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追放

Author: rinsan
last update publish date: 2026-06-17 11:26:53

田舎の長の娘として生まれ、欲するものは手を伸ばせば届く

――そんな世界で育ってきた杏姐にとって、

後宮で与えられた扱いはあまりにも現実離れしていた。

まるで、ぬるま湯の井戸から突然、底知れぬ深淵へ放り込まれたかのようだった。

己が世間知らずであったことを、今さらながら思い知らされる。

井の中の蛙――その言葉が胸の奥で鈍く響き、逃げ場のない羞恥となって杏姐を締めつけた。

屈辱は、静かに、しかし確実に彼女の誇りを侵食していく。

頬を伝う涙は、悲しみではない。

ただただ、己の無知を突きつけられた痛みと、踏みにじられた自尊心の味がした。

「お嬢様!」

息を切らし、胸を上下させながら駆け寄ってきた梅鈴の声が、

静まり返った回廊に震えるように響いた。

杏姐は振り返り、その姿をじっと見据えた。

化粧気ひとつない顔、色褪せた布を重ねただけの粗末な衣。

それは彼女自身の落ち度ではない。生まれた家の貧しさが、そのまま形になっただけのこと。

——それでも。

今の杏姐には、そのみすぼらしさが、まるで自分を嘲る鏡のように映った。

梅鈴の存在そのものが、胸の奥に沈殿した苛立ちをかき混ぜ、憎しみへと変えていく。

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