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第2話

Auteur: 春を追って
「金、金、金って……俺の妻じゃ不満か?お前はもう、金の話しかしないんだな。

どうしてお前はそんな人間になってしまったんだ?

こんなお前とよりを戻したのは、間違いだったかもしれないな」

間違い、だって?

ええ、私もそう思っているわ。

元カノと切れずにいるような男だって知ってたら、絶対に結婚なんてしなかったのに。

私は思わず笑って、また純一にお金を催促するジェスチャーをした。

「ええ、私はこんな浅はかな女だよ。茜さんのように上品じゃない。だから、早く金をくれよ」

純一は呆然とした。

俊介がスマホの画面を消して駆け寄ってきた。そして、小さな両手を広げて、純一をかばうように私の前に立ちふさがった。

「ママの意地悪!パパをいじめないで。

200万円でしょ?僕があげるよ」

次の瞬間、一枚のキャッシュカードが私の顔に投げつけられた。

子供は力の加減が分からないから、カードの角で私の頬を切ってしまった。

そのやり方は、かつて純一が私に手形を投げつけた時とそっくりだった。

さすがはお金持ちの親子ね。私が離婚した時、親戚中に頭を下げても借りられなかったお金を、こんな小さな子供でも簡単に差し出してくるんだから。

血が頬を伝い、床にぽたぽたと落ちた。

でも私は気にせず、まず床に落ちたカードを拾った。

この200万円があれば、母にもっと良い薬を使ってもらえる。

俊介は私が血を流すのを見て慌てたようだ。無意識に、「ママ……」と声を漏らした。

彼が私に手を伸ばそうとしたけど、大きな手に阻まれた。

純一は俊介を片腕で抱き上げると、複雑な表情で私を見下ろした。

「俊介、よく見ておくんだ。君が大きくなったら、こうやって金をせびってくる貧乏人がいくらでも寄ってくるぞ。

しっかり気をつけろ。たとえ実の母でもな」

そう言うと、彼は俊介を連れて行ってしまった。

一度も、こちらを振り返ることはなかった。

傷の手当てを済ませると、私は部屋に戻ってぐったり眠ってしまった。

次に目を覚ましたのは、階下から聞こえてくる楽しそうな笑い声が原因だった。

ソファでは、茜が俊介と夢中になって遊んでいた。

私の視線に気づいた純一は、悪びれる様子もなく、当たり前のように言った。

「茜が、お前がネットの噂のうまく対処しなかったせいで大泣きしたんだ。何かあったら心配だから、ちょっとうちで休ませてるんだ。

気にしないでくれ」

私は何も言わず、ただじっと俊介を見つめた。

この子がこんなに楽しそうに笑うのを、どれくらい見ていなかっただろう。

私が黙り込んでいるのを見て、純一は気まずそうに表情を曇らせ、少し口調を和らげた。

「もし、お前が嫌なら……」

「別に、かまわないわ」

私の言葉に純一は一瞬詰まったが、すぐに表情を立て直した。

「駆け引きのつもりか?つまらないな。

どうせ俺を止められないと分かって、やり方を変えたのか?

昔のお前は、こんなんじゃなかった」

確かにそうね。昔の私は、純一と茜が一緒にいるのを見ただけでおかしくなりそうだった。彼の服から知らない女の香水の匂いがすれば、家中のものをめちゃくちゃに壊してたんだ。

昔の私は、ほんの少しの嘘も裏切りも許せなかった。

でも今の私は、少し賢くなった。

愛なんて何の役に立つの?やっぱり金の方が大事よ。

だから、私はまた純一に手を差し出した。「さっき、彼女の名前を2回呼んだわね。400万円、ちょうだい」

純一は鼻で笑うと、何度も頷いた。

「いいだろう。くれてやるよ。

もっと金になる話があるが、乗るか?」

私は顔を上げて、彼をまっすぐに見つめた。

この男が、そんなに親切なはずがない。

私の考えを読み取ったように、純一は気だるげに口を開いた。

「記者会見を開いて、ネットの動画はお前が茜に嫉妬して、記者に金を渡して造った偽物だと言え。

それが済んだら、4億円やる」

「狂ったの?」私は思わず言い返した。「あのネットの噂、すぐにあなたが押さえたじゃない」

意味が分からない。純一自身が招いた騒ぎなのに、どうして私が悪者にされなくちゃいけないの?

純一の声は、氷のように冷たかった。

「ああ、押さえたさ。だが、この一件で茜は深く傷ついたんだ。お前が謝罪するのは当然だろう?」

私は怒りを超えて笑い出した。「どうして私がその条件に応じると思ってるの?」

純一はゆっくりとスマホを取り出し、集中治療室にいる母の写真を私に見せつけた。

「これを盾にするのさ。お前の母の主治先生を紹介したのは俺だし、あの病院のスポンサーも俺だ」

画面に映る母の青白い顔を見て、久しぶりに恐怖で全身が凍りつくのを感じた。

ぎゅっと握りしめた拳を、私はゆっくりと開いた。

「……わかったわ。同意する」

頷いた瞬間、力が抜け、冷たい汗が全身に渡った。

そばにいた俊介は、大喜びで飛び跳ねた。

私が邪魔だったのだろう。俊介は私を押しつき、茜に抱きついた。

「やったあ!意地悪なママが、やっと茜さんに謝るんだ。

茜さんのほうがお姫様みたいで好き」

茜は声を立てて笑い、得意げな視線を私に向けた。

「ごめんなさいね、莉子さん、俊介くんは、私のほうにもっと懐いてるみたいです」

私は自嘲気味に口角を上げた。「そうね、私とは親子とは思えないものね」

私が背を向けてその場を離れた時、純一が複雑な表情で私を見ていたことには、気づかなかった。

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