FAZER LOGIN鬼頭さんからの呼び出しは、三日と開かずに来た。スマホが振動するたびに、胃の奥がきゅっと縮むような感覚がある。
メッセージを開くと、いつものようにホテルの名前と部屋番号、位置情報が表示されていて、『すぐ来い』という短い命令が添えられていた。
歩に「バイトが入った」と嘘をついて家を出て、指定されたホテルに向かう。高級ホテルのロビーを抜けて、エレベーターに乗る。部屋に入ると、いつものように女性の香水の匂いが鼻をついた。
甘ったるい香りが部屋に充満していて、ベッドが乱れている。枕元に長い髪の毛が落ちていて、前回とは違う色だった。香水の匂いも違う。今日はフローラル系の強い香りで、前回のムスク系だった。
鬼頭さんは僕を抱く前に、女を抱いているのだろう。もしかしたら借金で首の回らない女を抱いているのかもしれない。
鬼頭さんが、冷たい視線で僕を見る。言葉もなく、ベッドに押し倒されて服を脱がされた。抗う気力もなく、鬼頭さんに身体を許す。淡々と腰を動かされて、奥を突かれる。鬼頭さんは何も言わずに僕を抱いて、満足すると引き抜いた。
終わるとすぐに着替えて、家まで送ってくれる。車の中でも、二人とも何も話さなかった。家の前に着くと、形式的な礼を言って車を降りる。
数回繰り返せば、僕の身体も順応していく。あれだけ香水の匂いに、吐き気を催していたのに、もう何も思わない。
ある日、いつもより早い時間に鬼頭さんからメッセージが届いた。
「夕食はテーブルにあるから。バイトに行ってくる」
居間で勉強していた歩に告げると、慌てて上着を羽織る。スマホを確認すると、今回はホテルの名前ではなく、住所が書かれていた。地図を見ると、高級住宅街の一角だった。
電車に乗って、指定された駅で降りる。駅から少し歩いたところに、高層マンションが立ち並んでいた。指定された住所のマンションを見つけて、エントランスに入った。
自動ドアの前で、部屋番号を押すとすぐに鬼頭さんの声が聞こえてきた。
「入れ」
ロックが解除される音がした。中に入って、エレベーターで最上階まで上がった。
廊下を歩いて、指定された部屋番号を探していると。ドアが開いて、鬼頭さんが立っていた。今夜はスーツではなく、黒いシャツとスラックス姿だった。
「どうぞ」
促されて中に入ると、広々としたリビングが目に入った。高い天井に、大きな窓。夜景が一望できる部屋で、見るからに高級な家具が並んでいる。
(まるでモデルルームみたい)
鬼頭さんが僕の手を引いて、寝室に向かった。ドアを開けると、大きなベッドが置かれている。
いつもと違い整えられているベッドに少々驚いた。今夜は誰かの後じゃない。
(僕が一番最初?)
寝室には鬼頭さんの匂いだけが漂っていて、胸が締め付けられた。
ベッドに押し倒されると、鬼頭さんが覆い被さってきた。
「鬼頭さん……」
名前を呼ぶと、唇が塞がれた。甘いキスに、身体が強張る。鬼頭さんの舌が優しく口の中に入ってきて、丁寧に口内を蹂躙していった。
キスをされながら、服を脱がされる。上着が脱がされて、シャツのボタンが一つずつ外されていく。ズボンも下ろされて、下着まで全て剥ぎ取られた。
鬼頭さんの手が僕の身体を撫でて、胸の先端に触れる。指で転がされて、軽く摘まれた。
「んっ……」
声が漏れて、身体が跳ねる。鬼頭さんの唇が首筋に移動して、舌で肌を舐められた。熱い舌が鎖骨をなぞって、胸の先端に触れる。
(いつもと――違う)
ホテルのときは、ズボンだけを下ろして荒々しく中へとねじ込んでいた。今夜は優しい気がする。
「あっ……」
吸われて、舌で転がされた。身体がビクリと震えて、腰が浮き上がる。鬼頭さんの手が下腹部を撫でて、さらに下に滑っていった。
「っ……!」
僕のものを握られて、ゆっくりと上下に動かされる。快感が走って、声が漏れた。鬼頭さんの手が僕のものを執拗に擦り上げて、先端を親指で刺激する。
「ああっ……だめ……」
訴えても、鬼頭さんは止めてくれない。手の動きが速くなって、僕の限界が近づいてきた。
「イク……イっちゃう……」
言葉が終わる前に、絶頂が訪れた。鬼頭さんの手の中で果てて、白濁した液体で汚してしまう。全身が痙攣して、荒い息を吐いた。
余韻に浸る間もなく、鬼頭さんの指が秘部に触れた。入口をなぞられて、ゆっくりと中に入ってくる。
「んっ……」
一本、二本と増やされて、中を広げられていく。指が奥まで届いて、何度も出し入れを繰り返された。水音が響いて、恥ずかしさで顔が熱くなる。
鬼頭さんの指が抜かれて、今度は舌が秘部に触れた。
「あっ……! そんな……」
抗議しようとすると、舌が入口をなぞって中に入ってきた。熱い舌が内壁を探るように動いて、愛液を舐め取られる。
「ああっ……だめっ……」
快感が波のように押し寄せて、腰が浮き上がった。鬼頭さんの舌が入り口で繰り返し出し入れされる。身体が震えて、二度目の絶頂が近づいてきた。
「イク……また……」
電流が走ったような快感に、身体が硬直する。
「あああっ……!」
二度目の絶頂が訪れて、全身が痙攣した。鬼頭さんの舌が離れていく。
ぐったりとしていると、鬼頭さんの熱が秘部に押し当てられた。ゆっくりと入ってきて、奥まで満たされていった。
「っ……」
すでに二度もイって、身体が敏感になっている。鬼頭さんのものが入ってくるだけで、快感が走る。
鬼頭さんが腰を動かし始めて、奥を突いてきた。いつもの荒々しい動きとは違って、ゆっくりと丁寧に抽送を繰り返す。
「ああっ……んっ……」
声が漏れ続けて、身体が揺さぶられる。
鬼頭さんの匂いがダイレクトに伝わってきて、身体が熱くなる。奥を擦られるたびに、快感が押し寄せてきた。
「あっ……そこ……」
気持ちいい場所を突かれて、思わず声が出る。鬼頭さんがその場所を何度も突いて、身体が跳ねた。
「ここか?」
鬼頭さんが初めて言葉を発して、僕を見つめる。頷くと、鬼頭さんが満足そうに笑った。
腰の動きが速くなり深く突き上げられた。鬼頭さんの熱が奥を擦るたびに、快感が波のように押し寄せてくる。
「イク……また……イっちゃう……」
三度目の絶頂が近づいてきて、身体が震える。鬼頭さんの手が僕の腰を掴んで、さらに深く引き寄せられた。奥の奥まで貫かれて、視界が真っ白になる。
「あああああっ……!」
絶頂が訪れて、全身が痙攣する。中が鬼頭さんのものを強く締め付けて、快感に溺れた。身体が勝手に動いて、腰を前後に揺らしてしまう。淫らに動く自分の腰に、恥ずかしさが込み上げるが止められなかった。
「いい子だ」
鬼頭さんが囁いて、僕の動きに合わせて腰を動かしてくる。お互いの動きが重なって、さらに深く繋がった。
「ああっ……だめ……もう……」
訴えても、身体が勝手に動いてしまう。鬼頭さんのものを求めて、腰を揺らし続けた。鬼頭さんが満足そうに笑って、僕の乱れた姿を見つめている。
「柊、綺麗だ」
初めて名前を呼ばれて、胸が高鳴った。鬼頭さんの手が僕の頬を撫でて、優しく微笑む。今までにない表情に、戸惑いが広がった。
鬼頭さんも奥で止まって、熱いものが中に注がれる。満たされていく感覚に、身体が震えた。鬼頭さんの腕が僕を抱きしめて、温もりが伝わってくる。
鬼頭さんが引き抜いて、僕の隣に横になった。荒い息を吐きながら、天井を見つめる。
身体中に力が入らなくて、指一本も動かせそうにない。三度も連続でイった疲労から、起き上がれない。
「帰るのか?」
鬼頭さんが問いかけてきて、僕は小さく頷いた。
「帰る」
口では答えたものの、身体を起こす気力がなかった。横になったまま、呼吸を整える。
鬼頭さんの手が僕の背中を撫でてきて、腰をいやらしく撫でられる。ゾクリと快感が走って、身体が震えた。
「弟が待ってるんだろ?」
鬼頭さんが囁いて、僕は頷いた。
「もう帰るし」
口で言いつつも、身体が動かない。鬼頭さんの手が背中を這って、お尻を撫でてくる。敏感になった身体が反応して、声が漏れそうになった。
何とか身体を起こして、ベッドから降りる。床に散らばった服を拾い集めて、着始めた。シャツに袖を通して、ズボンを履く。
鬼頭さんが近づいてきて、後ろから抱きしめられた。温かい身体に包まれて、心臓が高鳴る。
顔を横に向けられて、唇が重ねられた。甘いキスに、身体が熱くなる。鬼頭さんの舌が口の中に入ってきて、丁寧に絡みついてきた。
「やめてください」
唇が離れた瞬間、鬼頭さんの胸を押して距離を開ける。鬼頭さんが寂しそうに笑って、その場を離れた。
鬼頭さんが服を着始めて、僕は最後のボタンを留めた。二人で部屋を出て、車で家まで送ってもらう。
家の前に着くと、形式的な礼を言って車を降りた。振り返らずにマンションの中に入る。
エレベーターに乗り込むと、重苦しいため息をついていた。
今までにないほど、身体が反応してしまった。淫らに腰を動かすなんて恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。
家に帰ると、自分の部屋へと突き進み、ベッドに倒れ込む。
(あんな行為、痛いだけだと思っていたのに――)
卒業式の予行演習が終わり、教室に戻ると終礼して下校の時間になった。(もう学生生活が終わるんだ――) 卒業式を終えたら、僕は無職ニートだ。手にマメができるようなバイトはできない……。すぐに鬼頭さんにバレてしまう。 肉体労働ではなくて、事務系の仕事で単発バイトがあるのを探そう。 荷物を鞄に詰め込み、教室を出ようとすると声をかけられた。「柊、一緒に帰ろう」 振り返ると篤志が立っており、優しい笑みを浮かべて鞄を肩にかけている。いつもと変わらない篤志の姿に胸が締めつけられ、視線を逸らした。「ごめん、今日は――」 篤志に捕まる前に帰宅しようと思っていたのに。篤志のほうが、僕より上手だった。 言葉を濁し、篤志の横を通り過ぎようとすると腕を掴まれた。強い力で引き止められ、身体が止まる。「――もう別れたから」(これ以上、話すことはない) いや、話したくない。話したら、弱音を吐いて縋りつきたくなるから。 篤志の顔を見ないように視線を逸らすと、僕の腕を掴む力がいっそう強くなる。(……痛い)「別れてない」 篤志の声に不機嫌さが滲んでおり、いつもの優しい口調が消えていた。低く抑えた声で、怒りを堪えているような響きがあった。 メッセージ一つで関係を終わりにすることに、納得いかない気持ちは理解している。でも話し合う余裕が僕にはない。 察してほしいと思うのはおこがましいとわかっているけど――何も聞かずにこのまま篤志と距離を置きたい。(篤志を好きな気持ちは変わってないから) 今の状況が辛い。 篤志が顔を覗き込んできた。「柊に一方的に言われたけど、俺は認めてないから。ちゃんと話し合おうって言ったよね?」 胸が痛んだ。一方的だったのはわかっているし、できるなら理由は言いたくない。 好きな気持ちは変わらないし、これからも先一緒にいたいと思う気持ちだってある。なのに一緒にいればいるほど、どんどんと自分が薄汚い大人になっていくと感じてしまう。借金のために身体を差し出し、しかも生活費の面倒までもらっている状態で、三日と開かずに抱かれ続ける自分が、闇を知らない綺麗な篤志と交際なんて続けられるはずがない。「……無理」 やっとの思いで口にすると、声が震えていた。喉が詰まり、それ以上言葉が出てこない。「嫌だ」 篤志に即答されると、ぐいっと強く腕を引っ張られた。
夕暮れの薄暗い自室で、僕はスマホの画面を見つめていた。 指が震えている。篤志との会話画面が開かれたまま、白い入力欄だけが光っている。 このままじゃいけない。 心の中で何度も繰り返した言葉が、ようやく形になっていく。一文字ずつ、慎重に打ち込んで、文字が画面に並ぶたびに、胸が締めつけられていく感覚があった。「別れてほしい」 短い言葉だった。もっと長く、丁寧に説明すべきなのかもしれないが、言葉が出てこない。指が送信ボタンの上で止まり、最後の決心がつかないまま時間だけが過ぎていく。深呼吸を繰り返し、目を閉じてボタンを押した。 既読がついて、すぐに返信が来た。『ちゃんと話し合おう』 篤志からのメッセージに、胸が苦しくなった。付き合って一ヶ月も経っていないのに一方的に別れを告げられたのだから、話し合おうと言うのは妥当だ。 返事に迷っているとスマホが鳴りだした。 着信が表示され、篤志の名前が画面に浮かぶ。指が受話ボタンに伸びかけて、慌てて引っ込めた。(今はダメだ) 声を聞いてしまったら、気持ちが揺らいでしまう。弱音を吐いて、助けてほしいと口走ってしまいそうで怖かった。 着信音が部屋に響き続ける。耳を塞ぎたくなるほど大きく聞こえ、心臓の音と重なり合って頭の中で響いていく。目を閉じて、じっと堪える。篤志の優しい声を思い出してしまい、胸が締めつけられた。 ようやく着信が止んだ。 静寂が戻り、部屋には自分の荒い呼吸だけが響いている。手が震えたまま、画面を見つめた。すぐにメッセージを打ち込んだ。『話し合いなんていらない』 冷たい言葉だ。自分の言動は篤志を傷つけている。罪悪感が胸を締めつけ、涙が滲みそうになる。 すぐに返信が来た。「納得できない。登校日に話し合いしよう」 篤志らしい返事だった。こんな僕にでもきちんと向き合おうとしてくれる。真面目で誠実で――だから好きになった。 好きだから、別れたくない。別れたくないけど、別れなければいけない。 スマホを握りしめたまま、ベッドに倒れ込んだ。顔を枕に押し付け、声を殺して泣いた。涙が枕を濡らし、喉の奥から嗚咽が漏れる。堪えようとしても、涙が止まらない。(別れたくない) 篤志の優しさが好きだった。一緒にいると安心できた。笑顔が見たくて、声が聞きたくて、触れていたかった。 でも、こんな状態で交際を続
鬼頭さんからの呼び出しは、三日と開かずに来た。スマホが振動するたびに、胃の奥がきゅっと縮むような感覚がある。 メッセージを開くと、いつものようにホテルの名前と部屋番号、位置情報が表示されていて、『すぐ来い』という短い命令が添えられていた。 歩に「バイトが入った」と嘘をついて家を出て、指定されたホテルに向かう。高級ホテルのロビーを抜けて、エレベーターに乗る。部屋に入ると、いつものように女性の香水の匂いが鼻をついた。 甘ったるい香りが部屋に充満していて、ベッドが乱れている。枕元に長い髪の毛が落ちていて、前回とは違う色だった。香水の匂いも違う。今日はフローラル系の強い香りで、前回のムスク系だった。 鬼頭さんは僕を抱く前に、女を抱いているのだろう。もしかしたら借金で首の回らない女を抱いているのかもしれない。 鬼頭さんが、冷たい視線で僕を見る。言葉もなく、ベッドに押し倒されて服を脱がされた。抗う気力もなく、鬼頭さんに身体を許す。淡々と腰を動かされて、奥を突かれる。鬼頭さんは何も言わずに僕を抱いて、満足すると引き抜いた。 終わるとすぐに着替えて、家まで送ってくれる。車の中でも、二人とも何も話さなかった。家の前に着くと、形式的な礼を言って車を降りる。 数回繰り返せば、僕の身体も順応していく。あれだけ香水の匂いに、吐き気を催していたのに、もう何も思わない。 ある日、いつもより早い時間に鬼頭さんからメッセージが届いた。「夕食はテーブルにあるから。バイトに行ってくる」 居間で勉強していた歩に告げると、慌てて上着を羽織る。スマホを確認すると、今回はホテルの名前ではなく、住所が書かれていた。地図を見ると、高級住宅街の一角だった。 電車に乗って、指定された駅で降りる。駅から少し歩いたところに、高層マンションが立ち並んでいた。指定された住所のマンションを見つけて、エントランスに入った。 自動ドアの前で、部屋番号を押すとすぐに鬼頭さんの声が聞こえてきた。「入れ」 ロックが解除される音がした。中に入って、エレベーターで最上階まで上がった。 廊下を歩いて、指定された部屋番号を探していると。ドアが開いて、鬼頭さんが立っていた。今夜はスーツではなく、黒いシャツとスラックス姿だった。「どうぞ」 促されて中に入ると、広々としたリビングが目に入った。高い天井に、大きな窓。
夜九時を過ぎた頃、スマホが振動した。画面を見ると、知らない番号からメッセージが届いている。開くと、ホテルの名前と部屋番号、位置情報の地図が表示されていて、その下に短い文章が添えられていた。『すぐ来い』 鬼頭さんからだとすぐにわかった。リビングで宿題をしている歩を見て、笑顔を作る。「ごめん、急にバイトが入った」 立ち上がって上着を羽織ると、歩が顔を上げた。「こんな時間に?」「うん。すぐ戻るから」 そう声をかけると家を飛び出して行った。 冷たい夜風が頬を撫でて、息が白く染まる。駅に向かって歩きながら、スマホで地図を確認した。 電車に乗って、ホテルのある駅で降りる。駅前には高級ホテルが立ち並んでいて、落ち着いた照明が建物を照らしていた。重厚な石造りの外観に、エレガントな装飾が施されている。大理石の柱が並ぶエントランスは、まるで宮殿のような佇まいで、場違いな居心地の悪さを感じた。 広々としたロビーには、シャンデリアが輝いていて、絨毯を踏む足音すら響かないほど静かだった。フロントの前を通り過ぎて、エレベーターホールに向かう。 部屋番号がある階でエレベーターを降りると、廊下がやけに静かに感じた。携帯の画面に表示されている部屋番号とドアの表示を確認してから、呼び鈴を押した。 しばらく待つと、ドアが内側から開いた。バスローブ姿の鬼頭が立っていた。濡れた髪が額にかかっていて、シャワーを浴びたばかりのようだ。「遅い」 不機嫌な声で言われて、僕はムッとして唇を噛んだ。「メッセージを見てすぐに来ました」「言い訳はいらない。入れ」 中に入ると、甘ったるい香りが鼻を突いた。女性の香水の匂いが部屋に充満している。(女性がいるのか?) 部屋の奥を見ると、ベッドが乱れていた。シーツがぐちゃぐちゃになっていて、枕が床に落ちている。 明らかにした後だ。(女性とやった後に僕を呼び出したてこと?) 背後でドアが閉まる音がして、振り返る前に鬼頭さんの手が僕の肩を掴んだ。「待っ……」 抗議する間もなく、ベッドに押し倒された。うつ伏せに倒されて、腰を掴まれる。ズボンのベルトが外されて、ジッパーが下ろされる音が聞こえた。「ちょっ……服を……!」(いきなり?) 慌てて声を上げると、ズボンと下着が一気に膝まで引き下ろされた。上半身は服を着たままで、下半身だけが露
鬼頭さんに無理やり、抱かれてから二日が過ぎた。 昨日の夜、篤志から連絡が来て急遽、出かける用事が入った。(初めてのデート) 鬼頭さんと出会っていなければ、僕はきっと今日の日を飛び跳ねるほど喜んだと思う。今の僕は、嬉しい気持ちと同じくらい罪悪感に胸を苦しめられている。 父の残した借金のために無理やり犯された身体が、穢らわしく感じられた。お金のためだった――そう言い訳すれば、心は軽くなるのだろうか。 将来の番となる人のために、綺麗な身体のままでいたいとまでは思っていないが、鬼頭さんとした行為は、好きな人と愛を分かち合うための行為でありたい。 支配される側の僕にそんな意見を言える権利はないのだろうが、それでも――篤志の前では綺麗なままでいたかった。(もう……遅いけど) 駅前で待ち合わせると、すでに篤志がジャージ姿で立っていた。いつもの篤志らしい格好を見て、僕は温かい気持ちになり笑顔になった。「なに笑ってるの」 篤志が不機嫌そうに頬を膨らませて、僕の手を引っ張る。温かい手に包まれて、胸が高鳴った。「ごめん。篤志の私服って想像つかないなあ……って思ってたんだけど、ジャージ姿はしっくりくるなって」 僕たちは、学校ではいつも一緒にいたけど、こうやってプライベートで会うことはなかった。互いの家で勉強会はしたことはあるが、いつも部活のジャージを着ていて、私服を見たことがない。 バスケ部のエースとして、一年生のときから部活中心だった篤志。休日は常に部活で、僕たちの会話に「休みの日に遊びに行こう」というワードは出てこなかった。「妹にマジでないわあって言われたばっかりなんだよ」 篤志が苦笑しながら話してくれて、僕は首を傾げた。「何が?」「ジャージで大学の講義を受けに行くのはマジでないわあ、だって。今までの俺って、ほぼ一日を制服と部活のジャージで生活してたから、私服がこれしかなくて。もしかしてこのまま、大学に行こうとしてる?って妹に冷たい目で聞かれた」 篤志が自分のジャージを指して、困ったような顔をする。その表情が僕の目には可愛らしく映って、思わず笑ってしまう。 篤志の妹は、同じ高校の後輩だ。入学当初から可愛いと噂されているアルファの美人女子だ。家にお邪魔させてもらったときに見た私服は、クールで格好良かったのを覚えている。(お洒落な妹に言われたら、
男の動きが激しさを増していって、奥を何度も突き上げられる。痛みで視界が滲んで、涙が頬を伝って流れ落ちた。床に手をついて耐えようとするも、男の腰の動きは容赦なく続いて、身体が前後に揺さぶられる。「痛い……やめて……」 掠れた声で懇願しても、男は答えなかった。ただ黙々と腰を打ち付けてきて、奥を執拗に突いてくる。お腹の中が圧迫されて、息を吸うのも苦しくなった。 男の手が僕の腰を掴んで、さらに深く引き寄せられる。今までより深い場所を貫かれて、悲鳴が喉から漏れた。「あ……ああっ……!」 声が大きくなって、自分でも驚く。 身体の奥が熱くなって、痛みとは違う感覚が混ざり始めた。オメガの身体が勝手に反応していて、濡れ始めている。こんな一方的な行為は、嫌でしかないはずなのに、痛みは薄れていき身体を支配するのは気持ちいいという感覚のみ。「くっ……」 男が低く呻いて、動きが不規則になった。腰を突き入れる速度が上がって、奥を何度も突かれる。男の呼吸が荒くなって、僕の背中に熱い吐息がかかった。 男の手が僕の髪を掴んで、頭を持ち上げられる。首が反って、天井が視界に入った。男の唇が僕の首筋に触れて、強く吸い上げられる。「んっ……ああっ」 首筋に痛みが走って、また新しい痕がつけられたのだとわかる。男の舌が首筋を這って、耳の後ろまで舐め上げられた。「ああっ……もう……」 声が途切れ途切れになって、呼吸が乱れる。男が僕の肩に手を置いて、さらに深く腰を押し込んできた。今まで届かなかった場所を貫かれて、身体が跳ねた。 男が低く呻いて、腰の動きがさらに激しくなる。 次の瞬間、男が奥で止まった。熱いものが身体の中に注がれていくのがわかって、吐き気がこみ上げてくる。男の精液が奥を満たしていく感覚に、全身が震えた。男が荒い息を吐きながら、何度か腰を浅く動かして、残りの精液を全て吐き出していく。 やがて男の動きが止まって、ゆっくりと腰を引いていった。身体から男のものが抜かれる感覚に、僕は歯を食いしばった。引き抜かれると同時に、中から熱い液体が流れ出てきて太腿を濡らす。男の精液と僕の体液が混ざり合って流れ落ちていく感覚に、穢されたように感じられた。 男が僕から離れて立ち上がると、スーツのズボンを整え始めた。何事もなかったかのように服を直している男の姿を見て、怒りが込み上げてきた。