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学園にて2

Author: をち。
last update Last Updated: 2025-04-19 17:30:50

なんとなく感傷に浸っていれば、そこに馬鹿みたいな声を上げながら、派手な女がやってきた。

「アスカ様〜♡ 今日のお茶会、もちろん来てくださいますよね?うふふ。特別な趣向をご用意しておりますのよ?」

こいつは確か家が商会をしているとかいう男爵令嬢だ。金にものを言わせて爵位を買ったという噂の成り上がり。豪華な衣装を着ているが、話し方も素振りも下品そのもの。権力にこびへつらい、下の者には辛く当たるタイプだ。実際、こいつが侍女を蹴倒しているのを見たことがある。まさに俺の大嫌いな「女」を具現化したような女。

女は甘えたように鼻にかかった声でわめきたて、図々しくも俺の腕にしがみつこうとしてくる。

せっかく少しいい気分だったのに、台無しだ。俺は軽く一歩引くことでしがみつこうとした女の手をさりげなくいなし、冷たく吐き捨てた。

「ふん、貴様なんぞ知らん。この俺がなぜ貴様の下らぬ茶会になんぞ行かばならんのだ?

女、不快だ。俺に触れる許可を出した覚えはないぞ。わきまえろ」

容赦のない言葉含まれた明らかな侮蔑と拒絶。

それを聞いて、居合わせた周りのやつらがきゃあきゃあと騒ぎ出した。

「きゃー!さすがアスカさま!クールだわあ!」

「いい気味だわ!身の程知らずにもアスカ様と親しいと勘違いするなんて!ご自分が何様だと思っていらしたのかしら?」

「彼女もこれで懲りたでしょう」

全く。確かに女も煩いが、お前たちも似たようなものだぞ?まあ、この女が好かないという気持ちは俺も同感だがな。

俺はため息を一つ零すと、手をひらひらと振ってモブどもを追い払った。

「さあ、散れ。俺は見世物ではないのだぞ?」

言いながらさり気なく先ほどの花の様子を確認する。

良かった。無事だった。

ほっとした俺は、その花を気付かれぬよう懐にそっとしまった。なんとなく、ここにいる奴らの目にさらしたくなかったのだ。

そうして歩き出せば、今度はまた別の輩が息を切らして走ってきた。

「アスカ様、アスカ様っ!お話がございますっお時間を頂戴いたしたく……っ」

見覚えがないぞ?誰だ?俺に何の用がある?

俺は眉をひそめて男を見た。……面倒ごとの予感がするな。

「何だ、愚図。要件を三秒で言え」

「は、はいっ!次期王太子殿下が、アスカ様をお呼びだそうです!」

王太子殿下、という言葉で空気がピンと張り詰めた。取り巻きたちの間にも緊張が走る。

「ほう……レオンが俺に?」

王太子、レオン・オルブライト。この学園で唯一、俺と張り合える血統と力を持った男。

彼は……実は現在も俺の婚約者だ。残念ながら、さんざん避けまくってやったのにもかかわらず、それを許容し、婚約解消をしないのである。

そんなに後ろ盾が欲しいのか?プライドはないのか、レオン。

だがどのみちこの婚約ももうじき終わる。ゲームの主人公である「ピンクの髪の少年」が現れるからだ。そうなったら断罪される前にさっさと身を引こう。俺にはゲームとは違いレオンに愛などないからな。喜んで婚約解消してやるさ。

そう、俺とレオンの間には何もないのだ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

レオンと俺の婚約は、いわゆる政略的婚約だ、とされている。有無を言わさず5歳で婚約を決められた俺は思った。政略以前の問題だろう、と。

そもそも俺は嫡男。弟がいるとはいえ、俺が優秀なら優秀であればこそ嫡男の入れ替えなどあり得ない。無理やり王子の婚約者に選ぶこと自体がおかしいのだ。仮に王子が公爵家に嫁入りしてくるというのなら話は別だが、あちらもあちらで王太子だからそれはない。結婚のハードルが高すぎて、本来なら成り立つはずもない婚約なのだ。それを強引に成り立たせたのがこの婚約なのである。

つまり……俺が思うにこの婚約はレオンが「公爵家という権力」の後ろ盾を必要としている間のみ、一時的なもの。そう考えると納得がいくのである。もしくは俺の名声を王家があてにした結果の婚約。どちらにせよ、こちらの利益などはない。

普通ならば「王族の婚約者」という名誉自体が利益だと考えるだろう。だがハッキリ言って俺には「王族の婚約者」というネームバリューなど不要。そんなものなくともすでに十分地位も名誉も持っているし、実力もあるのだから。

ならばこの婚約を黙って受け入れてやる必要がどこにある?

そして、俺は運のいいことに、前世の記憶を取り戻した。その記憶は俺の考えに自信を与えてくれた。訳も分からず嫌だと思った俺の勘は正しかったのだ。レオンは最初から「関わらないほうがよい相手」だった。レオンはアスナを思い出させるうえ、ゲームの攻略対象。ピンク頭が現れれば、婚約者である俺を裏切り断罪する、鬼門なのだ。

色々な事情と思惑により仕方なく婚約はしたが、かといってそれを前向きに継続してやる必要はない。

こうして俺は断固とした意志でレオンを避けて避けて避けまくった。「腹が痛い」と茶会を断り、パーティーでは「遅刻」「早退」のダブルコンボで断固としてエスコートを拒否。

勿論親からも王家からも苦情は入ったが、こう言ってやった。

「文句があるなら俺を廃嫡すればいい」

「不満ならば婚約解消してくれてかまわないのだが?」

これは強がりでもなんでもない、完全に俺の本音だ。親も王家もそれが分かったのだろう、黙ってひきさがった。向こうには廃嫡も婚約解消もできない事情があるからな。

実のところ、それには「王子本人が俺に嫌気がさして婚約解消を求めて来るだろう」という目論見もあった。しかしレオンは何故か俺のこの不敬ともいえる態度を黙認し、婚約解消を言い出さなかったのである。

こうして俺は、王子の「形ばかりの婚約者」としてこの10年を好きにやってきたのだった。

が、それでも接触を避けられない時が来てしまった。学園に通うときが来たのだ。

15歳から18歳までの全ての貴族子弟は学園に通うことが義務付けられている。これまでは家庭教師を口実に学校へ通わずにいたが、これからの3年間だけはそうもいっていられない。

俺は学園に来てほぼ10年ぶりにレオンと対峙することとなったのである。

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    入学式をさぼることはできなかった。なぜなら、残念ながら俺は学年総代。入学式で祝辞を読まねばならないからだ。本来なら王太子がその学年にいる場合は王族が祝辞を読むのが常。しかし、俺は全教科満点の上、王子の次に高位。さらには俺の異常なほどの神童ぶりは知れ渡っていたため、例外的に俺が祝辞を読むこととなったのだ。全く、学園も余計なことをしてくれた。例外になどしてくれる必要はなかったのに。しかしそうと決まった以上俺にさぼるという選択はない。面倒だが、トップとしての義務ならば果たす。それが俺の矜持だからだ。「総代、アスカ・ゴールドウィン」名を呼ばれ壇上に向かう俺に、多くの好奇に満ちた視線が集中する。俺はほとんど公の場には顔を出さない。パーティーにも最低限しか出ず、それもすぐに引っ込むという徹底ぶりだ。従って、俺の名だけは知っていても顔を見るのは初めてというものが多いのだ。「まあ!なんて素敵な方なの!」「ほら、伝説の妖精姫の……」などという声が、ため息とともにあちこちから聞こえてくる。5歳で既に美の片鱗を見せていた俺だが、15歳になった今はまさに「美少年」「端麗」という言葉がふさわしい男に育っていた。父も母もがっしりしたタイプではないので線は細い。しかし剣術訓練や恵まれた資質により引き締まった筋肉としなやかな身体を持っている。背は年齢にしては少し低めではあるが、それでも女性よりもはるかに大きい。容貌に関しては言わずもがな。あの伝説の「妖精姫」の繊細な美しさと、父から引き継いだ怜悧な美貌の絶妙なミックス。艶やかな漆黒の髪を片側だけ編み込みにすることで、特徴的な黄金色の瞳がより強調されていた。自分で言うのもなんだが、いっそ近寄りがたいほどの美貌なのだ。親しみやすく見せる必要などない。俺は誰ともなれ合うつもりはないのだから。集まる羨望のまなざしの中、ひときわ強い熱を感じた。ピリピリと突き刺さるような視線。その持ち主は……分かっている。最前列のあの眩しい金色……そう、俺の婚約者様だ。頬に焦げるような熱を感じながら通り過ぎ、壇上へ。上に立つとさらに顔が良く見える。レオン・オルブライト。 久しぶりに彼を正面から見て驚いた。金髪と黒髪という違いはあれど、レオンが前世で俺をさんざん振り回したアイツにそっくりな顔になっていたからだ。だが、レオンがアイツではないように、俺

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   学園にて2

    なんとなく感傷に浸っていれば、そこに馬鹿みたいな声を上げながら、派手な女がやってきた。「アスカ様〜♡ 今日のお茶会、もちろん来てくださいますよね?うふふ。特別な趣向をご用意しておりますのよ?」こいつは確か家が商会をしているとかいう男爵令嬢だ。金にものを言わせて爵位を買ったという噂の成り上がり。豪華な衣装を着ているが、話し方も素振りも下品そのもの。権力にこびへつらい、下の者には辛く当たるタイプだ。実際、こいつが侍女を蹴倒しているのを見たことがある。まさに俺の大嫌いな「女」を具現化したような女。女は甘えたように鼻にかかった声でわめきたて、図々しくも俺の腕にしがみつこうとしてくる。せっかく少しいい気分だったのに、台無しだ。俺は軽く一歩引くことでしがみつこうとした女の手をさりげなくいなし、冷たく吐き捨てた。「ふん、貴様なんぞ知らん。この俺がなぜ貴様の下らぬ茶会になんぞ行かばならんのだ?女、不快だ。俺に触れる許可を出した覚えはないぞ。わきまえろ」容赦のない言葉含まれた明らかな侮蔑と拒絶。それを聞いて、居合わせた周りのやつらがきゃあきゃあと騒ぎ出した。&n

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   学園にて1

    入学から二か月。剣術の授業の後逃げ遅れた俺は、あっという間にクラスメートに囲まれてしまった。「アスカ様、今日も素晴らしかったです!」「流石ですわあ!希代の天才だというのは本当ですわね!!完璧ですわ!」「素晴らしい剣筋だ!あの域に達するにはどれほどの修練を積まれたのですか?!」全く、相も変わらずうるさいものだ。こうも目をハートにしてくる意味が分からない。俺は彼らに冷酷といっていいような対応しかしていないのに、こいつらはマゾなのか?「当然だ。貴様らごときが俺を称えるなど一万年早いぞ?」ニヤリと笑いながら軽く顎をしゃくってみせると、取り巻きどもは嬉しそうに顔を輝かせた。だから何故これで喜ぶ?こいつら、おかしすぎるだろう。俺が戸惑うのはこういうところだ。ここの女は俺が知る前世の女たちとは違いすぎる。なんというか……俺に対してあまりにも好意的すぎるのだ。俺のこの「美しい」と言われる容姿のせいか?いや、前世の俺だって容姿は悪くなかった。優しくしているわけでもないのに、いつまでも好意的なわけがわからない。男どもも俺を妬むどころか羨望の眼差しで褒

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