INICIAR SESIÓN「エリスフィーナ! 戻れ! お前には危険だ!」「ダークランス!」ーシュバアッ!ー ガルドリックがエリスフィーナに警告するのと魔王アスモデウスが闇の槍を放ったのはほぼ同時だった。 ーギュイイイイッ!ー 魔王の放った闇の槍は打矢より速くエリスフィーナ目掛けて飛んでいきースパアッ!ー「くうっ!」 咄嗟に伏せて避けるエリスフィーナのマントを掠めて飛んで行った。「あの娘がそれほど大事か? 勇者ガルドリックよ」 魔王アスモデウスはエリスフィーナが闇の槍を避けられた事に安堵した表情を見せたガルドリックに語り掛ける。「お前との剣戟は我を愉しませてくれるが余計な横槍は無粋だろう?」ーブウウウウン!ー 魔王アスモデウスは立ち上がろうとしているエリスフィーナに向けて闇の魔力を放つ。ービシッ!ー「あうっ!」 両手両足首が黒いリングで拘束され、エリスフィーナは十字架の磔の様な格好でそのまま空中に持ち上げられた。「勇者ガルドリックよ。娘を助けたくば我と一騎打ちを行い見事打ち倒してみせよ!」 魔王アスモデウスはガルドリックに大剣の切っ先を向けて一騎打ちを迫ってきた。 そして人質を取られてしまったガルドリックにそれを拒否する選択肢は無い。「皆、お前達は手を出すな! 魔王とは俺が決着をつける!」 ガルドリックは後方の仲間達に手を出さない様に指示を飛ばす。「うおらあっ!」ーガギイィィン!ー ガルドリックは直ぐ様魔王アスモデウスに打ち込みを始め、振り下ろしからの斬り上げ、袈裟斬りからの横薙ぎ、隙を見計らっての突進からの突きなどあらゆる方向からの斬撃で魔王を圧倒していく。 それは円形広場の上空で磔刑にされているエリスフィーナからもよく見えていた。「ガルドリックさん、頑張って……!」 何も出来ないエリスフィーナだが、ガルドリックに随伴させているウンディーネには何もさせていない。 ウンディーネは水を操る事が出来、エリスフィーナが魔力を供給すれば氷系、雷系の攻撃へも発展させる事が出来る。 しかし、ガルドリックからは手を出さない様に厳命されている以上、エリスフィーナはウンディーネに何をさせる訳でもないまま彼の無事と勝利を願うのみでしかなかった。 一方、後方で待機を指示された勇者パーティーの後衛メンバー達だが、こちらもガルドリックに言われるがまま戦況を
ガルドリック達が辿り着いた通路の最奥は通路より一断高くなった円形の広大な広場であり、人を集めてコンサートが行える位の広さがあった。 しかし、その円形の広場のすぐ外側は遥か地の底まで届いている様な断崖であり、油断の出来る空間などでは断じて無かった。 円形の広場の何処にも敵の姿は見えず、高い天井の向こうからも何かが頭上から奇襲を仕掛けてくる様なそんな搦手の雰囲気は全く感じられなかった。「行くぞ」 ガルドリックが円形の広場に足を踏み入れるとーシュウウウウゥゥゥ……ー 広場の奥に大きな黒い渦が発生した。そしてその黒い渦から銀色の突起で装飾された黒の全身鎧姿の壮年の魔族の大男が現れた。 彼はガルドリック以上の大剣を肩に乗せて平然としておりその立ち振る舞いからも老練の手練れの風格に溢れている。「我は魔王アスモデウス……魔王軍が出払った隙を突こうとは片腹痛い! その蛮勇に敬意を持って我が直々に葬ってやろう!」ーブアアアアアッ!ー 魔王アスモデウスが闇の覇気の様な威圧感を周囲に放つと「くっ、なんという闘気だ……!」 大剣を正面に構えたガルドリックが闇の威圧感を受け止め、後ろのエリスフィーナ達を庇う様にして立ちはだかる。 魔王は単に戦闘準備をしただけなのだろうが、それだけでも勇者パーティーに与えた威圧感は確かなものであり「これは……一筋縄ではいかないかもしれませんねぇ」 賢者クレスが中指で眼鏡のズレを直しながら、想定していた戦術の見直しを余儀なくされていた。「マジックシールド!」ーブウウウウン……ー 一方のメルティーローズは考えるより先にパーティー全体を守る様に魔力の防壁を展開した。「ガルドリック、これからどうするの?」 初めて戦う相手である魔王アスモデウスに対しては勇者パーティーと言えどセオリーは存在しない。「俺が斬り込む。お前達は防御に専念しろ!」 ガルドリックがマリアリアの質問に答える。「ガルドリックさん、あの私は……?」 ガルドリックの指示は防御だが自分もそれで良いのかと確認するエリスフィーナへの反応は「悪いが水の精霊に俺を守る様に指示して貰えると助かる!」 水の精霊を援護に付ける様に指示してきた。「ウンディーネさん……ガルドリックさんを守って下さい……」ーシュウウウー エリスフィーナが腰の革袋からウンディーネを呼
「よう、聖女様。怖い顔してどうしたんだ?」 キリヤ王子が一人で皆を眺めていた見マリアリアに話し掛けた。「…………」 その声に反応したマリアリアが振り返りキッとした鋭い視線でキリヤ王子を睨み返すと「お〜、怖い怖い。俺はてっきり入りたての新人にデカイ顔されて心中穏やかじゃいられないかと思ったんだがなぁ〜?」 キリヤ王子は両手を頭の後ろに回しながらマリアリアの横に並びエリスフィーナ達を見る。「……何が言いたいの?」 マリアリアは探る様にキリヤ王子に尋ねるが「さてね。これから魔王と戦おうってんだから、犠牲者が出たとしてもおかしくないよなぁって」 どこまでが冗談なのかどこから本気なのか真意が分からない言葉で答える。キリヤ王子のその言葉にマリアリアは黙ったままだ。「さっきだってあわよくばなんて考えてたんだよな?」 王子が話すのはタイラントスパイダーとの戦いの一幕である。 理由を付けてエリスフィーナを光の壁の防御から締め出した訳だが…… 流石に、失礼太郎でもあるキリヤ王子にも見抜かれる位には違和感が漏れて出ていた様だ。「そんな事、ある訳無いじゃない。私はパーティーの安全を第一に優先しただけ」「まぁ、そういう事にしといてやるよ。俺としては俺に靡かないクソエルフに分からせてやれりゃそれで良いだけなんだ」 キリヤ王子が何を言っているのかはマリアリアには分からなかったが「まぁ、あなたの邪魔はしないでおいてあげるわ」 王子に妙に勘ぐられるのも不都合と判断した彼女はキリヤ王子の行動を容認するに留めるのだった。「すみません。皆さん……私がもう少し早く気付いていれば……」 地中からのタイラントスパイダーの奇襲に気付く事に遅れたエリスフィーナは手当てを受けながら皆に謝罪する。「謝る事なんか無いでしょ。むしろあんなの相手に時間稼ぎ出来ただけでも大金星よ? 私だったらあんなのに一人で取り残されたら失神するわよ」 メルティーローズがエリスフィーナに絡まっている糸を焼き切りながら彼女を励ます。「そうですね。メルでしたら白目剥いて泡吹いて卒倒してるでしょうからねぇ。間違いなく今頃は土蜘蛛の腹の中でしょう」 同じ様に糸を処分しているクレスがメルティーローズに相槌を打つ。「要らん性癖語るな、気持ち悪い! この変態ニヤケメガネ男!」ージュッ!ー「あづっ! あ
ーベチャッ!ー「うっ……くぅ!」 ウンディーネが展開している水の壁の範囲外、地面スレスレからタイラントスパイダーが吐き出した糸がエリスフィーナの足に巻き付いてきた。「くっ……離して!」ーズバッー 慌てて細剣を抜いて糸を断ち切ったエリスフィーナだがーベチャッー「きゃっ!」 絶え間なく飛ばされる糸によってエリスフィーナは絶えず糸の処理に追われる有り様になってしまっていた。 糸を切らなければ足を引かれて転ばされてしまいそうになる為甘く見る事は出来ない。 少しでも光の壁が解放されるまでの時間を稼ぐために糸を捕まらない避様にも努力するが「くっ、このっ!」 右に左にと糸を避け続ける間にエリスフィーナは水の壁の範囲外へと誘導されてしまっていた。 足元ばかりに注意していた為か水の壁の防御範囲から飛び出した事実に気付くのが遅れてしまったその時ーシュルシュル……ー「あぅ!」 細剣を手にしていた右腕に糸が巻き付き、いとも簡単に自由を奪われてしまった。ーグググッ!ー タイラントスパイダーはエリスフィーナを引き寄せようと糸を手繰り寄せ始めた。「離して……離してぇ!」 一方のエリスフィーナも足で地面に踏ん張り必至の抵抗を続けるが、タイラントスパイダーの力は強く持久戦に勝ち目は無い。「ガルドリックさん! お願いします! 早く助けて!」 今にも折れそうな心でエリスフィーナは光の壁の向こうに居る後ろのガルドリック達に助けを呼ぶ。 一方、光の壁の反対側からエリスフィーナを見守る事しか出来ないガルドリックは「おい! まだなのか! 早くしないとエリスが保たない!」 光の壁を叩きながら後ろのマリアリアを見る。しかし「駄目よ、見て。小型のタイラントスパイダーが群がってきてる。今、聖なる防壁を解除したら私達まで共倒れよ」 マリアリアの言う通りウンディーネの水の盾に阻まれているタイラントスパイダーの周囲の砂地から小型のタイラントスパイダー達が次々と湧いて出てきていた。「エリスを見捨てるつもりか!」ーガッ! ガツッ!ー 堪りかねたガルドリックは遂には大剣で光の壁を叩き始めた。さらに「メルティーローズ、クレス! 壁の破壊と同時に魔法を撃て! エリスフィーナは俺が助ける!」 後方の魔術師組にタイラントスパイダーへの初撃を託し、ガルドリックは引き続き光の壁
相変わらずの地下通路を先頭で歩いていたエリスフィーナだが、段々と慣れが生じ始めていた。 決して油断している訳ではないが、環境音が聞こえたとして深く思案せず、先に進むスピードを優先する様になっていた。 これは後ろで魔法探知を行っているクレスが居るという安心感。 助けてくれる仲間がすぐ後ろに控えているという信頼感が確かなものとなったからというのがある。(あれは……?) 洞窟の遥か先に見えてきたのは両開きの大きな扉だった。ようやく目的地に着いたとエリスフィーナの足がさらに速まったその時ーザズッザズッザズッ……ー 足元の感覚が岩場から砂地に変わった感触が伝わってきた。 速度を緩めながら辺りを見てみると辺りの地面が完全に砂地になっていた。 両親からの教えでは洞窟の性質に関する事までは教わっていなかった……が、違和感を覚えたらすぐに逃げろとは聞いている。「皆は……?」 何か異変はないかと後ろを振り返って見てみるが、後ろから付いてくる勇者パーティーの皆は何もも変化が無い。 自分の考えすぎかとエリスフィーナが再び前を向いたその時ーズザザザザザザアーッ!ー「きゃっ!」 突然地中から何かが盛り上がり始め、エリスフィーナは盛り上がった地面から転げ落とされてしまった。「くぅ……」 何回も後転する位の高さから転がされたエリスフィーナは軽い打ち身程度で済んだが、急に回転させられた影響か頭がやや働いていなかった。そんな彼女の耳に「早くそこから離れろ!」 耳に響くガルドリックの叫ぶ声と「マジックミサイル!」ーシュバババッ!ー メルティーローズの放った緑色の飛翔体が頭上を通り過ぎて後ろに飛んでいく。どうも転がった影響で逆を向いている様だ。エリスフィーナが位置確認の為に後ろを振り向くとそこには「シャアアアアッ!」ーズシンズシンズシン!ー「ひっ!」 長く角張った多数の脚に、異様に大きく砂を被った丸く茶色い巨大な胴体。こちらを見る鈍く光る多数の赤い単眼に大きく開いた不気味な口……。 それはエリスフィーナが初めて見るタイラントスパイダーと呼ばれる土蜘蛛の上位魔物だった。 その本能に揺さぶりかけてくるかの様な恐怖と威圧感にエリスフィーナは腰が抜けて立てなくなる程に恐怖を覚えていた。「早く立て! 離れろ!」 ガルドリックが叫びながら大剣を構えて突
エリスフィーナを先頭に地下へと降りていく勇者パーティー一行だが、地下に降りる根拠はあまり無かった。 ラスボスが地下迷宮の奥で復活を待つというのは異世界ファンタジーのお約束ではある。 とは言え、それは始まりの村の近くの祠にラスボスが封印されていたでは物語が成り立たない為であって、そんな人間側の事情を汲む必要の無い魔王はわざわざ地下に居なくても何も困らない訳で。 この異世界に極大破壊魔法はあってもバンカーバスターの様な地中貫通兵器がある訳でも無く、わざわざ地下に潜る必要などは無い。 そんな中、ガルドリックが地下へと続く道を選択させているのは、あまりに地上階が静かである事は無関係では無かった。 勇者相手に魔王が及び腰になるとは考えにくいが、空間が限られる上階よりはいざとなれば脱出路も儲けられる地下の方が待ち受ける側としては有利だろうと判断しての選択だった。 実際、地下へ通じる通路にはそれなりの広さがあり、巨人族やグリフォン、マンティコアと言った魔物位であれば楽々通れそうな広さがあった。 通路はいつしか螺旋状洞窟の下り坂へと変化してきており、その規模からもいよいよかという雰囲気が漂ってきていた。 長い螺旋状の下り坂がなだらかになったところで、奥へと続く長い通路が現れた。 洞窟の中は不思議な明かりが灯されており、明確な光源こそ見当たらないもののぼんやり薄暗い程度の視界は確保されていた。(一本道……、周りに側道は無い……ですね) 以前、魔石鉱山でゴブリンに襲われた洞窟での出来事を反省したエリスフィーナは周りには人一倍警戒していた。 だが、異常は何も感知されずにいた。その時、周囲に魔力を放出して魔力探知していたクレスが「エリスフィーナさん!そこから下がって! 高魔力反応があります!」 賢者クレスから彼らしくない叫ぶような警告が発せられると同時にーシュウウウン……ー エリスフィーナの足元に円形の魔法陣が出現した。慌ててバックステップで飛び退いたエリスフィーナを囲む様にして現れたのは多数の豚頭の人型の魔物達、オークロードの集団だった。 魔法陣で召喚されたオークロード達は直ぐ様我に返りエリスフィーナに襲い掛かろうとした。「プギィーッ!」ードスドスドス!ー「ピギャアアアアッ!」 しかし、十分に距離を空けていたエリスフィーナの弓矢での速射により







