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第3話

Author: 猫は魚を食べる
申請の備考欄には、こう書かれていた。

【橋本ちゃん、何を拗ねてるんだ?】

指先が震えた。

涙が、ますます止めどなくこぼれ落ちていった。

安英はまだ、私がただ拗ねているだけだと思っている。

私は申請を承認しなかった。

そのままスマホの電源を切り、ベッドの上に放り投げた。

けれど、2分もしないうちに、また画面が光った。

また友達申請だった。

今度の備考欄には、【メッセージを見たら返信して】と書かれていた。

私は唇を強く噛みしめ、その文字を見つめた。

胸が、ズキズキと痛んだ。

以前、喧嘩をしたときもいつもそうだった。

私が彼を無視すると、彼は一通、また一通とメッセージを送ってきた。

口では強気なくせに、実際は誰よりも甘えん坊だった。

一度、わざと半日ほど返信しなかったことがある。

彼は十数通もメッセージを送ってきた。

最後には、我慢の限界に達したように、こんな一言を投げてきた。

【まだ無視するなら、警察に通報するからな】

私は返信した。

【何を通報するの?】

すると彼は言った。

【ネット恋愛の相手が行方不明になったって】

あのとき私は、笑いすぎて机に突っ伏し、しばらく顔を上げられなかった。

でも今は、彼から送られてくる友達申請を見つめても、目を開けていることさえつらかった。

なぜなら、私はようやく分かったから。

私だけに向けられていると思っていた彼のあの優しさも、あの甘えたような態度も、もしかしたら最初から、私のためじゃなかったのかもしれない。

あるいは、全部が私に向けられたものではなかった。

私はベッドの端で膝を抱え、スマホをマナーモードにした。

それでも、友達申請の通知は次から次へと表示された。

【どうした?】

【橋本ちゃん?】

【一体どうしたんだ?金のネックレス、気に入らなかった?】

【話してくれ】

最後の一通が届いたのは、それから10分後だった。

短い言葉だった。

【何かあったのか?】

私は目を閉じた。

涙がスマホの画面に落ちた。

こんな状況になっても、彼はまだ私のことを心配している。

なのに私は、彼を問い詰める資格すらなかった。

最初から最後まで、自分の正体を隠していたのは私だったから。

彼と姉が一体どうやって付き合うようになったのか。

どうしてこのネット恋愛が始まったのか。

私は何も知らない。

彼がどうして、私を姉のサブアカウントだと勘違いしたのかも分からない。

それでも、もうこれ以上続ける勇気はなかった。

翌朝、母に呼ばれて、私は進学先の願書を記入しに行った。

腫れぼったい目のまま部屋から出ると、姉はすでにソファに座っていた。

髪を洗ったばかりなのか、まだ半乾きだった。

彼女はうつむきながら、スマホを操作している。

私を見ると、眉をひそめた。

「泣いたの?」

私はすぐに目を伏せた。

「ううん。昨日、あまり眠れなかっただけ」

姉は数秒間、私を見つめた。

どうやら信じてはいないようだった。

それでも、それ以上は聞かなかった。

ただ、温かい牛乳を一杯、私の前に押し出した。

「先に飲みな」

私は小さく、「うん」と答えた。

私が腰を下ろしたばかりのとき、姉のスマホが突然鳴った。

姉は画面を一目見ると、表情をわずかに曇らせ、そのままスマホを切った。

母が隣で笑いながら尋ねた。

「彼氏?」

姉は鼻で笑った。

「本当にうるさいよ。昨日からずっと、訳の分からないことばっかり聞いてくるの」

私はカップを握る手に力を込めた。

母は興味津々といった様子で尋ねた。

「何を聞かれたの?」

姉は眉をひそめ、苛立った口調で言った。

「昔、私があいつに言ったことを覚えてるかとか、わざと知らないふりをしてるんじゃないかとか、サブアカウントを持ってないかとか。意味分かんない」

私は息をするのも忘れた。指先が一気に冷たくなった。

母はおかしそうに笑った。

「それだけあなたのことが気になってるってことでしょう。若い人の恋愛なんて、みんなそんなものよ」

けれど、姉は冷たく口元を歪めただけだった。

「誰があいつと付き合ってるのよ。好きなら勝手に好きでいればいいじゃん。私には関係ないし」

口では気にしていないと言いながら、それでも結局、彼をブロックすることはなかった。

私は、華やかでいてどこか冷たい姉の顔を見つめた。

すると、胸の奥に深い無力感が湧き上がってきた。

昔から、ずっとそうだった。

姉は何の努力をしなくても、誰からも注目を集めることができた。

それなのに私は、必死に隠してきたほんの少しの恋心さえ、最後には笑い話のようになってしまう。

昼になり、私は学校へ行って進学先の願書を記入した。

先生は私の成績表を手にして、しばらく眺めていた。

「本当に全部、県外の大学にするの?」

私はうなずいた。

「はい。決めました」

先生は眉をひそめた。

「この成績なら、地元の大学でも十分進学できるでしょう。何もそんな遠くまで行かなくても……」

私は目を伏せ、静かに答えた。

「家から離れたいんです」

曖昧な言い方だった。

けれど、私だけは知っていた。

私が離れたかったのは、この街にあるすべてだった。

安英も含めて……

願書を書き終えて学校を出ると、太陽がまぶしいほど照りつけていた。

私はうつむきながら校門へ向かって歩いていた。

そのとき、スマホが突然震えた。

新しい友達申請だった。

また安英だった。

彼は諦めきれなかったのか、別のアカウントから私を追加してきたらしい。

プロフィール画像は、真っ黒な一色だ。

備考欄に書かれていた言葉も短かった。

【無視するな】

私は校門の前に立ったまま、その文字を長いこと見つめた。

風が吹き、目が痛くなった。

それでも最後まで、申請を承認することはなかった。

そのままスマホの画面を閉じた。

夜、家に帰ると、姉はいなかった。

母に聞くと、出かけたらしい。

私は「うん」とだけ答え、自分の部屋へ戻って、進学先の資料を整理した。

けれど、しばらくすると、階下から車の音が聞こえてきた。

なぜか胸がドクンと跳ねた。

何かに導かれるように、私は窓辺へ歩いていき、外を覗いた。

家の前に、一台の黒い車が停まっていた。

その車のドアにもたれかかり、一人の青年がスマホを見ながら立っている。

横顔を見ただけで、私はすぐに分かった。

安英だ。

私は全身が凍りついた。

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