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初めて知る父の仕事

Author: 影畑凛星
last update publish date: 2026-08-07 10:17:42

 病室を出たあとも、父の言葉が綾香の胸に残っていた。

『会社のことを知っておいてほしい』

 前世では、そんな話をする機会はなかった。

 父は突然倒れ、そのまま帰らぬ人となった。

 だから綾香は、会社のことを何も知らないままだった。

 けれど今世では違う。

 父は生きている。

 まだ間に合う。

 そう思うだけで、少しだけ未来が明るく見えた。

◇◆◇

 屋敷へ戻ると、橘が出迎えた。

「お帰りなさいませ、お嬢様」

「ただいま」

「会長のお加減はいかがでしたか」

「順調みたい」

 その言葉に、橘は安堵したように表情を緩めた。

「それは何よりでございます」

 綾香はふと尋ねる。

「お父様って、昔からあんなに仕事ばかりだったの?」

 橘は少し驚いたように目を瞬かせた。

「そうですね……」

「若い頃から仕事熱心な方でした」

「休日も会社へ行かれることが多く、私どもが心配するほどでございました」

「やっぱり」

 綾香は苦笑する。

「昔から変わらないのね」

「ですが」

 橘は静かに続けた。

「奥様がご健在の頃は、今ほどではありませんでした」

 綾香は思わず顔を上げる。

「お母様が?」

「はい」

「奥様
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