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第一章:エルミニオ・ヴィスコンティは愚かな夢を見る

Auteur: Kaya
last update Dernière mise à jour: 2025-09-29 18:39:00
俺はエルミニオ・ヴィスコンティ。

この国では誰もが知る、ヴィスコンティの王太子だ。

自慢するわけではないが、俺は生まれつきあらゆる分野で天才だった。

基本的な学問教育はもちろんのこと、武術や戦術、礼儀作法や社交術などどれをとっても完璧で、一度教わったことは決して忘れなかった。

そんな俺を人々は「王太子様は天才です!」「ヴィスコンティ王家の至高だ!」などと言って褒め称えた。

悪い気はしなかった。

だって俺にはそう言われるだけの確かな才能があるのだから。

そんな俺には幼い頃からの婚約者がいた。

ロジータ・スカルラッティ。

スカルラッティ公爵家の長女で、俺の2歳年下。

俺たちが婚約に至ったのは、ヴィスコンティ王家に古くから伝わる『星の刻印』の一致があったからだ。

ーー『星の刻印』ーー。別名、運命の刻印とも呼ばれるそれは、ヴィスコンティの王族に現れる特殊なアザのようなもの。

このアザが初めて体に刻まれたのは、俺がまだ4歳の頃だった。

右胸に現れた刻印は俺が知る中でも少し大きな星形で、色はうすっすらと赤みを帯びていた。

薄紅の五芒星といったところか。

「エルミニオ。怖いことはありません。

あなたと同じ刻印を持つ者が、運命の相手になります。

その子が現れたら大切にするのですよ。」

王妃だった俺の母は体が弱かったが、とても優しい人だった。

このヴィスコンティ王家には禁忌の力と呼ばれるものがあって、彼女の持つ治癒の力もそれに由来していた。

元は隣国の侯爵令嬢だった彼女がその力を授かったのは、刻印が現れてからだと聞いている。

しかし夫である国王マルツィオに力の使用を禁じられているため、使ったのを見たことはなかった。

ロジータ・スカルラッティに刻印が現れたと聞いたのは6年後。

「はじめまして、エルミニオ王太子殿下。

私はロジータ・スカルラッティと申します。」

8歳のロジータと初めて顔を合わせたのは、王宮の星の間だった。

ふわりとなびく緩やかな金色の髪に、碧い瞳。

外見はどこにでもいる令嬢とさほど変わりはなかったが、ロジータはどこか大人びていた。

完璧につくられた笑顔。

完成された人形。

そういった言葉が似合うほど、ロジータにはこれといった隙がなかった。

だがいくら彼女が冷たそうに見えても俺たちは運命の相手。

「はじめまして、ロジータ
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