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第12話

Author: ASAMI
last update publish date: 2026-07-07 20:52:10

「おい、待て!どこへ行くんだ!」

背後から響く蓮の声を、私は完全に無視して玄関へと足を速めた。

蓮は私を追いかけようとしたが、その体を西園寺玲奈が慌てて引き止めるのが気配で分かった。

「行かないで、蓮。あんな生意気な女、放っておけばいいじゃない!」

という玲奈の甲高い声を、私は冷ややかに聞き流す。

蓮が玲奈を強引に振り払い、屋敷を飛び出してきた時には、私の姿はもうどこにもなかった。

私はお兄様が極秘裏に手配してくれた、私名義の高級マンションへと向かった。

神崎家の監視から完全に隔離されたその場所こそ、私が神崎家を滅ぼし、奪われた祖母のバイオリンを奪還するための真の「城」だ。

部屋に入り、リビングの重厚なカーテンを締め切る。

机の上に置かれていたのは、先日職人に特注していた、漆黒の美しい仮面だった。

私はれを手に取り、自らの顔へと深く当てた。

紐をきつく結ぶと、視界がわずかに狭まり、仮面の内側に自分の熱い吐息がこもる。

少しだけ息苦しい。

だけど、その窮屈さと暗闇が、今の私にはむしろ奇妙な安心感を与えてくれた。

これでいい。

この仮面をまとっている間だけは、私は神崎蓮の「影」でも、無能
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