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水晶

مؤلف: 東雲桃矢
last update تاريخ النشر: 2025-12-21 13:32:40

 私は何故か昔から肝試しによく誘われる。その度に霊感のあるR子に報告してはアドバイスをもらったり、対処法を聞いたりしてた。

 どこに行くのか言うと、「そこはただ不気味なだけだから大丈夫」とか、「そこにいる霊は男に恨みを持ってるから、あなたは大丈夫」とか。

 隣町の廃墟に行くことになって、いつものようにR子に報告すると、しかめっ面をしてため息をついた。

「洒落にならない場所だからやめなさい」

「私も行きたくはないんだけど、苦手な先輩に言われてて……」

 部活に怖い先輩がいて、その人に誘われたから行かないなんて選択肢はなかった。霊感ゼロの私は、いるかどうか分からない霊より、先輩のほうが圧倒的に怖かった。

「じゃあ、これを持っていきなさい」

 手のひらにすっぽり収まる小さな巾着袋を貰った。中には水晶が入っている。

「この水晶があなたを守ってくれるから、肌見離さず持ってなさい。私以外にこれを見せちゃだめ」

 R子は巾着袋を持つ私の手を力強く握りながら言った。

 翌日、部活が終わると部室で肝試しの話になった。

「○ちゃんにはR子ちゃんがいるから大丈夫でしょ?」と、同じクラスのAちゃんが言った。私としては黙ってて欲しかった。

「R子って?」

 怖い先輩が食いついてきたし、AちゃんがR子についてベラベラ喋るものだから、先輩が私の顔を覗き込む。

「なんか対策とか除霊とかしてもらえるの? 紹介してよ!」

「R子にそんな力はない」と言ってるのに、Aちゃんが「嘘だ、絶対R子ちゃん除霊とかできる!」なんて言うから、仕方なくR子を紹介することになってしまった……。

 R子は帰宅部だから、もう学校にはいない。明日紹介すると言っても、先輩は「今から呼び出せ」と言って聞かないので、渋々電話したら、R子は肝試しに行くメンバーが今何人ここにいるのかを聞いてきた。

 素直に答えると、「すぐ行くから」と言って、電話を切った。

 下校時間が近いこともあって、R子とは公園で待ち合わせすることに。私達が到着した5分後くらいにR子は来た。

「先輩待たせるなんていい度胸じゃん」

 先輩は面識がないR子にも、後輩というだけで威圧する。

「ひとつふたつ上だからって威張るのダサい。あんたみたいなのが、将来会社で使えないのに、威張り散らす厄介な社員や、老害になったりするんでしょうね」

 R子は思ったことを何でも言ってしまうし、私と違って、年上の人にビビったりしない。

 内容は割愛するけど、軽く喧嘩をしたあと、R子は私に渡したような小さい巾着袋を先輩達に渡した。

「これで効かなきゃぶん殴るから」

「そんな余裕あるといいね」

 R子はニヤッと不気味な笑みを浮かべると、先輩の制止も聞かずに帰った。

 土曜日の夜、隣町の廃墟に行った。メンバーは私、先輩、Aちゃん、Bちゃん。先輩以外は同学年で同じクラス。

 廃墟は4階建てのビルで、窓はほとんど割れていて、ドアは外れていた。

「行くよ」

 懐中電灯を持った先輩を先頭に、4人で進む。私も懐中電灯を持ってたし、AちゃんとBちゃんもスマホのライトで照らそうとしてたけど、雰囲気が台無しになると先輩に言われ、仕方なく使わないことになった。

 他にもここに来た人が大勢いるからか、足跡がたくさんある。時々女性の笑い声や泣き声みたいなものが聞こえて、私達が怖がると、先輩は「風の音でしょ」と言って気にせず進んだ。

「そういえばあんた達、ここがどんなところか知ってる?」

「いえ、知りません」

 先輩いわく、ここは小さな会社だったらしい。経営不振で潰れ、女社長が首を吊って自殺した。

 荷物を取りに来た秘書が社長の遺体を見つけ、パニックに陥り4階から飛び降りたと言う。

 話が終わる頃、私達は3階にいた。

「きゃああっ!!」

「どうしたの!?」

 振り返ると、AちゃんがBちゃんに抱きついてた。

「い、今、人が落ちて……もういや……! 帰りたい!」

 Aちゃんは外を指差しながら震えていた。

「もしかしたらパニックで飛び降りた秘書かもね。次は社長さんに会おう」

 霊を見てない先輩は楽しそうに言いながら、嫌がるAちゃんの腕を掴んで4階に行く。

 社長室に入るけど、何もない。窓際に行って、「ここから飛び降りたのかな?」なんてBちゃんがいってると、後ろで何かが動く気配がした。

 振り返ると女性が首を吊っていた。

「許さない……許さない……」

 女性は恨めしそうにもがきながら、私達を睨みつけていた。

「きゃー!!!」

 誰かの悲鳴で我に返り、ビルから出ようとする。

「どけ! 私が先だ!」

 先輩は私達を押しのけ、真っ先に出ていく。

 私は持っていた懐中電灯をつけた。

「なにこれ!?」

 黒い霧のようなものが立ち込めていた。それでも逃げなくちゃと、無我夢中で走る。

 黒い靄は私達の道を開けているように見えた。

 外に出ると、先輩がビルに頭を打ち付けながら、何か言っていた。

「自業自得ね」

 振り返るとR子がいた。

「その人もあの子達も、もう助からない」

 R子に言われてふたりの様子を見ようとしたけど、ふたりはどこにもいない。

「もしかして、ビルの中?」

「行かないほうがいい」

 R子は私の腕を引いて、少し離れたところにあるファミレスに入った。

「水晶を見せて」

 言われたとおり水晶を見せると、真っ黒になっていた。

「どうして真っ黒なの?」

「この水晶があなたの身代わりになったから」

「じゃあ、皆はどうして――」

 もし水晶にそのような効果があるなら、何故先輩は狂って、AちゃんとBちゃんは戻ってこないのか?

 私の疑問を見透かしたように、R子は口を開いた。

「あなたに渡した水晶は、霊能者が祈りを込め、悪いものを閉じ込める力がある。あのお馬鹿さん達に渡したのは、ただのガラス玉」

「なんで、そんなことを――」

「あの水晶はタダじゃないし、希少なもの。礼儀も命の重さも分からないバカにあげるわけないでしょ?」

 R子は面白半分で肝試しする人を嫌う。実際、過去に遊びのつもりで肝試しに行った人々を「自業自得」と突き放したことがある。

 それならついて行った私も同罪じゃないだろうか?

「あなたは渋々ついて行っただけ。あのふたりは怖いもの見たさでついて行った。大事な友達だからっていうのもあるけど、あなたは面白がって行ったわけじゃない。だから助けた」

 納得はするけど、モヤモヤする気持ちを抱えながら飲み物を口に含むと、R子は再び口を開いた。

「ま、面白半分で行ってたら、あなたでも助けないけどね」

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