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アスナとクラスメート

Author: をち。
last update Last Updated: 2025-06-02 14:54:38

こうして特に疑われることもなく学園長との面談は終わった。

寮の部屋についても、俺の部屋に付属している従者用の部屋でいいとのことだ。

クラスも俺と同じ、Aクラス。

ちなみにクラスはAからDまで成績順、かつ選択別となる。

俺もレオンもAクラスだが、レオンは経営科でA-1、俺は魔法科でA-2。教室は別なのだ。

「お前もAクラスだが……大丈夫か?そもそも、講義内容を理解できるのか?」

教室に向かいながらアスナに確認すれば、自信ありげな笑みを見せるアスナ。

「レオンの目や耳を通して俺も学んでいたからな。問題ない。少なくともレオンと同程度には理解できていると思うぞ?」

アスナの言葉にレオンがゾッとしたように身を震わせた。

「……つまり、私の全てを把握していたということか?」

気持ちは分かる。下手なストーカーも真っ青だ。

「まあな。少しは俺の意志をお前の行動に反映させることもできたし。あと少しだったんだがなあ……」

青ざめるレオン。

「お前の意志を反映、というのに心あたりがあるのが恐ろしいよ。何があと少しだったのかは聞かないでおこう。

アスカ……本当に心から感謝する。ありがとう」

俺は今お前に心から同情しているよ。アスナが悪かったな。

あまりにも不憫で、思わず自分から手を伸ばしてレオンの頭を撫でてしまった。

「……いや、間に合って良かった。

……?どうした?」

ふと見ればレオンが見たことのない表情をしている。

と、みるみるその顔が真っ赤に染まっていった。

「⁈本当にどうした⁈」

レオンは慌てたように片手で口元を覆い顔を背けた。

「い、いや…………その…………アスカから私に触れたのは初めてだたので……驚いて……」

「?そうだったか?」

そんなことくらいでこんな顔をするのか。

昨日からこいつのおかしな顔ばかり見ている気がする。

「ふは!変な奴だ」

思わず笑えば、レオンが目を丸くして俺を凝視。

アスナはアスナでムスっとした表情で不機嫌そうに腕を組んだ。

「なんだよ?気持ち悪い」

「……アスカが……私に向かって笑ったから……。いや、なんでもない。

さあ、行こうか」

ホント、変な奴。

教室の前でレオンと別れた。

ギリギリになってしまったせいか、もう生徒はみな着席しているようだ。

「アスナ、行くぞ」

「ああ。……これからはまたクラスメートだな。よろしく、アスカ」

アスナが嬉しそうに笑う。

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  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   新しい関係

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