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第拾弐話

Auteur: satomi
last update Dernière mise à jour: 2025-10-08 07:30:52

 スズメが産んだ子だし、目もよく見えてないだろうにその子はリクの服を掴んで確かに言った。

「ぱぁぱ」

「ぱぱとはなんだ?」

「西洋のことでお父さんの事を指すらしいです」

 子守りを頼まれている人はジト目でリクを見ている。

「違うっ!俺は断じてスズメと関係を持っていないっ!」

「あら、私はそんなことを聞いてませんよ?」

「いいところにヒバリ!」

「あぁ、ヒバリ。今リクにスズメと体の関係があった疑惑が持ち上がって……」

 私もジト目で見てしまう。

 しかし、スズメの子が私の服を掴んで「まぁま」と言ったので、事態は変わった。

「あらあら、若夫婦じゃないの!」

「ままって何ですか?」

「西洋でお母さんを指す言葉ですよっ!もうっ、リクがぱぱでヒバリがままだなんてっ!」

 私はリクと顔を見合わせてしまった。

 この子が?スズメの子じゃない。だいたい目が見えてるの?

 私とリクがスズメの子に「ままとぱぱ」と呼ばれたという話は集落中に知れ渡った。

 この子の名前もまだないのに。

 意識したら緊張するじゃない!

「この子の名前はどうするの?男の子よね?じゃあ‘カイ’ね」

 と、強引に決めてしまった。

「俺としてはコイツの遊び相手のようなやつがこの集落にいなくて残念に思う」

 あー、ここに集まるのってみんなワケアリだもんね。小さい子でワケアリってどうなの?

 そんな行動力のある子はそうそういないし。

「それでだ。ヒバリ!俺と結婚してくれませんか?えーっとカイの遊び相手を作るためじゃなくてだなぁ。前から気になる存在だったんだよ。お前が研いだ包丁だったら握れるしなっ」

 頭を掻く仕草をしながら言うけど、リクだって緊張してるんだ。

「私で良かったら。そういえば、ここに来て忘れてたけど、私は婚約破棄をされてるいわゆるキズモノって言われてるやつよ?」

「そんなの知らねーよ。振られなくて良かったー」

「あう」

「なんだよ、新婚さんの邪魔するなよ?スズメの息でもかかってるのか?」

「赤子にまでそんなこと言うのはやめときなよ~」

 なんだかハチャメチャだけど、私は幸せです!多分集落の人が皆‼

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     この集落に『裏切者』がいる。 もちろん顔には出していない。笑顔で元気に洗濯をしている。 気配を感じる。リクも感じているようだ。 この集落の人間を無差別に狙っているの?「ヒバリ!ヒバリが研いだ包丁は絶好調‼皆の美味しい料理に繋がるよ。ありがとう!」 なんだか照れる。 今までは自分のクナイを研いだりしていたし、自分の行いから他人に感謝されることはなかったから。 何故だろう?否定はされたけど。 主に妹から。 あの子は私の事が好きじゃなかったのかな?  あー!暗くなるから、昔の事を考えるのはやめよう! ここに来てからもう半年は経つかなぁ? 華族の邸に潜入調査でいなかったりして、あんまり長いことこの集落に在籍しているっていう実感がまだわかないなぁ。***********~裏切者視点 ここに来てもう一年以上。 私がこの集落に潜入しているなんて思いもよらないでしょうね。 ちょっと前に相方もこの集落に来た。 標的は集落をまとめ上げているあの男!リクと名乗っている。 相方には妙な気配がダダ洩れだから気を付けるように言った。 何しろここは抜け忍なんかもたくさんいる。そのての気配に敏感な人もいるんじゃないかと私は思う。 その標的のリクだけど、年齢以外の素性が全く不明。 標的にしている理由はこの集落からの情報収集で、私と相方が住む村が無くなった。 ちゃんと領地経営をしていなかった領地様が悪いから完全なる八つ当たりだけど、誰かに当たらなければやっていけないくらい心に深い傷を受けた。 この村からの情報がなければずっとあのまま平和に暮らせたのに…*********** うーん、裏切者さん達の意見も誰が裏切者さんなのかもわかったけど、こんなのはどうすればいいの? リクの命でどうにかなるもんじゃないでしょ? 本当に八つ当たりだ。 リクに相談!「裏切者さん達は完全なる八つ当たりで、リクを標的にしてる。それで、リクを殺しても村は帰ってこないのにどういうことだろう?」「八つ当たりなんだろう?」 リクは淡々と応えた。「せっかくだから、裏切者さん達の話を聞くってのはどうかな?」「逆上して襲い掛かってくるぞ?」 やっぱそうなるかなぁ?どうにか上手くやっていきたいんだけどなぁ。「これだけ人が集まれば、反りが合わないやつもいるだろう。全員

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