Accueil / ファンタジー / 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜 / 第一章:エルミニオ・ヴィスコンティは愚かな夢を見る

Share

第一章:エルミニオ・ヴィスコンティは愚かな夢を見る

Auteur: Kaya
last update Dernière mise à jour: 2025-09-30 18:39:00
リーア・ジェルミを見た瞬間、俺の心は彼女に奪われた。

珍しい銀色の髪にサファイアブルーの瞳。

小柄で謙虚で、まるで花の精霊のよう。

このヴィスコンティの王宮で働く使用人、特に女性に関して、これまで一度も目を奪われたことなどなかった。

俺にはロジータがいたからだ。

だがそのロジータは俺に独占欲を出し、傲慢さが目立ち、鬱陶しく思っていた時期だった。

俺が17歳で、成人前のことだ。

ヴィスコンティの王宮にはあらゆる場所に庭園があり、その中でも俺の住む宮殿側にある庭園はお気に入りの場所だった。

だがここは一般の使用人には立ち入り禁止のはず。

なぜ彼女がここに?

「王太子殿下……?

ごめんなさい、この場所が殿下の庭園だったとは知らずーーきゃあっ!」

「危ない!」

池の近くで足を滑らせバランスを崩したリーアを俺は思わず抱き止めた。

ふわりと甘い匂いが俺の鼻先を掠めた。

それに、なんて軽いのだろう。

彼女の儚げな瞳が潤んで、頬がひっそりと赤らんだ。

トクンと心臓の音が鳴り、俺はつい夢中でリーアを見つめた。

「で、殿下。あ、あの。」

戸惑った様子で彼女は俺を呼び、早く離さなければと思ってもなぜかそれができなかった。

「君、名前は?」

「私ですか?私はリーアです。

リーア・ジェルミです。」

ジェルミ。聞いたことのない家門名だ。

地方貴族の名前だろうか。

彼女の存在に疑問を抱きながらも、俺は不思議な魅力を持ったリーアに興味を持った。

「リーア。

知らなかったとは言えここは俺の大事な場所だ。

だから、規則を破った君に命令する。

明日からしばらく、今くらいの時間にこの庭園にくるように。」

自分でも何を言っているのか分からなかった。

一体俺はどうしてしまったのだろう?

こんな風に傲慢に女性を縛りつけようとするなんて。

「またこの庭園にきてもよいのですか?

 わあ、嬉しいです、また殿下に会えるだなんて」

だがそれを好意と捉え、素直に喜ぶリーアの顔があまりにも可愛くて、俺は最近のいやな出来事などすっかり忘れていた。

それから時々、王太子教育や剣術の稽古を抜け出してリーアと密会するようになっていった。

一国の王太子がするべき行動ではなかったが、彼女に会いたい一心だった。

「私は、何者かに家門を滅ぼされたようなのです。

幼い頃から奴隷として悲惨な日
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Latest chapter

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第二章:幸せの対価

    あの時はまだ、原作の強制力が働いていたはずなのに。きっとルイスは元から優しい性格だったのだろう。そう思うと胸の奥がじんわりと温かくなる。「ダンテ。お前も、もうロジータが変わったことは分かっているだろう?よければ、兄さんに伝えてくれないか。俺とロジータには本当に反逆心なんてないと。だからこれ以上、ロジータに敵意を向けずにいてほしいと。」切実に願うように、ルイスがダンテの肩を軽く叩いた。「ルイス殿下。確かにロジータ様が変わったのは認めます。ですが、エルミニオの考えがそう簡単に変わらないのはご存知のはず。それにリーアも……」一瞬何かを言いたげにダンテは私に目線を送った。「ダンテ様、お尋ねします。その……。リーアが私に対して、どういう感情を抱いているか分かりますか?」ずっと疑問に思っていたことを私はダンテに尋ねる。あの小広間で、死にかけている私を見てリーアは密かに微笑したのだ。清廉潔白のはずの彼女。原作にはなかった行動。それともあれはロジータ側からしか見れなかった、ヒロインの本質だったのだろうか?「今、宮廷に流れているという悪質な噂。それを流しているのがリーアだというのなら、なおさら放っておくわけにはいきません。彼女に嫉妬して虐げてきた身としては、リーアがなぜそんなことをしているのか私は知らなければなりません。」彼女は原作のヒロインだが、ロジータにとっては長年の因縁の相手でもある。もちろんエルミニオの方も気になるが、こちらも解決しないと穏やかな契約結婚を送れない気がする。少しダンテは困ったように金色の前髪をかき上げた。「さあ。私もリーアの全てを把握しているわけではありませんので。ですが……おそらくリーアはあなたを恨んでいるのでしょう。それこそ、今言った通りです。少なくとも私は、あなたが彼女を虐げた

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第二章:幸せの対価

    ルイスと私の刻印は明らかに色も形も違う。今はエルミニオとも違う私の刻印。思えばルイスが私を治療する時、私の刻印も反応していた。もしかして、これは……?ーーールイスの元へと帰ると、すでにマルツィオと数名の神官が到着していた。しかし、アメリアとマルコが同時に悲しそうに首を振る。「手は尽くしましたが、ルイス殿下には治癒力が効かないようです。なぜこんなことになったのか原因は分かりませんが、残念ですが……」「そうか。手を尽くしたのだから、気にする必要はない。」神官たちが申し訳なさそうにマルツィオに謝罪すると、彼は答えを分かっていたかのように返って慰めの言葉をかけた。そうなのね。ルイスには『治癒力』自体が効かないんだわ。マルツィオは暗い表情で囁いた。「もっと私が強めに警告していれば。」「いえ、陛下。まだ手があります。」「それは……?」驚いたように目を見開いたマルツィオに、私は柔かく微笑した。なぜ、これだけ重要なことをマルツィオが黙っていたのかは今だに分からない。ただ私は、これまで何度もルイスに救われている。何が真実であれ、今度は私がルイスを救う番だ。「今から私がルイスを治療します。ですが、治療方法を見られたくないので、全員出てもらうと助かります。」事情を説明し、私はマルツィオを含めた全ての人間を部屋から追い出してカーテンを閉めた。「ルイス。今度は私があなたを助けるわ。」包帯を解くと私の左胸の刻印が見えた。上部は剣で突き刺された傷跡が残っている。エルミニオの刻印が変化して以来、ずっと悲劇の象徴のようにしか感じてこなかったけれど。私の刻印は、うっすらと赤みを帯びた星形だ。さっき見たのは間違いではなかった。「やはり光っているわね。」刻印は、薄い紅色をした薔

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第二章:幸せの対価

    このところ幸せな気がして、すっかり油断していた。エルミニオから殺される運命を変えることができたと、安心しきっていた。「ルイスが倒れた……!?」また一緒に禁書庫に行こうと約束した前日、ルイスはマルツィオに任された外交で、使節団を迎えていた。彼は順調に仕事をこなしたのだが、さきほど自身の執務室に戻るなり急に倒れてしまったというのだ。血相を変えてマルコが私を呼びにきた時、急いでルイスの元へ駆けつけた。「ルイス……!」ベッドに横たわるルイスの顔は青く、酷くうなされていた。私が来たことも分からないくらい。部屋にはアメリアもいて、今にも泣き出しそうな瞳をして私を見つめていた。そっと近づくと、ルイスの右手の刻印が淡く光っていた。ただし、いつもとは違い、暗く薄暗い色をしていた。「ルイス、しっかりして!」「ロジータ様。今のルイス様は、会話すらできないようです。」アメリアが二、三度首を横に振った。荒々しいルイスの息遣いが部屋中に響き渡る。苦しむ彼の姿にぐっと胸が痛む。ベッドに近づき、私は彼の右手をぎゅっと握った。「マルコ、念のため国王陛下をここへ呼んで。それと、できれば治癒力を持った神官も呼んでほしいと伝えて。」「…分かりました、ロジータ様!」断定はできないけれど、たぶんこれは禁忌の治癒力によるものだわ。マルツィオの忠告が本当になってしまったのね。『治癒力』の使いすぎーーーやはり、リスクが本人に直に現れるということは間違いなかった。 それなのにルイスは昨夜も私の傷を……「ごめんね、ルイス。私がもっと強く止めていれば……!」彼の手を強く握りしめる。これは原作にはなかった展開だ。明らかに、ルイスが私を助けたせいで起きたこと。私がロジータ・スカルラッ

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第二章:幸せの対価

    私たちはその晩、禁書庫で得た情報を照らし合わせていた。闇が深まり、ステンドグラスから差し込む月明かりと、ランタンの暖かな灯りが幻想的に寝室を照らしていた。今夜もアメリアが張り切って準備してくれたガウン姿で、私は中央のソファに座っていた。対面に座るルイスも、色気のあるガウン姿だった。「ヴィスコンティ語と古代語で書かれた、似たような図版を見比べてみたの。私の予想では、『禁忌の治癒力』は王国の建国時から存在していると思うわ。これを見て、ルイス。」私はあらかじめ図版を模写したものをルイスに差し出した。「第1に、『星の誕生』。おそらくこれがヴィスコンティ王国の始まり。そして第2が、『一致する運命の刻印』。第3が『冠をかぶった男女』。第4が、『眩い光を放つ冠の女性』。ケガを負った小動物や鹿、人間が回復している様子が描かれているわ。そして最後に、『女性を失い悲しみに暮れる冠をかぶった男』。」「なるほど。これは建国神話で、この男女は初代王と王妃だな。俺が見た禁書にも似たようなのがあった。」ルイスは頷きながら模写を見つめた。「その通りよ。おそらく、初代王妃は『治癒力』を持っていた。ルイスと同じように。」ヴィスコンティ国語で書かれた禁書には、初代王と王妃から始まる王家の家系図が描かれていた。それによると、初代王妃は早くに死別となっていた。王は後に別の妃を迎え、現在に至っている。途方もない年月を経て。「初代王妃は、なんらかの形で亡くなり、王が亡骸を抱えて悲しんでいるように見えるでしょう?」文字は分からなくても図板は、十分に当時の国王の悲しむ様子を伝えてくれている。ルイスは模写を手に持ち、しばらく見つめた。「そう見える。救えなかったのを嘆いているようだ。俺が見た図板では、彼女は多くの人に崇められていたようだった。」そう、まるで『聖女』のように。では、崇

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第二章:ルイスの嫉妬

    私たちの異様な様子に、ユリが躊躇いがちにエルミニオに報告をした。リーアが?何でもいいからいいタイミングだわ。さっさとこの男を、私の前から連れて行って。「何、リーアが?ここへは来るなと言っておいたのに。」これで、ようやく解放されると思ったのに。「仕方ない。入り口付近で待たせておくように。」訝しげに吐き捨てると、再びエルミニオは私に冷たい視線を向けた。ユリは不満げに私を見たが、小さく頭を下げて、その場を去ってしまった。「逃げられると思ったのか?ロジータ。」「ふふ。本当に呆れますね。ですから逃げるも何も、殿下こそご自分が何をやっているのか自覚はあるのですか?」言われっぱなしは癪に触る。私もエルミニオに刺々しく言い返すが、全く通じてないようだ。愛しいリーアを放っておいて、憎い私に構っている場合ではないでしょう?どうしたら納得するのよ、この男は!そんなあからさまな殺意を向けないで欲しいものだわ。憎らしいのはこっちだって同じよ!「エルミニオ様……!」その時、エルミニオの背後に勢いよく何かが飛び込んできた。使用人とは思えない、美しいローズピンク色のドレスを着たリーアだった。もうすっかり王太子妃気取りね。彼女は甘えた様子でエルミニオの背後に隠れ、私に怯えたような視線を向けた。「あ……!ロジータ様もご一緒だったのですね。」「一体どうしたのだ?リーア。図書室には来るなと言っておいただろう?」やっとエルミニオが私から離れ、代わりに宥めるようにリーアの肩を叩いた。「だって、エルミニオ様がいないとつまらなくて。」「困ったな。君が退屈しないよう、使用人をつけたじゃないか。」「ええ、でもやはり、エルミニオ様のそばにいたいんです。」純真な雰囲気を匂わせて彼女はエルミニオに抱きつき、目は私を憐れんだ

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第二章:ルイスの嫉妬

    最悪だわ。あの時、お怒り気味に馬車を追いかけてきた時以来かしら?いくら広大な敷地面積を誇る王宮だとはいえ、やはり会う時は会ってしまうものなのね。背後には何冊か書物を持ったユリ、入り口近くに待機したルドルフォの姿が見える。エルミニオは目の前に立ち、黒に金糸の入ったダブレット姿で、まるで獲物を追いつめるような鋭い瞳で私を見下ろしてくる。殺したくても殺せないのがもどかしい、といった表情かしら?だからって、そう睨みつけないでほしいわ。「王国の若き太陽、エルミニオ王太子殿下に拝謁いたします。」私はエルミニオの顔もろくに見ず、無難にカーテシーを披露した。今、禁書庫に戻るのは避けたほうがいいだろう。エルミニオに、ルイスが禁忌の治癒力を使ったことを気づかれてはいけない。弱みを握らせることになってしまうから。それはそうと、今日はリーアを連れていないのかしら?いつもどこに行くにも必ずと言っていいほどリーアを連れていたのに、今日は珍しいわね。背後からユリが何か言いたそうにしかめっ面をしているけれど、思いっきり無視しよう。「それでは、殿下、私はこれにて失礼いたします。」サッと頭を下げ、私はエルミニオの脇を通り抜けて禁書庫とは反対側へ去ろうとした。「——— ルイスとの“新婚ごっこ”は楽しいか?」通りすがりそう皮肉を吐き捨てられる。何?新婚ごっこですって?腹は立つけれど、ここは我慢よ。丁寧に振り返って、私は微笑み返した。「お言葉ですが、殿下。私とルイスは真剣に愛し合っているので、“ごっこ”呼ばわりはどうかと。まあ、幸福と聞かれましたら、そうですね。お陰様で、彼との新婚生活は満喫しております。」実際にルイスとの契約結婚生活は楽しくて、嘘ではない。「は!白々しい。ロジータ、一体いつからルイスと手を組んでいたのだ?」刺々しい声、苛

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status