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第4話

Author: 星乃 ゆえ
その時、美和のスマホが鳴った。恩師からのメッセージだった。

【美和、ビザが下りたわ。明日の夜のフライトを取っておいたから、しっかり準備しておいてね。他の生徒たちもあなたの到着を楽しみにしているわ】

その言葉に、美和の胸はじんわりと温かくなり、思わず涙がにじんだ。

何年経とうとも、恩師と、自分が努力を重ねてきた専門分野だけは、彼女を裏切らなかった。

涙をそっと拭い、美和はすぐに返信を送った。

【はい。私も皆さんに会えるのを楽しみにしています。ありがとうございます、先生】

再び自宅へ足を踏み入れたとき、美和は、まるで別世界へ戻ってきたような気がした。

たった数日の間に、彼女の人生は天地がひっくり返るほどの変化を遂げていた。

家の中はひどく冷え切っており、明らかにこの数日間、言弥は帰宅していなかった。

だが、彼が去ることを選んだのなら、もう気に留める必要はない。

呆然としばらく立ち尽くしたあと、美和は片付けに取り掛かった。

カップル用のマグカップ、抱き枕、ぬいぐるみ――すべてをビニール袋に詰め込み、壁に飾ってあった二人の写真もすべて剥がし、一枚ずつ燃やしていった。

それらは、五年間の結婚生活の証であり、かつて「幸せの記録」だった。

「歳を重ねても、君の笑顔を鮮明に覚えていたいから、写真を残していこう」と、言弥は言っていた。

だが今や、それはすべて嘲笑の種となった。

これ以上、彼と築く未来など存在しない。

半日かけて、すべてを片付け終えた頃、美和は静かに明日の旅立ちを心に決めていた。

その時、玄関のドアが開く音がした。

美和は一瞬固まり、反射的に荷物を扉の陰へ押し込むと、寝室のドアを閉めてリビングへ向かった。

やはり、帰ってきたのは言弥だった。

美和の姿を目にした瞬間、言弥の顔に喜びと、深い愛情が一気にあふれ出した。

まるで長い出張から戻った夫が、愛しい妻を目にしたかのように。

駆け寄ると、言弥は迷いなく美和を抱きしめ、声を震わせた。

「美和、やっと帰ってきてくれたのか。本当に会いたかったよ……」

麻痺していたはずの美和の心が、一瞬にして締めつけられ、呼吸が苦しくなった。

美和には理解できなかった。

どうして、彼は何事もなかったかのように振る舞えるのだろう。

どうして、こんなにも巧みに嘘がつけるのだろう。

必死に彼の腕を振りほどき、後ろに目をやると、そこには藤原真理子(ふじわら まりこ)――言弥の母親がいた。

心に漠然とした予感がよぎる。

「お義母さん」――その言葉が喉に引っかかり、どうしても口にできなかった。

真理子は視線を彷徨わせ、申し訳なさそうに口を開いた。

「言弥が管理人から、あなたが帰ったと聞いて、わざわざ私を呼んで説明しに来たのよ。

美和さん、子供の件は本当に想定外だったの。言弥は最初、望んでいなかったんだけど、私の夫が病気でね……どうしても孫の顔が見たいって言うのよ……だから私たちが……」

言弥も美和の前にしゃがみ込み、彼女の腰を抱きながら、へりくだった口調で詫びはじめた。

「美和……あの日、どうしてあんなに酔ったのか、自分でもわからない。訳もわからず彼女と寝てしまって……こんなことになってしまった。

でも、彼女のことは好きじゃないし、君を裏切るつもりなんてなかった。

父さんのためじゃなければ、子どもを残すなんてこと、絶対にしなかった。……一度だけでいい。今回の過ちを許してくれないか?」

充血したその瞳には、哀願と屈辱が混じった色が揺れていた。

その言葉のひとつひとつが、あの子どもへの無関心を語っていた。

でも美和の耳には、すべてが滑稽に響き、顔色はさらに曇っていった。

もし、さやかのSNSを見ていなければ――自分を納得させられていたのかもしれない。

だが、美和は知ってしまった。

言弥が心から、あの子の誕生を望んでいることを。

もうこれ以上、彼のことを信じることはできない。
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