Share

第 358 話

last update publish date: 2026-10-30 15:37:16
「あり得ます。港では似た荷が並ぶこともある。だが、今回は封印が保たれていた。港と倉庫で外装に問題はなかった」

「つまり」

エリオットが続ける。

「中身の違いは、封印前に起きていた可能性が高い」

セリアが表情を硬くした。

「輸出元か、商会引渡後か」

「はい」

「ノルヴァルト側への照会も必要ですね」

「必要です」

クラリスは頷いた。

「輸出元記録、商会引渡書、梱包時確認者、端印確認、同日発送の別等級布。この五点を照会します」

オスカーがすぐに書き取る。

ミレーヌも、自分の控えに同じ項目を書いた。

その手は、さっきより少し落ち着いている。

クラリスは、それを
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 359 話

    ミレーヌは両手で杯を受け取った。 夕方、王弟府からレオンハルトが顧問室を訪れた。 彼は現物保全報告の写しを読み、表情を変えなかった。 だが、目だけは鋭かった。 「一梱だけか」 「現時点では」 「端印が違う」 「はい」 「封印は保たれていた」 「港湾到着時、倉庫搬入時、仕立て場到着時、すべて破損なしです」 「なら、封印前だな」 「その可能性が高いです」 レオンハルトは資料を机に置いた。 「王弟府は、ギデオン・マースとハーゲン補助官の足跡と並行して、NVT-S-007の梱包前経路を確認する」 「リーヴェ商会も?」 「もちろんだ」 クラリスは頷いた。 「た

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 358 話

    「あり得ます。港では似た荷が並ぶこともある。だが、今回は封印が保たれていた。港と倉庫で外装に問題はなかった」 「つまり」 エリオットが続ける。 「中身の違いは、封印前に起きていた可能性が高い」 セリアが表情を硬くした。 「輸出元か、商会引渡後か」 「はい」 「ノルヴァルト側への照会も必要ですね」 「必要です」 クラリスは頷いた。 「輸出元記録、商会引渡書、梱包時確認者、端印確認、同日発送の別等級布。この五点を照会します」 オスカーがすぐに書き取る。 ミレーヌも、自分の控えに同じ項目を書いた。 その手は、さっきより少し落ち着いている。 クラリスは、それを

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 357 話

    王弟府調査官カレルが、静かに一歩進み出た。 「現物保全袋を用意しています」 彼の声は淡々としている。 王弟府の人間は、こういう時に余計な感情を挟まない。 それがありがたい時もあれば、少し怖い時もある。 布は、折り目を変えないよう慎重に畳まれ、端印が見える形で保全袋に入れられた。 袋には番号が振られる。 現物不一致一号。 その文字を見た瞬間、ミレーヌの喉が少し鳴った。 一号。 つまり、これから二号、三号が出る可能性もある。 クラリスは、その視線に気づいた。 「現時点では一号です」 静かに言う。 「増えるかどうかは、調査しなければ分かりません」

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 356 話

    違う布は、黙ってそこにあった。 王妃執務院指定仕立て場の長机の上。 ほかの十一梱から出された北方厚織毛布地と並べられていると、その一枚だけが、妙に心もとなく見えた。 色は近い。 灰色に、わずかな青み。 遠目には同じ北方毛織物に見える。 だが、指で押すと違う。 厚みが足りない。 布の目が少し甘い。 毛の詰まりも浅い。 何より、端印が違った。 ノルヴァルト公認商会の鹿角印ではなく、簡略化された別の商会印。 それは、帳簿の上では小さな違いかもしれなかった。 しかし、仕立て場の針子たちにとっては違った。 触れば分かる。 裁てば分かる。 縫

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 355 話

    分からない。 だから、書く。 「ミレーヌ」 「はい」 ミレーヌの声は少し震えていた。 「不一致記録を」 ミレーヌは羽根ペンを握った。 手が震えている。 だが、紙へ向かった。 用途追跡木札番号 NVT-S-007。記録上用途、施療院保温布用。輸出元目的、施療院病床用。現物、厚み不足。端印相違。等級不一致の疑い。要調査。 ニナが、低い声で言った。 「この布じゃ、病床の子は寒いです」 その一言が、誰よりも重かった。 財務院の数字よりも。 王宮の制度よりも。 商会の説明よりも。 布を裁つ手が知っている重さだった。 クラリスは、静かに頷いた。

  • 妹が「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言うので、婚約者も王妃教育も譲りました。ですが三日で王宮が止まりました   第 354 話

    レオンハルト本人はいない。 だが、王弟府調査官カレルが一歩だけ動いた。 ただ、それだけだった。 マルティンの表情が変わる。 彼は、ここで押し切れないと判断したらしい。 「……では、確認済みになるまで待ちます」 「待つのではなく、補足書類を提出してください」 ダンが言った。 「搬出先の正式名、変更理由、確認者名、用途木札番号」 マルティンは、悔しそうに紙を引っ込めた。 「商会へ戻って確認します」 「戻るなら、未搬出として記録します」 ダンは台帳に書いた。 リーヴェ商会代理人マルティン・ケイル、搬出変更を求める。用途追跡木札確認欄空欄、搬出先不特定のため未

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status