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127話

Author: 籘裏美馬
last update Last Updated: 2025-12-06 07:25:30

滝川本家。

そこに着いたのは、ちょうどお昼に差し掛かる頃だった。

「加納さん、足元気をつけて」

「ありがとうございます滝川さん」

先に降りた滝川さんが、車のドアを開けてエスコートをしてくれる。

滝川さんの手を借りて車から降り、私は駐車場から見える本邸を見上げた。

滝川本家は、和洋館といった造りだ。

庭園はとても広く、和洋折衷の造りであるのに、どちらも上手く融合しあっていて、とても馴染んでいる。

本邸は、殆ど洋風な造りをしているけど、要所要所に日本古来の純和風な造りも取り入れられていて、見事に融合している。

滝川さんの本邸を、この目で見るのが初めてだった私は、圧倒されてしまった。

「加納さん?大丈夫か?砂利が多いから、足元気をつけてくれ」

「──す、すみません。つい、見とれてしまって」

「そうか?加納家の本邸も、見事だとは思うが」

「随分、長い間あの家には戻っていないので……大分うろ覚えなんです」

「すまない、そうだったな……」

滝川さんは、私が本家から出た理由を知っている。

気まずそうに顔を背けてしまった。

だけど、滝川さんが気に病む事はない。

いくらでも、私は両親に会いに行く事だって、謝罪をしに行く事だってできたんだ。

だけど、それを先延ばしにして、逃げていた。

けど。

こうして滝川さんの本家に招かれた事で。

私は加納家からも、両親からも。

そして、過去に犯した愚行からももう目を背けないし、逃げないって決めた。

両親と向き合わなくちゃいけないから。

滝川さんの案内のもと、歩いて行くと庭を過ぎて本邸の玄関が見えた。
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