「ローランド……あなた。
それ無自覚でやってるんですよね? また今夜も熱出す気ですか?」「無自覚……?
いや、熱は確かに済まないと思ってる。 こんな体質私だって嫌だ。」そう素直に謝られても。
最近、本当にローランドの態度が軟化したような。
でも単に政略結婚の相手だからだよね? 自国民を守るため。 仕方なしに子作り宣言もしたんでしょ? 原作と同じで。 私はヴァレンティン目的だから利害が一致してるけど……あんたはいずれリジーを愛するようになるんだし。しかも強引に側に引き寄せといて、ローランドは私の手を握る。
ぎゃ!何それ!どういう意味があるの?
私を油断させておいて殺すとか、そういう?照明の灯りだけでも十分にローランドの顔が見える。
何を考えているのかは分からないが、横向きでこちらをジッと物言わず見つめている。 さっきまで冷え切っていたのにローランドに握られた手がじんわりと温かくなっていく。 さすがは良く熱を出す男だ……!「おやすみ、アデリナ。」
「おっ、おやすみぃなさい?」
ローランドはのそりと起き上がり、私の額にキスをしてまた元の位置に戻った。
今度こそ仰向けになり数秒で寝息を立てる。 私の手はしっかりと握ったまま。……え。何今の。
今の何サービス………!!? 私はローランドのファンじゃないけど、ファンサ的な…&レーヴェン一味は残虐で、ローランドの側近達は前もって色々準備した方がいいとか言っていたが、私にはそうしなくても十分にルナールを説得する自信があった。 だから下手に小細工せずに真正面から堂々と行ってやろうと思っている。 ただその交渉に必要な、とある事は現在調査中だけど。 「アデリナ。せめて交渉が無事に終わるまでは身分は隠しておけ。 これは命令だ。分かったな?」 ローランドが気難しい顔をしながら、しつこくそう言ってきた。 ◇ 私達は、二名の側近以外の騎兵達を、万が一の時の為に周辺にこっそりと待機させておくことにした。 山間にあるルナール達のアジトは狭い入り口以外厳重に鉄柵で囲ってあり、また所々にいかにも山賊といった感じの見張りが立っていた。 山賊達は、堂々と正面からきた私達をすぐに取り囲んだ。 彼らは小説で出てきた、闘剣と呼ばれていた野太い剣をちらつかせる。 両手を上げて無抵抗だとアピールすれば、意外と紳士的な男達は私達を中へと連行した。 門を潜れば城の要塞のような建物が見えてきた。 遂に目的のルナール達がいるアジトに突入成功である。 「頭領、変な男女が頭領に会いてえと。」 「あ?………誰だお前ら。」 その人物は中の一番豪華な部屋の椅子に座っていた。 ついにルナール登場! 白に近く、不思議な魅力を感じさせる、横に束ねた肩までの髪。 少し優し毛な印象の垂れ目。 鼻筋が綺麗で唇の形も綺麗。 顔は凄く若々しい。今は私達を警戒して睨んでるから雰囲気は怖く感じるけど。 小説ではルナールの確かな年齢は登場しなかったが、若いという描写はあった。 今は男のふりをしているが、綺麗さが全然違う。 うわあ。本当に美人すぎない!? 男の格好してるけど、女だって事は分かってる! ルナール!アデリナに続く、ローラ
沢山の屈強そうな山賊達が、ニヤニヤしながら私達を取り囲んでいる。 彼らは略奪や、村や町の破壊行動を繰り返す山賊だ。 だが結局ルナールの一派は奪われた地を奪還するという目的を持ち、ソーカル族の姫だった彼女を密かに守る、護衛達でもあるのだ。 何てアツいエピソードだろう!好き過ぎる。 何としても、ルナールと和解したい。 そして早くローランドの仕事を減らしたい。 「ルナール。私はクブルクの王妃、アデリナ・フリーデル・クブルクです。」 「……っ!」 真後ろで彼が舌打ちした音が聞こえた。だけど構わない。 ルナールの前に進み出て私はその目を堂々と見つめた。 下手な小細工はしないって言ったでしょ 「……!!ふぅん。お前があの王妃か。」 椅子の上で肩肘をき、顔を斜めに傾けていたルナールがニヤリと笑う。 女なのに男装して仲間をここまで引き連れてきただけあって、さすが迫力がある。 それにアデリナはこんな所にまで有名な性悪妻ってわけね。 「回りくどい言い方はしません。 私は貴方と和解交渉する為にここまで来ました。 今頻繁に行っている、略奪や破壊行動をやめて頂きたいのです。」 このままだとルナール一派は規模を拡大し、国に打撃を与える大きな組織となる。 そして最後、ルナールはローランドへの想いを秘めたまま戦いに敗れ、虚しく死んでしまう。 そうしない為にもこの交渉は絶対成功させなくちゃいけない。 「…それをして俺達には何のメリットがあるっていうんだ?王妃サマ。」 鋭い眼光が私を見下ろしていた。 髪はおしゃれな紐で一周巻き、耳飾りもガラス細工の様な繊細なものをしている。 着ているのは分厚い毛皮、ベルト風の紐、そしてブーツの様な靴。しかもモコモコだ。 下手したら最先端のおしゃれかと思う。 スラリと伸びた背丈、綺麗な指先が服の先から覗いている。
いくらクブルクの王がローランドとは言え、同じ領土内でも支配権が及ばないのがそのフィシである。 フィシ一族は昔から独立した権力を持ち、誰の支配も受けない強力な高位貴族だった。 その上フィシはクブルク王家にも金銭を献上したり、希少な鉄供給までも行って和平を保っていたので、ローランドは彼に直接手を出す事ができなかった。 むしろそれに害を成すレーヴェン一味の討伐を託される程である。 だからこれはローランドにとっても非常に厄介な問題だったのだ。 でもこの交渉が上手くいけば誰も傷付かず、誰も損しない。Win Winになるはず。 そうなる予定なんだけど。 「あのフィシが、あの強欲で狡賢い男がそう簡単にあの土地を手放すと思うか? それよりは…馬鹿みたいに俺の前に現れてくれたクブルク王妃を捕らえて、ローランド王を脅す材料にした方がまだ現実味があるってもんだろ。なあ?」 悪巧みするような笑みを浮かべるルナール。 「ぎゃははは、違いねえ頭領」「今が王を弱らせるチャンスですぜぃ」 煽られて周囲も似た様に笑い出した。 かっこいい……! さすがはルナール! この機転の早さと賢さに拍手してやりたいけどね! その瞬間、使いに出していたクブルク兵からの報告がタイミング良く届いた。 使ったのはクブルクに古くから伝わる伝書鷹である。 それには手紙と一緒にとある物が括り付けられていた。 怪訝そうにルナールに睨まれたが、構わず私は報告書を受け取る。 これで遂に材料が揃った。 「…分かったわ。 ありがとう。これで間違いないわね。」 「おいっ、一体何の話だよ?」 訝しがるルナールを前に私はクスっと笑う。 「ルナール。私が持っているこれ、何だと思いますか?」 私は報告書と一緒に括り付けられていた物を自分の手のひらに乗せ、ルナールに広げて見せた。 「…&helli
レーヴェン一味は残虐で、ローランドの側近達は前もって色々準備した方がいいとか言っていたが、私にはそうしなくても十分にルナールを説得する自信があった。 だから下手に小細工せずに真正面から堂々と行ってやろうと思っている。 ただその交渉に必要な、とある事は現在調査中だけど。 「アデリナ。せめて交渉が無事に終わるまでは身分は隠しておけ。 これは命令だ。分かったな?」 ローランドが気難しい顔をしながら、しつこくそう言ってきた。 ◇ 私達は、二名の側近以外の騎兵達を、万が一の時の為に周辺にこっそりと待機させておくことにした。 山間にあるルナール達のアジトは狭い入り口以外厳重に鉄柵で囲ってあり、また所々にいかにも山賊といった感じの見張りが立っていた。 山賊達は、堂々と正面からきた私達をすぐに取り囲んだ。 彼らは小説で出てきた、闘剣と呼ばれていた野太い剣をちらつかせる。 両手を上げて無抵抗だとアピールすれば、意外と紳士的な男達は私達を中へと連行した。 門を潜れば城の要塞のような建物が見えてきた。 遂に目的のルナール達がいるアジトに突入成功である。 「頭領、変な男女が頭領に会いてえと。」 「あ?………誰だお前ら。」 その人物は中の一番豪華な部屋の椅子に座っていた。 ついにルナール登場! 白に近く、不思議な魅力を感じさせる、横に束ねた肩までの髪。 少し優し毛な印象の垂れ目。 鼻筋が綺麗で唇の形も綺麗。 顔は凄く若々しい。今は私達を警戒して睨んでるから雰囲気は怖く感じるけど。 小説ではルナールの確かな年齢は登場しなかったが、若いという描写はあった。 今は男のふりをしているが、綺麗さが全然違う。 うわあ。本当に美人すぎない!? 男の格好してるけど、女だって事は分かってる! ルナール!アデリナに続く、ローランドに泣かされる不憫第二号! つまり私とルナールは同志……! 上手く友達に
吊り下がっていたランプを下ろして枕元に配置し直す。互いの顔が煌々と輝いて見えた。 ローランドは私と一緒の寝床に少し離れて横になる。 だが、こちらを見ながらまた今夜も私の名を呼ぶ。 毎回のように胸がギュンとなる。 「ローランド……あなた。 それ無自覚でやってるんですよね? また今夜も熱出す気ですか?」 「無自覚……? いや、熱は確かに済まないと思ってる。 こんな体質私だって嫌だ。」 そう素直に謝られても。 最近、本当にローランドの態度が軟化したような。 でも単に政略結婚の相手だからだよね? 自国民を守るため。 仕方なしに子作り宣言もしたんでしょ? 原作と同じで。 私はヴァレンティン目的だから利害が一致してるけど……あんたはいずれリジーを愛するようになるんだし。 しかも強引に側に引き寄せといて、ローランドは私の手を握る。 ぎゃ!何それ!どういう意味があるの? 私を油断させておいて殺すとか、そういう? 照明の灯りだけでも十分にローランドの顔が見える。 何を考えているのかは分からないが、横向きでこちらをジッと物言わず見つめている。 さっきまで冷え切っていたのにローランドに握られた手がじんわりと温かくなっていく。 さすがは良く熱を出す男だ……! 「おやすみ、アデリナ。」 「おっ、おやすみぃなさい?」 ローランドはのそりと起き上がり、私の額にキスをしてまた元の位置に戻った。 今度こそ仰向けになり数秒で寝息を立てる。 私の手はしっかりと握ったまま。 ……え。何今の。 今の何サービス………!!? 私はローランドのファンじゃないけど、ファンサ的な…&
訝し気な顔をして、フサっとローランドが一本に束ねていた銀の髪を解いた。 肩より下まである長い髪。 吊るされたランプの灯りに照らされて、絹糸のようにキラキラと光る。 この前から思っていたけど、ローランドの髪って何か宝石みたいに綺麗。 この国にトリートメントなんかないのに、何でそんなサラサラで纏まってるの? それが男主人公の特権なの? そういうの本当羨ましい。 「ローランドの髪って綺麗ですよね。」 「……触ってみるか?」 背中を見せていたローランドが、髪を持ち上げながら、私の方に視線を送った。 「え?いいんですか?」 「構わない。」 「え、じゃあ……お邪魔します?」 広い肩幅に広がる、ローランドの髪。普段は薄水色に見えるが、こうやってランプの光に当たると、また違った色に見えてくる。 そろそろとローランドの背後に周り、後ろの毛を何本かすくって手に乗せた。 「うーん。本当に綺麗。手触りもいいし。」 「お前の髪も綺麗だ、アデリナ。」 「そ、そう?青みがかった黒髪なんて地味じゃないですか?」 「いや、そんな事ない。少なくとも私は気に入ってる。」 「お、オホホ。お世辞をどうもありがとうございます?」 「お世辞ではない。本当にそう思っている。」 「も、もうっ、ローランドったら!このっ、この〜っ!そうやって色んな女の心を弄んでっ! そういうとこですよ!全く!」 「え?私は一度も女を弄んだつもりは…… というか痛いんだが。」 私は照れ隠しで、ローランドの背中をバシバシと叩いた。 よく考えたら、私、恋愛経験は翔一人だけだったし、こうやって男から褒められた事も少ない。 だからそう素直に言われると、困るというか。 それなのにローランドってば。 これだから無自覚モテ男は!