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3.狂葬城のドールたち

last update Date de publication: 2026-02-05 17:00:23

「壊れると、人形はどうなるんだ ? 」

「残念ながら、新しい体が作られるだけ。生前の姿に似せて作られるって聞くけど、お前はなんっていうか……すげぇ子供みてぇだな。その銀髪は生前染めてたのか ? 綺麗に色入ってんな」

「……」

「あ、悪い。子供っぽいってのコンプ ? 」

「……。そうだけど。悪い ? 」

「ご、ごめんごめん」

 その時、疑わしいものが涼の視界に入った。

 見目麗しい着物を粋に着こなす女性の姿だ。

 その周囲だけが花束のように色鮮やかで、現代的な女子高生のブレザーや、パーティドレスを着た中年女性が屯していた。

「お……んな ? 」

「ぷっ ! お前それ、生まれて初めて女を見たロボットの反応じゃん……」

 京が苦笑いを見せる。

「そりゃあ、ここは罪人用の『城』。体は人形だし、男女なんか関係なく来るさ」

「でも、それじゃヤバくないのか ? 」

「ヤバいって何が ? 」

「ここには『強姦犯』もいるんだろ ? 狙われたりとか……」

「あー……。とはいえ彼女らは彼女らで強かに生きてるよ。あんまり関わんなよ。めんどくせぇから。

 房の棟の隣に食堂がある」

「ふーん」

 涼の薄い反応に京も拍子抜けするが、無知ゆえだ。食堂の椅子に座って向かいに座るよう涼を促す。

「広いけど、全員入るのか ? 」

「一時間交代で入れ替えるんだ。順番は日によって違う。今日俺たちは二時間目に夕食」

「時間はどうやって分かるんだ ? 」

 すると京が上を指差す。

『城』に天井はなく、その代わりに大きな時計盤が浮いていた。

「デ、デカ…… ! 」

 巨大なアナログ時計は薄暗い中、紫に光っていた。

「……不思議……。ここは蛍光灯で照らしたような白い明るさなのに……あの時計は眩しいくらいに紫色に光ってる」

「不気味って言うか、いかにもあの世っぽいよなぁ」

 時計をぼんやり見上げる涼を、京は機嫌良く眺める。

 涼の姿は本当に見れば見るほど童顔で、自分と同じ歳とは思えない。銀色の髪は艶があり、今のドールの姿と絶妙にマッチしているのがどうにも唆られるのだ。

「お前、可愛いな」

 この一言に、思わず涼はギクッと身を強ばらせる。男同士で出る言葉にしては少し不自然だと過敏に反応してしまった。自身の自死の理由に直結するような気がして。思わず身構えてしまう。そしてその反応で京も全てを察した。

 しかし京は深刻な顔で涼の方へ身を乗り出す。

「さっき……男の目が抉られるのを見たろ ? 」

「ああ。体は壊れてもまた生産されるんだろ ? なんで人の物を抉るんだ ?

 そういえばこの人形のような身体……感覚がある。痛覚とか、物の感触が分かったり」

「機能はほぼ人間と同じだよ。だから暴力が蔓延る。腹も減るし、性欲もある。

 喧嘩には二つ理由があるんだ。

 一つはあの下位層でやるファイト。あれで勝った奴は、相手に要求した物が手に入る。体の一部も有り得る。互いに同意の上でファイトするから、目を抉られた奴も何か相手に突き付けた条件があって戦ったはずだ」

「相手の身体が欲しいって意味わかんな。

 どういうこと ? 」

「そう ? お前さっき、俺に子供っぽいって言われて怒っただろ ? でも、お前みたいな外見の体が欲しいやつがいるかもよ ? お前は子供っぽさで怒ったけど、筋骨隆々とした外見は欲しくないか ? 筋トレしなくても男らしい体。その要求が一致すると……」

「戦って勝ったら……欲しい部位が手に入る…… !? 」

「そゆこと。部位だけじゃない。欲しいもの全て。だからその髪綺麗だって言った。別にお前に興味ねぇよ。その髪色をファッションショー感覚で欲しがるやつも出てくるだろうから、覚悟しておくんだな。ファイトになるのは勿論全員じゃないけど、お前は目立つ」

「喧嘩なんかしたこと無いし……困るよ。言われても断る。同意がなきゃ成立しないなら大丈夫だよね ? 」

「……相手によるけど寝首を掻かれねぇ事だな。夜、房の鍵が締まるまでは昼寝は出来ねぇと思え。

    一時間後に翡翠さんがもう一度房に来るって言ってただろ ?

 一度だけ。ここに入れられた人形は最初の面会で、欲しいものが手に入る。一つだけだ。

 ある者は生前失った髪を。ある者は筋肉を、身長を。煙草や酒、薬物は禁止だけどな。武器はOK」

「武器 ? 」

「戦う気満々の奴は欲しがる奴いるね。でも、死がなく、体もまた作られるこの『城』の中で、誰が武器なんて……。房の中には余り物で武器を作ってる囚人もいるから、あんま意味ねぇんだよ。

 だから面談の時間が来るまで、よく考えておけよ。そのファイトさえなきゃ、基本皆平和だ。貴重品は身につけておけ。房から盗む手癖悪いの多いから」

 そういい京が席を離れる。涼が京の持つ『楽』がより一層、濃くなるのを視た。話はしてくれてはいるが、どうにもその視線は感情の『楽』にそぐわない雰囲気で瞬きも少ない。

 すると近くで眺めていた髪の長い男がゆらゆらと近付いてきた。

「京〜……」

「何だよ。取り込み中なんだけど ? 」

「ソレ、同居人か ? 」

 下卑た笑みで涼を指差す。

「そうだけど。こいつ、まだ翡翠さんと謁見前なんだ。そっとしておいてやれよ」

「じゃあ、俺とファイトしろよ。翡翠様が案内する前ならその方がいいだろ ?

 俺が勝ったら、俺がそいつと同居する」

 これに真っ青になったのは勿論、涼である。この長髪と同じ房になったら何をさせられるか分かったものではない。

「涼、お前こいつと暮らしたい ? 」

「え !? いや、無理……かな」

「OK、OK。

 じゃあロン毛。俺が勝ったら腰にあるナイフ寄越せよ」

「……っ。いいだろう。

 勝負を申し込む ! 」

 京は不敵な笑みを浮かべると、グローブを強く締め直し挑発的に笑った。

「いいよ。下層に行こうか」

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  • 強制狂葬 狂眼ドール   これにてFin〜ありがとうございました

    読了してくださった方、支えてくださった担当さんとXでのリポストなど、全ての方に御礼申し上げます。大変ありがとうございましたm(_ _)m制作小話『強制狂葬 狂眼ドール』の制作について、サスペンスや流血描写を自分の作品上、切っては切れないスパイスになっていて……しかし時代は規制の厳しい年齢制限の時代 ! 何とか打開策はないかと考えたのが、身体を人形の体にする ! 血は出ない ! 修理できる ! 監禁やデスゲーム要素も異界の刑場という事にしてリアル感より気味の悪さを押し出そうと模索しました。強制狂葬、というタイトルの中で「誰が強制的に狂った葬りを受けたのか」は、主人公 涼の他のキャラもある意味当てはまります。しかし他にも……。脱獄という言葉を皮切りにストーリーは進行し、やがて涼は監獄に適応しようとし、それが全てを歪ませてしまう。けれど、最初の歪みはフェンランの存在でもあります。最古の女囚の正体ですね。フェンランを語る上での冥花の存在。あれは……つまり違法な物ですがこれも出すわけに行きませんから、冥界に咲く花を加工する──そうして狂眼ドールの世界は全てはが比喩で作りました。人間が自分の罪を清算するとはなんなのか。どうすれば清算したと言えるのか。それはきっと刑罰を受ければいいとイコールではない。そんなお話でした。これにて連載終了となりますm(*_ _)m長い間ありがとうございました !! では新作でお会いできればと思います!!

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  • 強制狂葬 狂眼ドール   17.藤紫の継承

     京は吸い終えたシケモクを花瓶へ落とした。透明な一輪挿しの中で紙が解け、冥花がふわりと水に馴染むと途端に真っ青な水に変わる。「もう一本やるか ?」 翡翠は震える手で同じく冥花を落とすと、深く肺の中を空にするように息を吐き燻らせていた紫煙の漂う筋を見る。 細くなった煙の帯が、隙間風に乗ってツイッとドアの外に流れている。「いや、要らん。 ……行こう」 ギシッと椅子が大きく軋み、立ち上がった翡翠は一度隠し部屋の中へ行き、すぐに戻った。「なんだ ? 」「これさ」 翡翠の真っ白な手袋の中には蛍石が握られていた。 この『心臓部』となるその石を持ち、二人は執務室を後にした。 □□「ほらね。……京は逃げない。それに翡翠も」 涼はぼんやりと『核』の中を漂いながら、天音 澄子の意識に言葉を向ける。涼の目は瞼にまで侵食が及び、顔を上半分が藤紫色に変色していた。そのドールアイには城の内部がどこでも視えた。 翡翠と京がこの部屋に向かう姿も。 ドンッ ! 大きな音がたち、ふと涼の視線が揺らぐ。 肉眼では見えない外の光景が、視ようとすれば脳裏に流れ込む光景。 翡翠と京が自分──『核』を見上げて立っていた。「『核』よ。いや、天音 澄子」 翡翠が前に出る。そして、純白の手袋をゆっくりと開き蛍石を見せた。「よく見ていろ」 翡翠が蛍石を摘むと、そのままゆっくりと口の中にカコンと音をっ立てて放り込んだ。「翡翠……。あの石は棺の中にあった……」 それを涼が視認した時、また現段階で半分『核』である天音 澄子の悲鳴が響いた。『翠 !! 翠ぃ〜〜〜っ !! 何故 !!? それは捧げ身に入れるもの !! 何故盗った !! 』 錯乱状態で声を発したキューブ型の浮遊物に、翡翠と京が顔を見合せ静かに頷いた

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    「終わったか ? 」 近付いて来た足音に翡翠の方から扉を開けて迎え入れられる。「うん。魔法使いは本当に駄目だった」「はは。まさか本当に言ってみるとはね。  さぁ、これから『城』での生活が始まる。殆どの者はここへ来ることは二度と無いが……お茶くらいはご馳走しよう」「……まるで最後の晩餐みたいだね」「君は突然死では無かったな。最後の晩餐を済ませて死んだか ? 」「そういう話はもう、したくないです」 翡翠の質問に悪意を感じた涼は、肩に置かれた大きな手を思い切り振り払う。 その瞬間── ヒュウ……──── 一凪の風が二人の間を駆け抜けるように。  何かが起きた。「 !? 」

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  • 強制狂葬 狂眼ドール   9.執務室

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