LOGIN私は何故か昔から肝試しによく誘われる。その度に霊感のあるR子に報告してはアドバイスをもらったり、対処法を聞いたりしてた。
どこに行くのか言うと、「そこはただ不気味なだけだから大丈夫」とか、「そこにいる霊は男に恨みを持ってるから、あなたは大丈夫」とか。隣町の廃墟に行くことになって、いつものようにR子に報告すると、しかめっ面をしてため息をついた。
「洒落にならない場所だからやめなさい」 「私も行きたくはないんだけど、苦手な先輩に言われてて……」 部活に怖い先輩がいて、その人に誘われたから行かないなんて選択肢はなかった。霊感ゼロの私は、いるかどうか分からない霊より、先輩のほうが圧倒的に怖かった。「じゃあ、これを持っていきなさい」
手のひらにすっぽり収まる小さな巾着袋を貰った。中には水晶が入っている。 「この水晶があなたを守ってくれるから、肌見離さず持ってなさい。私以外にこれを見せちゃだめ」 R子は巾着袋を持つ私の手を力強く握りながら言った。翌日、部活が終わると部室で肝試しの話になった。
「○ちゃんにはR子ちゃんがいるから大丈夫でしょ?」と、同じクラスのAちゃんが言った。私としては黙ってて欲しかった。「R子って?」
怖い先輩が食いついてきたし、AちゃんがR子についてベラベラ喋るものだから、先輩が私の顔を覗き込む。 「なんか対策とか除霊とかしてもらえるの? 紹介してよ!」 「R子にそんな力はない」と言ってるのに、Aちゃんが「嘘だ、絶対R子ちゃん除霊とかできる!」なんて言うから、仕方なくR子を紹介することになってしまった……。R子は帰宅部だから、もう学校にはいない。明日紹介すると言っても、先輩は「今から呼び出せ」と言って聞かないので、渋々電話したら、R子は肝試しに行くメンバーが今何人ここにいるのかを聞いてきた。
素直に答えると、「すぐ行くから」と言って、電話を切った。下校時間が近いこともあって、R子とは公園で待ち合わせすることに。私達が到着した5分後くらいにR子は来た。
「先輩待たせるなんていい度胸じゃん」 先輩は面識がないR子にも、後輩というだけで威圧する。 「ひとつふたつ上だからって威張るのダサい。あんたみたいなのが、将来会社で使えないのに、威張り散らす厄介な社員や、老害になったりするんでしょうね」 R子は思ったことを何でも言ってしまうし、私と違って、年上の人にビビったりしない。内容は割愛するけど、軽く喧嘩をしたあと、R子は私に渡したような小さい巾着袋を先輩達に渡した。
「これで効かなきゃぶん殴るから」 「そんな余裕あるといいね」 R子はニヤッと不気味な笑みを浮かべると、先輩の制止も聞かずに帰った。土曜日の夜、隣町の廃墟に行った。メンバーは私、先輩、Aちゃん、Bちゃん。先輩以外は同学年で同じクラス。
廃墟は4階建てのビルで、窓はほとんど割れていて、ドアは外れていた。
「行くよ」 懐中電灯を持った先輩を先頭に、4人で進む。私も懐中電灯を持ってたし、AちゃんとBちゃんもスマホのライトで照らそうとしてたけど、雰囲気が台無しになると先輩に言われ、仕方なく使わないことになった。他にもここに来た人が大勢いるからか、足跡がたくさんある。時々女性の笑い声や泣き声みたいなものが聞こえて、私達が怖がると、先輩は「風の音でしょ」と言って気にせず進んだ。
「そういえばあんた達、ここがどんなところか知ってる?」
「いえ、知りません」 先輩いわく、ここは小さな会社だったらしい。経営不振で潰れ、女社長が首を吊って自殺した。 荷物を取りに来た秘書が社長の遺体を見つけ、パニックに陥り4階から飛び降りたと言う。話が終わる頃、私達は3階にいた。
「きゃああっ!!」 「どうしたの!?」 振り返ると、AちゃんがBちゃんに抱きついてた。 「い、今、人が落ちて……もういや……! 帰りたい!」 Aちゃんは外を指差しながら震えていた。「もしかしたらパニックで飛び降りた秘書かもね。次は社長さんに会おう」
霊を見てない先輩は楽しそうに言いながら、嫌がるAちゃんの腕を掴んで4階に行く。 社長室に入るけど、何もない。窓際に行って、「ここから飛び降りたのかな?」なんてBちゃんがいってると、後ろで何かが動く気配がした。振り返ると女性が首を吊っていた。
「許さない……許さない……」 女性は恨めしそうにもがきながら、私達を睨みつけていた。 「きゃー!!!」 誰かの悲鳴で我に返り、ビルから出ようとする。 「どけ! 私が先だ!」 先輩は私達を押しのけ、真っ先に出ていく。私は持っていた懐中電灯をつけた。
「なにこれ!?」 黒い霧のようなものが立ち込めていた。それでも逃げなくちゃと、無我夢中で走る。 黒い靄は私達の道を開けているように見えた。外に出ると、先輩がビルに頭を打ち付けながら、何か言っていた。
「自業自得ね」 振り返るとR子がいた。「その人もあの子達も、もう助からない」
R子に言われてふたりの様子を見ようとしたけど、ふたりはどこにもいない。 「もしかして、ビルの中?」 「行かないほうがいい」 R子は私の腕を引いて、少し離れたところにあるファミレスに入った。「水晶を見せて」
言われたとおり水晶を見せると、真っ黒になっていた。 「どうして真っ黒なの?」 「この水晶があなたの身代わりになったから」 「じゃあ、皆はどうして――」もし水晶にそのような効果があるなら、何故先輩は狂って、AちゃんとBちゃんは戻ってこないのか?
私の疑問を見透かしたように、R子は口を開いた。「あなたに渡した水晶は、霊能者が祈りを込め、悪いものを閉じ込める力がある。あのお馬鹿さん達に渡したのは、ただのガラス玉」
「なんで、そんなことを――」 「あの水晶はタダじゃないし、希少なもの。礼儀も命の重さも分からないバカにあげるわけないでしょ?」 R子は面白半分で肝試しする人を嫌う。実際、過去に遊びのつもりで肝試しに行った人々を「自業自得」と突き放したことがある。 それならついて行った私も同罪じゃないだろうか?「あなたは渋々ついて行っただけ。あのふたりは怖いもの見たさでついて行った。大事な友達だからっていうのもあるけど、あなたは面白がって行ったわけじゃない。だから助けた」
納得はするけど、モヤモヤする気持ちを抱えながら飲み物を口に含むと、R子は再び口を開いた。「ま、面白半分で行ってたら、あなたでも助けないけどね」
これは不倫した元夫がひどい目にあった話。 私と夫は社内恋愛で結婚しました。夫は私の3つ上で、役職もあって給料がいいので、結婚してすぐ妊娠したというのもあり、私は寿退社しました。 つわりが落ち着き、安定期に入ると、母と姑に連れられ、安産祈願で有名な近くの神社に行きました。 ふたりは何故か私と夫が結婚式の時に撮ってたツーショットの写真を持ってきてて、本堂(?)に写真をむけながら、夫と私の人柄や馴れ初めについて話していました。 何故そんなことをしたのか聞いても、ふたりは教えてくれません。 うちの母と姑は同級生だったらしく、とても仲が良くて、ふたりとも妊娠中の私に寄り添ってくれてました。 一方夫は、子どものために稼がないといけないと言い、毎日残業で、休日出勤もしてました。私は夫の体が心配になり、「無理しないで」と言いましたが、「大丈夫、心配しないで」と言いました。 母と買い物をしてる時に、夫が知らない女性と歩いてるのを見かけ、私はショックのあまり動けなくなりました。母は姑に連絡すると、夫達を尾行しに行きます。 姑が迎えに来てくれて、私は姑と一緒に帰りました。 姑は、「うちのバカ息子がごめんね。絶対にバチが当たるから、安心して子供を産んでね」と言います。 その時はただの慰めだろうなと思っていました。 出産をした2ヶ月後、夫は知らない女を連れてきて、「この人と一緒になるから離婚してほしい。妊娠してるから、子供が産まれる前に結婚したい」と言いました。その時母が遊びに来て、別室で子供を寝かしつけていました。 話を聞きつけた母が、テーブルの上に不倫の証拠写真を並べ、「この子と離婚するなら、けじめをつけなさい」と言ってくれて、私は慰謝料をふたりからもらって離婚しました。 SNSを見てると、おすすめに夫の不倫相手が出てきたのでなんとなく覗いたら、私も行った安産祈願の神社に行ったようで、夫とのツーショットが――。 ショックだったし、神聖な場所を穢された気がして、悔しくてしばらく泣いてました。 不倫相手のアカウントをブロックして、忘れようとしました。 離婚のゴタゴタが終わると、私は母の実家がある隣県に引っ越して、そこで母と祖父母に子育てを手伝ってもらいながら、穏やかに暮らしていました。 離婚して半年後、姑から連絡があったので母と行くと、元夫について色
僕が大学受験の勉強をしていた頃の話。父からラジオを借りて、夜遅くまで勉強してた。 ラジオはかなり年季の入ってるもので、父が初給料で買ったものらしい。ラジオを聞きながら勉強すると意外と捗るし、結構楽しいから気に入ってた。 ある晩、ラジオがおかしなことになった。 触ってないのに、勝手にチャンネルがコロコロ変わる。どこを押しても、コードを抜いても止まらない。 よく聞くと、ラジオはチャンネルを変えながら、ひとつの言葉を作っていた。【A、キケン、チュウイセヨ】 その言葉を聞き取ると、ラジオはもとに戻った。 Aというのは同じ大学志望のクラスメイトだ。彼は塾に通って毎日勉強しているらしい。 Aとは特に絡みもない。何故注意しなくてはならないのか、イマイチ理解できなかった。 学校でなんとなくAを見ても、彼は僕に興味があるようには見えない。授業は真面目に聞いてるし、休み時間も友達と話している。 あれはなんだったのだろう? 故障にしては気味が悪い。 夜、またラジオがおかしくなった。【◯✕ジンジャ、ウラテ】 ◯✕神社は、この辺で1番大きな神社で、樹齢1000年と言われる御神木が有名だ。 なんとなくそこに行かなきゃいけないと思って、懐中電灯を片手に行く。 夜の神社は不気味で、来たことを後悔した。なにもないし帰ろうと思ったら、足音が近づいてくる。咄嗟に隠れると、Aが御神木に近づき、釘で何かを打ち付けてる。 不気味だし、帰りたいけど、見つかったらまずい気がする。それにAが何を打ち付けてるのか気になった。 満足したのか、Aは10分くらいで帰ってった。階段を降りる音が聞こえなくなってから御神木に近づき、ゾッとした。 御神木に打ち付けられてるのは、藁人形と僕の写真。「そこで何をしてる?」 驚いて振り返ると神主さんがいた。僕が事情を説明すると、神主さんは社務所に入れてくれた。「そのAくんとやらは、君を恨んでたようだね」「僕、Aくんとほとんど話したことないんですけど――」「恨みっていうのは、どこで買ってるか分からないものだよ。特に君達はまだ高校生。精神が未熟だ。他の人にとってはしょうもないことで恨みや憎しみを抱くことが多い。 例えば、自分は親に買ってもらえないのに、他の人は買ってもらえてるとか、自分より成績がいいとか、自分より目立ってるとかね」「言わ
郊外のマンションに住み始めた頃の話。 独身貴族の私は、ひとりでのんびりしたくて、郊外のマンションに引っ越しました。回りは少し自然があって、お店も家も適度にあって、都心のような忙しなさとかけ離れた落ち着く場所でした。 引っ越してから毎晩同じような夢を見るのです。背の高い男性に抱きしめられ、髪を撫でられる夢で、男性は私の髪を撫でなから、「綺麗な髪だね」と言ってくれます。 声はイケボっていうより、落ち着く声で、すべて委ねたくなるような声でした。 恋愛もほとんどしてなかった私は、その夢に夢中になり、夜が待ち遠しくなりました。 男性の夢ですっかり気分が良くなった私は、今まで以上に髪の手入れをしたり、新しい服を買ってイメチェンしたりしてました。 心は今までにないくらい元気なのに、こころなしか体が重くなっていきます。引っ越し疲れのせいだろうと思い、あまり気にしませんでした。 そんなことより、夢の中の彼に会いたい。そのことで頭がいっぱいだったのです。 1ヶ月後、体調が悪化して、会社を休みがちになりました。それでも病院に行こうと思いませんでした。 だって、昼も寝れるということは、彼との時間が増えるということだから。 休日の日中、これから寝ようと睡眠薬を準備していると、友達のAが遊びに来ました。Aは霊感がある子で、私の部屋に入るなり、顔をしかめます。「相当やばいよ――。一旦ここ出よう」 私は彼に会いたいのに、Aは無理やり私を引っ張って、Aの家に行きました。「もう、彼の夢を見たいのに」「彼って?」 私は夢の中でいつも抱きしめ、髪を褒めてくれる愛しい彼の話をAに聞かせました。「それ、悪霊の類だと思うよ」「まさか! あんなにいい人が?」「だって、引っ越してきてから体調崩してるんでしょ? それに、眠剤飲んでまで昼寝しようとするなんて、普通じゃないでしょ」 Aに言われ、ようやく自分の異常性に気づき、鳥肌が立ちました。でも、彼と離れたくないという気持ちも強いまま。「知り合いの祓い師に連絡するから」 Aは誰かに電話をした。彼女は電話を終えると、ため息を付きながら私を見た。「明日来てくれるって。今日はうちに泊まって」 Aは客用の布団を用意してくれました。 真夜中。どうしても彼に会いたくて、こっそり抜け出し、マンションに戻りました。さっきまであんなに目
子供の頃、田舎に住んでいました。田んぼや畑が沢山あって、軽トラなどが通る道が何本もありました。軽トラもトラクターもそんなに頻繁に通るわけではないので、散歩道としてよく使われています。 少なくとも、私達がふだん使うのは、田んぼがある道で、畑側の道は通りませんでした。児童館も駄菓子屋も、田んぼ道で行くからです。それに畑側の道に行っても、何もありませんでしたし。 子供というのは好奇心旺盛なもので、「そういえば、あの道行ったことないから行ってみよう」と誰かが言い出しました。 私は嫌がりましたが、年下の子達も行こう行こうとしつこいし、ついてこなかったら絶交だって言うんです。 子供って思い通りにならないと、すぐ絶交って言いますよね。 それで渋々ついて行ったんですけど、道を進む度にゾワゾワして、嫌な感じが強くなって、私はついに泣き出してしまいました。 年下の子達にもなだめられる始末です。でも、恥ずかしいって思う余裕なんてありませんでした。 男女どちらかわからない顔が、怖い顔をして睨んできてたのですから。他の子達には見えなかったようで、何故私が怖がっているのか、誰も理解できません。 限界が来て泣きながら田んぼ道に引き返していると、ちょうど祖母が散歩に来ていて、事情を聞いたら他の子達を叱ってくれました。 叱ってくれたと言っても、霊的な話がどうとかじゃなくて、「嫌がる子を無理やり連れてくとは何事だ」といった内容でしたが。 成長して霊感がなくなったのか、数年もすると見えなくなりました。すると不思議なもので、その道を通ってもなんとも思わないし、体が重くなったり、高熱が出たりということもありません。 あの霊は成仏したのか。それとも普段行かないところへ行きたくないという強い思いが見せた幻覚なのか――。
これは私が片想いした相手の話。彼は私のふたつ上で、頭が良くて面倒見が良くて、子供の頃から彼のことが大好きでした。彼のことはFとしましょう。 Fは背も高いし、顔もそれなりに整ってるので、どの学年の女子からもモテました。同じ通学班の子なら、ほとんどの子はFを好きになったことがあったと思います。 幸い、Fとは家族ぐるみの付き合いがあったので、Fが中学生や高校生になっても、付き合いはありましたし、学校やバイトの帰りに会うと、送ってくれました。 臆病な私は、Fに告白することもできず、彼は県外の大学に行ってしまいました。 Fと再会できたのは、私が大学4年生になってから。 それまで親戚や近所の集まりがあったのですが、Fは年末年始やお盆に帰ってくることさえありませんでした。Fのご両親に聞くと、夏休みのような長期休暇は、勉強や自主留学みたいなことをしてると言ってました。 なので時々Fから海外からのお土産を、Fの両親経由でもらうこともありました。 私が大学4年生の頃の夏休み、Fは久しぶりに姿を見せに来ました。数年ぶりに見たFは、前より大人っぽくて、かっこよくなっていましたが、目の下にクマがあって、目が虚ろというか、遠いところにある別の何かを見ているような、そんな目をしていました。 近況を聞くと、エンバーマーになったと言ってて驚きました。Fは外科医になるために医大に行ったと聞いてたので、他の職業に就いてるとは思わなかったのです。「エンバーマーって何?」「ご遺体を綺麗にする仕事だよ。傷を縫合したり、化粧を施したりするんだ」 怖い仕事だと思いましたが、誇らしげに話すFにそんなこと言えるはずありません。 久しぶりにFの家族と一緒に、バーベキューをすることになり、私とFは買い出しに行くことになりました。 この機会を逃したら、もう告白するチャンスがなくなると思い、思い切ってFに告白しました。「あの、Fさん――」「どうしたんだい?」「私、ずっと昔から、Fさんのことが、好きです――」 Fさんは一瞬目を見開いた後、悲しそうに笑いました。「気持ちは嬉しいけど、ごめんね。僕には愛する妻がいるんだよ」「え?」 鈍器で頭を殴られた気分でした。Fが結婚したなんて、聞いてません。それどころか、Fの両親が、「あの子、仕事のためにあちこち飛び回っててなかなか落ち着かないんだ。
社会人になって、地元から出た人って、年末年始とお盆に帰るでしょ? 私は年末年始には帰れるけど、お盆は怖くて帰れない。 小さい頃から、お盆になると怖い夢を見る。お盆の期間、ずっと。 夢の内容はいつも同じ。私は重たい何かを引きずっている。重いし辛いし、もう休みたい。けど、休んじゃいけないって本能的に思って、安休むことはできない。 見回すと、他にも私と同じように重たいものを引きずってる人がたくさんいる。皆大きな石にくくりつけた縄を引っ張っているんだ。振り返れないから分からないけど、多分私もそう。 斜め前に、歳の近い女の子がいて、女の子にひとりの少女が近づく。背格好は少女だけど、顔は老婆だ。老婆は女の子に「大変そうだね、代わろうか?」と優しく声をかける。 女の子が「お願い、代わって!」と言うと、女の子が消えて、老婆が女の子と同じ姿になって、石の上に座る。 これを見て、どんなに辛くても代わっちゃいけないんだと悟って、泣きたくなった。 私のところに、少年が来る。顔も年相応だけど、もしかしたら他の人から見たら、おじいちゃんなのかもしれない。「大変そうだね、代わろうか?」 男の子は人の良さそうな笑顔で腕を差し伸べる。「大丈夫、自分でやる」と言うと、舌打ちをしてどこかに行った。 時々、少年少女が私のところに来ては、私と代わろうとする。私が断ると、舌打ちをしたり、暴言を吐いたりする。 周りの人のところには、顔が年寄りの子供が寄ってくる。代わってほしいと言うと消え、私のように断ると、舌打ちや暴言を浴びせられる。 両親に話してもまともに取り合ってくれなくて、悲しかった。 歳を重ねるにつれ、その夢を見るのはお盆だけだと気づき、更に歳を重ねて、代わろうとしてくる少年少女の正体がご先祖様なんじゃないかと思うようになった。 というのも、うちは一戸建てで和室があるんだけど、和室にはご先祖様の写真や肖像画が飾ってある。 思い返してみると、あの子達はご先祖様と瓜二つなんだ。 小学4年生から、お盆の時期にお泊り会が開かれた。どこかの施設が開催してるもので、子供達だけで夕飯を作ったり、冒険をしたりする催しだ。普段ならこういうイベントに参加したいと思わないけど、すがる思いで参加した。 不思議なことに、お泊り会の間はあの夢を見ることはなかった。それ以来中学3年生まで、お