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93.常に思っているside葵

last update Last Updated: 2025-08-02 11:05:52

リリアーナ王女が来訪が決まったある日、私はサラリオ様から執務室へ呼ばれた。

「ゼフィリア王国の一件もあるため、王女が訪問している間は、葵に関する変な噂が流れたりしないように、公の場に姿を見せない方がいいと考えたのだがどうだろうか?」

前回のこともあり、私を守るために事前に説明し、意見まで求めてきてくれたことが大事にされていると感じて嬉しかった。

「誤解がないように言っておくが、これは葵を守るためだ。決して葵のことを悪く思い、隠したいわけではない。私は常に葵のことを思っている。」

彼の瞳が私を真っ直ぐに見つめる。その澄んだ碧色の瞳には嘘偽りのない誠実さが宿っていた。

『私は常に葵のことを思っている。』

その言葉が私の胸を熱くさせた。まるで愛の告白のように聞こえて頭の中をこだまする。胸がバクバクと大きな音を立て、頬に熱が集中していくのを感じた。そして、その戸惑いは声に漏れた。

「常に……ですか。」

自分でもわかるほど上ずった声と、真っ赤にしている私を見てサラリオ様は一瞬だけ目を見開き無言になってしまった。

(ああ……。私ったら勘違いしてしまった。サラリオ様は王国の長として皆の安全を守るのが使命だもの。安全に過ごせるように考えているとい

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