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第 1301 話

作者: 水原信
「ママ、ぼくも病院に行きたい!」

星月はそう叫びながら、海咲を追いかけて走り出した。

希実は思わず彼の腕を掴もうとしたが、星月の勢いが速すぎて、彼女の手は空を切った。

玄関まで来ていた海咲はその声に立ち止まり、振り返った。

「星月、今はパパとママが本当に忙しいの。あなたまで連れて行ったら、ちゃんと見てあげられないかもしれないから、今日はおうちで待ってて。佐藤さんが一緒にいるから大丈夫。パパとママも安心できるのよ」

星月はとてもお利口だった。病院に連れて行っても騒がず、むしろしっかり者で妹の世話までしてくれる子だ。

けれど、病院は人が多くて雑然としており、万が一、誘拐犯などに目をつけられたら——
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