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娘の命日に離婚宣告。クズ夫が土下座で大後悔
娘の命日に離婚宣告。クズ夫が土下座で大後悔
Author: 炭酸水が大好きな美少女

第1話

Author: 炭酸水が大好きな美少女
娘・藤井希(ふじい のぞみ)の病状が急変し、実の父親による骨髄移植が必要になった。

しかし、彼女がずっと待ちわびていた父親・藤井怜司(ふじい れいじ)は、初恋の人の娘・白川莉奈(しらかわ りな)のために水晶のお城を建て、街中で花火を打ち上げてその子の誕生日を祝っていた。

藤井遥(ふじい はるか)は何度も怜司に電話をかけた。

だが電話の向こうから聞こえたのは、「今、忙しい」という冷酷な言葉だけで、すぐに切られてしまった。

希の小さな手が、温かさを失っていった。やがて冷たく固くなっても、怜司は一度も顔を見せなかった。

遥が骨壺を抱えて葬儀場から出てきた時、商店街の大型ビジョンは、どれも莉奈の誕生日を祝う映像を流していた。

娘の命を踏みつけにした3人が、幸せそうに誕生日の歌を歌い、輝く未来を夢見ていた。

かつて怜司をどれだけ愛していたか。今、それがそのまま憎しみに変わっていた。

……

「時間になりました。お子さんのお父様とは、まだ連絡が取れませんか?」

悲しげな音楽が流れる中、黒服のスタッフが静かに声をかけた。

放心状態でいた遥は、泣き腫らした赤い目を上げ、棺の中で眠る、白く冷たくなった小さな体を見つめた。

そして、何度かけ直しても、電話はつながらないままだった。

遥は無言で前に進み、そっと希の小さな頬を撫でた。

「希、もう待つのはやめよう」

葬儀の現場に慣れたスタッフでさえ、その光景に目頭を熱くする。

「最後のお別れができないと、ご主人も一生後悔されますよ。もう少し待ってみませんか?」

一生後悔?

遥は、ふっと笑った。

「娘が手術室で父親の骨髄を待ちわびている時に、彼は初恋の人の娘と遊園地で花火を見ていたんです。本当に後悔なんてすると思いますか?」

こらえていた涙が希の冷たくなった頬にこぼれ落ちる。

遥は慌ててそれを拭った。

短い一生を辛いことばかり耐えてきた希には、死出の旅に母親の涙を持って行かせてはならない。

「お願い、火葬してください。もう待ちません」

……

遥は希のために一番可愛い骨壺を選び、その上に自ら花柄を描いた。

暗い場所を怖がる希のために、葬儀場の黒い布は使わず、自分の上着で包み込んだ。

初冬の風は刃物のように容赦なく吹きつけてくる。

遥は、寒さも感じなかった。ぼんやりとタクシーを呼び、後ろの席に乗り込んで、行き先を告げた。

静かな郊外からタクシーは徐々に華やかな市街地へと向かう。

目に入る街の輝きに、胸の中は虚しさが募るばかりだ。

両親も亡くし、娘さえいなくなった今、この世界にもう未練はなかった。

唐突に夜空を飾った花火が目に映り、チリチリとした痛みが走る。

遥は思わず視線をそらしたが、通りにある全ての画面が、あの幸せそうな誕生日祝いの映像を流しているのが目に入った。

きらびやかなお城。テーマパークのように飾りつけられた宮殿。

真っ白なドレスの莉奈が、高価なダイヤの冠をつけて、かぼちゃの馬車でレッドカーペットを進んでいく。

あの藤井グループの社長ともあろう人が、愛おしそうに御者役をつとめていた。腰をかがめて彼女を降ろし、手を引いて、少し先で待つ莉奈の母親・白川花梨(しらかわ かりん)のもとへ歩いていく。

豪華なケーキのろうそくを3人揃って吹き消すと、莉奈は満足げに二人の両頬にキスをした。

幸せの頂点にあるような、あの光景。

ドーン!

再び打ち上がった花火が、夜空一面に色を添える。

運転手が思わず感嘆した。

「同じ人間でも、こうも運命が違うもんですかね。この藤井社長の娘になれるなんて、本当に幸せですよ」

真っ赤に充血した目をした遥は、骨壺を胸に抱きしめ、引き裂かれるような思いを必死に押し殺す。

「すみません、裏道を通ってください」

掠れた声で、遥は懇願するように告げた。

運転手ははっとした。乗せた場所を思い出し、失言を悟った。

こんな時に、この賑わいはあまりに残酷だった。

「すみません、お悔やみ申し上げます」

そう言って、すぐに裏道へ入り、大通りをすべて避けてくれた。

道はガタついたが、二度とあのような画面を見ることはなかった。

1時間後、タクシーは夕凪の丘に着いた。

礼を言って車を降りた遥は、白く光る街灯の下で、6年間住んだ我が家を見つめた。

3階のピアノ室から、希の弾くピアノの音が聞こえてくるような気がした。

この子は、とても一生懸命だった。病気で体が弱っても、少し弾くだけで汗だくになる。それでも、あきらめなかった。

「ママ、国際コンクールで大賞をとったら、パパも私のこと好きになってくれるかな?」

胸を締め付けられる思いで、遥は重い足取りを引きずってピアノ室へ向かう。

そして、椅子の横に骨壺を置き、鍵盤の蓋を開けて静かに目を閉じた。

指を動かすと、部屋中に旋律が響き、心にある痛切な思い出をなぞっていく。

両親を失ってからというもの、遥はずっとピアノを避けてきた。

それは、彼女の心の傷だった。

でも今は、希のためだけに、一度弾いてあげたかった。

コンクールのために練習していたあの曲を、指が引き攣って力が入らなくなるまで、遥は何度も何度も繰り返した。

一睡もせずに夜を明かし、翌朝、遥はやつれ切った体で1階へと降りていった。

朝の光がやけに眩しい。

背の高い男が、光を背にして外から入ってきた。黒いトレンチコートが冷たい空気をまとっていて、玄関でそれを払い落とした。

怜司だった。

ようやく現れたのだ。

怜司は一瞥もくれないまま上着をかけ、氷のように冷たく言った。

「希はまだ起きていないのか?」

遥は鼻で笑った。

娘が死んで、もう3日。この男は、甘い夢に浸って遊びつくして、ようやく自分の娘が待っていたことを思い出したのか?

本当に、最低な男!

怜司は、彼女がこんな態度に出るとは思ってもみなかったらしい。遥の顔を見た瞬間、一瞬、表情が固まった。眉を、すぐにひそめた。

この女、また何を企んでるんだ?

いい子ぶるのをやめて、今度は悲劇のヒロインか?

考えることさえ面倒だった。

「朝の会議を延ばして戻ってきたんだ。希を起こしてこい。ピアノ教室に送ってやる」

ピアノ教室、という言葉に、遥は悲しみで倒れそうになった。

希のピアノは週に3回。いつも午前9時からだった。

平日、希は怜司に頼むことすらできなかった。土曜だけ、おずおずと「送ってくれる?」と聞いた。でも返ってくるのは、いつも「ダメだ」だった。

そのうち、希の体はどんどん弱っていった。ピアノも、週3回から週1回に減らした。

手術の前のあの日、怜司はやっと送ると約束してくれた。

希は、一晩中眠れなかった。嬉しそうに一番きれいな白いワンピースに着替えて、怜司の秘書の車で連れて行かれた。

てっきり希が楽しい一日を過ごせると、遥は信じて疑わなかったのに。

でも9時半、ピアノの先生から電話がかかってきた。

駆けつけたとき、希はもう気を失っていた。

そこで初めて知った。怜司は約束を破っていた。秘書は教室に着くと、上まで送らずに帰っていたのだ。

怜司には、永遠にわからないだろう。希が何度も何度もせがんだのは、ただ「パパがいない」とみんなにからかわれたからだった。

せめて、一度だけでもいいから傍にいてほしかっただけなのに。

結局怜司は、希をピアノ教室へ送る約束を守らなかった。

希が絶望の中、手術台に横たわって助けを待っていたときも、彼は現れなかった。

最後の息を引き取ったとき、どれほど悲しかっただろう。

遥は血走った目で怜司をにらみつけた。声には、深い憎しみがこもっていた。

「もう必要ない。これからも、二度とその必要はないから」

「どういう意味だ?」怜司は、あからさまに苛立っていた。

あの日は用があって行けなかっただけだ。それなのに、この女は偉そうに拗ねているのか?

「無駄にしてる時間はない。早く希を下へ連れてこい」

耐えきれなくなった遥が、狂ったように叫んだ。

「希は死んだの!もうこの世にいない!」

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