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第 314 話

last update publish date: 2026-10-20 15:25:28
財務院は、余り布という言葉を聞いた瞬間から、値段をつけたがった。

それは、ある意味で当然だった。

布である。

しかも、北方産の上等な毛織物だ。

裁断後に残ったとはいえ、子ども用の肩掛けになり、寝台の隙間詰めになり、包帯布の裏当てになり、修繕用端布として使える。

使えるなら、価値がある。

価値があるなら、記録すべきだ。

記録するなら、評価額が必要だ。

財務院の理屈としては、実にまっすぐだった。

ただ、そのまっすぐさは、時々現場の机を真っ二つに割る。

「余り布にも価値があります」

財務院会議室で、グレゴール財務参事官はそう切り出した。

机の上には、仕立
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    善意を数字に閉じ込めるためではなく、善意が数字の外で消えないようにするための言葉だった。 顧問室に戻ると、イリスが出迎えた。 「余り布に値段はつきましたか」 「一部だけ」 「一部」 「大判は個別記録。小片は袋単位。修繕用端布枠を試験的に認める方向です」 「では、全部に値札はつかなかったのですね」 「はい」 イリスは満足そうに頷いた。 「よろしいかと。小さな布にまで値札をつけられると、布も落ち着きません」 「布の気持ち?」 「たぶん」 クラリスは少し笑った。 オスカーは報告書を書き始めている。 表題。 余り布記録基準および財務院協議報告 内容は、いつ

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    「分かりました」 ミレーヌは表を直した。 ニナがその様子をじっと見ている。 「本当に直すんですね」 「直します。使えないなら意味がないので」 ミレーヌはそう言ってから、少しだけ恥ずかしそうに笑った。 「この前、港で学びました」 ニナは、ふうん、と言った。 まだ完全に心を開いたわけではない。 でも、少しだけ態度が柔らかくなった。 夕方、仕立て場長のエヴァレット夫人は、改訂された余り布記録案を見て頷いた。 「これなら、試せます」 その一言に、ミレーヌは明らかにほっとした。 クラリスも同じだった。 王宮で作った表ではなく、仕立て場で直した表。 それ

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    ミレーヌの目が真剣になる。 「毛羽立ち。包帯布には不可」 ニナは少し驚いたように彼女を見た。 自分の言葉が、そのまま紙に残っていることが不思議なのだろう。 「それ、書くんですか」 「大事なことなので」 ミレーヌが答えると、ニナは少しだけ目を逸らした。 「そうですか」 照れたようだった。 クラリスは、端布棚をもう一度見た。 余り布の種類は、思ったより多い。 これをすべて細かく記録すれば、仕立て場は止まる。 しかし記録しなければ、消える。 この間を取らなければならない。 「まず、試験経路の北方毛織物だけに限定します」 クラリスは言った。 「全仕立

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