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愛していると気づいたから、私はあなたを手放します
愛していると気づいたから、私はあなたを手放します
Autor: 妄夢

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Autor: 妄夢
last update Fecha de publicación: 2026-06-30 16:20:28

「もう、女性を愛することは——できない」

ガウンを着て、ベッド上で正座をした夫が私にそう言った。

——夫婦の寝室で。

「だから、もう——やめてほしい……」

大丈夫……と自分に言い聞かせる。

「やめてほしいって……、それってどういう……」

声が震えないように、ゆっくり話した。

「子供は……、子供は——諦めてほしい」

頭から冷水を浴びたかのような感覚に陥った。

夫は金色の輝く髪を垂らし、深々と頭を下げた。

筋肉質で大きな体を縮めている。

まるで怯えたように……。

「ディー……、頭を上げて」

夫のディートハルトは眉を八の字にして、今にも泣きそうな顔をしていた。

……ずっと苦しかったんだね。

私はため息を漏らした。

もう、ここまでね……。

「わかったわ。それで、どうしようか……。離婚……する?」

離婚……という言葉が私の心臓の鼓動を速めた。

ダメよ……。

彼にこの気持ちを気づかれては……。

これ以上、苦しめては……。

「離婚は嫌なんだ…………。女性と結婚してなきゃいけないなら、アーシュがいい」

私のことを、アーシュレイではなく——愛称呼びをしてくれるのね。

「アーシュとはずっと一緒にいるし。君といるのは楽しいから……パートナーなら君がいいなって」

ディートハルトは少し笑った。

「ちょっと、私が女性らしくないってこと?」

「あははは……、それそれ。普通の貴族女性はそんな話し方しないよ?」

「そりゃ、私は普通じゃないけど……」

私は膝の上で両手を絡める。

ディートハルトは私の手を優しく包み込む。

その温もりに、緊張が解けていく。

「とにかく、離婚はしない……」

芯の通った瞳で彼はそう言った。

離婚はしないけど、子供はいらないってこと……?

私たちは結婚して二年——白い結婚を貫いている。

正確には今日まで、全て私が振られ続けている。

まさかその理由が『女性とそういうことはできません』だったなんて……。

彼をその気にさせるために、色気のあるネグリジェや下着を着たことか……。

その度に「寒そうだね、風邪引くよ?」と厚手のガウンを着せられてきた。

男性が興奮するような香水、時には媚薬まがいなものまで使ったが……。

——全て空振りだった。

私の髪は赤く、少しウエーブがかっている。

よく肉づきが良いと友人に言われる。

——自分では良く分からないけど。

結婚前は男性をたぶらかす悪女……なんて言われた事もあった。

しかし、ディートハルトには全く効果がなく自信もなくなっていった。

私の二年間の努力……。

それなら、初夜に言ってほしかった……。

「お義母さまにはなんて言えば……。子供を今か今かと楽しみにされているのに……」

そう、私がこんなにも子作りを望んでいたのは、義両親、特に義母からの圧力が凄まじいからだ。

義母も悪い人ではないのだけれども、なんせ気の強い人なのだ。

「うん……。養子も考えてる……」

養子……。あの義母が養子を受け入れるだろうか……。

「それに弟のところにもう子供が生まれたし、うちはいなくても問題ないかなって」

ディートハルトは伯爵家の嫡男だ。まだ義父が家督だが、そのうち弟かディートハルトが継がなければならない。

優先順位からいって、嫡男のディートハルトだろう。

ディートハルトは王宮騎士団でもうすぐ副団長に昇進する。

だから、家督は弟に譲る気でいるのだろう。

しかし、義母は貴族としての体面を何よりも重んじる人。

正当な理由がない限り、それは認めてくれないであろう。

義母は子育てに熱心だった。

貴族女性としては珍しく乳母ではなく、授乳から全て自分の手で子育てをし、料理やお菓子作りまで完璧にこなす超人だった。

そして、何よりも溺愛しているディートハルトの子供を楽しみにしている。

義母からはとうとう不妊症を疑われ、病院にまで通わされた。

正直不妊症かどうか、分からない……。

——だって一度もしてないのだから。

さすがにそのことを義母に打ち明けることもできず……。

だから、余計——辛かった。

今日こそは逃がさないとばかりにディートハルトに迫ったら……。

まさかのカミングアウトだった……。

女性を愛せないってことは……。

「ねぇ、ディーは男性が好きってことなの……?」

ディートハルトは翡翠の美しい瞳を揺らした。

「どうなんだろう……。俺もよく分からないんだ……。女性は……、君や家族以外は苦手で……。その……男性の方が好感が持てる……かな」

まだ、男性が好きって、自覚したばかりなのかな……。

それとも……。

「好きな人が——いるの?」

ディートハルトは俯いていた顔を勢いよく上げて、前のめりになった。

「そんな人はいない!アーシュがいるのに!」

私がいるのに……?

でも、愛せないって……。

私は顎に手を当てて、天井を見上げた。

離婚してあげて、彼を自由にしてあげるのが一番なんだけど……。

家同士の付き合いもあるし、……何より私の立場が弱いのが問題だった。

うちは貧乏男爵家だからだ。

なんで結婚できたかというと、父親同士が学友だったため、昔から家族ぐるみでの付き合いがあった。

お酒の勢いで父親同士が勝手に婚約を交わしてしまった。

当時義母は相当怒っていたと後からディートハルトに聞いた。

そして結婚の時も、うちの実家を相当な額支援してもらい、実家を立て直すことができた。

その恩義があるため、私からは離婚を切り出せない。

 「はぁ~。とりあえず子供のことは私に任せてくれる?」

 私は頭をかきながら、ディートハルトにそう言った。

 「任せるって?いい養子先を知っているの?」

 「う……ん。とりあえずやるだけやってみる」

いや、あの義母だもの……。

養子も説得も無理だろう。

これは奥の手を使うしかない。

そう……、それは……。

——公認の愛人を作ること。

ディートハルトに似た容姿の男性に、代理で父親になってもらうということだ。

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