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第7話

作者: 安田徹
洋子は彼女の手を握り、やさしく言った。

「この件は、翔悟が申し訳ないことをした。でも、信じてほしいの。あの子は本当にあなたのことが好きなのよ。わざと傷つけたわけじゃないの。自分の気持ちにまだ気づいていないだけだから......もう少し、彼に時間をあげてくれない?」

静野は問いかける。

「おばあさまも知ってるんですよね。あの人が豊島さんのことを好きだって」

「好きなんてそんなものじゃないわ」

洋子はため息をついた。

「あれは、男の子が年上の女性に抱く、未熟で曖昧な感情にすぎないの。本物の愛というものを理解していないから、あなたを傷つけてしまうのよ。

結婚式まで、あと5日よ。あと5日だけ、あの子に時間をあげてくれない?もしその5日で変わらなかったら、婚約を解消すると約束するわ。

そのあとは......静野ちゃん、前から留学したいって言ってたでしょう?私が送り出してあげる」

「でも......」

静野は断ろうとした。

たった一日で、もう完全に失望していたから。

この先の5日間で、何が起こるかも分からない。

「おばあさんのためにも、あなたたちのためにも、お願い」

その慈しみに満ちた顔を見て、静野は結局うなずいた。

「......分かりました。5日、ですね」

「よかった。じゃあ今日はもう休みなさい。明日の朝、車を出させて送らせるわ。あの子と、ちゃんと話し合うのよ」

――

翌日。

静野が家に送り届けられたとき、ふとスマホを見下ろした。

一晩のあいだに、翔悟からの連絡は一通もない。

和歌奈と一緒にいるせいで、自分の存在なんて忘れているのだろう。

深く息を吸い込み、彼女は足を踏み入れた。

リビングに二人の姿はなかった。

気に留めることもなく、そのまま二階へ上がろうとする。

客室の前を通りかかったとき――ドアの隙間から中が見えた。

ベッドに横たわる和歌奈。

その傍らで、身をかがめて薬を飲ませている翔悟。

「翔悟くん、覚えてる?あなたが15歳のときも、こうやって薬を飲ませてあげたわよね」

「ああ、覚えてる。和歌奈、あんたがしてくれたことは、全部忘れない」

翔悟は彼女の手を取り、目いっぱいの愛情を込めて見つめる。

「あんたがいなかったら、俺はとっくに死んでた......」

「そんなこと言わないの。もうすぐ結婚する人が」

和歌奈は弱々しく彼の口を押さえる。

「それに、私のこと『おばさん』って呼ぶんじゃなかったの?」

彼はその手を握り返した。

「和歌奈って呼びたいんだ。今回、どれくらいこっちにいる予定なんだ?」

「あなたの結婚式が終わったら帰るつもりよ」

「そんなに早く?」

「翔悟くん、昔からそう。機嫌が悪いとすぐ眉を寄せる。これからは、もうそばでその顔をほぐしてあげられないのね......」

「行かないでくれ、和歌奈!」

翔悟は突然感情を爆発させ、彼女に覆いかぶさるようにして唇を奪った。

女は拒むように身をよじる。

「翔悟くん......だめ......やめて......」

和歌奈がふと目を上げる。

その視線は、ドアの前に立つ静野を捉えていた。

彼女は眉をわずかに上げ、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

その光景を見た静野は、冷笑を浮かべたまま、ドアを勢いよく押し開けた。

「何してるの?」

声を聞いた瞬間、翔悟は慌てて女を突き放す。

「静野......俺は......」

「ち、違うの静野さん、誤解しないで。翔悟くんは酔ってたの、それで......」

唇の乱れた口紅を見つめながら、静野は笑った。

「酔ってた?朝からお酒でも飲んでたの?ねえ、翔悟」

そしてそのまま、まっすぐ彼を見据える。

「彼女のことが好きなんでしょ?私と結婚したくないんでしょ?」

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