-③騒動・困惑-
「最後の」全校集会が終わり運動部の部員たちを中心にもうすぐなくなる部活動に所属する生徒たちが慌ただしく動き出した。何名かが気付いたようなのだがクラブハウスの前に大きな鉄球を吊るしたクレーンが2台、静かに刻々と近づく「1時間後」を待っていた。
生徒①「早くしろー、大変だ!!早くしないと俺たちの物がなくなっちまうぞ!!」
生徒②「折角親父に買ってもらったバットをなくしてたまるか!!」 生徒③「ウチもラケットずっと置いてるのに!!」 生徒④「サイン入りのゴルフクラブを失ってたまるか!!」 生徒⑤「あたしあれが無いと・・・、あの枕が無いと寝れないの!!!」 生徒①~④「枕置いてんのかよ、家でどうしてんだよ!!」余裕が少しあるのか何故かボケとツッコミが交錯している。一方その頃・・・。
部活に所属していなかった守、圭、そして琢磨は新しいクラスとなった2年1組の教室へと走った。
琢磨「何はともあれ同じクラスになれてよかったな。」
少し笑みを浮かべて走る3人。琢磨は至っては何故かこの状況を楽しんでいる様に見える。階段をのぼり廊下を左に曲がって一番奥が2年1組の教室だ。教室に着くとすぐに異変に気付いた。
「2年1組(結愛)」
3人が見た看板には個人名の「結愛」に文字が。
守「どこかで見たことがあるな。」
圭「この名前・・・、確か出席番号1番の名前・・・。」 琢磨「この名前だっ・・・。」 女子「私(わたくし)の名前がいかがなされましたの?」突然琢磨の声をかき消した声の正体は守たちが着ているジャージとはかけ離れた衣装を身に纏った女生徒だった。今にもふんぞり返りそうである。
結愛「早くおどきになって、高貴な私をお通しにならないおつもり??」
圭「何よあん・・・。」 湯村「結愛お嬢様、大変申し訳御座いません。すぐに立ち退きますのでこの者らの無礼をどうかお許しくださいませ。」 守「先生何言ってんだよ!!こいつも俺たちと同じ生徒だろ!!」 湯村「こっちの台詞だ!!お前らこちらのお方をどなたと心得る!!我らの理事長であの年商1京円を誇る大企業貝塚財閥の貝塚義弘様のご息女、結愛お嬢様だぞ!!早くどけ!!」 結愛「先生大袈裟ですわ、私そこまで大した権限は持ち合わせておりませんのよ。では皆様ご免あそばせ。」 そう言うと教室のなかで一際目立つように置かれた机と椅子のセットへと向かい静かに着席した。周りの席は他の学校と何ら変わらない学習机セットなのに結愛のだけは装飾等が派手に敷き詰められている。周りの生徒は勿論の様にざわざわとしている。湯村「ではお嬢様、もうすぐ最初の補習が始まりますのでそれまでごゆるりとお過ごし下さいませ。」
結愛「感謝しますわ。御機嫌よう。」湯村先生は長い廊下をゆっくりと歩き職員室へと帰って行った。結愛は廊下の外の様子を伺っている。
結愛「先生は行きまして・・・??」
周囲にそう一言尋ねる。全員が首を縦に振った、その瞬間・・・。
結愛「あーーーーーだりーーーー、やってらんねーーーーー!!!!あの親父大袈裟な事しすぎなんだよなー。皆ごめんよー。俺本当はこんななんだよー、大人の前じゃお嬢様キャラしてっけどよー、自分でも気持ち悪くて吐きそうなんだよー、ポテチー、ポテチ食いてー!!!」
湯村が視界から消えた瞬間結愛は足を思いっきり広げぐでーんとした態度を取り、性格を一変させた。
生徒達「嘘だろうがー!!」
守「じゃあこの学校どうなってんの。」
結愛「え?ああ。俺と兄貴がこの学校に通うって言った瞬間に親父がこの学校を買い取っちまってよー、好き勝手しまくってんだよー、困ったもんさ。俺も兄貴も普通に高校生活を送りたかったんだよ、でも親父は実力主義だからどうしてもいい大学に進ませたがっててこんな事に、参ったもんさ。あ、兄貴来た、おーい、兄貴ぃー。」 兄「その様子だと周りには大人がいねぇって事か、助かるぜ。皆俺はかわいい結愛の兄の海斗(かいと)だ、よろしく頼むぜ。」 圭「シ、シスコンなんだ・・・。」 結愛「兄貴のクラスは上の階だろ、早く帰れよー。」 海斗「そう言うなって、コーラ買ってきたから許せよ。」結愛は海斗からコーラを受け取ると一気に飲食禁止のはずのこの校内で堂々とがぶ飲みした。とてもじゃないが「お嬢様」とは呼べない。
守「お、おい・・・、飲食禁止だろ、センサーとカメラがあるんじゃないのか。」
結愛「センサーとカメラ??ああ、あのちゃっちいやつか。センサーは俺と兄貴でとっくにぶっ壊したぜ、親父機械に疎いからカメラにはずっとおなじ映像が流れる様にして騙してんの。」結愛は衣服に似合わず工具をこちらに見せ自慢をしてきた。その時、外から大勢の足音が聞こえてきた。教室の入り口がばっと開きまさかのレッドカーペットが敷かれた。どうやら理事長だ。生徒は全員一先ず着席した。結愛と海斗を除いて。
義弘「結愛、海斗もいたか、丁度いい。後で海斗には後で伝えようと思ったが手間が省けたな。いいかお前ら、お前らはこの学校で最強を目指すんだ、一流の大学に入って勉学に励みいつか貝塚財閥を継いでもらわなければならん。」
結愛「分かっておりますわ、お父様。」 海斗「かしこまりました、お父様。」先程とは打って変わってといったところか。しかし昔からの習性からかお嬢様らしさ、御坊ちゃまらしさはあるようだ、きっと大人の前だけでだが。ただ周囲の生徒達はさっきの二人を見ているので数人が笑いを堪えていた。ギャップが激しすぎるからか。しかも二人とも飲んでいたコーラを背中で隠している
義弘「このクラスと海斗の3年1組は二人を最強にするためのものだ、他の生徒を蹴落としてでも最強を目指せ。さて補習までの時間お茶でもどうかな。」
結愛「ありがとうございます。お父様と飲むお紅茶大好きですの。」 海斗「私も同行しましょう。」 生徒たちは嘘つけと全員思った。 それはそうと義弘は「蹴落としてでも」と言っていた。年商1京円クラスの大企業の社長は考えていることが違う、まさか子供の為に学校を買い取ってしまうとは。 しばらくして、海斗と結愛が戻ってきた。まさかのぐでぐでモードで。結愛「やってらんねーーーーー、俺紅茶嫌いなんだよ。やっぱコーラだよなー。」
結愛はまたコーラをがぶ飲みする。コーラを飲み干すと声を上げて言い出した。結愛「皆聞いてくれー、俺と兄貴はこの機会に親父から会社の全権を奪取しようと思ってんだ、協力してほしい、「最強になるために」な」
結愛はにやりと笑った。-60 また実感する世間の狭さ- 深夜営業の時間帯の内、24時~6時(閉店)までの間は〆としてラーメンやご飯系の物を求めるお客さんが増えて来ていたが、まだ呑み足りない人達や普段夜勤をしているがたまたま休日で呑みに来た人達がいたので居酒屋メニューも盛況となっていた。 好美は想像以上の客足で仕入れた材料が足りるかどうかを心配していたが、強めに発注をしていたおかげで何とか閉店までお店を持たせる事が出来た。 6時になり、店長が仕込みの為に店に来ると深夜営業初日を終えたメンバーはへとへとになりながら各階へと帰って行った。ただ1人、好美はその場に残っていた。イャンダ「好美ちゃん、どうした?」好美「ん?いや、大した事じゃないんだけどね。また、朝が来たな・・・って。」イャンダ「何だそれ、好美ちゃんは王宮でも夜勤をしているからいつもだろ。」好美「まぁね、でも今は一般の従業員じゃなくて一応オーナーじゃん?」イャンダ「うん、そうだね。」好美「それなりに大変なんだな・・・って。」イャンダ「そうか、好美ちゃんなりに実感しているって事だな。さてと、俺は仕込みに入るよ。お疲れ様、ゆっくり休んでな。」好美「うん、後宜しく。」 好美がその場を離れ、エレベーターで15階(自宅)へと向かった後に仕込みをしようと冷蔵庫や調味料の在庫を確認した元竜将軍が絶叫した事は言うまでもない。 1階の店舗部分で数台のトラックの運転手が慌てた様子で食材を運び込んでいた頃、初日を終えた好美は冷蔵庫から缶ビールを取り出して呑もうとしていた。しかし、冷蔵庫に肴になりそうなものが残っていなかったのでビールを戻し、『瞬間移動』で急いで1階へと向かった。正直、エレベーターの意味はあるのだろうか。 「コノミーマート」でレンジで温める用の鯖の塩焼きや、バターピーナッツを買い込んだ好美は早く呑みたかったので店舗部分から直接『瞬間移動』してしまった。バイト①「80円の御返しです、ありがとうございました。」好美「どうも、じゃあ!!」バイト②「えっ?!」 目の前で人が『瞬間移動』して消えた場面を初めて見た数人の学生アルバイトが慌てていたのは言うまでもない、しかも本人たちはイェットが面接をして雇ったので今消えたその人が店のオーナーだった事もまだ知らなかったと言う。 好美がアルバイトの目の前で『瞬間移動』して
-59 初の深夜営業- ダルラン家の裏庭で唐揚げをたらふく味わい、ハイボールを浴びる様に口に流し込みまくってから数日の事。ビルの寮部分に住む魔学校生を中心に雇ったアルバイト達がレジや店の仕組みを含めて仕事に慣れて来たと思われる頃、好美は2店舗の主要メンバーを集めて緊急会議を行った。好美「本格的な営業を始めていきます。」 今まではデイ営業とナイター営業のみに限定し、全員が仕事に慣れるまで十分な期間を置いてきたのだが、遂にビル下店の本来の目的である深夜営業を始めていく事にした。しかし、イェットから一言。イェット「何言ってんだい、ウチはもう既に始めているよ。」 そう雑貨屋を経営する大魔法使いの妻が店長を務める「コノミーマート」では2週間前から試験的に始めていたのだが、「暴徒の鱗」の場合は調理技術等の観点から期間を置いていたのだ。 ホール担当のスタッフ、及びキッチン担当のスタッフの双方の教育が十分だと判断した好美はやっと決意を固めたのだという。イャンダ「俺も、ナイトマネージャーも、そしてお客さんもずっと待ち構えてたぜ。」好美「うん、では次の金曜日の夜から始めていきましょう!!」 金曜日を選んだのにもちゃんとした理由がある、ナイトマネージャーであるピューアとニーコルが両方とも出勤出来る曜日だからだ。念の為に人数を揃えておき、深夜に来る客数を余裕を持って把握する必要がある。 それに、「花金」とも言うではないか。呑んだ帰りにラーメンを食べたくなる人が多い事は言うまでも無い、オーナーである好美が正しくそうだからだ。 デイ営業では麺類やランチメニューを、そしてナイター営業では居酒屋メニューを中心に販売を行ってきたが深夜はどちらが必要とされるのだろうか。いや下手すれば両方の可能性もある、その事も十分に把握しておきたい。 ドラマで有名な「出来るものなら何でも作るあの食堂」では無いが、夜遅くにも関わらず店に来てくれるのだ。とても難しいと思うが可能な限り皆からの信頼を得たい。 数こそは少ないとは思われるが、好美と同様に普段夜勤として働くお客さんだっているはずだ。本人にとって少しハードで、ちゃんと役に立てるかは不安だと思われるが、好美は自分もちょこちょこお手伝いして好美なりに状況をしっかり把握しようと思った。 数日後、王宮での夜勤が休みである金曜日の夜。「暴徒の鱗
-58 メインは胡瓜?いや鶏?- 暑い日々が続く、光は家庭菜園へと好美を招待してとれたての胡瓜をお裾分けする事にしていた。 ビニールハウスの中は灼熱のイメージがありがちだが、下の方にビニールが途切れている部分があるのである程度の涼しさをも持ち合わせていた。 やはり暑い時期における胡瓜の定番として、氷でキンキンに冷やされた一本漬けをイメージしていた好美は縞々の胡瓜を想像していたのだが、光から振舞われたのはまさかのオイキムチだった。光「胡瓜だけじゃないんだよね・・・。」 家庭菜園の持ち主はルンルンしながら蓋をあけると中身を木製の蓮華でゆっくりとかき混ぜだした。 キムチのつけ汁を全体に行き渡らせ、中の胡瓜が辛味に染められる。その時、好美は中に入っていた光拘りの食材を見つけ出した。好美「メンマだ・・・。」 そう、辣油に浸かって瓶詰めとなったメンマだ。程よく食感と柔らかさが有名な穂先メンマが入っていた。 1口食べると両方の食材特有の食感が口内を楽しませ、広がった刺激的な辛さが何となく嬉しくて堪らない。ただ食べ進めていくと、その辛さはキムチの素だけでは無い事が分かった。好美「メンマの辣油も入っているんですか?」光「そうそう、これ一回漬けるのに瓶半分使っちゃうんだけど、いつの間にかもう半分も食べちゃうんだよね。」好美「ご飯にもお酒にも両方ピッタリですから仕方ないですよ。」 好美の言葉を聞いた光は顔をニヤつかせていた、そして意味ありげに質問した。光「欲しい?」 現在朝11:30、夜勤を終えて直接やって来た好美は色々と欲しくなっていたがその中でも1番ややっぱり「あれ」だ。好美「欲しいです。」光「やっぱり?私も欲しくなって来たから付き合ってくんない?」 好美は『転送』で地下にある冷蔵庫で冷やしている「秘蔵のあれ」を取り出した。畑では初めてだが関係なくなってしまっている。 光から受け取った「あれ」の缶を開けると一気に煽った。好美「はぁー・・・、たまにはハイボールも良いですよね。」光「あれ?ごめん、間違えてハイボール渡しちゃった。本当はビールの予定だったんだけど。」好美「いえいえ、私ハイボールも大好きなので大丈夫ですよ。」 しかし、ビールと同じ勢いでハイボールを呑んでいたとは。好美の酒の強さはよっぽどと言えるらしい。光は好美のステータス画面を
-57 新商品と限定品- 守により転生者にとっての「いつもの件」が行われたのとほぼほぼ同刻、好美が所有するビル1階にある「暴徒の鱗」では守から受け取った豚肉のサンプルに合う叉焼の味付けの吟味が行われていた。シューゴ「時代に合わせて塩麹で味付けしてみるのはどうだろう、漬け置きしておけば肉自体が柔らかくなるから良いと思うんだけど。」一「それだと、拉麺に合うかな。基本うちって醤油ベースじゃない?」渚「つまみとして出すならアリかもだけど、流石にスープとの相性が心配だよ。」 一先ず物は試しにとやってみる事にしたのだが、転生者2人の予想通りになり過ぎて正直怖い。しかし、おつまみメニューに入れたら良いのではと保留してみる事に。シューゴ「塩ベースか・・・。」 何かを思い出そうとしたシューゴの様子を見て、渚ある人に『念話』で連絡を入れた瞬間。ある人「言うまでも無いよ、一先ずやってみよう。」渚「あんた、暇だったのかい?」 『瞬間移動』してきたのは共同経営者になったパルライ、そうあのバルファイ国王だ。渚は鯛塩スープに合うのではと提案してみる事にしたのだ。ただ、肉と魚介は別々に楽しんだ方が美味しいのではなかろうか。 試作品を作ってみたのだが、肉の味が強調し過ぎて折角の鯛の風味を消してしまっている。 気を取り直して、今までの醬油ダレに漬け込んでみる事にした。確かに叉焼は格段に美味くなった、ただ醤油ダレを使用した時のスープが豊富な脂が仇となりくどさが出始めていた。 そこで炙って余分な脂を落としてみる事にした、確かに炙る事によりくどさはマシになった。しかし、提供時間に大幅なロスが出てしまう。 試験的にだが塩麹味での提供案を採用した上で、期間限定である冷やし中華のトッピングのメインとして出してみる事にした。他の具材と同様、細長く切っての提供となるが特有の柔らかさは変わる事なく良い味を出してくれている。しばらく試した結果、夏は冷やし中華のトッピングとして、そして他の季節ではおつまみメニューの1つとして提供されることになった。ラーメンでの提供はおいおい考えるとして、一先ず一件落着。 ただ念の為、好美の意見を聞いてみる事にした。美味い肉でビールを呑まないかと聞いた好美は喜んで15階から『瞬間移動』して来た。慌てて出て来たのか、崩れた部屋着と普段家で1人の時だけでかける赤淵
-56 吸血鬼の不安- 守と言う名前を聞いた瞬間に思わず笑顔をこぼす妻を見たヴァンパイアは、結婚前の光との日々を思い出していた。 恋人として付き合っていた頃は2人ともインドア派であった為、お互いの部屋で遊ぶことが多かったのだがその時大抵行われていたのが「プロレスごっこ」だった。 プロレスはおろか格闘技は全く興味が無かった光がたまたまテレビで見かけたプロレス技を見様見真似で一方的に仕掛けるというかなり理不尽な遊びだったのだ。 ナルリスは「いままで付き合っていた彼氏にも仕掛けていたんだろうな、何か可哀そうだ」と体に湿布を貼る度に思っていたのだが、このプロレスごっこの原点が守らしいのだ。 ナルリスが受けた時には少し上達していてマシになったと思われるものの、流石に「初めて」を受けた守の方がかなりのリスクがあっただろう。 正直、怖くないと言えば噓になるが話を聞いてみたい。結婚してから十数年経ったが最近もちょこちょこ襲われるのであくまで今後の対策の為に。 その時、空気を読んだのだろうか、渚が守を連れて『瞬間移動』して来た。守にとって初めての『瞬間移動』だったので到着した瞬間、目を塞いでいた。 それを良い事に光は久々にやる気スイッチが入ったらしく、とても楽しそうにしている。夫が「この人が守さんか」と思った瞬間・・・。光「守くぅ~ん、久々に楽しませて貰おうか・・・。」守「その声は光姉ちゃん?!まずい!!」 屋外に逃げようとする守の腕をぐっと掴み、次々と独学で覚えたプロレス技を仕掛けていく。守は既にボロボロだった。守「いたたたたたたたたたたたたたたた・・・・・・・・・・、ギブギブギブ!!」渚「あんた、相変わらずだね。家が隣にあったからって毎日の様に技かけて遊んでいたもんね。」 守の家は幼馴染の家に挟まれていた、一方は普通に仲良く遊んでいた同級生の赤城 圭(あかぎ けい)が住んでいた家で、もう一方は1つ先輩だった光や渚が住んでいたアパート。 光が2年で守達が1年だった当時、光は渚が仕事で留守にしていた間、鍵が掛かっていたので部屋に入る事が出来なかった為守の家で待たせて貰う事が多かった。ジャージを着ていた事が多かったが故に、それを利用して運動がてら行っていたのが例の「プロレスごっこ」の始まり。仕事を終えた渚はいつもこの光景を見ながら楽しそうに笑っていた、
-55 新メニュー完成- 母親に問いただされた娘のハーフ・ヴァンパイアがいつもの癖で早弁をした事を吐露したが故に説教を喰らっていた中、調理場では真希子は薄切りにした豚ロース肉を丁寧に灰汁を取りながら茹で氷水で〆ていた。そう、冷しゃぶだ。 ガルナスが好みに応じて食べる事が出来る様に和風のタレを2種類用意していた。真希子「まぁまぁ、それ位にしときなって。本人も反省しているみたいだし。」光「おばちゃん、甘やかさないでよ。この子、弁当持って行った時毎度毎度早弁するんだよ。」真希子「ははは・・・、流石は光ちゃんの子で渚の孫だね。あの子も昔学校で毎日の様に早弁してたんだよ。」光「もう・・・、遺伝ってやつなの?」 その頃、好美所有のビル1階にある調理場で噂のあの人が大きな嚏(くしゃみ)をした。渚「はぁーっくしょん!!はぁ・・・、花粉症かな・・・。」 レストランでは真希子が冷しゃぶを完成させ、事前に冷やしておいたガラス製の器に盛っていた。豚肉の下には細切りにしたレタスと胡瓜、そして大葉が敷かれている。肉と一緒にと角切りにした豆腐を散らせている。 薄切りにして水にさらした玉ねぎを乗せていて見た目も涼しい。真希子「ガルナスちゃん、お待たせ!!」 料理を見たオーナーシェフの娘はキラキラと目を輝かせている。最初の1枚を取り玉ねぎを巻きながらタレを付けて食べていた、最初は胡麻だれ。ガルナス「うーん、やっぱり冷しゃぶと言えばこれだよね。」 口いっぱいに肉を頬張り嬉しそうな顔をしている。もう一方のタレで食べようとしていたその時、娘の様子と料理を見ていたナルリスが反応した。ナルリス「それだ!!それで行こう!!」ガルナス「な・・・、何?夏限定の豚ロースの冷しゃぶサラダセットや冬限定の蒸篭蒸ししゃぶ定食は前から出していたじゃん。」真希子「あんた・・・、やたらとメニューに詳しいね。」ナルリス「ああ・・・、言ってなかったか。実はここのメニューの多くはガルナスが考えた物でね、俺も頭が上がらないんだよ。」 話が完全に逸れてしまっているので娘が話題を戻した。ガルナス「お・・・、お父さん。それでさっきのは何?」ナルリス「ああ・・・、悪い悪い。そのタレだよ、おろしポン酢。」 トンカツに大根おろしかけた状態で提供し、その上からポン酢を好みに応じてかける形にしてみた。真希