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第35話

ผู้เขียน: 結奈々
柚香は、少しでも値段を上げようとした。「二千万」

「うちのボスにとって、この指輪は何の価値もないことは、あなたもわかっているでしょう」時也の部下は、冷たい声音のまま「演技」を続けた。「買うのも、ただ遥真様にひとつ意地悪をしたいだけです」

「じゃあ、意地悪なら二千万のほうが効果あるんじゃない?」柚香が言う。

時也の部下は立ち上がり、帰るそぶりを見せた。「どうやら橘川さんは、これ以上会話を続ける気がないようですね」

「千二百万でいいわ、千二百万円!」柚香は慌てて呼び止め、握っていた指輪の箱をぎゅっと握りしめた。「今すぐ振り込んで」

相手はあっさり承諾した。

取引はあっけないほど簡単だ。入金の通知が届くと、柚香は指輪を彼らに渡す。

そしてそのとき彼らが、そもそも遥真の兄の部下ではないとはっきり悟った。兄の部下なら、指輪ひとつなんて買わないし、この場で必ず助言や協力の話を持ちかけてきたはずだ。

兄の性格なら、遥真に対抗するチャンスを絶対に逃さない。

――でも、遥真の兄であろうとなかろうと、もう柚香にはどうでもよかった。

欲しいのは、指輪を売ったお金、母の手術費だけだ。

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