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94.常に思っているsideサラリオ

last update Huling Na-update: 2025-08-02 13:24:57
リリアーナ王女の訪問を控え、葵の身を守るための最善策を伝えるため、私は葵を執務室に呼び寄せた。

「ゼフィリア王国の一件もあるため王女が訪問している間は、葵に関する変な噂が流れたり、良からぬことを考える者が出ないように、公の場に姿を見せない方がいいと考えたのだが、どうだろうか?」

私は、前回の失敗を繰り返さぬよう慎重に言葉を選んだ。

「誤解がないように言っておくが、これは葵を守るためを思ってのことだ。決して葵のことを悪く思い、隠したいわけではない。私は常に葵のことを思っている。」

その瞬間、葵の頬がふわりと赤くなる。

「常に……ですか」

恥ずかしそうにそう呟いた。私の言葉が特別な意味合いで彼女に伝わってしまったのだと察し、私は内心で激しく動揺した。

そしてある想いが頭をよぎる。

(国務の一環として説明したつもりだったが、このまま自分の思いの丈を伝えてしまいたい……。安全を守るためという理由だけではなく一人の女性として、葵のことを強く、強く想っている。そう伝えるのはどうだろうか。)

言葉を続けることができず私は黙り込んでしまった。私を見つめる葵の瞳は、戸惑いと、ほんの少しの期待を秘めているように見えた。

「ご配慮いただきありがとうございます。訪問時の件、承知いたしました。」

無言の私に葵は感謝の言葉を述べにっこりと微笑んだ。その笑顔を見た瞬間、私の心の奥底に抑え込んでいた感情が、爆発しそうになった。

(本当は、葵が誰にも触れられぬよう自分だけのものにして隠しておきたい。彼女をこの胸の中に引き寄せて、私の手で葵を幸せにしたい)

今すぐにでも葵を抱きしめたい衝動に強く駆られた。彼女の笑顔は、私の心に温かさとそして苦しいほどの切なさを同時に与えていた。
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