアーナは吊り目がちの婀娜っぽい見た目をしていて、カリナは大きな澄んだ瞳に幼さが残る無垢な顔立ちをしている。

「ふふっ! やはり、女に興味がないように見せてもカリナには少しは興味を持っているのですね。女の私でも唆られますもの。このシーツよりも真っ白な肌をしているのですよ。そして手が乾燥していると言えば、いつまでも必死に香油を塗っているような愚かな子です」

 エミリアーナから指摘されて、自分が王妃の侍女に過ぎないカリナを認識している事に驚いた。

 彼女の侍女は他にもいるのに、なぜだかカリナだけが気になった。

 他の者が淡々と仕事をしているのに対して、彼女だけは爛々とした目で感謝するように仕事をしていた。

 銀髪に紫色の瞳という特徴こそエミリアーナと似ているが2人は真逆の存在だ。

 王女として生まれ誰からも羨望を受ける立場であるはずのエミリアーナは絶望を知った顔をしている。

 それに対し下女から侍女に取り立ててもらった事に感謝して過ごしているようなカリナは誰よりも幸せそうにしていた。

「幼い頃に両親を亡くし、稼いだ給与も親戚の叔母にむしり取られる生活をしているのに、その不幸にも気がつかない子なのです。あなたが人差し指を差し出して1日中舐めていろと言えば、光栄に思いながら丁寧に舐め続けると思いますわよ」

「そのような可笑しな趣味はない。それに、流石にその非常識な提案には乗れないな」

「まぁ、折角私がご用意して差し上げた素晴らしいプレゼントを突き返すのですね」

 僕はエミリアーナの馬鹿馬鹿しい提案を断ったはずだった。

 しかし、2年後、僕は悪妻の提案に乗ってしまった。

「私を深く慕っている子です。あなたの妻である私が生きていたら、舌を噛んででもあなたに抱かれる事はないでしょう」

 エミリアーナ自身は気が付いていないかもしれないが、カリナの事を語る時には寂しさを見せるようになった。

 敵国に嫁いで来た自分を心から慕い献身的に尽くして来た侍女との別れだ。悪魔のような女でも悲しんだりするのだろう。

 計画ではカリナは子を産んだら、口封じの為に殺す予定だった。

 エミリアーナの作戦通り、彼女が死んだ設定にした。

「カリナ⋯⋯慰めてくれ」

 最初は激しく抵抗された。

 次第に明らかに戸惑いながらも、カリナは僕を受け入れ続けた。

 そして、予定通り彼女は懐妊した。

 人生で初めて楽しみができた。

 カリナは世界に僕しかいないというような目で僕の愛を求めて来た。

 いつもよりわざと遅く彼女の部屋を訪れると不安そうにしていた。

 僕の一挙手一投足に過敏に反応している彼女を見るのが楽しくて仕方なかった。

 (カリナを手放すなんて、もう無理だ⋯⋯)

 僕は彼女を飼える隠し部屋を作った。

 適当に理由をつけて閉じ込めて仕舞えば良い。

 愛を語ってやるだけで、喜んで縋ってくるのだから。

 僕はエミリアーナに秘密で、カリナを殺す計画を中止した。

 カリナのいない人生なんて考えられない程、僕は彼女にハマっていた。

 カリナの子をエミリアーナに渡したら、カリナを僕の部屋の奥に作った隠し部屋に案内するつもりだった。

 カリナの部屋の前に待機させてた騎士から子が生まれたという知らせが届く。

 僕は晴れやかな気分でカリナの元に赴いた。

 開け放たれた扉には信じられない光景が広がっていた。

(カリナがいない⋯⋯)

 産婆が覚悟を決めたような顔で赤子を抱き、反抗的な目で僕を見据えている。

(なんだ、その目は⋯⋯王に向かって)

 赤子は割れるように泣き続けていた。

 銀髪に澄んだ紫色の大きな瞳を持って産まれたての男の子。

 既にカリナの面影を残して生まれた赤子。

(僕が欲しいのはこの子じゃない、カリナだ!)

 カリナの不在に抑えようのない怒りが込み上げ、僕は産婆に向かって拳を振り上げた。

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