登入グレンの魔力が溜まるまであと2分をきったがカイルにしてみたらこの時間は非常に長く感じた。
腕の筋肉が痙攣しすぎて既に感覚が無くなっていた。 「あともう少しだけ持ち堪えろ、騎士団の団長。あと少しでこの悪夢を終わらせてやるよ。」 「たの…むっ!」 しかし、黒い根っこは時間が経つに連れて再生するスピードを上げてくる為どんどん追い込まれていくのだった。 だめだ…追いつかない! そう思った時、カイルの頭の中で声が聞こえた。 「あんたって、すぐ諦めるよね。なっさけないなー!」 その声は綺麗な声であるが口が悪く少し男勝りな感じがした。 そして頭の中でその声の主を連想させた。 …エミル! 「あんたまた親に逆らったのかよ?」 目の前にいるのは俺の昔からの腐れ縁で親友の女の子。エミル・ウォーマリン。 明るめの綺麗な水色の髪をした短髪の少女。服は露出が目立った半袖のTシャツにショートパンツを履いていた爽やかな感じだった。 「うるせーな。あんな親は親じゃねーよ。毎日仕事仕事で俺の事なんかどーでも良いと思ってる癖に家にいる時だけ親づらするとかありえないだろ。」 俺の家はちょっとした金持ちの家で父も母も共に魔法関係の職に就いていた。 それはエミルのも同じ悩みを持っていて2人はその裕福な家庭を持つものの悩みが一致したのもあり、仲良くなったのだ。 「それはあんただけじゃないだろ?それに今回はあんたが学校サボったから怒られたんじゃねーか。」 「そんな事、別に学校行かなくても俺は俺のままで生きていけばいいんだよ。」 「へー、あんたみたいな知識もない男がこの魔法社会で生きていけるとでも?」 「学力じゃねーよ!俺はいつか騎士団に入団して敵を倒しまくって戦績を上げてやるんだよ!」 「あははははっ!!あんたみたいな弱い男が騎士団に入れるわけないだろ?」 その時の俺は確かに弱かった。当時は剣は良くても神級魔法の引き出し方が分からなかったため魔法実技ではいつも最下位だった。 一方エミルは学力優秀、魔法実技じゃ彼女に敵うものは男子でも居なかった優等生だった。 そんな彼女を俺は羨ましかったんだろう。いつも挑発していた。 「うっせー!いつかお前も超えてやるよ!」 「あーそう。じゃあ今すぐ超えて見せなさい?」 「あー、やってやるよ!」 そう言っていつも剣の勝負をするがいつも負けてばかりだった。 「くそー!また負けたぁ!」 カイルは仰向けになりながら悔しがった。 「まだまだね。けど、カイルは剣の腕上げたじゃねーか。魔法はイマイチだったけど。」 「ふんっ!そーやって見下してろ!俺は諦めねーぞ!絶対に騎士団になって見返してやるよ!」 「見返すね。…じゃあ、賭けをしない?」 するとエミルは俺が寝転がってる横に腰掛けた。 「もし、あんたが騎士団に入らなかったら私はあんたを殴る。」 「なっ、殴る?」 「うん、けどその変わりもし騎士団に入ってあんたが業績を上げて団長になれたらさ…私も騎士団に入れて欲しいな。」 この時、エミルは頬を赤くしていた。 「言われなくてもお前は一緒に来てもらうつもりだぞ?」 「へっ!?ちょっとそれどういう…」 「そんなもん、成長した俺の姿をそばで見てもらう為に決まってんだろ。」 カイルの一言でエミルは一瞬目を大きく開けたが次の瞬間吹いて笑った。 「プッ!…あはははっ!やっぱりあんたは面白いわ。…いいわ、その時は嫌ってほど見てあげるから。期待してるぞ。」 「ああっ。」 2人がこの会話をしてる時は夕方で夕日が2人の姿を輝かせていた。 俺とエミルは家にいる時以外はずっと一緒だった。 親からの愛情をあまり受けたことがない俺にしたらエミルは俺の家族みたいなもんだった。 だけど、そんな日は長くは続かなかった。 「エミル。おまえ、最近エリオン家のせがれと仲良くしてるらしいな。」 突然エミルに問いかけるエミルのお父さん。青髪でメガネをかけ前髪がきっちりと整えられた40前半の男性だった。 「急に何?私が誰と仲良くしようと関係ないでしょ?」 父の問いかけに反抗的な態度を取るエミル。 「別にそんな事言ってる訳ではないだろ。ただ、友達はもう少し慎重に選んだ方が良いんじゃないのか?ましてや、あのエリオン家のせがれと……」 俺の親とエミルの親の仕事は商売敵の様な関係らしくあまり良好な関係ではなかったらしい。 エミルの親は俺の家名を口にしただけで嫌な顔をした。 「お父さんな、エミルには幸せになって欲しいんだよ。お前は将来ヴィアーランス家の長男と見合いさせ幸せな生活を送らせたい。」 「嫌よ!そんなの。どう考えてもこの家の利益を優先して私を利用しようとしてるだけでしょ!?それに私は愛のない結婚なんてごめんだから!」 エミルの父は呆れてため息をついた。 「じゃあ、エリオン家のせがれには愛があるっていうのか?」 「えっ!そ、そんなんじゃな…」 突然変な事を言われて戸惑うエミル。 「ほらみろ。お前のその様な半端な考えがいけんのだよ。…今からでも遅くはない。エリオン家のせがれとは縁を切れ。でなければお前をイフリーク以外の学校に転校させる。いいな?」 「い、嫌よ!なんでお父さんにそんな事決められなきゃいけないの!?そんなのおかしいよ!」 エミルはそう言うと走って自分の部屋に戻った。 「何にも知らないくせに…何にも…なん…に…も…」 次の日から、エミルはあまりカイルと話す事が少なくなった。 昼休みも他の女の子と一緒で学校が終わると1人で先に帰った。 俺はなんで急に話する事が減ったのか分からなかった。 もしかしたら俺が何かいけない事したのかもしれない。そう考えると話しかける事が怖くて俺もエミルに喋りかけなかった。 学校が終わってからは1人で剣の素振りや魔法の特訓を欠かさずやっていた。 エミルが喋りかけなくても目標は変わらない。ただ、エミルを超える為に。この時はそう思ってた。 「はぁ、はぁ、俺の影魔法はどうやら他の人のやつよりちょっと違うらしいな。こうやって対象の敵の影が自分の影と重なるまで範囲を広げて。」 するとカイルの影は目の前にある木の影と重なるくらいまで範囲を広げた。 「そして俺の影に入った対象の敵は触れなくても俺が剣を振る事で…木は真っ二つって事だな。」 カイルが剣を振ると目の前の木は横に切られ、そのまま倒れた。 「おぉっ!我ながらこの魔法は結構使えるぞ!よし!これを強化してエミルを…」 「私が…何?」 するとカイルの後ろにはエミルが立っていた。 「エミル…何だよ、急に。」 「いや、ちょっとあんたの様子見に来ただけ。凄いじゃない、その魔法。」 「ちぇ、見られてたかよ。まあこれが完成したのもお前っていう目標があったからなんだけどな。」 カイルが悔しそうにふてくされてるのをエミルは笑って。 「ぷっ、言ってくれるじゃんチビカイルのくせに。」 「なっ!何だと!お前今に見てろ!俺はお前の身長も超えてみせるからな!」 「えー、背の高いカイルなんて想像しただけで…笑っちゃうわ。」 そう言ってエミルは爆笑しながら走って逃げた。 「こ、このヤロー!待てエミル!」 カイルも怒りながらエミルの後を追いかけた。 「あはははっ!やっぱ背の低いカイルは足も短くて走るの遅~い!」 「うっせー!俺の影魔法でぶった切るぞ!」 「女の子に暴力振るうのか?カイルほんとサイテー。あはははっ!きゃっ!」 前を見ずに走っていたエミルは足元にあった木の根っこにつまずいてこけた。 「何やってんだよエミル。足見せてみろ。うわっ、血が出てんぞ。」 「へ、平気だよこんなの。唾でもつけたら治…って何してんだよ!変態!」 「何って、血を吸ってやってるんだよ口で。」 「そんな事自分でするからやめてよ!もう!」 「何怒ってんだよ…ったく。…ほら、乗れよ。」 「え?」 「おぶってやるから乗れよ。足怪我してんだから当然だろ?」 「でも、さすがにそれは…」 「いいから早く乗れって!」 仕方なくエミルはカイルの背中におぶらせてもらった。 その時エミルは心の中でこう思っていた。 何この背中?小さすぎて乗り心地悪すぎ。でも、何だか温かくて落ち着く。何でだろう…カイルといると安心する… 「んっ?なんか言ったか?」 「べっ、別に!!ほら、さっさと家まで連れてって!あんたのちっこい背中におぶってもらうのも結構疲れるのよ!」 そう言ってエミルは誤魔化した。 家に帰る途中、エミルが急にカイルに向かって。 「あのさ、カイル。最近私あんましあんたに話しかけなかったけどごめんね。」 「何だよ急に。てか、それって俺がなんかしたから怒って喋んなかったんじゃねーのか?」 「あんたがした事で怒った事なんか…あー、結構あるわ。けど、そんな事で話さなくなったりなんかしない。…私のお父さん知ってるでしょ?」 「あー、あの気難しい人?知ってる知ってる。…もしかして、その人に俺と喋るなって怒られたの?」 「そう、私らの親ってお互い嫌い合ってるから子供が仲良くしてるのが気に食わないみたい。それでお父さん、私とカイルが仲良くし続けるなら私を他の国の学校に転校させるって…ごめんね、あんたは何にも悪くないのに。」 エミルはカイルの背中にうずくまりながら涙を流した。 それに対してカイルはまっすぐ前を向きながら。 「それはお前が悪いわけじゃないだろ?じゃあ、そんな中で今日は何で俺の前に現れたんだ?」 「家にいても暇だし、やっぱりカイルと一緒の方が楽しいから。」 「そっか。だよな、親の都合で親友の仲を裂くのはやっぱり間違ってるよな。俺もお前がいない日は退屈で面白くない。転校なんてさせない。お前がいるこのイフリークが好きだから。」 「私も、カイルがいるイフリークが好き。この街から離れたくない。」 そう言ってエミルはカイルの背中を締め付ける力を強めた。 「カイル…私、ずっとあんたに言いたい事が…」 「出てきたらどうなんだ?いるのは分かってる!姿を現せ!」 「えっ?」 突然辺りを見渡しながら怒鳴るカイル。すると木の陰から複数の黒い服を着た集団がカイルの周りを囲んだ。 黒い服を着た集団は全員男で顔がバレないように仮面を被っていて、手には短刀を握っていた。 そしてその中のリーダー格らしき人物が前に出てきた。 「エリオン家のせがれとウォーマリン家の一人娘だな。まさか敵対してる家系同士の子供が一緒にいるとはな。」 「そこを通せ!」 「通すわけないだろう。こんな大物の子供が2人もいるんだ。誘拐してたんまり金を要求してやるよ。」 パチンッ! 「ヤレ!」 リーダー格の男が指を鳴らした瞬間、後ろにいた1人の男性がカイルの腹を蹴飛ばした。 「ぐっ!」 「カイル!うっ!何するの!」 その衝動でエミルはカイルから離れてしまい、そのまま男はエミルを身動きできないように腕を掴んで拘束した。 「エミル!てめえらエミルから離れろ!」 カイルは男たちを囲むくらいまで影を広げて剣を振った。 「グワッ!」 するとエミルを拘束している男の腕に切り傷が入り、思わず男はエミルを離した。 他の男たちも傷を負ったが致命傷までにはいかず、全員腕に切り傷が入る程度の軽傷だった。 「くそっ!まだ威力はないか…エミル!」 「カイル!」 男から離れたエミルはカイルの元へ走った。 「させるか!止まれ!」 「うっ!何コレ!…動かないっ!」 するとリーダー格の男が止まれと言うとどういう訳かエミルの動きが止まった。 「さっきこいつに腕を掴まれた時に仕掛けた拘束魔法だ。これで俺の命令には逆らえないぞ。」 「エミル!くそっ!」 カイルが再び影を広げて剣を振ろうとするとリーダー以外の男がカイルの腹を殴ったことで広げた影が無くなってしまった。 「がはっ!」 カイルはあまりの痛みに地面に倒れてしまった。 「ふん、所詮子供。俺たち大人に敵うわけないだろう。おいお前ら、この2人を連れて行け!」 リーダー格の男の言葉でカイルとエミルは男たちに連れて行かれた。 次に気がつくと俺とエミルは地下牢のような所に閉じ込められていた。 暗くて風の通りが悪く息苦しかった。 隣にいたエミルはすぐには起きなかったがしばらくするとしんどそうに目覚めた。 「こ、ここは?」 「気がついたか。俺にも分からんが俺ら2人を人質にして親に金を要求すると考えられる。」 「じゃあ…もし、親が拒否すれば?」 「その時は俺ら2人は死ぬだろう。」 カイルがそう言うとエミルは一瞬曇った表情をした。 「もう、ダメかもな俺ら。親にも愛されず、学校でも特別待遇の様に周りから変なプレッシャーを受け、最後はこんな誘拐犯に捕まって殺されて…もうこんなの嫌だ…もう死んだ方がマシだ!いっそ殺してくれ!」 カイルは死ぬかもしれない恐怖によって今まで我慢してきた不満を叫びまくった。 この時の俺は本当に死を覚悟した。死んだら楽になると考えてた。 パンッ! 頬に激しい痛みが走った。 この痛みはエミルが俺にビンタをしたからだった。 「あんたってすぐ諦めるよね?なっさけない!死ぬなんてダサい言葉で何でも片付けようとすんじゃねーよ!確かに今の暮らしは辛いことばかりだけど、まだ私たち子供だから、…きっと、大人になれば自由になれる…だから…死ぬなんて言葉で逃げるなよ…頼むから…」 「エミル…」 エミルはカイルの両肩を掴み、顔をカイルの胸へと近づけ涙を流した。 「…そうだな。大人になれば自由だよな。こんなとこさっさと出て、2人で自由を手にしよう!」 「カイル。…うん!」 エミルは腕で涙を拭い、ニッコリと笑顔を作った。 「しかし、この鉄柵をどうするか…剣はあるんだがこれじゃあ切れ…剣がある?…そうだ!」 するとカイルは影を広げて剣を振ると鉄柵がポキポキと切れて、ちょうど子供が通れる様な穴が開通した。 「あんたの剣って便利ねえ。」 「なんか液体や気体以外の物質なら何でも切れる事がお前がいない間に分かったんだよ。よし、行くぞ!」 2人は鉄柵の間をくぐって外に出ると、階段があったのでそれを登って上の階に行こうとした。 外に出ると案の定黒い男の集団が待ち構えていた。 「おい、お前らどうやって牢を…うがっ!」 カイルは走りながら影を広げて前にいる男たちを影で囲み、剣を振ると男たちの体に切り傷が出来た。 しかし、傷が浅いため再び体制を整えて襲ってきたがこれをエミルが出した水の砲弾を男たちの急所へ的確に当て次々に撃沈させた。 「やるじゃねえか、エミル!」 「オトコは弱点多くて楽勝ね。これなら楽に突破出来そう!」 そして、俺たちは最後の外への扉へ到着するが外にはリーダー格の男に加え、それよりも強そうな大柄な男が待ち構えていた。 「全く、仕事中に騒がしいねぇ。君たち、痛い目を見る前に早く牢に戻りなさい。」 「誰が戻るか!てめえら倒して俺らは自由を手に入れる!」 「自由ねぇ。君らの家にはお金があるんだからそれだけでも十分幸せじゃないか。一体何が不満なのかな?」 「お金があるのと幸せはイコールじゃない!そんな事しか頭にない親から決別する為に、私たちは知識と魔力をつけて自立する。これが子供の仕事よ!」 「なるほどな。でもね、世の中には君たちの言う仕事を味わえない悲しい人生を送る人だっているんだよ。俺みたいにね。」 リーダー格の男が仮面を外すと左目は殴られたのか潰れていて顔には爪で引っ掻かれたような傷が所々にあって髭の生えた中年の男だった。 「俺の様な金もない、親から暴力を受けながら育った奴にしたら君たちは羨ましいよ。人間はある一定の暴力を受ければ死ぬんだから…君たちにはその死を味わった事があるのかな?」 リーダー格の男は魔法で地面から棘のついた鉄の鎖を出し、エミルとカイルに向けて飛ばした。 カイルはその鎖を剣で弾き、自分の影を広げて鎖を切った。 しかし、鎖は一本だけではなく5、6本あったため全部は切れず、残った鎖がカイルを襲った。 「危ない!」 エミルが水で作った蛇で鎖を弾き、カイルを守った。 「サンキュー!エミル!」 そしてカイルはリーダー格の男と大柄な男を囲むまで、影を広げた。 「思いっきり切ってやるよ!」 そしてカイルは剣を思いっきり縦に振った。 「ぐああああああ!!!!」 「ぶっ!」 リーダー格の男の左腕は切断され、大柄な男は体一直線に切り傷が入り、そこから血が吹き出た。 「うげっ!人の血を見るのは初めてだから気持ち悪い…」 「何ビビってんだよ!こいつらは誘拐犯だからそんな事気にしなくていいのよ!」 エミルはそう言って両手に水色の魔力を溜め込んだ。 「ちょっと凄い魔法使うわよ!雨ノ神、その水の槍で大地の渇きを癒せー」 そう唱えるとエミルの手に溜め込んだ魔力から水の槍が次々とリーダー格の男と大柄な男を襲った。 その威力は凄まじく、周りに飛び散った水しぶきでさえ頑丈な壁にヒビを入れるくらいだった。 それをまともに食らった2人はタダでは済まないだろう。 「それは、水魔法の最上級魔法!しかも詠唱付きで…」 「成長してるのはあんただけじゃないのよ!私だって勉強してるんだよ!」 いや、あんたのその魔法は普通高校で学ぶやつだから…やっぱりこいつは化け物だわ…。 この時にこいつは恐ろしいと再び確信した俺だった。 「よし、じゃあ帰るか。やっとここから帰れるぜ!」 俺がそう言って帰ろうとして後ろを振り向くと大柄な男がいつの間にか血まみれになったエミルの頭を掴んで持ち上げていた。 「あっ…がっ、…」 「グフフフ、ヤッパリ女ハ血マミレガ似合ウナ。」 大柄な男は汚い笑い方で鼻息を立てた。 「おい!てめえ何やってんだこのヤロー!!」 影を広げて思いっきり剣を振った。 グシャっと肉が切れる音はしたがどういう訳か大柄な男の切り傷が綺麗さっぱり再生した。 「俺ニ剣ハ効カネー。俺ハ再生魔法ノ使イ手。ンデー。」 大柄な男が一瞬でカイルを殴り飛ばすとカイルは壁に衝突した。 「俺ハ接近戦ヲ得意トスル!フンーーー!!!」 大柄な男はそう言って鼻息を荒くした。 「カ…イ…ル…」 エミルは力細い声で言うとそのまま気を失った。 俺には…力が…ない。くそ、こんなんじゃ自由は手に入らない…こんなんじゃ…こんなん…じゃ…。 壁に衝突したカイルは身体中痛くて立ち上がれず、頭の中で嫌な事が思い出されていた。 「あんたって、すぐ諦めるよね?なっさけない!」 すると頭の中でエミルの声が聞こえた。 エミル… 「大人になればきっと自由になれる!だから…」 ……。 「私も、あんたがいるこのイフリークが好き…。」 そうだ。俺は諦めない…諦めるな!カイル・エリオン!何が自由が手に入らないだよ!そんなもん自分で掴み取るしかないだろ! そして大好きなイフリークで、エミルと一緒に騎士団に入って側にいてもらう。 これが俺達の自由だ! 「ぐっ……待ってろよエミル…俺が必ず…助け出すから…」 カイルは痛みを堪えながらゆっくりと立ち上がった。 目を開けるとカイルの黒い瞳はどういう訳か赤色に変わっていた。 「ヌ?何ダ…ソノ目ハ。何ダ、ソノ刀ハ?」 カイルの刀はどういう訳か黒く変色しているが本人は気づいていなかった。 そして、カイルは影を広げていないにも関わらず剣を軽く振った。 するとエミルの頭を掴んでいた腕がスパンと切り落とされ、エミルは地面に落ちた。 「何ッ!?」 「よくもエミルを!許さねえ!」 するとカイルはいつの間にか大柄な男の目の前に立っていた。 「イツノ間ニ!?グワァァァァ!!!」 そしてカイルは大柄な男を再生が追いつかない速さで切りまくった。 ズタズタに切られた身体は再生するのを止めてしまい、大柄な男の意識は盲ろうとしていた。 「アッ…アガァ……」 「はぁ、はぁ、お前を…喰ってやる!」 「ヤ、ヤメ…ヤメロぉぉぉぉぉお!!!!!!」 カイルはそう言うと口角を吊り上げ、そしてカイルの剣から出てきた影が大柄な男を飲み込んだ。 その後、俺は気を失ったが気がつくと俺は自分の家のベッドで寝ていた。 あの後俺とエミルは警察に助け出されたらしく、俺たちを誘拐した犯人達はそのまま全員連行された。 家に帰ると親に初めてビンタされたが、その後は強く握りしめながら泣いていた。 初めて俺はこの時、親からの愛情というものを知った。 エミルも怒られたのかな?そして俺と同じこと思ってるのかな?そんな事は分からないけど心配だ。 しかし、一番強そうな大柄な男が見当たらなかったのが謎だな。俺は壁に衝突してからの記憶がないし。 …まあいいや、エミルと俺は無事だったし明日から学校でまた話とかしよう。 痛ててて、壁にぶつかったせいで身体中めちゃくちゃ痛い! そして俺はそのまま疲れたから寝た。あと、早く明日になってエミルに会いたいな。 次の日、俺は学校に着いてからエミルの席を見たがまだ来てなかった。 いつもなら俺よりも早く到着するのに珍しいなとこの時は思っていた。 チャイムが鳴り、先生が入ってきたのにエミルはまだ学校に来ていなかった。 「はい、みなさんおはよう。今日なんだが、先に悲しい知らせがある。」 「うちのクラスにいたエミルなんだが、彼女は親の仕事の都合上南の国シルフの学校に転校されたそうです。」 その先生の言葉に、俺は一瞬思考が追いつかなかった。 「エ、エミルが…転校…。」 嘘だ…嘘だ嘘だ…俺は信じない!信じたくない!あいつがこの国から居なくなるなんて知りたくない! 嫌だ!なんで…なんで俺の前からいなくなるんだよ!俺が何をしたって言うんだ! そして気付いた。エミルは言っていた。 「俺と関わったら他国の学校に転校…」 「どうしたんだ、カイル?」 「俺のせいだ…俺のせいなんだよぉぉぉ!!」 そして俺はそのまま教室を出てしまった。 俺は教室を出てからいつも修行している場所に座っていた。 「あー、早くも俺と一緒に騎士団に入るって夢が無くなったな…くそ!俺はこれから、何を目標にしたら良いんだよ…」 カイルは空の雲をなだめながらブツブツと言っていると後ろから女性らしき人が近づいてきた。 「エ、エリオン君!」 その人はエミルと仲の良かったハンジという茶髪でぱっちりした目が特徴の女の子だった。 「ハンジ…何の用だ?」 「ごめんね、エリオン君。私、知ってたの…エミルがこの国から出て行くこと。」 「何だと…何で言わなかったんだよ!」 俺はその時気持ちがだいぶ荒れていたので思わずハンジに怒鳴ってしまった。 「ご、ごめんなさい!でも、言うなって言われたの。エミルに。」 「そ、そうなのか…すまん。」 「ううん、私も罪悪感はあったの。…それで、これ。」 するとハンジはポケットから一枚の手紙のような物をカイルに渡した。 「これは?」 「エミルがエリオン君に書いたメッセージよ。読んで。」 カイルはそう言われて手紙を広げた。 カイルへ お前とはいつも一緒だったな。そりゃ小さい頃から同じ境遇で育ってきたんだから気も合うし仕方ないよな(笑)でも急にごめん。私の親とカイルの親は昔から犬猿の仲だからあんたとあんまり喋るなって親に言われた。本当は私辛かったけどカイルと離れるのはもっと辛いと思った。けど、結局は転校する事が決まってたらしくてね、だから転校する前日にカイルに会いに来た。やっぱあんたは凄い。私なんかすぐ追い抜かれそうだ。けど、私を追い抜いたからって良い気になるなよ。これからはあんたは騎士団に入って私を守るって言った事の様に私の大好きなイフリークをこれからも守って。今更って感じもするけど、私はあんたの事が…好きだ! エミルより その手紙には所々に水滴が落ちた跡があった。 そして、これを読み終わった俺はハンジがいるにも関わらず号泣した。 そして、決意した。 俺はこのイフリークを死んでも守る!あいつが愛したこのイフリークを…必ず守ってみせると。ライクとニケルは城の裏側にある人気の無い場所へと移動した。 後ろから尾行していたロゼアは壁に隠れながら、ライクとニケルが話をしているのを覗き込んでいた。 …側から見れば只のストーカーにしか見えない。 壁の向こうではライクから先に声を掛けていた。 「で?どうしたんだよ。さっきも、お前一言も喋らなかったし。」 先程の会話でも、ニケルは浮かない顔をしながらグレンやグロードの話を聞いていた。 その理由は。 「…僕達とグロードさんの関係って、これからどうなるのかなと思って。」 「グロードとの関係?」 何を言ってるのか分からないライクだが、ニケルはそのまま説明を続けた。 「大恩あるグロードさんの事を、僕はずっと亡くした父親の様に思ってた。本当の父親じゃ無い事は分かってる。だけど、まるで親子みたいな今の関係性が僕は好きだったんだ。」 「けど、生き別れた本当の息子であるグレンが戻って来たら、もうそんな関係には戻れないのかなって…。」 ニケルの悩み。それは本当の息子であるグレンが戻ってきた以上、自分達はグロードの息子の代わりにはなれないという事である。 また今までの関係性も変わってしまい、もうグロードに相手にされないのでは無いかという不安もあった。 「勿論、グレンと再会出来た事は僕も嬉しいけど。…やっぱり良いな。本当の親が生きてるのって。」 月の民殲滅戦で両親を亡くしてるライクとニケル。特にニケルは子供の頃は甘えん坊であった為、親への未練はライクよりも強い。 親の居ない2人にとってグロードは父親同然。しかし、本当の父親になる事は出来ない。 そう思うとニケルは、少し寂しく感じていた。 それに対してライクは。 「ニケル…お前の言う様に、あいつは俺達の父親じゃねえし、俺達があいつの息子代わりになる事も出来ねえ。」 「……」 「でもよぉ、俺達とグロードとの関係性は何も変わらないと思うぜ。」 「…え?」 落ち込み俯いてたニケルはライクの顔を見た。 「俺もあいつの事は父親みたいに思ってたけど、どっちかと言えば師匠に近い感じだな。それに、あいつは面倒見が良くて、いつも丁寧に俺達の修行に付き合ってくれた。」 「優しい奴だからさ、例え息子が居ようと俺達との師弟関係まで変わる事はねえよ。」 「ライク…
魔導兵器ラウスを倒した事と、北の軍事兵器もグロードが破壊した事により、北の大国が今後攻撃してくる事は無いだろう。北の大国は多くの軍人と軍事兵器を失った事により、いずれ国の財政が崩れ破綻に追い込まれる事となる。戦う力を失った北の大国ウンディーネは結果的に敗戦国となり、これにより東北魔導大戦は事実上終結する事になる。しかし東の大国も無傷という訳にはいかず、今回の魔導兵器ラウスとの戦闘によって沢山の死傷者が出ていた。それだけではない。東の大国の主戦力が戦っている間、手薄になった城内にて更なる事件が起こってしまう。ノーム王の暗殺。戦いが終わった後、城内へ行くとそこは戦場と同じくらい凄惨な状況となっていた。医療班の人も殆どが殺されており、警備の者達に関しては、肉体が残っていれば運が良かったと思えるくらいバラバラに殺されていた。一体誰が実行したのかは不明。しかし、こんな事をするのは1人しか居ないとグロードは気付いていた。「…ベリエル!」見たところ胸部を刺殺(しさつ)されて殺されている様に見えるが、医療知識が豊富なグロードはノーム王の身体を少し触れただけで他の殺害方法で殺されたのだと判断する。「…内臓が全て潰されている。まるで身体の中をかき混ぜられたかの様に……許せない。」あまりにも残酷な殺し方をされている為、グロードは沸々と怒りを覚えた。この場には他にグレン、ミーナ、エミル、ライク、ニケル、フィナ、ネル、そして八握剣(やつかのつるぎ)のギンジが居た。カイルとロゼアとアルバスは意識を取り戻したが、戦いで受けたダメージが大きく、今は休んでいる。他の八握剣(やつかのつるぎ)も同様に、命に別状は無いが大掛かりな治療が必要な状態である為、カイル達同様にこの場には居なかった。ノーム王が殺されている姿を見て先に悲しんだのは、当然八握剣(やつかのつるぎ)のリーダーであるギンジであった。「ノーム王…くっ…何で、こんな事に!」ギンジは両手を握りしめ、悔しさと悲しみで顔を横に向きながら涙を流していた。王の懐刀である八握剣。そのリーダーともあろう者が他のメンバーを救えず、更には王の命さえも守る事が出来ず、ノコノコと生き残ってしまった。ーー俺のせいで…役立たずにも程がある!しかし、それに対してミーナが。「ギンジさん。自分のせいだなんて思わないで下さい。皆んな
そして更に4年後。ラウスは18歳になり、ルーファスは9歳となる。ラウスは高校3年の学年となり、全ての成績において優秀な成績を収めていた。幼い頃から教えられた事は殆ど完璧にこなすその姿を見て、いつしかラウスは神童と呼ばれ将来を期待される様になる。しかし、ラウスは魔法を仕事にする道は選ばずそのまま農作業を営み続ける道を選んだ。当然教師はラウスを説得するもキッパリと断った。自分の将来の夢よりも、ルーファスの側にずっと居る事の方が大事だったからである。こうして学生の頃はそれなりに有名だったラウスは、突如として公の場から姿を消したのだ。一方、ルーファスもラウス同様に成績が良かった。ラウスが合間を縫って勉強を教えているのもあるが、どうやらルーファスも少し教えればすぐ覚える事が出来るのだろう。「(流石は俺の弟だな。)」勉強を見ていたラウスは心の中でルーファスを誉めていた。ある日、ルーファスはこの家に元々住んでいた老夫婦の写真が飾ってある仏壇を見て質問してきた。「兄さん。この人達って、僕達とはどういう関係なの?」あの頃、まだ赤ん坊だったルーファスはこの家に元々住んでいた老夫婦の存在を知らない。「この人達はね、俺達の親みたいな人だよ。本当の親じゃ無いけど、親のいない俺達の面倒を見てくれた人だ。」亡くなった老夫婦の事をラウスは自分の親だと思っており、ラウスにとっては生きていく術を教えてくれた恩師でもあった。「そーなんだ。…じゃあ、僕達の本当のお父さんとお母さんは?」1番聞かれたく無い質問をルーファスは悪気なく聞いてくる。当然である。ルーファスは親の事を何も知らない為、本当の親が気になるのは当然の事。…そっか、あの時お婆ちゃんはこんな気持ちだったんだ。そりゃ、言いたく無いよね。ラウスはルーファスに聞かれた事により、あの時のお婆ちゃんの気持ちが少し分かった。あの時から親の事はあまり思い出さない様に生きてきたラウス。正直、あまり親の事を聞かれても何て言ったら良いのか分からなかった。只、ラウス自身が抱いてる気持ちとして言った。「…ロクでも無い人達だよ。父親は俺と母親を置いて出て行き、残された母親も親の責任を放棄して出て行った。」まだ子供に言うべき事では無いのだろうが、ついつい自分の感情任せに言ってしまったラウス。「そうなんだ。…でも僕、少し会
お母さん…何で帰って来ないんだよぉ…。俺1人でどうしたら良いの?どれだけ待っても帰って来ない母親のヒスイ。既に半日以上待っていたのだが帰って来る気配が無い。ラウス自身、半日以上何も食べていない為、空腹が限界を通り越していた。「おぎゃー!!」泣き叫ぶ弟のルーファス。生後3ヶ月の赤ん坊。お腹も空くし、オムツもしてるから替えてあげないといけない。その他にも、身体を清潔にしないといけない。…どうすれば…。ラウスは寝室で泣いているルーファスの所へ行き、様子を見た。「おぎゃー!おぎゃー!」「凄く泣いてる…こんな時、お母さんどうしてたっけ?」ラウスは普段、母親がどうやってルーファスの世話をしていたのか思い出していた。そしてヒスイが何をしていたのか思い出したラウス。「…まずは、オムツかご飯か。どっちかだけど…嫌だなぁ、オムツの匂いを嗅ぐのは…」それでも我慢してオムツの匂いを嗅ぐラウス。「…多分こっちじゃ無いか。じゃあミルク作らないと。」ラウスは台所にルーファス用のミルクが保管されている所を覚えていた為、そこに行ってミルク粉と哺乳瓶を取り出す。「えっと…先にお湯を温めるんだっけ?」初めての事でどうすれば良いか分からないラウス。しかし、取り扱い説明書があったので、それを見ながら何とか作って哺乳瓶に入れる事が出来た。「よし!後は水で冷まして…よし!」人肌まで冷まし、ラウスはそれをルーファスに飲ませる為、ベッドから起こした。「おーよしよし!ミルクだよ〜。」ヒスイが言ってた様に真似しながら、ルーファスにミルクを飲ませてあげるラウス。ルーファスは勢いよくミルクを飲んでおり、よっぽどお腹が空いていたのが見て分かる。半日、何も食べなければ大人でもお腹が空くに決まってる。「俺も何か食べないと…。」そう言ってラウスは戸棚にある非常食を取り出し、空腹を埋める為にそれらをお腹に詰め込んだ。見たところ、非常食やミルクの量から数日は持つだろうと判断した。しかし、この食料が無くなったらどうしようかと。ラウスはそれが恐怖で堪らなかった。「どうすれば…後、お金だけど。お母さんの貯金でどれだけ過ごせるのか…。」勝手にお金を使う事に抵抗感があるも、生きる為には仕方ないとヒスイが管理してる通帳を確認する。子供では見た事の無い数字に驚くラウスであったが、実際の
真っ暗な暗闇の中。1人の女性が下を向きながら何かを覗き込んで泣いていた。「…ラウス……ルーファス……どうして、こんな事に…。」その女性はヒスイであった。ここは死後の世界であり、この暗闇の空間は死後の世界へ行く前の道。死後の狭間である。ヒスイは死後の世界へは行かず、死後の狭間にある暗闇の空間で家族を見守りながら待ち続けていたのだ。そして現世を見ながら自身の息子達が戦う姿を見て涙を流していた。すると後ろから。「…2人が戦っているのか?」その声の主はヒスイの父親であり、グレンに龍技の真髄を教えた竜の民のドグマであった。後ろからドグマに言われたヒスイは、涙を流しながら振り返る。「…お父さん。」「ヒスイ。…お前も辛いのは分かるが、今の俺達には見守る事しか出来ない。」そしてヒスイの隣に座り、現世で戦うグレン(ルーファス)とラウス。2人の戦いを覗き込む。「信じるしか無い。グレン…いや、ルーファスの事を。そして、あいつの強さを。…きっとあいつが兄を救ってくれる筈だ。」ヒスイはグレン(ルーファス)が生後3ヶ月の時にこの世を去った。ドグマもヒスイが家を出てから、自分に孫が居る事も知らずに30年間虚しく過ごしてきた。しかし、その孫であるグレン(ルーファス)は偶然にもヒスイの父であるドグマと出会い、龍技の真髄を教えてくれた。運命が知らない内に引き合わせてくれたのだ。そして今、ドグマに教えられた龍技の真髄によりグレンは、魔導兵器となり殺戮の呪縛に囚われた兄ラウスを救う為に戦っている。自分の弟子であり、孫でもあるグレンをドグマは信じていた。「(グレン。お前の生き様を、今こそ見せてくれ。)」ドグマの墓前で言ったグレンの誓いに対し、心の中で返答した。信じる事しか出来ないヒスイとドグマは、ラウスとルーファスの行く末が少しでも救われる様に、両手を合わせて祈る。あの世でヒスイとドグマが見守る中、現世ではグレンとラウスの死闘が繰り広げられている。戮力体竜変(りくりょくたいりゅうへん)によって竜人化したグレンは先程とは違い、身体機能が大幅に強化される。自然魔力を体内に取り込む戮力体竜変。それにより身体に現れた竜の鱗は鋼をも上回る強度を誇る。その拳でラウスの胸部を殴る。バコォォォン!!!グレンの拳により、ラウスの硬い胸部は拳大の大きさに凹んだ。グレ
ミーナ達はネルの空間移動でカイルやエミルの救出に向かっていた。エミルはアルバスとロゼアを氷で作った台車に乗せて運んでいたが、その途中で見つけられる。意識を失っていたアルバスとロゼアはミーナの光の回復魔法によって意識を取り戻した。「あれ、ここは…。」目を覚ましたロゼアはゆっくりと目を開ける。「お、気が付いたか!大丈夫か!?」視界に入ってきたライクは心配そうに声を掛け、その声で徐々に意識がハッキリしてきたロゼア。「え…何で…?ライク?」「ああ。俺達は丁度さっき戻ってきた所だ。大丈夫か?」「…心配、してくれてるの?」今まで北の大国では心配される事の無かったロゼア。半分信じられないといった感じでライクに聞いた。「ああ。お前も俺達の代わりに戦ってくれてたんだろ?俺達が不在の中、良くやってくれたぜ。本当に感謝してる!」ライクは笑顔でロゼアに言うと、ロゼアは嬉しさで左目からジワッと涙が溢れてきた。ライクの笑顔を見れて良かったと、安心していたのだ。ネルも同様に、目を覚ましたアルバスに一言声を掛ける。「…僕との約束、ちゃんと守ってくれたね。」「…ごめん。倒す事は出来なかった。」「仕方ない。後はあの男(グレン)に任せよう。」短い会話ではあるものの、ネルは約束を守って戦ってくれたアルバスに感謝した。そして次はカイルの所にも空間移動した。転移した場所でカイルはボロボロの状態で倒れていた。ミーナとニケル。2人の回復魔法を使ってようやく意識を取り戻したカイル。普段タフなカイルであるが、意識を取り戻してもその声はか細く弱々しかった。「…みんな…帰ってたのか?…」「カイル君!エミル、カイル君が目を覚ました!」意識が戻った事を確認したミーナは慌ててエミルを呼んだ。エミルも慌てながらカイルの顔に近づいた。「カイル!」「エミル…良かった…無事だったのか…。」「馬鹿!いつもいつも!自分の事を後回しにして!本当に馬鹿!」ボロボロと涙を流しながらカイルに対して言うエミル。それに対してカイルは一言。「…ごめんな。」そうエミルに言うと、エミルは更に号泣しながらカイルの胸元で泣きじゃくった。「カイル君。連絡してくれてありがとう。今ね、グレンが戦いに行ってるの。」「グレン…そうか。なら、安心だな。」そう言うとカイルは安心した様に目を閉じて眠った
「…ふわぁーーー…今日はなんだか疲れたなー。」 眠さで大きなあくびをするミーナ。 ロフィスの一件の後、グレンとミーナは町の外れにある綺麗な水辺の近くに寝泊まりすることにした。 「けどグレンの空間能力はすごいね。なんでも収納可能じゃん。」 テントや寝泊まりするために必要な道具はグレンの空間能力のポケットから引き出した。 「…そういや、エバルフさんが言ってた事ってほんとかな?」 ミーナはエバルフ達と別れる際に、エバルフからこんな事を聞いた。 昼間 ロフィスを倒した後、エバルフ達はグレン達の方に向かって一列に整列した。 「今回の件に関しては、紅の悪魔祓いの協力で獄
「エバルフさんの悪魔化が…解けたぞー!」 「「うぉぉぉ!!でかしたぞお嬢ちゃん!!」」 エバルフの悪魔化が解けたことで部下たちは喜び叫んだ。 グレンはミーナがエバルフの悪魔化を止めれた事を未だ信じられないのか唖然としていた。 「信じられんな…ただの人間が悪魔化を阻止するなど…」 (まったくだ…てめえですら悪魔化を阻止できた事ねえのによぉ) グレンの悪魔もグレンと同じくミーナの行動を感心した。 「…何てことだ…あの人間の悪魔化を…」 悔しそうな顔をしながらブツブツ独り言のように喋るロフィス。 そして一気に顔の表情を強面に変えて。 「よくも俺達の計画を…3年
「お兄ちゃん!助けてー!」 「待ってろ!すぐ助ける!…くそっ、騎士団より悪魔が多すぎる…」 理由は分からないが突如現れた悪魔の大群は町に現れ、たくさんの人々を殺戮していた。 俺はちょうど騎士団の仕事でこの町にいたので仲間と共に悪魔に対抗していた。 大半の悪魔は倒したはずなのだがどういう訳か悪魔は増える一方でエバルフ達は苦戦していた。 その目の前には妹が悪魔に取り囲まれていた。 「エバルフさん!悪魔が多すぎて我々じゃとても…」 「くそっ、団長がいればいいんだが今あの人は他の任務だからな。どうすれば…」 エバルフが悩んでると妹を囲んでいた悪魔が妹を切り刻もうと爪を振
あの後グレンは一人で帰れそうにないミーナを家まで送り届け、今はこの町のはずれにある裏山みたいなところでパンをかじっていた。 (人の血を見た後によく飯が食えるな。) すると周りには誰もいないはずなのにどこからか声がした。 「…お前に言われたくない。」 誰もいない空間に対し返事をするグレン。端から見ると独り言を喋ってるかのようだった。 (ハハハ!それは違いねえな!てか昨日もそうだったがあの女、ミーナだったか?お前にしちゃ珍しく一人の女をやけに守ってたようだが何かあんのか?) 「…いや、別にない。ただあの女は俺に剣術を教えてくれた俺の師匠の娘だからだ。」 (あー、あのおっ