Se connecter「キャー! 花嫁様がご乱心よ!!」
雷鳴轟く不吉で妖しい人外境なる魔界。
ウルヴァスの屋敷にて使用人達の悲鳴が上がる。嫌がるロザに意地でも花嫁衣裳を着せようとした結果、キレたロザが剣を振り回したのだ。一つ目の使用人達が慌てふためくのを主のウルヴァスは酒瓶片手に笑う。が、しなやかな体を曝したほぼ半裸のロザが視界に飛び込んでくると、目の色を変え、思わず酒瓶を手の中でばりんと割った。
「こいつ等をなんとかしろ、ウルヴァス!!」
激昂するロザはシャーシャー威嚇してくる使用人達を剣先で指し示す。
「夜伽の作法や性教育を叩き込むだの、フェロモンを上げるあれやこれや飲めだの食えだの、うるさい!!」
「まぁまぁ、落ち着け、我が花嫁よ」自分にまで振り翳される剣を器用に避け、隙だらけのようでいて実は隙のない身のこなしで瞬時にロザの懐に行き着くと、ウルヴァスは剣を持ったままのロザを軽々と抱きかかえた。
「なっ何を」
「使用人どもに任せて悪かった。俺自ら、手取り足取り一から教えてやろう」さすがに腕の中では剣を振るえないロザ、だが、今にも頭上の顔を引っ掻きそうな険しい顔つきで喚いた。
「俺は男だ! 大体、いつ! お前の花嫁になると約束した!?」
「誓いの刻印を授けただろう?」左手の薬指に刺青の如く刻まれたウルヴァスの噛み跡。
ロザは首を左右にブンブン振った。「全て! お前が勝手にしたことだ! 離せ!」
「ふ。お前は本当に無礼極まりないな。ま、そこがそそるんだが」 「離せ!!!!!」 (――しかしコイツがいなければ確かに俺は死んでいた)あの戦場で、勝利を迎える前に、首を刎ねられていただろう。
暁の森であの一角獣に王子を引き合わせたのも、恐らくウルヴァスだ。あの出会いがなければ魔獣からの恩恵が得られずにもしかしたら国は滅んでいたかもしれない。もちろん兵達の力を疑うわけではないが。(幸運の女神とやらの効果は大きかったはずだ)
「どうした?」
広々とした寝台の上。
中央で堂々と寝そべるウルヴァスからできる限り距離をとりつつも、同じ寝台の上にいるロザは膝を抱き、花婿なる魔族を見つめる。丈の長い漆黒のローブは揺り椅子に放り投げ、手には革手袋、重厚な艶を要するブーツを履いたまま彼は寛いでいた。独りでに灯る燭台の火に不敵に煌めく青水晶の双眸。板についた片笑みから危うげなまでに滴る圧倒的色気。紳士淑女を容易く骨抜きにしてしまいそうな人間離れした類稀なる容姿。
(この命を、愛する者達を救ってくれた、その礼という意味で)
「ロザ」
(一夜、この身を捧げてみようか)
「やっとその気になったか、我が花嫁」
「……俺は男だ。お前の花嫁になどならん」仰臥するウルヴァスに手を差し伸べられてロザは切れ長な双眸を瞬かせる。
『いずれお前を迎えにいくぞ、ロザ』 すでにロザはウルヴァスに半身を囚われている。「これは礼だ」
ロザはそう呟くとウルヴァスの手をとった……。
そして。 二人は結ばれ――………… 「うわぁぁぁあ、やっぱり無理だぁぁあ!!」 「往生際が悪い」 「いやだ、お、王子っ、王子の元に戻る!!」 「あんまり付き纏うと一角に蹴られるぞ」 「うううう」ホームシックにかかって泣き喚くロザをウルヴァスはローブに包んで抱きしめてやった。
「まさかお前が子どものように愚図るとは」
「うううう」翼竜の背で涙を堪えていたロザを思い出し、ウルヴァスは、小さく笑う。腕の中で号泣する愛しい花嫁のしなやかな身を暖めてやる。
ロザはウルヴァスの胸に縋って泣き崩れた。「お前の涙になら溺れ死んでもいい」
――初夜を迎えるのはいつになるやら。
我が花嫁よ、寝所に剣を忍ばせるのも一興だが、たまには愛を乞うのも悪くないぞ? ――あの青水晶に毒されたか。 この身に巣食う熱は衰えもせずに心を蝕むばかり。 恨めしいぞ、我が夫よ?帰りが遅いのを心配して自分を探しにきた母親の気配に子どもは目を丸くさせた。やがて父親の声もまじり、次第に近づいてくる呼びかけにどうしようかと迷い、隣に立つオペスを見上げる。「おかあさん、おとうさん、来ちゃった……どうしよう」オペスは答えなかった。 特に動揺するでもない様子で声のする方向へ視線を傾けていた。おろおろしている子どもの視界に最初に現れたのは……母親だった。凛とした切れ長な目、癖のないブルーブラックの髪を一つに束ねた彼女は、探していた我が子を見つけてまず安堵の表情を、そして隣にいるオペスに戸惑いの眼差しを向けた。駆け寄ってきた母親に抱き締められて子どもはパチパチと瞬きする。 帰ってこないから心配していた、もう二度と誰も失いたくないと言われると、温かな腕の中でぶわりと涙を浮かべた。「……ごめんなさい、おかあさん……」自分の不注意のせいで弟を失ったと、幼いなりにずっと後悔していた子どもは母親の愛情を直に浴びて素直に謝る。両親に嫌われたのではと不安で仕方なかった日々。自分が代わりにいなくなればよかったと頑なに思い込み、秘密の友達に縋って現実逃避に走っていた日々。力いっぱい抱き締められて日に日に募っていった不安や恐れは蹴散らされて……。「……オペス?」自分を抱く母親の背後にオペスがゆらりと迫る。 子どもは不思議そうにその名を呼ぶ。我が子のそばにいた見知らぬ相手に警戒心を抱いていた母親は、大切な家族を守るため自分の体を盾にするようにして、振り返る――。――西日に浸された森がさらに赤く染まる。 ――世にも貪欲な牙が惨劇を綴る。オペスが手放せば糸が切れた操り人形のように地面に倒れた母親。 最初の首筋への口づけで迸った鮮血は真正面にいた子どもにまで飛び散っていた。木立の狭間から惨劇が垣間見えて愛する者の名を叫びながら駆けつけた父親。 半狂乱の体であった彼をオペスは造作なく捕らえた。 そのまま一思いに残酷な口づけを
誰かが泣いている。 まだ年端も行かない幼い子どものようだ。(あんなに泣いて、可哀想に……)柔らかな木漏れ日の差す森の中で立ち止まっていたロザは歩き出す。鬱蒼とした茂みを掻き分け、小川を飛び越え、咲き渡る白い草花を練って泣き声のする方へと進んだ。(……見つけた……)小さな男の子が大木の根元に蹲って泣いていた。 簡素ながらもこぎれいな身なりをしている。 体つきからして六、七歳くらいだろうか。「……ごめんなさい……」膝に顔を埋めた子どもは誰かに対して謝っていた。周囲に人影はない。静寂に包まれた森の中で、ひとりぼっちで、まだ幼い少年が一体何を悔いるというのか……。そのとき。 一陣の風が吹いた。枝が大きくしなって葉が舞い乱れ、泣いていた子どもは驚いた様子で顔を上げる。視線の先にゆっくりと現れた一人の男……魔族のオペスを震える眼で見つめた。「だれ……?」長髪長躯のオペスは子どものそばで足を止める。黒布に隠されていないその顔は慈しみ深き微笑を湛えており、幼いなりの警戒心や不安を宥める穏やかさを擁していた。「どうしてそんなに悲しそうに泣いている……?」 「……」 「何か苦しいことがあったのか……?」物静かな口調で問われて子どもは堰を切ったようにしゃくり上げた。「ぼくのせいで弟がっ……」オペスが大きな手でそっと頭を撫でれば子どもは彼にしがみつき、涙しながら懺悔を口にする。「おかあさんの具合がわるくて、おとうさんは畑にいくから、かわりにぼくが見てなきゃいけなかったのに……弟はひとりで湖に……ぼくのせいで……」 「そうか。怖くて寂しい思いをしたんだな」 「っ……うん……こわかった……でも弟は……きっともっとこわかった……」泣きじゃくる子どもをオペスは優しく抱きしめた。「邪気のない、慈しむべき子。泣くといい……悲しみは風が攫ってくれる」――鳥の囀りがどこからともなく地
ウルヴァスの忠告を念頭においてロザはまた白い花の咲き渡る美しい森を訪れた。「ことりっ」まるで待ち構えていたかのように飛んできた小鳥にピピが喜びの声を上げる。清澄な空気の流れる森は何だか呼吸がしやすいような気がして、小鳥と戯れるピピを隣にしてロザは一息ついた。(美しくて不思議な森だ)これまで魔界では見たことのなかった白い草花、青々と茂る木々、澄み切った小川。(まるで魔界じゃないみたいだ)「あ……」不規則に連なる木立の狭間におもむろにオペスが現れた。長い髪を靡かせ、緩やかな足取りで目の前へやってきた彼をロザはおずおずと見上げる。「……よく来たな」黒布越しに届く落ち着いた声色、静かに凪ぐ翠玉の瞳にロザは内心疑問を抱いた。(この人が過去に人間の血を奪っていたなんて信じられない)「ウルヴァスに聞いたか」 「え?」 「私が吸血筋だと」(……吸血公爵。子ども以外の人間の生き血を延々と呑み喰らってきた貪欲大食なる魔族……)「その通りだ、ロザ」ウルヴァスの忠告は忘れずに注意を払いつつ、ロザは、顔の半分が隠れていて表情が把握しづらいオペスを仰ぐ。「自分の牙を折ったと聞いた。もう血は奪っていないと」 「……」 「俺は……俺も過去に過ちを犯した。許されるとは思っていない」 「お前の罪など風に攫われる程度のものだろう」オペスがそう言えば一陣の風が梢を揺らして二人の間を吹き抜けていった。「……ほらな。もう跡形もない」乱れた前髪を払ったロザはまじまじとオペスを見上げる。ピピのはしゃぎ声と小鳥の囀りが交差する中、無意識に自分自身の胸を押さえた。「この森は……不思議な感じがする。昨日も今日も俺達を温かく出迎えてくれているみたいだ」胸の上で落ち着きなく片手を彷徨わせているロザをオペスは労わるように見つめる。「……私は懐かしく思う」 「貴方がつくったんだろう、この美しい森は。何か思い入れのある場所にでもなぞらえたのか?」ロザの問いにオペスは深く頷いた。ふと頭を垂れると両手を首の後ろに回し、首から下げた革紐を解く仕草を見せていたかと思えば、外衣の内側からソレを取り出してみせる。(……何だろう……?)差し出されて何とはなしに受け取ったロザはソレを眺める。 革紐の先には小さな石のようなものが取り付けられていた。 錆びているのか、
小鳥の囀りがどこからともなく聞こえてくる優しい森。 目に映るもの全てが瑞々しく、視界が潤うような緑ばかりの中、その屋敷は現れた。鬱蒼とした木々とコントラストを成す、くすみがかった淡く白い外壁。 連続するアーチ窓に急勾配の腰折れ屋根など、繊細な造形美の際立つ味わい深い外観をしていた。「ピピ!」屋敷の前で小鳥と遊んでいたピピを見つけ、ロザはオペスを追い越して駆け寄る。「勝手に遠くへ行かないでくれ、心配するだろう」 「ふぇ~、ごめんなちゃい」 「それ、本気で思ってないだろ、この……!」しゃがみこんだロザはピピの大きな三角耳をこちょこちょし、こちょこちょされたピピはきゃあきゃあ笑って胸に飛び込んできた。「まるで兄弟のようだな」頭の上に乗った小鳥にも気づかずにピピを抱き止めていたロザは、自分達をそっと見下ろすオペスの言葉にパチパチ瞬きし、家族みたいだと言われた混血の子どもをまじまじと見つめた。「どこが兄弟だ。蝙蝠もどきのへなちょこチビに振り回される哀れな花嫁だ」むっとするしかないウルヴァスの言葉には「あっかんべー」で仕返ししておいた。「……せっかくの機会だ。寄っていくか?」 「お前の屋敷は辛気臭いし陰気臭い。それに俗世嫌いのお前から誘ってくるなんて珍しい。まさかロザのことを本気で――」 「じゃあウルヴァスは一人で帰ったらいい。せっかくだから俺とピピは寄っていく」 「ピピっ、よってく」 「辛気臭い陰気臭い男の元に花嫁を置き去りにできるわけがないだろう。俺も付き添ってやる」「――オペスには近づきすぎるな、ロザ」オペスの屋敷から帰ってくるなりウルヴァスに忠告されてロザは面食らった。「奴は人間の生き血を喰らう吸血筋だ」ピピはおやつをもらいに厨房に行っていて自分達以外に誰もいないロザの部屋。壁に追い込まれて逃げ場を塞がれた花嫁はウルヴァスの発言に耳を疑う。「吸血筋……?」
地面に咲き渡る白い草花。 樹木が伸び伸びと呼吸して枝葉を張り巡らせる瑞々しさに満ちた清澄なる森。「……誰だ……?」ウルヴァスの屋敷近くに忽然と出現した森を訪れていたロザは、一際立派な大木のそばに佇む彼に問われたものの、うまく回答できずにただ相手を見返すばかりだった。腰まで届く長い黒髪。 ウルヴァスよりも背が高く、顔の下半分は黒布で覆われていて一目では把握しづらい顔立ち。足首まである丈の長い外衣を着込み、ほとんどの肌を隠した長髪長躯の男の頭上では白い小鳥達が枝にとまっていた。(聞かれているから答えないと、相手に失礼だ)頭の中ではわかっているのに何故だか言葉が出てこない。 掴みどころのない妙な感覚に圧迫されて思考も回らない。(……何だ……この感じは……?)「ピピですっ」ロザははっとする。自分のすぐ背後で元気よく返事をしたピピを慌てて顧みた。「ピピ……まだ小さい。魔族と魔獣の混血子か……」男は大木のそばからゆっくりと歩き出す。 ロングブーツの靴底で落ち葉の降り積もる地面を踏み締め、地表に現れた木々の太い根を乗り越え、ロザの正面へやってきた。眦が深く切れ込んだ冴え冴えとした目。 この美しい森とお揃いのような翠玉の瞳にロザはほんの少し視線を奪われる。「ピピとね、ロザっ」 「ロザ……?」 「あ……すまない、名乗るのが遅れた、俺はロザだ。貴方は……?」敵意はなさそうだが、油断はせず、不可思議な心地から脱して正気を取り戻したロザは前へ出ようとするピピを制して尋ねた。「……」顔の半分が隠れていて表情がわかりづらい黒衣の彼にじっと見下ろされると、また、得体の知れない感覚が込み上げてきてロザは内心戸惑う。「……お前は……」中低音域の弦楽器が奏でる重厚な音色にも似た深みある声で男が呟き、胸を押さえたとき。 その肩に白い小鳥が一羽、舞い降りた。「わぁ、ことり~」 「……私の森にいつの間にか住みついた」 「ピピもさわりたいっ」ロザの後ろから赤目をキラキラさせて顔を覗かせているピピを見、男は、肩にとまる小鳥に指を差し出した。ピィピィと囀って誘われるがまま指にとまれば、腰を屈め、小さいピピの方へと傾ける。「わぁ」自分の銀髪頭に飛び乗って大きな三角耳をツンツンする小鳥にピピはさらに目を輝かせた。「……か弱げで邪気のない。慈しむべき
「や、やだ、もういいッ……頼むからッ……待っ……っ……んんっ……ぁ」ロザがいくら嫌がろうが、髪を引っ掴もうが、ウルヴァスはお構いなし。 初心な乳首を好きなように思いのまま貪る。 屹立した突起をじっくり食んでは啜り、勢い任せにむしゃぶりつき、どちらも交互に余すことなく可愛がった。「や……っ」濡れそぼった乳首を器用な指先に囚われ、念入りに捏ね繰り回されると、この上ない甘痒さに犯されてロザはまた胸を反らしてしまう。「ロザ、またおねだりか……愛おしくて敵わない花嫁め」乳輪ごとかぶりついてきたウルヴァスにロザは悶絶した。 ゾク、ゾク、甘い戦慄が背筋を駆け抜けていく。 まだ触れられていない下肢に熱を溜め込んで全身を火照らせた。「ん……ッ……ッ……!」速やかにやってきた最初の絶頂。 射精は伴わずに胸への口づけだけで痺れた脳天。 癖づきそうな快感に身も心も一呑みにされた。「母乳は出なかったな」しぶとい絶頂の波に半身を攫われているロザは気怠そうに瞬きし、真上に居座るウルヴァスを薄めがちに仰ぐ。「ッ……だから……出るわけないだろ……いい加減にしてくれ……」サラリと流れた長い前髪に片目が隠れたウルヴァスは欲深げに濡れた唇を歪めてみせた。「こっちは出るだろう……?」そう言って、服の上からでもわかるほど昂ぶっていたロザの下肢に触れる。「ッ……さ、触るな」 「胸への奉仕だけでこんなに昂ぶらせて、すぐ楽にしてやる」 「必要ないッ……ッ……く……ぅ……ッ」服の内側に潜り込んできたウルヴァスの手に熱源を握られ、おもむろに愛撫されて、ロザは切なげに呻吟した。「……そうだな、悪夢で苦しむ声よりも快楽に溺れる声の方が断然いい」下着の中で窮屈そうにしていたペニスが取り出される。 隙のない滑らかな動作でロザの両足の間に割って入り、頭を屈めたウルヴァスは躊躇なくその頂きを一息に頬張った。「ッ……うそだろ、待てッ……おい、ウルヴァス……ッ」耳たぶの隅々まで紅潮させてロザは起き上がろうとした、しかし官能的にも程がある舌遣いでもてなされ、うまく力が入らない。控え目に色づく亀頭をねっとりと舐め上げられる。 鈴口から裏筋、括れから根元まで満遍なく。生温く潤む口内での手厚い歓迎に勝手にビクビクと跳ねる腰。 溢れ出る先走りまで舐め取られ、