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一石二鳥。

last update 最終更新日: 2025-07-20 13:16:24

そうだ、ガランハルド・スロット

ランドルの一人息子だったはずだ。

こいつもこいつでいい性格しているんだよな…

女好きで見境ないし。よくランドルに怒られてた記憶がある。

「この白豚!いい?私は貴方のような白豚と結婚する気は無いの。お父様に頼んで婚約破棄して貰うわ!そして私はガランハルドと結婚するの!」

「そ、そんな…君が婚約したいと言ったんじゃないか…だからこの婚約を受けたというのに…」

パルサティラの事だ。他の全て優位に立たないと気が済まない。それは人も物もだ。だから肖像画を見て、美男だと思って飛びついたんだろう。だが実際会ってみたら…全然違った。そんな所か…。

3人のことを見てるとガランハルドが勢いよくオルラフィオ王太子殿下の顔を思い切り蹴り上げる。

蹴った足が顎に直撃していたこともあり、軽く脳震盪を起こしたのだろう。オルラフィオ王太子殿下は呻き声をあげながら膝をついてその場にうずくまった。

「ふん。テッサリーニ国の王太子が聞いて呆れるな。そんな見てくれでよく王太子なんか務まるものだ。いいか。パルサティラは俺の女だ。」

オルラフィオ王太子殿下の前髪を引っ掴んで上を向かせると…

「俺たちの前に二度と顔を見せるんじゃねぇぞ。白豚が…。」

もう一度勢いよく顔を床にたたき落とす。

既にオルラフィオ王太子殿下は戦意喪失した目をしていた…

周りの奴らも見て見ぬふりで、クスクスとオルラフィオ王太子殿下をみて笑っているだけだ。

仮にもこの国の貴族なのかと疑いたくなる。

こんなの見たら兄様は愚か父様や母様だって怒るだろう。

たまたま席を外していたようでよかった。

母様から問題を起こさないように釘を刺されているし、出来れば父様たちが来てくれるのが1番なんだけど、居ないからこそ行動に移したのだろうことは何となくわかる。

「おい…行くのか?」

私が歩き出すとウェインが後ろからついてくる。

「あぁ、ああ言うのは見ていて胸糞悪い。それに元々好青年だった男がああなるという事は何かしら理由があるのだろう。それに、あれを止めない方が後で母様たに怒られるぞ…」

「た、確かに…そうだな…。」

それに私は今の状態から一つだけ名案を思いついたのだ。問題も解決して、上手く行けば婚約者を作ることも出来るかもしれない。

そしたらピンクのドレスも着なくて済むし怒られないしで一石二鳥、いや三鳥くらいになるだろう。

もしかしたら新しい剣を買ってもらえるかもしれない…。

私とウェインが歩いていくと、自然と道ができていく。

まだこちらに気づいていなさそうなガランハルドとパルサティラに向かって大きな声で声をかけた。

「ガーラーン、ハールドくぅーん。ぱーるすてぃーらちゃぁあん。なーにしてるんですかぁ??」

どうやら一髪で声が届いたようである。よかったよかった。

「げっ…いたのか…」

私を見た瞬間ガランハルドが後ずさった。

「いたのかって。それは失礼過ぎやしないですかね。私に1度も勝つことが出来ないガランハルド君。そんなに女の私に勝てないのが嫌なんですか?ガランハルド君は女々しいですねぇ。」

どうやら図星で何も言い返せないらしい。

ガランハルドとはウェインも交えて小さい頃から剣の稽古を一緒に受けていた。

剣の師匠はランドル・スロット。ガランハルドの父親だ。

ランドルはこの国でも最強と名高い騎士で、父様からの信頼も厚い。だが、その息子は一度も私は愚か、ウェインにも勝つことが出来なかったのだ。

途中からは稽古にも顔を出さなくなったし、ランドルが呆れるほどの遊び人になっていた。

「あー、そうそうパルスティラちゃんもぉ、ガランハルドに騙されることに気づいた方がいいよぉ?」

「な、なんてこと言うのよ!そんなことないわ!ガランハルドは…ガランハルドはね!私の事を心から愛していると言ってくれたもの!!それに私には白豚なんて似合わないわ!婚約は破棄よ!!」

ガランハルドの方を見るとコクコク頷いている。

まぁ、こいつの愛がどうかは知ったことではない。1番聞きたかったのは婚約破棄という言葉。

私の前で言ってくれるのを待っていた…。

「そうか…では私が承認になろう。パルスティラ。それでいいか?」

「え、えぇ。婚約破棄できるなら構わないわ!」

私の言葉に頷くパルスティラを見て私はにこやかに笑った。

「オルラフィオ・テッサリーニ王太子殿下。君の話を聞かずに色々決めてすまなかった。」

オルラフィオ王太子殿下に手を差し出すとこちらを向くオルラフィオ。どうやら鼻血は出ているが涙は出ていないようだ。目は生気を失っているようだがまだ間に合うだろう。

「ここからは君が選んでくれて構わない。君がもし良ければ私と婚約をしないか?君の事は昨年、テッサリーニ国の建国祭で見かけて知っていた。国民のことをよく考えていて、私は好感を持ったよ。こういうを女から言うのは邪道と君言うだろうか…嫌だったらこの手を振りほどいてくれて構わない。その…どうだろうか?」

私はオルラフィオ王太子殿下の手を握って話しかける。

「き、君は…?」

「すまない。すっかり名乗った気でいたよ。名乗り遅れて申し訳ない。メロライン…。メロライン・ドラウゴンだ。ドラウゴン国の国王と王妃を親に持ち、4人の兄がいる。」

自己紹介もせずに求婚してしまうのは何たる失敗だ。改めて自己紹介をすると、オルラフィオ王太子殿下は私の名前をポツリと発した。

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