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第198話

Author: 藤崎 美咲
今夜、ホテル全体が冬川家によって貸し切られていた。上の三階は一般の客向けのラウンジで、それより上の階は、各家族ごとに個別の控室が用意されている。

冬川家の控室は最上階にあった。

悠真が星乃のために用意したドレスも、その部屋のひとつに置かれている。

エレベーターで上がり、扉が開くと、星乃はすぐに遥生の姿を見つけた。

彼は廊下の壁にもたれ、両腕を胸の前で組み、一方の手で肘を支えながら、もう一方の親指を唇に当て、軽く噛むようにしていた。

こんな遥生を見るのは、ずいぶん久しぶりだった。

昔も、難しい問題に直面したときや、人付き合いで緊張するとき、彼は決まってこの仕草で気持ちを落ち着けていた。

――何かあったのだろうか。

星乃が声をかけようと一歩踏み出したとき、遥生は何かを決心したように手を下ろし、その場を離れてエレベーターへと向かった。

そして顔を上げた瞬間、ふたりの視線がぶつかった。

目が合ったまま、遥生の足が一瞬止まる。

「UMEで何かあったの?」星乃が尋ねる。

「いや、何も」

遥生は短くそう答えると、星乃の濡れた服に目を留めて眉をひそめた。「その格好、どうしたの
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