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129.思い出の場所

last update Last Updated: 2025-12-23 18:03:31

玲央side

週末の土曜日。俺は、父と璃子を乗せ、西伊豆の切り立った崖に位置する「恋人岬」に向かって車を走らせていた。

後部座席に座る璃子を気遣って、自ら話題を振っていた父のおかげで、道中はとても楽しく和やかな空気が流れていた。しかし目的地が近づくにつれて、助手席からの言葉数は目に見えて減っていった。

窓の外を流れる伊豆の鮮やかな緑も、父の目には映っていないようだった。その横顔には、璃子の母親の無事を祈る切実な思いと、もし本当にそこにいた場合の今後のあり方を模索する複雑な苦悩が滲み、眉間には深い皺が刻まれていた。

駐車場に車を止め、岬の先端へと続く遊歩道を三人で歩く。時折すれ違う観光客の楽しそうな浮き足立った笑い声とは対照的に、俺たちの間には会話がなく、ただ松林を抜ける潮風の音だけが異様に大きく耳を打った。

「……あそこよ」

璃子が震える指でさした先には展望デッキがあり、水平線に沈みゆく夕陽が海水に反射してキラキラと黄金色に染め上げている。

デッキにはまだ恋人同士と思われる二人組や家族連れなど多くの観光客が残り、鐘の前で記念撮影をするなど賑やかな雰囲気に包まれていた。しかしその中で、一人の女性の背中に俺たちは釘付けになった。璃子は驚きのあまり、こぼれそうになる悲鳴を抑えるように両手で口を隠した。

潮風に吹かれ、細身の背中には璃子と同じ艶やかなロング

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