LOGIN「下品と言うが、性欲処理も大事だぞ。性欲が発散されると、身も心もすっきりする。自慰を強制するつもりはないが、セックスは子作りのためだけではなく、欲望を満たすためにもするということは覚えておいたほうがいい」 「そんな欲望、私には……ああっ!?」 前触れもなく乳首を吸われ、大きな声が出てしまう。 「流石は生娘。少し乳首を吸っただけで、初々しい反応をしてくれる」「い、今のはいきなりされたから驚いただけで……」「ほう? では、もう片方も吸ってやろう」「え? んあぁ……!」 もう片方の乳首を吸われ、甘い声が出てしまう。マリアネラの体は、快楽というものを理解し始めていた。だが、本人はそれを認めたくなかった。 「そのような声を出すということは、感じてはいるということなのだろう。初めての快楽で、脳の処理が追いついてないようだが、こればかりは慣れてもらうしかないな」「感じてなんか、いません……!」 チェセルは片意地を張るマリアネラを面白そうに見下ろしながら、乳首を摘み上げる。「んんっ!」 吸われるのとは違った感覚に、背筋が粟立つ。指先でこりこりと乳首をこねくり回される度に、甘く痺れ、下腹部が熱を持ってくるのが分かる。(これが、快楽? 怖い……。こんなの、いや……) 一方的に押し付けられる快楽に恐怖さえ覚える。王女としてのプライドが、涙と弱音を許さない。 「こうして指先でいじられるのはどうだ?」 「ん、ふ……。別に、大したこと、ありません」 「お前の強情なところは好きだが、夜伽の時くらい素直になれ。お前はただ感じ、鳴いていればよいのだ」 「ひゃうぅっ!? あ、あ、やあぁっ!」 片方の乳首をじゅるじゅると音を立てながら吸われ、甘咬みをされ、反対側の乳首は指先でこねくり回されたり、引っ張られたりする。刺激を受ける度にこらえきれない嬌声が零れ、体が震え、小さく跳ねる。されるがまま体をいじられるのが、屈辱的で仕方ない。なのに、期待してしまっている自分もいる。(ダメよ、こんなの……) 次は何をされるのか期待している自分に気づき、戒める。 乳首への激しい責めが止み、マリアネラは肩で息をし、なんとか自分を落ち着かせようとする。 「乳首はこの辺にしておくか。今日はお前に自分の性感帯を教えるのが目的だからな」 マリアネラの体に覆いかぶさっていたチェセ
「無理です、そんなこと……」 マリアネラがきっぱり断るとチェセルは苦笑する。なんとなく、馬鹿にされているようで腹立たしい。 「生娘の元王女相手に、脱げというのも酷な話か。すまないな。私が脱がせよう」 チェセルはマリアネラのネグリジェに手を伸ばす。マリアネラは羞恥と屈辱に耐えようと、固く目を閉じる。(なんて屈辱的なの……。世の女性達は、本当にこんな恥ずかしいことをしているの? ありえないわ) 布が肌から離れていく感覚がおぞましく、背筋が震える。例え愛した人が相手でも、こんな行為はしたくない。(やっぱりダメ……!) マリアネラは目を開け、自分の裸体が晒されるのとほぼ同時に胸と花園を隠す。できることならシーツやかけ布団にくるまりたいが、チェセルが上に乗っているため、自分の体を隠すのに使えない。「誰が隠していいと言った? 手をどけろ」 チェセルは顔をしかめて言うが、顔をしかめたいのはマリアネラの方だ。それに、マリアネラが勘違いしただけで夜伽はしないというチェセルの言い分に、未だに納得出来ていない。「嫌よ、こんなこと……」「国を取り返さなくていいということだな?」 そう言われると弱い。チェセルが陽の国を取り返せるとは思わないが、少しでも可能性があるのなら、それに賭けたい。マリアネラは渋々手をどかし、悔しさや羞恥に耐えるため、布団を握る。そんなマリアネラを、チェセルはうっとり見つめていた。 「あぁ、美しい……。ますますお前が欲しくなった」 チェセルの手がマリアネラの肩に触れたかと思うと、押し倒された。すぐ目の前には、チェセルのふてぶてしくも整った顔。(いや、怖い……) 性知識がほとんど皆無のマリアネラにとって、これ以上の恐怖はない。どんなことをされるのか、まったく予想がつかないのだから。純潔は奪わないと言うが、未知が待ち受けていることに変わりない。「押し倒されたくらいでそんな顔をするな。何度も言うが、純潔は奪わない。お前を不用意に傷つけたりはしない。与えるのは愛と快楽のみだ」 チェセルの顔が近づいてくる。マリアネラは咄嗟に顔を背けた。「んぅ!?」 耳を啄まれ、驚きのあまり妙な声が出てしまう。(やだ、恥ずかしい) マリアネラは手で口を押さえて声が出ないようにする。「無駄なことを」 低く色香のある声で囁かれるだけで、背筋が粟立つ。
「つ、疲れた……」 夕食も入浴も終わらせたマリアネラは、部屋に戻るとベッドに倒れ込み、ぐったり横たわる。 奴隷市場にいた頃は、ほとんど動けなかった上に、まともな食事が出されなかった。おかげで体力はガタ落ちした。昨日から人並み以上の生活をさせてもらっているが、たった半日で体力や栄養が戻るわけではない。 そんな状態であちこち連れ回され、疲れ切ってしまった。「はぁ、どうにかして、体力をつけないと……」 中庭でも散策できたらいいが、今のところ、この階から出ることは許されていない。 明日にでもチェセルに交渉してみようと考えていると、ノックもなしにドアが開かれた。こんな無礼なことをするのは、おそらくこの城にはひとりしかいない。「まだ起きていたか。寝ていたら、明日にしようと思っていたのだがな」 予想通り、チェセルの声だった。彼は近づき、ベッドに腰掛ける。 「何しに来たのかしら?」 「何しに来たとは、随分とご挨拶だな、斜陽の姫よ。主がいつ奴隷に会いに来ようが、構わないだろう?」 奴隷という言葉に嫌悪感を覚えたマリアネラは、そっぽを向き、布団をめくる。 「もう寝るところなので」 「そう毛嫌いするな、姫。今夜から、奴隷としての役割を果たしてもらうぞ」 「役割?」 マリアネラは首を傾げた。女性が奴隷にされた場合、性的なことを要求されるが、チェセルは純潔を奪わないと約束した。彼が約束を違える男だとは思えない。 「男の奴隷なら重労働だが、女の奴隷は奉仕だ。元王族なら、それくらい分かるだろう?」 チェセルの言葉に絶望するのと同時に、失望した。傍若無人で、愚か者と陰口を叩かれるような男だが、嘘はつかないと思っていた。 「純潔は奪わないって……」 「あぁ、純潔は奪わない。だからといって、夜伽をしないというわけではない」 「そんなの屁理屈よ、話が違う」 「お前が勘違いしていただけだろう。純潔も奪わないし、痛いこともしない。初夜の練習だと思えばいい。こっちを向け」 顎を掴まれ、無理やりキスをされる。熱い唇を押し付けられたかと思えば、舌が口内に侵入し、卑猥な動きでマリアネラの舌を舐め回す。あまりにも激しい口づけに、目眩がしてくる。 (ファーストキスが、こんな乱暴に奪われるなんて……) 口を離されると、マリアネラはチェセルを睨みつけ、息を整える。 「
「チェセル王子……」 シュリのことは気がかりだが、今は急いで身支度をしなくてはならない。クローゼットを開けて、紺色のドレスを身にまとう。紺色は宵の国を象徴する色でもある。敵国ではないとはいえ、他国の象徴色を身にまとうのは、複雑な気分だ。とはいっても、マリアネラ自身の髪は紺色なのだが。「う、ぶかぶか……」 ドレスはマリアネラの体より2サイズほど大きい。油断したらドレスの裾を踏んでしまいそうだ。 部屋から出ると、チェセルが壁によりかかり、腕を組んで待っていた。「ほう、似合うではないか。サイズは……、少しばかり大きいようだな」「チェセル王子、何故ここに?」「ここは私の城だ」「いえ、そういうことではなくて……」「食堂は別の階にある。お前ひとりでは迷うだろう。案内してやるからついてこい」「はい、ありがとうございます」 マリアネラは大人しくチェセルについていく。(どうしてチェセル王子がわざわざ案内を?) サイドテーブルには使用人を呼ぶためのベルが置いてある。それにメリーは極力この階にいると言っていた。王子が直々にマリアネラを食堂に案内する理由が見つからない。「ここが食堂だ」 広々とした食堂の中央には、紺色のテーブルクロスが敷かれており、豪華な朝食が並んでいる。案内された席に座ると、マリアネラの前には、チェセルと同じメニューが置いてある。 奴隷とは思えない厚遇っぷりに、なにか裏があるのではないかと勘ぐってしまう。たとえば、シュリ姫のこと。チェセルは気にするなと言っていたが、陽の国が恨まれてもおかしくない。他にも、マリアネラが知らないだけで、陽の国が宵の国から恨みを買っていた可能性だってある。 食事終えると、マリアネラは馬車に押し込まれ、街に連れ出される。街と言っても、貴族の屋敷と高級店ばかりが並ぶ街だ。「なんというか、随分きらびやかな街ですね」「ここは貴族街とも呼ばれていてな。貴族や王族が気兼ねなく買い物や外食をするために作られたのだ」 「なんて贅沢な……」
翌朝、マリアネラは自然と起きられた。体は昨日までの疲れが嘘のように軽い。時計を見ると朝7時前。窓を開けると、新鮮な空気が部屋に入り込んできた。朝特有の、少しひんやりした風が心地よい。 軽く伸びをすると、ドレッサーの前に座る。引き出しから櫛を出して髪を梳かしてみるが……。「いった……。あれ、どうすればいいの?」 元王女のマリアネラは、使用人任せだったため、自分で髪を梳かしたことがない。戦争中は一緒に地下にいた使用人が、奴隷市場では手櫛をしていたくらいだ。「えぇ、これってどうなってるの?」 元々手入れが行き届いて艶のある紺色の髪だったが、しばらく櫛が通らなかった髪は痛み、あちこち毛玉になっていた。この毛玉が厄介で、手でほどけそうにないし、櫛を無理やり通すことも出来ない。結果、マリアネラの髪は、寝起きよりも酷いものになってしまった。「どうしよう、これ……」 途方に暮れているとノックも無しにドアが開き、チェセルが入ってきた。「きゃ!? ノ、ノックくらいしてください」「ここは私の城で、お前は奴隷だ。いつ入ろうが私の勝手だ」(昨日はノックしてたじゃない……) 腹は立つが、言い争うつもりはないので、心の中で呟くだけにとどめる。 チェセルはまじまじとマリアネラを見ると、鼻で笑った。(な、失礼な人!)「顔色や身なりは昨日よりマシだが、なんだ、その頭は。寝てる間に鳥でも来たのか?」 「う、恥ずかしながら、自分で梳かしたことなくて……」 「王女が満足に身なりを整えられんとは、呆れた。貸せ」「あっ」 チェセルはマリアネラから櫛を奪い取ると、櫛にたっぷりのヘアオイルをつけ、タオルに包んだ。更に指先にヘアオイルをなじませると、毛玉をひとつひとつ丁寧に解いていく。毛玉を解き終えると、ブラッシングをしてくれる。それが心地よくて、ついうとうとしてしまう。 「できたぞ」 チェセルの声ではっと目が覚め、鏡を見る。鳥の巣状態だったマリアネラの髪は、艷やかなストレートになっていた。 「すごい…
湯浴みも食事も終えたマリアネラは、与えられた部屋に戻った。城に運び込まれるまで色々大変だったが、久方ぶりのまともな食事や入浴で張り詰めていた心がほどけ、眠くなった。 心配事は多々あるが、マリアネラ自身が元気にならないと、解決の糸口は見えてこない。それに、この部屋には時間つぶしできそうなものはひとつもない。 そろそろ寝ようと、掛け布団を持ち上げる。それと同時に、ノックが聞こえた。「はい」「入るぞ」 その声がチェセルのものだと理解する前に、彼は部屋に入ってきた。何故か片手にハープを持って。「どうなさいましたか?」「夜にまた来ると言っただろう」「それは、そうですが……」 マリアネラとしては、疲労が限界に来ているため、はやく眠りたいところだ。だが、自分は今、彼の奴隷だ。言うことは聞かないといけないだろう。「ふん、まぁよい。お前は確か、ハープが得意だっただろう」 そう言ってチェセルは、持ってきたハープをマリアネラの膝の上に置く。そのハープ自体は新品のものだが、手にしてみると、戦争前の自分は、東屋などでハープを演奏していたことを思い出す。それと同時に、ささやかな趣味のことさえ忘れるほど酷い生活をしていたと実感した。 「どうした?」 何も言わず、じっとハープを見つめているマリアネラを、チェセルは怪訝そうに見る。 「戦争が始まってからは、ハープを弾く時間などなかったので、すっかり忘れていました」 「王族でさえ、それほど過酷だったのだな」 「えぇ、そうですね……」 思い出すのは血の匂い、怒声、悲鳴、刃物がぶつかり合う音……。そして、質素な食事を摂りながら、地下に隠れていた日々と、地獄のような奴隷市場。この城に来るまで、本当に色んなことがあって、多くの命が犠牲になってきた。 「ここには、お前を脅かす者などおらん。弾いてみろ」 チェセルはそう言うが、マリアネラはハープが趣味だと忘れるほど過酷な生活を送ってきた上に、何年も触っていない。以前のようにうまく弾ける自信など、これっぽっちもない。 「どうした、







