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少しだけ前へ

Author: 影畑凛星
last update publish date: 2026-07-13 23:49:15
 コンコン、と控えめなノックが響いた。

「美月さん、おはようございます」

 蒼真の穏やかな声が聞こえる。

「朝食をご用意しました。お加減はいかがですか」

「はい、今行きます」

 美月はドアを開けた。

 ホテルのスタッフがワゴンを押して部屋へ入り、朝食をテーブルへ並べていく。

 その様子を見届けると、蒼真はスタッフへ軽く礼を告げた。

 スタッフが部屋を出ると、再び静けさが戻る。

 美月は不思議そうに廊下へ視線を向けた。

「……とても静かですね」

 高級ホテルなら、もっと人の出入りがあってもおかしくないと思っていた。

 蒼真は小さく微笑む。

「このフロアは貸し切りにしています」

「貸し切り……?」

「はい。ご主人が感情的になっている以上、知らない方が出入りする環境は避けたかったものですから」

 あまりにもさらりと言われて、美月は言葉を失う。

 一つの部屋ではない。

 フロアごと貸し切るなんて、想像したこともなかった。

「ご心配なく」

 蒼真は美月の表情を見て、穏やかに続ける。

「費用のことは気になさらないでください。安全を優先しただけです」

「……ありがとうございます」

 美月は小さく頭を
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