LOGINグレンの魔力が溜まるまであと2分をきったがカイルにしてみたらこの時間は非常に長く感じた。
腕の筋肉が痙攣しすぎて既に感覚が無くなっていた。 「あともう少しだけ持ち堪えろ、騎士団の団長。あと少しでこの悪夢を終わらせてやるよ。」 「たの…むっ!」 しかし、黒い根っこは時間が経つに連れて再生するスピードを上げてくる為どんどん追い込まれていくのだった。 だめだ…追いつかない! そう思った時、カイルの頭の中で声が聞こえた。 「あんたって、すぐ諦めるよね。なっさけないなー!」 その声は綺麗な声であるが口が悪く少し男勝りな感じがした。 そして頭の中でその声の主を連想させた。 …エミル! 「あんたまた親に逆らったのかよ?」 目の前にいるのは俺の昔からの腐れ縁で親友の女の子。エミル・ウォーマリン。 明るめの綺麗な水色の髪をした短髪の少女。服は露出が目立った半袖のTシャツにショートパンツを履いていた爽やかな感じだった。 「うるせーな。あんな親は親じゃねーよ。毎日仕事仕事で俺の事なんかどーでも良いと思ってる癖に家にいる時だけ親づらするとかありえないだろ。」 俺の家はちょっとした金持ちの家で父も母も共に魔法関係の職に就いていた。 それはエミルのも同じ悩みを持っていて2人はその裕福な家庭を持つものの悩みが一致したのもあり、仲良くなったのだ。 「それはあんただけじゃないだろ?それに今回はあんたが学校サボったから怒られたんじゃねーか。」 「そんな事、別に学校行かなくても俺は俺のままで生きていけばいいんだよ。」 「へー、あんたみたいな知識もない男がこの魔法社会で生きていけるとでも?」 「学力じゃねーよ!俺はいつか騎士団に入団して敵を倒しまくって戦績を上げてやるんだよ!」 「あははははっ!!あんたみたいな弱い男が騎士団に入れるわけないだろ?」 その時の俺は確かに弱かった。当時は剣は良くても神級魔法の引き出し方が分からなかったため魔法実技ではいつも最下位だった。 一方エミルは学力優秀、魔法実技じゃ彼女に敵うものは男子でも居なかった優等生だった。 そんな彼女を俺は羨ましかったんだろう。いつも挑発していた。 「うっせー!いつかお前も超えてやるよ!」 「あーそう。じゃあ今すぐ超えて見せなさい?」 「あー、やってやるよ!」 そう言っていつも剣の勝負をするがいつも負けてばかりだった。 「くそー!また負けたぁ!」 カイルは仰向けになりながら悔しがった。 「まだまだね。けど、カイルは剣の腕上げたじゃねーか。魔法はイマイチだったけど。」 「ふんっ!そーやって見下してろ!俺は諦めねーぞ!絶対に騎士団になって見返してやるよ!」 「見返すね。…じゃあ、賭けをしない?」 するとエミルは俺が寝転がってる横に腰掛けた。 「もし、あんたが騎士団に入らなかったら私はあんたを殴る。」 「なっ、殴る?」 「うん、けどその変わりもし騎士団に入ってあんたが業績を上げて団長になれたらさ…私も騎士団に入れて欲しいな。」 この時、エミルは頬を赤くしていた。 「言われなくてもお前は一緒に来てもらうつもりだぞ?」 「へっ!?ちょっとそれどういう…」 「そんなもん、成長した俺の姿をそばで見てもらう為に決まってんだろ。」 カイルの一言でエミルは一瞬目を大きく開けたが次の瞬間吹いて笑った。 「プッ!…あはははっ!やっぱりあんたは面白いわ。…いいわ、その時は嫌ってほど見てあげるから。期待してるぞ。」 「ああっ。」 2人がこの会話をしてる時は夕方で夕日が2人の姿を輝かせていた。 俺とエミルは家にいる時以外はずっと一緒だった。 親からの愛情をあまり受けたことがない俺にしたらエミルは俺の家族みたいなもんだった。 だけど、そんな日は長くは続かなかった。 「エミル。おまえ、最近エリオン家のせがれと仲良くしてるらしいな。」 突然エミルに問いかけるエミルのお父さん。青髪でメガネをかけ前髪がきっちりと整えられた40前半の男性だった。 「急に何?私が誰と仲良くしようと関係ないでしょ?」 父の問いかけに反抗的な態度を取るエミル。 「別にそんな事言ってる訳ではないだろ。ただ、友達はもう少し慎重に選んだ方が良いんじゃないのか?ましてや、あのエリオン家のせがれと……」 俺の親とエミルの親の仕事は商売敵の様な関係らしくあまり良好な関係ではなかったらしい。 エミルの親は俺の家名を口にしただけで嫌な顔をした。 「お父さんな、エミルには幸せになって欲しいんだよ。お前は将来ヴィアーランス家の長男と見合いさせ幸せな生活を送らせたい。」 「嫌よ!そんなの。どう考えてもこの家の利益を優先して私を利用しようとしてるだけでしょ!?それに私は愛のない結婚なんてごめんだから!」 エミルの父は呆れてため息をついた。 「じゃあ、エリオン家のせがれには愛があるっていうのか?」 「えっ!そ、そんなんじゃな…」 突然変な事を言われて戸惑うエミル。 「ほらみろ。お前のその様な半端な考えがいけんのだよ。…今からでも遅くはない。エリオン家のせがれとは縁を切れ。でなければお前をイフリーク以外の学校に転校させる。いいな?」 「い、嫌よ!なんでお父さんにそんな事決められなきゃいけないの!?そんなのおかしいよ!」 エミルはそう言うと走って自分の部屋に戻った。 「何にも知らないくせに…何にも…なん…に…も…」 次の日から、エミルはあまりカイルと話す事が少なくなった。 昼休みも他の女の子と一緒で学校が終わると1人で先に帰った。 俺はなんで急に話する事が減ったのか分からなかった。 もしかしたら俺が何かいけない事したのかもしれない。そう考えると話しかける事が怖くて俺もエミルに喋りかけなかった。 学校が終わってからは1人で剣の素振りや魔法の特訓を欠かさずやっていた。 エミルが喋りかけなくても目標は変わらない。ただ、エミルを超える為に。この時はそう思ってた。 「はぁ、はぁ、俺の影魔法はどうやら他の人のやつよりちょっと違うらしいな。こうやって対象の敵の影が自分の影と重なるまで範囲を広げて。」 するとカイルの影は目の前にある木の影と重なるくらいまで範囲を広げた。 「そして俺の影に入った対象の敵は触れなくても俺が剣を振る事で…木は真っ二つって事だな。」 カイルが剣を振ると目の前の木は横に切られ、そのまま倒れた。 「おぉっ!我ながらこの魔法は結構使えるぞ!よし!これを強化してエミルを…」 「私が…何?」 するとカイルの後ろにはエミルが立っていた。 「エミル…何だよ、急に。」 「いや、ちょっとあんたの様子見に来ただけ。凄いじゃない、その魔法。」 「ちぇ、見られてたかよ。まあこれが完成したのもお前っていう目標があったからなんだけどな。」 カイルが悔しそうにふてくされてるのをエミルは笑って。 「ぷっ、言ってくれるじゃんチビカイルのくせに。」 「なっ!何だと!お前今に見てろ!俺はお前の身長も超えてみせるからな!」 「えー、背の高いカイルなんて想像しただけで…笑っちゃうわ。」 そう言ってエミルは爆笑しながら走って逃げた。 「こ、このヤロー!待てエミル!」 カイルも怒りながらエミルの後を追いかけた。 「あはははっ!やっぱ背の低いカイルは足も短くて走るの遅~い!」 「うっせー!俺の影魔法でぶった切るぞ!」 「女の子に暴力振るうのか?カイルほんとサイテー。あはははっ!きゃっ!」 前を見ずに走っていたエミルは足元にあった木の根っこにつまずいてこけた。 「何やってんだよエミル。足見せてみろ。うわっ、血が出てんぞ。」 「へ、平気だよこんなの。唾でもつけたら治…って何してんだよ!変態!」 「何って、血を吸ってやってるんだよ口で。」 「そんな事自分でするからやめてよ!もう!」 「何怒ってんだよ…ったく。…ほら、乗れよ。」 「え?」 「おぶってやるから乗れよ。足怪我してんだから当然だろ?」 「でも、さすがにそれは…」 「いいから早く乗れって!」 仕方なくエミルはカイルの背中におぶらせてもらった。 その時エミルは心の中でこう思っていた。 何この背中?小さすぎて乗り心地悪すぎ。でも、何だか温かくて落ち着く。何でだろう…カイルといると安心する… 「んっ?なんか言ったか?」 「べっ、別に!!ほら、さっさと家まで連れてって!あんたのちっこい背中におぶってもらうのも結構疲れるのよ!」 そう言ってエミルは誤魔化した。 家に帰る途中、エミルが急にカイルに向かって。 「あのさ、カイル。最近私あんましあんたに話しかけなかったけどごめんね。」 「何だよ急に。てか、それって俺がなんかしたから怒って喋んなかったんじゃねーのか?」 「あんたがした事で怒った事なんか…あー、結構あるわ。けど、そんな事で話さなくなったりなんかしない。…私のお父さん知ってるでしょ?」 「あー、あの気難しい人?知ってる知ってる。…もしかして、その人に俺と喋るなって怒られたの?」 「そう、私らの親ってお互い嫌い合ってるから子供が仲良くしてるのが気に食わないみたい。それでお父さん、私とカイルが仲良くし続けるなら私を他の国の学校に転校させるって…ごめんね、あんたは何にも悪くないのに。」 エミルはカイルの背中にうずくまりながら涙を流した。 それに対してカイルはまっすぐ前を向きながら。 「それはお前が悪いわけじゃないだろ?じゃあ、そんな中で今日は何で俺の前に現れたんだ?」 「家にいても暇だし、やっぱりカイルと一緒の方が楽しいから。」 「そっか。だよな、親の都合で親友の仲を裂くのはやっぱり間違ってるよな。俺もお前がいない日は退屈で面白くない。転校なんてさせない。お前がいるこのイフリークが好きだから。」 「私も、カイルがいるイフリークが好き。この街から離れたくない。」 そう言ってエミルはカイルの背中を締め付ける力を強めた。 「カイル…私、ずっとあんたに言いたい事が…」 「出てきたらどうなんだ?いるのは分かってる!姿を現せ!」 「えっ?」 突然辺りを見渡しながら怒鳴るカイル。すると木の陰から複数の黒い服を着た集団がカイルの周りを囲んだ。 黒い服を着た集団は全員男で顔がバレないように仮面を被っていて、手には短刀を握っていた。 そしてその中のリーダー格らしき人物が前に出てきた。 「エリオン家のせがれとウォーマリン家の一人娘だな。まさか敵対してる家系同士の子供が一緒にいるとはな。」 「そこを通せ!」 「通すわけないだろう。こんな大物の子供が2人もいるんだ。誘拐してたんまり金を要求してやるよ。」 パチンッ! 「ヤレ!」 リーダー格の男が指を鳴らした瞬間、後ろにいた1人の男性がカイルの腹を蹴飛ばした。 「ぐっ!」 「カイル!うっ!何するの!」 その衝動でエミルはカイルから離れてしまい、そのまま男はエミルを身動きできないように腕を掴んで拘束した。 「エミル!てめえらエミルから離れろ!」 カイルは男たちを囲むくらいまで影を広げて剣を振った。 「グワッ!」 するとエミルを拘束している男の腕に切り傷が入り、思わず男はエミルを離した。 他の男たちも傷を負ったが致命傷までにはいかず、全員腕に切り傷が入る程度の軽傷だった。 「くそっ!まだ威力はないか…エミル!」 「カイル!」 男から離れたエミルはカイルの元へ走った。 「させるか!止まれ!」 「うっ!何コレ!…動かないっ!」 するとリーダー格の男が止まれと言うとどういう訳かエミルの動きが止まった。 「さっきこいつに腕を掴まれた時に仕掛けた拘束魔法だ。これで俺の命令には逆らえないぞ。」 「エミル!くそっ!」 カイルが再び影を広げて剣を振ろうとするとリーダー以外の男がカイルの腹を殴ったことで広げた影が無くなってしまった。 「がはっ!」 カイルはあまりの痛みに地面に倒れてしまった。 「ふん、所詮子供。俺たち大人に敵うわけないだろう。おいお前ら、この2人を連れて行け!」 リーダー格の男の言葉でカイルとエミルは男たちに連れて行かれた。 次に気がつくと俺とエミルは地下牢のような所に閉じ込められていた。 暗くて風の通りが悪く息苦しかった。 隣にいたエミルはすぐには起きなかったがしばらくするとしんどそうに目覚めた。 「こ、ここは?」 「気がついたか。俺にも分からんが俺ら2人を人質にして親に金を要求すると考えられる。」 「じゃあ…もし、親が拒否すれば?」 「その時は俺ら2人は死ぬだろう。」 カイルがそう言うとエミルは一瞬曇った表情をした。 「もう、ダメかもな俺ら。親にも愛されず、学校でも特別待遇の様に周りから変なプレッシャーを受け、最後はこんな誘拐犯に捕まって殺されて…もうこんなの嫌だ…もう死んだ方がマシだ!いっそ殺してくれ!」 カイルは死ぬかもしれない恐怖によって今まで我慢してきた不満を叫びまくった。 この時の俺は本当に死を覚悟した。死んだら楽になると考えてた。 パンッ! 頬に激しい痛みが走った。 この痛みはエミルが俺にビンタをしたからだった。 「あんたってすぐ諦めるよね?なっさけない!死ぬなんてダサい言葉で何でも片付けようとすんじゃねーよ!確かに今の暮らしは辛いことばかりだけど、まだ私たち子供だから、…きっと、大人になれば自由になれる…だから…死ぬなんて言葉で逃げるなよ…頼むから…」 「エミル…」 エミルはカイルの両肩を掴み、顔をカイルの胸へと近づけ涙を流した。 「…そうだな。大人になれば自由だよな。こんなとこさっさと出て、2人で自由を手にしよう!」 「カイル。…うん!」 エミルは腕で涙を拭い、ニッコリと笑顔を作った。 「しかし、この鉄柵をどうするか…剣はあるんだがこれじゃあ切れ…剣がある?…そうだ!」 するとカイルは影を広げて剣を振ると鉄柵がポキポキと切れて、ちょうど子供が通れる様な穴が開通した。 「あんたの剣って便利ねえ。」 「なんか液体や気体以外の物質なら何でも切れる事がお前がいない間に分かったんだよ。よし、行くぞ!」 2人は鉄柵の間をくぐって外に出ると、階段があったのでそれを登って上の階に行こうとした。 外に出ると案の定黒い男の集団が待ち構えていた。 「おい、お前らどうやって牢を…うがっ!」 カイルは走りながら影を広げて前にいる男たちを影で囲み、剣を振ると男たちの体に切り傷が出来た。 しかし、傷が浅いため再び体制を整えて襲ってきたがこれをエミルが出した水の砲弾を男たちの急所へ的確に当て次々に撃沈させた。 「やるじゃねえか、エミル!」 「オトコは弱点多くて楽勝ね。これなら楽に突破出来そう!」 そして、俺たちは最後の外への扉へ到着するが外にはリーダー格の男に加え、それよりも強そうな大柄な男が待ち構えていた。 「全く、仕事中に騒がしいねぇ。君たち、痛い目を見る前に早く牢に戻りなさい。」 「誰が戻るか!てめえら倒して俺らは自由を手に入れる!」 「自由ねぇ。君らの家にはお金があるんだからそれだけでも十分幸せじゃないか。一体何が不満なのかな?」 「お金があるのと幸せはイコールじゃない!そんな事しか頭にない親から決別する為に、私たちは知識と魔力をつけて自立する。これが子供の仕事よ!」 「なるほどな。でもね、世の中には君たちの言う仕事を味わえない悲しい人生を送る人だっているんだよ。俺みたいにね。」 リーダー格の男が仮面を外すと左目は殴られたのか潰れていて顔には爪で引っ掻かれたような傷が所々にあって髭の生えた中年の男だった。 「俺の様な金もない、親から暴力を受けながら育った奴にしたら君たちは羨ましいよ。人間はある一定の暴力を受ければ死ぬんだから…君たちにはその死を味わった事があるのかな?」 リーダー格の男は魔法で地面から棘のついた鉄の鎖を出し、エミルとカイルに向けて飛ばした。 カイルはその鎖を剣で弾き、自分の影を広げて鎖を切った。 しかし、鎖は一本だけではなく5、6本あったため全部は切れず、残った鎖がカイルを襲った。 「危ない!」 エミルが水で作った蛇で鎖を弾き、カイルを守った。 「サンキュー!エミル!」 そしてカイルはリーダー格の男と大柄な男を囲むまで、影を広げた。 「思いっきり切ってやるよ!」 そしてカイルは剣を思いっきり縦に振った。 「ぐああああああ!!!!」 「ぶっ!」 リーダー格の男の左腕は切断され、大柄な男は体一直線に切り傷が入り、そこから血が吹き出た。 「うげっ!人の血を見るのは初めてだから気持ち悪い…」 「何ビビってんだよ!こいつらは誘拐犯だからそんな事気にしなくていいのよ!」 エミルはそう言って両手に水色の魔力を溜め込んだ。 「ちょっと凄い魔法使うわよ!雨ノ神、その水の槍で大地の渇きを癒せー」 そう唱えるとエミルの手に溜め込んだ魔力から水の槍が次々とリーダー格の男と大柄な男を襲った。 その威力は凄まじく、周りに飛び散った水しぶきでさえ頑丈な壁にヒビを入れるくらいだった。 それをまともに食らった2人はタダでは済まないだろう。 「それは、水魔法の最上級魔法!しかも詠唱付きで…」 「成長してるのはあんただけじゃないのよ!私だって勉強してるんだよ!」 いや、あんたのその魔法は普通高校で学ぶやつだから…やっぱりこいつは化け物だわ…。 この時にこいつは恐ろしいと再び確信した俺だった。 「よし、じゃあ帰るか。やっとここから帰れるぜ!」 俺がそう言って帰ろうとして後ろを振り向くと大柄な男がいつの間にか血まみれになったエミルの頭を掴んで持ち上げていた。 「あっ…がっ、…」 「グフフフ、ヤッパリ女ハ血マミレガ似合ウナ。」 大柄な男は汚い笑い方で鼻息を立てた。 「おい!てめえ何やってんだこのヤロー!!」 影を広げて思いっきり剣を振った。 グシャっと肉が切れる音はしたがどういう訳か大柄な男の切り傷が綺麗さっぱり再生した。 「俺ニ剣ハ効カネー。俺ハ再生魔法ノ使イ手。ンデー。」 大柄な男が一瞬でカイルを殴り飛ばすとカイルは壁に衝突した。 「俺ハ接近戦ヲ得意トスル!フンーーー!!!」 大柄な男はそう言って鼻息を荒くした。 「カ…イ…ル…」 エミルは力細い声で言うとそのまま気を失った。 俺には…力が…ない。くそ、こんなんじゃ自由は手に入らない…こんなんじゃ…こんなん…じゃ…。 壁に衝突したカイルは身体中痛くて立ち上がれず、頭の中で嫌な事が思い出されていた。 「あんたって、すぐ諦めるよね?なっさけない!」 すると頭の中でエミルの声が聞こえた。 エミル… 「大人になればきっと自由になれる!だから…」 ……。 「私も、あんたがいるこのイフリークが好き…。」 そうだ。俺は諦めない…諦めるな!カイル・エリオン!何が自由が手に入らないだよ!そんなもん自分で掴み取るしかないだろ! そして大好きなイフリークで、エミルと一緒に騎士団に入って側にいてもらう。 これが俺達の自由だ! 「ぐっ……待ってろよエミル…俺が必ず…助け出すから…」 カイルは痛みを堪えながらゆっくりと立ち上がった。 目を開けるとカイルの黒い瞳はどういう訳か赤色に変わっていた。 「ヌ?何ダ…ソノ目ハ。何ダ、ソノ刀ハ?」 カイルの刀はどういう訳か黒く変色しているが本人は気づいていなかった。 そして、カイルは影を広げていないにも関わらず剣を軽く振った。 するとエミルの頭を掴んでいた腕がスパンと切り落とされ、エミルは地面に落ちた。 「何ッ!?」 「よくもエミルを!許さねえ!」 するとカイルはいつの間にか大柄な男の目の前に立っていた。 「イツノ間ニ!?グワァァァァ!!!」 そしてカイルは大柄な男を再生が追いつかない速さで切りまくった。 ズタズタに切られた身体は再生するのを止めてしまい、大柄な男の意識は盲ろうとしていた。 「アッ…アガァ……」 「はぁ、はぁ、お前を…喰ってやる!」 「ヤ、ヤメ…ヤメロぉぉぉぉぉお!!!!!!」 カイルはそう言うと口角を吊り上げ、そしてカイルの剣から出てきた影が大柄な男を飲み込んだ。 その後、俺は気を失ったが気がつくと俺は自分の家のベッドで寝ていた。 あの後俺とエミルは警察に助け出されたらしく、俺たちを誘拐した犯人達はそのまま全員連行された。 家に帰ると親に初めてビンタされたが、その後は強く握りしめながら泣いていた。 初めて俺はこの時、親からの愛情というものを知った。 エミルも怒られたのかな?そして俺と同じこと思ってるのかな?そんな事は分からないけど心配だ。 しかし、一番強そうな大柄な男が見当たらなかったのが謎だな。俺は壁に衝突してからの記憶がないし。 …まあいいや、エミルと俺は無事だったし明日から学校でまた話とかしよう。 痛ててて、壁にぶつかったせいで身体中めちゃくちゃ痛い! そして俺はそのまま疲れたから寝た。あと、早く明日になってエミルに会いたいな。 次の日、俺は学校に着いてからエミルの席を見たがまだ来てなかった。 いつもなら俺よりも早く到着するのに珍しいなとこの時は思っていた。 チャイムが鳴り、先生が入ってきたのにエミルはまだ学校に来ていなかった。 「はい、みなさんおはよう。今日なんだが、先に悲しい知らせがある。」 「うちのクラスにいたエミルなんだが、彼女は親の仕事の都合上南の国シルフの学校に転校されたそうです。」 その先生の言葉に、俺は一瞬思考が追いつかなかった。 「エ、エミルが…転校…。」 嘘だ…嘘だ嘘だ…俺は信じない!信じたくない!あいつがこの国から居なくなるなんて知りたくない! 嫌だ!なんで…なんで俺の前からいなくなるんだよ!俺が何をしたって言うんだ! そして気付いた。エミルは言っていた。 「俺と関わったら他国の学校に転校…」 「どうしたんだ、カイル?」 「俺のせいだ…俺のせいなんだよぉぉぉ!!」 そして俺はそのまま教室を出てしまった。 俺は教室を出てからいつも修行している場所に座っていた。 「あー、早くも俺と一緒に騎士団に入るって夢が無くなったな…くそ!俺はこれから、何を目標にしたら良いんだよ…」 カイルは空の雲をなだめながらブツブツと言っていると後ろから女性らしき人が近づいてきた。 「エ、エリオン君!」 その人はエミルと仲の良かったハンジという茶髪でぱっちりした目が特徴の女の子だった。 「ハンジ…何の用だ?」 「ごめんね、エリオン君。私、知ってたの…エミルがこの国から出て行くこと。」 「何だと…何で言わなかったんだよ!」 俺はその時気持ちがだいぶ荒れていたので思わずハンジに怒鳴ってしまった。 「ご、ごめんなさい!でも、言うなって言われたの。エミルに。」 「そ、そうなのか…すまん。」 「ううん、私も罪悪感はあったの。…それで、これ。」 するとハンジはポケットから一枚の手紙のような物をカイルに渡した。 「これは?」 「エミルがエリオン君に書いたメッセージよ。読んで。」 カイルはそう言われて手紙を広げた。 カイルへ お前とはいつも一緒だったな。そりゃ小さい頃から同じ境遇で育ってきたんだから気も合うし仕方ないよな(笑)でも急にごめん。私の親とカイルの親は昔から犬猿の仲だからあんたとあんまり喋るなって親に言われた。本当は私辛かったけどカイルと離れるのはもっと辛いと思った。けど、結局は転校する事が決まってたらしくてね、だから転校する前日にカイルに会いに来た。やっぱあんたは凄い。私なんかすぐ追い抜かれそうだ。けど、私を追い抜いたからって良い気になるなよ。これからはあんたは騎士団に入って私を守るって言った事の様に私の大好きなイフリークをこれからも守って。今更って感じもするけど、私はあんたの事が…好きだ! エミルより その手紙には所々に水滴が落ちた跡があった。 そして、これを読み終わった俺はハンジがいるにも関わらず号泣した。 そして、決意した。 俺はこのイフリークを死んでも守る!あいつが愛したこのイフリークを…必ず守ってみせると。ウィリディスが使用する魔法属性は空間。空間属性の神級魔法、[デリート・コネクト]。指定した部分に「シフト」と唱えると四角い透明の立方体が現れ囲う事が出来る上に、必要に応じてその立方体を広げる事が出来る。立方体の範囲を自在に広げて囲み、「デリート」と唱えればその指定された範囲を跡形も無く消す事が出来る。例えるならパソコン画面上の矢印カーソルを目的の場所に合わせて範囲指定し、一気にdeleteキーを押すイメージだ。この「シフト」による範囲指定と「デリート」による削除能力を、ウィリディスは現実世界の空間に存在する物質、生物、そしてあらゆる環境を対象に使用する事が出来る。ウィリディスが最初に竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)の木々を一瞬で消し去ったのもこの力のお陰であった。そして。「シフト」「コネクト」ウィリディスは両手を上空に挙げると巨大な立方体を展開し、「コネクト」と唱えた。その範囲は竜の遺跡を全て覆える程。しかもその上空に展開された立方体の中には最初に消し去った森の木がギッシリと敷き詰められている。そう。この木は「デリート」によって消された森の木の残骸であった。「コネクト」とは接続という意味。ウィリディスは「デリート」で消した範囲の木を「コネクト」する事で上空の立方体内に配置したのだ。そう。[デリート・コネクト]は空間を透過的に選んで削除し接続できる魔法。「シフト」で範囲指定した空間を支配する事が可能。そして上空の立方体の底がパカッと扉の様に開かれる。開き始めた隙間から木がどんどん竜の遺跡がある地上に向かって落ちていく。1本1本が大きく質量のある木。落ちる度に地面の砂埃が舞った。まるで雨の様…いや、そんな生優しいものでは無い。逃げ場を与えない広範囲を覆い尽くした木々による酷(むご)い圧殺方法。そして一度に落ちてきた大量の森の木によって竜の遺跡は飲み込まれてしまった。一方、ウィリディスは空間移動で上空に転移しており、木に押し潰され跡形も無く消え去った竜の遺跡の惨状を見下ろして見ていた。「…やっぱり、こんな程度でグレンは死ぬ訳ないか。」見下ろしながらそう言うウィリディス。どうやらグレンが攻撃を回避してる事に気付いている様だ。「出てきなよ。…決着を付けよう。」「紅の悪魔祓い、グレン。」ウィリディスの言葉と共にグレ
「うわぁぁぁぁぁ!!!ガルムが!…ガルムがあぁ!!!」ティアは胴体が分かれ絶命したガルムの上半身を抱きしめながら叫んだ。靴に血が滲むほど急いで走りドグマ達を呼びに行ったティアは決して遅くなかった。しかし、間に合わなかった。「誰が…こんな事を。俺達竜の民をこんな…こんな…。」ドグマは目の前の惨状を受け入れられずにいた。つい竜の試練洞に行く半日前までは普通の平和な生活を送っていた。昨日は龍神の祭日で民の皆んなが共に飲み食いしながら楽しんだ。ティアとガルムはもうすぐしたら祝言を挙げる予定だった。ーー皆んな今日を生き、明日を楽しみに過ごしていた筈なのに。修行が長引かずここに俺達が居ればこんな事には…。「チクショウ……チクショウ!」ドグマの目からはこの場に居なかった自分に対する悔しさの涙を流していた。「……」グレンは2人と違い、この現状をただ茫然と見ていた。それは彼が他人を想う気持ちが無いからでは無い。ここでの生活を思い出していたからだ。不便な生活であったが、他所者のグレンに優しくしてくれた民達。ドグマが言っていた。ここに住む民達は生活の為にそれぞれ役割を全うしながら助け合って生きていた。それぞれが良い人生、良い流れを築く為に。そんな人達が居るここの生活をグレンは好きになりかけていた。一瞬思っただけであるが、故郷の様な平和なこの竜の遺跡にこれからも住みたい。そう少しだけ思えた。それを、こんな…こんな酷い形で終わらされた。まるであの時のキュアリーハートと同じだ。何の脈絡も無く平和な日々を終わらされた。「…許せねえ。」ポツリと小さく、そして力強い声でグレンは呟いた。ーー竜の民達をこんな風にした奴を、絶対に許さねえ!激しく怒るグレンは心の中でそう叫んだ。「あれ?まだ生き残りが居たんだ。」グレン達が向いてる方向とは反対方面から声が聞こえた。グレンとドグマはその声に反応し、振り返った。漆黒のローブを身に纏った緑髪の男と後方には黒い皮膚をした悪魔が20数体、そして他と比べて身長が低い奴が1人居た。すると漆黒のローブを纏った男がグレンの方を不思議そうに見ていた。「赤い髪…その魔力。…もしかして、グレン?」「何で俺の名前を知ってるんだ?」初対面と思っているグレンは突然面識の無い相手に名前を呼ばれた事に驚いていた。グレ
次の日の明朝4時半。この日もグレンとドグマはいつも通り川で魚を獲りに行った。「(もう慣れてしまったな。)」昨日と同じ様に手掴みで流れる様に魚を獲っていく。そして獲った魚を竜の遺跡へと運び、家に戻ってから朝食を食べた。「今日は龍脈樹には行かん。」グレンは朝食を食べた後、ドグマにそう言われ家を出た。この日、グレンはドグマに連れて来られたのは竜の遺跡から更に奥にある祠(ほこら)だった。その祠の入り口前には巨大な竜の像が建てられており、ドクマはその入り口の前に立ち止まった。「何だ、ここは?」グレンは立ち止まったドグマに質問する。「ここは[竜の試練洞(しれんどう)]。竜の民が龍技を極める為に用意された修行の場だ。竜の試練洞。この祠は竜の遺跡で祀られている龍神が、かつて龍技を極めたいと願う者の為に用意した神聖な修行場。数世代にわたり、伝承されてきた場所である。入り口は森の中にひっそりと隠されてあり、入り口から流れる空気が重い。龍脈樹(りゅうみゃくじゅ)の様に祠の中からまるで生き物の様に魔力が渦巻いているのを感じられた。「ここは龍技を極める為に用意された修行場。グレン、昨日説明した竜挐(りゅうだ)を覚えているな?」「ああ。3つの龍技を同時に使う事で起こる龍技の真髄の最終奥義。昨日、あんたが言ってたよな。」「そうだ。[心眼点睛]、[技之乖離]、[戮力体竜変]。この3つを極めた竜の民が使える奥義だ。この竜の試練洞では竜挐を極める為の修行を行う。」そしてドグマは竜の試練洞へと近づいていき、中へと入っていく。入った瞬間、空気が身体に張り付き乗し掛かる感覚がした。心眼点睛を習得してるグレンには周囲に充満している魔力の流れを目で見る事が出来る。試練洞の中に充満している魔力は、上からグレンに圧を掛ける様な流れ方をしている。まるでこの祠がグレンを試しているかの様だった。「生きてるみたいだろ?だが、試されるのはここからだ。」「ふん、だろうな。これくらいは試練の内には入らねえだろ。」「当たり前だ。こんな事で怖気つく様な奴をここに連れては来ない。」ドグマの発言から、この祠は修行場所であると同時に危険な場所なのだと感じた。その理由をグレンはまだ知らないが、すぐ分かる事になる。昨日までの修行が天国の様だったと。「…よし、もう着くぞ。」前を歩く
「いいか、ヒスイ。お前は竜の民の先導者である俺の後継者だ。これから民達を導いていかなければならない。」「………はい。」これは過去のドグマとヒスイのやり取りだ。ドグマは今の様な髭は無く、30代前半くらいの若々しい姿をしていた。そしてもう1人。娘であるヒスイ。彼女はドグマの言われた事を俯きながら元気のない声で返事をした。「竜の民は大昔の北と東の戦争に巻き込まれ、沢山の民達が命を落とした。このままでは竜の民は滅びてしまう。」「何としてでも、それだけは阻止しなければならない。」そう。竜の民が何故この様な少数民族なのか。それは戦争の被害に遭ったからである。丁度北と東の中間地点にある竜の遺跡は戦場に近く、軍事開発された魔法兵器の巻き添えによって多くの民が命を失った。元々少数であったが、それでも300人は居た竜の民も、年々子供の出生率も減少し今では50人にも満たない程だ。このままでは竜の民は絶えてしまう。ドグマはその焦りを感じていた。ヒスイを立派な先導者に育てあげ、竜の民達をこれからも繁栄させなければ。ドグマはその為、娘をより厳しく育てた。「何度言えば分かる!女だからと言って容赦はしない!」ドグマはまだ10歳前後のヒスイと龍技を使った組み手を行い、ボロボロになってうつ伏せに倒れている彼女を叱責する。またある日は同年代の人と遊ぼうとした時に。「……そうか。お前は先導者の道よりも友達と遊ぶ方が大事だと言うのだな。分かった。もういい…お前には失望した。」勿論本当に失望なんてしていない。ヒスイには先導者としての意志を早くから継いで欲しい。その想いから、時には厳しく突き放す様な言い方をした。自分の思い描く道をヒスイも歩めば、きっと竜の民達はこれからも耐える事なく安泰だ。ーー俺の代で絶えさせたくない!ドグマはこの様にヒスイのやる事1つ1つに口を出していた。しかし、ヒスイが19歳の時だった。突如書き置きだけ残し、娘は家を出てしまった。お父さんへ。私は彼と一緒に外の世界へ行きます。お父さんの理想の娘になれなくてごめんなさい。私は、今まで先導者になりたいと思った事は一度もありませんでした。ずっと黙っててごめんなさい。 ヒスイよりそれを見たドグマはようやく気が付いた。竜の民のこれからの未来を見ていたが、1番
ドグマに言われた通り朝の4時半に起きたグレンは、龍技の真髄の修行をする為にドグマの後ろに付いて歩いていた。早朝に起こされたにも関わらずグレンは眠そうな素振り1つ見せなかった。「初日で眠くはないのか?」「ああ。普段からあまり睡眠を取らない方だ。昨日はゆっくり出来た。」グレンは旅をしてる時もそうであるが、いつ自分の身に危険が起きても対処出来る様に熟睡は基本的にしない。その為、グレンにとっては明朝4時半と早い時間に起こされても睡眠時間的には十分であった。「…そうか。この程度なら生意気な口も普通に叩けるのか。よかろう、遠慮はいらんという事だな。」ドグマは余裕そうなグレンに対し、そう脅しをかける。「(そういえば、昔アガレフに修行を付けてもらう時も同じ様な事を言われたな。)」……思い出すだけでゾッとし、血の気が引いていくのが分かる。あの時は毎日失神するまでボコボコにされていたなぁ。アガレフの修行は本当にキツかった。「よし、着いたぞ。」真っ暗だった為、到着するまでどこを歩いているのか分からなかったが数十分後、ドグマが連れてきた場所は竜の遺跡にある川の上流の方だった。「川で修行するのか?」「そうだな。修行と言えば修行かな。足の裾を捲(まく)れ。今から川で魚を捕まえる。」そしてドグマはズボンの裾を膝上まで捲り上げると片足ずつ川に入っていく。そして川の真ん中辺りまで行くと水面の上で手掴みする様な構えをした。…バシャッ!素早く水面に手を突っ込み一瞬で掬(すく)い上げる。手のひらからはみ出そうな大きさの魚がドグマの手に捉えられ、捉えた魚を竹と藁で編んだ肩掛けの魚籠に入れる。そして再び魚を捕まえる構えに戻った。「…何してる?お前もやらんか。」「あ、ああ。」グレンもドグマと同じ様にズボンを膝上まで捲り上げて川に入ろうと右足を水につける。「うっ!……」あまりの冷たさに声が出てしまうグレン。朝方の気温の低い山奥の川の水。冷たくない訳が無い。「冷たいだろ?因みに魔法は一切使うなよ。修行にならんからな。」「…いや、魔法使わないと見えねえよ。」只でさえ冷た過ぎる水に慣れない中、真っ暗な時間帯で水中の魚が見えない。しかも道具は一切使わず難易度の高い手掴み漁。目を凝らして水面を見るが当然見える訳が無い。グレンは困惑してる中、隣でドグマは流れ
時は遡る事3日前。この日はカイル、エミル、ミーナが東の大国に到着したばかりの日であった。しかし、ここは北の大国と東の大国よりも更に北東部の奥にある場所。そこは一般の人が立ち入ると必ず道に迷うとされる竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)]と呼ばれる森林があった。その森林の中にある地面は深い裂け目や溝が幾筋も走り、獣道や細い道がそれに沿って複雑に分岐している。道はまるで生き物のように折れ曲がり、進んだはずの者を同じ場所へ戻し、方角の感覚を狂わせる。異常な磁場がコンパスの指針も狂わせる為、人の五感や魔力の流れを読めない人が立ち入れば一瞬で迷路へと変わる場所。この森林の中に1人の男が歩いていた。彼の名前は紅の悪魔祓い(デビルブレイカー)グレン。彼はレミールでミーナ達と合流したのだが、そこの国民に国を守る様に提案される。しかし、それを拒否したグレンは国民に危害を加えられた挙句、抵抗すると悪魔と言われて非難された。そしてグレンは自分のせいでミーナに危害が加わると考え、自ら1人になる道を選んだのだ。では何故彼が今この森林に居るのか?(おい、いい加減にしろ!いつまで歩き続けるつもりだ?もうかれこれ3日は歩いてるぞ?)グレンの中に居る悪魔、リフェル。本名強欲のマモンが話し掛ける。グレンはこの竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)に立ち入ってからかれこれ3日は経っていたのだ。「……この森、まるで生きてるみたいに場所が変化してる。ずっと同じところをグルグル回らされているみたいだ。」木々に囲まれて複雑に分岐した細い道を辿っていくも、いつの間にか元来た道に戻っている。更に元来た道をよく確認すると木々の形や生え方、地面の裂け目の形が少し違っていた。(何回この道来るんだよ!もう100回くらいこの光景見てるぞ!)「……いや、違う。よく見てみろ。この地面と木の並び方。少し違って見えないか?」(は?そんなもん覚えてる訳ないだろ!)「最初来た時はこの地面の裂け目は3本だった。だが今は2本。木も1本1本捻れてたのが真っ直ぐになってる。」(…長い事同じ光景を見て疲れてんのか?…いや、待てよ…グレン、何が言いたい?)何かに気付いたリフェルはグレンの考えを聞く事にした。「多分だが俺達が前に進めば進む程、木や道の形が変化して最初来た時と同じ光景を見せられる。けど、地面