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第4章:亀裂

Author: 佐薙真琴
last update Last Updated: 2025-11-28 15:17:28

 ロガンのオフィスは、オースティン中心部の高層ビルの35階にあった。床から天井まである窓からは、街全体が見渡せた。だが、ロガンが最近見ているのは、オースティンではなく、セダー・ヒル地区の地図だった。

「これを見てくれ」

 ジェームスが会議室に入ってきた。彼の手には、厚いファイルがあった。

「何ですか?」

「グレース・モンゴメリーについての詳細調査結果だ」

 ロガンは一瞬、躊躇した。彼は2週間前、プライベート調査会社に、グレースの背景調査を依頼していた。表向きの理由は「交渉戦略の立案」だったが、本当の理由は——彼自身も説明できなかった。

「報告してください」

 ジェームスはファイルを開いた。

「グレース・モンゴメリー、38歳。旧姓はグレース・アンダーソン。2003年にマーク・モンゴメリーと結婚。子供は2人——14歳の娘と12歳の息子。現在、子供たちは彼女の両親が養育している」

「なぜ?」

「それが……問題なんだ」

 ジェームスは次のページをめくった。

「マーク・モンゴメリーの死後、グレースは深刻な財政問題に直面した。マークは生前、オンラインギャンブルの借金を抱えていた。総額120万ドル」

 ロガンの表情が変わった。

「120万?」

「ああ。グレースは夫の死後、初めてその事実を知った。債権者からの取り立てが始まり、彼女は自分の貯金、マークの生命保険、全てを使って返済した。だが、まだ40万ドルの借金が残っている」

「セダー・ヒルの家は?」

「テキサス州の家族住居法で保護されている。主要住宅は債権者から差し押さえできない。だから、あの家は彼女が持っている最後の資産なんだ」

 ジェームスは ロガンを見た。

「つまり、もし彼女があの家を失えば、文字通り何も残らない。子供たちを引き取ることもできなくなる」

 ロガンは黙ってファイルを読み続けた。

 グレースの銀行口座の残高——8,743ド

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