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3. 「異世界ほのぼの日記」149

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-05-06 10:10:26

-149 恋人達の実力-

 光の発言に開いた口が塞がらない一は急に恥ずかしくなってきた。熱が出た様に顔を赤くし、逃げる様にその場から離れ化粧室へと向かった。

一がいない間も食を進める一同、以前から光は気になっていた事をナルリスに聞いてみた。

光「ナル、今になって聞くけどそうしてこんなに料理が上手なの?誰かに習った訳?」

ナルリス「両親を殺されてから生きる術の一つとしてせめて料理だけでも出来る様になろうと御厨板長や地元のカフェのシェフの下で家庭料理を中心に勉強させて貰っていた事があったんだ。」

 以前入った焼き肉屋の板長と自らの恋人の意外なつながりに驚きを隠せずにいた光、板長に今度お礼を言わないといけないなと料理を楽しみながら思った。毎晩この料理を楽しむ事が出来たら良いのにと、この吸血鬼と今以上に幸せになれたら良いのにと結婚を少し意識し始めた時に恋人がどれだけ自分に厳しいかを改めて知る事になった。

ナルリス「今の様に掛け持ちじゃなくて料理だけで稼げる様になるのが今の目標なんだ、いつかは自分の店を持ちたいとも思っていてね。」

男性達「じゃあ、私達の前で実力を証明して見せなさい。」

 突然、4人の男性達が声を揃えてナルに言うと光がその方向に目をやった。声の正体はまさかの御厨板長、そして3国の国王だった。

御厨「ナルリス、今日はもう遅いから明日の正午、我々4人に自慢の料理をフルコースで振舞って貰おう。その味を見て我々が合格を出したら店を出しなさい、店舗等の資金を全て出してやろう。どうだ、実力を恋人の前で証明するには丁度いいだろう。」

 ナルリスは師の前で少しも悩む事無く首を縦に振った。

ナルリス「やらせて下さい。」

 吸血鬼が決意を表明すると3国の王がこそこそと相談し、そして満場一致した結果をナルリスに伝えた。どうやら今回の「試験」についての重要事項らしく、それを聞いた瞬間ナルリスは紙とペンを用意して色々と考え始めた。どの素材を使い、どんな料理を作ろうかを頭を抱えずっと悩んでいる、ペンを震わせる程だったからよっぽどだろう。

光「王様たちは何て?」

ナルリス「王宮の調理場で4品のフルコースを作れって、テーマは「恋人への想い」だそうだ。食材は自由に使って良いと言ってた。そうだ・・・、光ちょっと良いか?」

 ナルリスが耳打ちで光に相談した事に、光自身は了承したのだが国王達に確認
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    -147 惚気る2人とほったらかしの元上司- たっぷりとナルリスの作ったパンケーキを堪能したシューゴの顔は恍惚に満ち溢れていた、皿の底に残っていたホイップやチョコソースをパンケーキの欠片で残さず拭き取っていた位だ。自らが育てた後輩の成長が何より嬉しかったという。 自分が教えたのはスイーツだけだったが、この日ナルリスが作った料理は両方とも昔食べた物に比べると数段美味しくなっている様に感じた。正直誰に学んだのか気になる位だ。ナルリス「料理が好きなだけですよ。それに俺は光と、光の家庭菜園で採れた美味しい野菜が大好きなんです。」シューゴ「さり気なくお惚気を出しやがって。」ナルリス「何言ってんですか?さり気なくじゃなくて堂々とですよ。」 すると横で照れていた光が恋人の背中を強めに叩いた。光「もう、照れるじゃん!!」ナルリス「えへへ・・・。」 2人の様子を見たシューゴが調理場へと向かおうとしたので、レンカルドは急いで宥めていた。レンカルド「兄さん、早まっちゃ駄目だ。いくら女性経験が殆ど無いからって!!ピー・・・(自主規制)しちゃ駄目だ!!」シューゴ「お前何言ってんだ、俺は酒の肴に置いておいたからすみを取りに行っていただけなんだが。」渚「からすみ・・・、良いじゃないか!!でも、もう呑むものが無いね・・・。」一「と言うか・・・、俺の存在って一体・・・。」 端っこで呑んでいた光の元上司が疎外感をずっと感じていたのでさり気なく帰ろうとしていたので、酔った元部下が肩をぐぐっと掴んだ。光「一さん、何帰ろうとしているんですか。今日は徹底的にやりましょうよ~。」一「おい吉村、呑みすぎじゃないのか?」光「久々の再会なんですから、いいじゃないですか。それに私婿養子に入って名字が変わっていた事知らなかったんですよ、そこんとこ徹底的に聞きますからね。」一「渚さん・・・、何故私は今娘さんに脅されているんですかね。」 一が光による行動で震えている横で酒盛りを楽しむ渚、何があっても知ったこっちゃないと言った様子だ。渚「あはは・・・。光ー、今日は母さんが許すからやっておしまい。この人にはこき使われていたんでしょ。」光「そうだね、母さん。さて、元部長・・・。向こうの世界でこき使われた分、今日は反撃させて頂きますよ。やられたらやり返す、倍・・・。」一「待て待て、権利的

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」146

    -146 2人の思い出とパンケーキ- ロールキャベツを食べながらソムリエの資格を持つレンカルドがナルリスの料理に合いそうなワインを地下のワインセラーから出してきて全員に振舞った、殆どの者が何も考えずにガバガバ呑んでいたが光だけは銘柄を見て驚きを隠せずにいた。光「レンカルドさん、これ吞んじゃって良いんですか?」レンカルド「気分が良いので出しちゃいました、それに実は・・・。」 レンカルドによれば、今日は兄・シューゴの誕生日らしく毎年誕生日には弟が送ったワインを2人で呑んでいる事が多いとの事だ。その度いつもいつかはワインを色んな人と楽しみたいと言っていたので、まさに本人の希望通りとなっている。光「本人の希望通りなら良いんですが、これって「ロートシルト」じゃないですか。緊張して呑めないんですけど。」 日本でも年末年始の某格付け番組に出てくるレベルの超高級ワインで、1本100万円は下らない(正直作者もドン引きしました)。レンカルド「兄も喜んでいるみたいなので良いんじゃないですかね。」シューゴ「おいおい、何コソコソとしてんだよ。」レンカルド「兄さん、そのワインが今年の誕生日プレゼントだよ。」 シューゴは呆然としていた、改めてワインをテイスティングする。数秒後、ボトルを見てガバガバ呑んだ事を後悔していた。シューゴ「すまん・・・、大切に呑むべきだったな。」レンカルド「いやいいよ、以前から色んな人とワインを楽しみたいって言ってたじゃないか。それと遅くなったけど、誕生日おめでとう。」 当然の事ながら今まで貰った誕生日プレゼントの中で最高級の品だったので物凄く焦っていた拉麺屋台の店主を横目に、その高級品をラッパ飲みしている女性が1人。そして勢いをそのままに飲み干して一言。渚「おーかわーりないー?」光「母さん・・・、それレンカルドさんからシューゴさんへの誕生日プレゼントだったんだけど。」渚「もぉ吞んじゃったもん、早くお代わり頂戴!!」 光は渚からボトルを奪い取りラベルを見せた。光「お母さん、見える?今自分が何呑んだか分かる?」渚「何言ってんのあんた、こんな安も・・・の・・・、じゃないね。」 ラベルに書いてある「ロートシルト」の文字を見て事の重大さを知った渚はその場で土下座した。渚「誠に申し訳ございません!!」レンカルド「良いんですよ、兄も楽しそ

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」145

    -145 突然現れた恋人とお詫びの料理- 渚と光の2人は親子だけで「森伊蔵」を吞んでいたつもりだったが思った以上に減りが速いので周囲を見回した、飲食店と拉麵屋台を経営する兄弟と一は先程買ってきたばかりのビールでずっと楽しんでいる。瓶を見回したが傷1つない。 納得していない光をよそにどんどん酒を呑む渚、その後ろから男性の手が伸びて光の宝物を掴んだ。何の抵抗もなく酒を並々注いでいる男性の腕を掴んで見てみると・・・。光「あんたね・・・、了承も無しに勝手に人の高い酒呑んでんじゃないわ・・・、ってナルリス?!」 そう、先程から渚の陰でこそこそと「森伊蔵」を呑んでいたのは光の彼氏、ヴァンパイアのナルリスだった。腕を掴まれた恋人の手はずっと震えている。ナルリス「ごめん、美味くてつい・・・。」渚「あたしとシューゴさんが呼んだんだよ、3人でこれが呑みたかったんだろ?」 光が望んだ形では無かったが、一応光の目的通りになった。 光を驚かせ、喜ばそうと3人が結託して行ったドッキリだ、ただその場にいたレンカルドは一切関与していないので光の表情を見ておどおどしていた。驚いてはいたがどう見ても喜んではいない。レンカルド「みんな・・・、本人それどころじゃないみたいだけど。」 大切にしていた高級な酒を勝手に、しかも購入した自分以上にガバガバと呑まれているので光は今にもキレそうになっていた。しかしその事も想定の範囲内だ。ナルリス「お詫びと言っちゃなんだけどおつまみ・・・、ポテトサラダとロールキャベツを作って来たよ。」 最近光の家庭菜園でごろっとした新じゃが芋や新玉ねぎ、そしてふんわりと柔らかな春キャベツが採れる様になっていたのだがこれで料理を作ってみてくれないかと料理上手のナルリスにお願いしていたのだ。今に始まった事ではないのだが光はナルリスの料理が大好きであった。 酒と白飯の両方に合う様にポテトサラダはブラックペッパーで、そしてロールキャベツはトマトソースで味付けされている。どうやら肴が叉焼しかないので何か持って来てくれないかとシューゴがナルリスに頼んでいたらしい、2人は魔学校の先輩後輩の間柄だった。光「もう・・・、こんなんで私の機嫌が直る訳・・・、ない・・・、じゃない・・・。」 こう言う割には食が進んでいる光、よっぽど美味かったのだろうか。それを見て上手く行ったと顔

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」144

    -144 親子の盃- ドーラに真実を聞いた後、兄弟を待たせては悪いと2人は急ぎ『瞬間移動』でレンカルドの飲食店へと向かった。ただこの世界の者に共通して言えるあの事を考えると・・・、と思っていたので光はそこまで焦ってはいなかった。一は不思議で仕方なさそうな表情をしている。一「やけに落ち着いているな、吉村。」光「何となく予感している事があるので。」 『瞬間移動』で到着した時、光は一瞬引き笑いをした。どうやら予感が当たったらしい。シューゴ「一はぁ~ん・・・、こっちこっちぃ~。」レンカルド「光さんも早く呑みましょうよぉ~。」 予想通り2人はもう出来上がっていていた、ただその横で見覚えのある人物が1人手酌酒を呑んでいる。光の母、渚だ。光「もう・・・、お母さんまで・・・。」 どうやら2人に誘われたらしく喜び勇んでやって来たらしいのだが、実はそれ自体は問題ではない。渚が呑んでいた酒を見て光は驚きを隠せなかった。光「ちょ、ちょっとそのお酒!!」渚「光ぃ~、どうしてこんなに美味い酒を隠してたのよ。勿体ない。」光「それは今度ナルリスを交えて3人で呑もうって大切にしていた「森伊蔵」じゃない、それ高かったんだけど!!」 すると完全に出来上がっているシューゴが即座に解決策を出すため光に聞いた。シューゴ「ナルリスってあのヴァンパイアのナルリス君かい?」渚「そうなのよ、この子の旦那。」光「お母さんが何で答えんの、それにまだ結婚してないし!!と言うか凄く打ち解けてるじゃん!!」 光の一言に引っかかった渚、今までの様子が嘘みたいに酔いがさめた様な表情をしている。頬が少し赤い以外、見た目は完全なる素面みたいだ。渚「光・・・、「まだ」って何だい?」光「まだ付き合って1年も経ってないの、結婚する訳ないじゃん。」渚「馬鹿だね、お母さんはお父さんと出逢って半年で結婚してあんたを産んだんだよ。」 光からの目線からすればかなりのスピード婚だが少し待とう、今思えば渚は完全に酔っているのだ。光「早すぎない?」渚「いやちょっと待って、半月だったかな?」光「全然違うじゃない・・・。」 いくら何でも記憶があやふや過ぎる渚、それを聞いていたレンカルドが提案した。レンカルド「だったら御家族みんなで集まれば良いのでは?」 渚は夫・阿久津が未だに見つかっていない事や、光が生ま

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」143

    -143 一の疑問- 光と一はゲオルの雑貨屋へと到着し、呑み会の為の買い物を始めた。飲食店を経営している身であってもシューゴとレンカルドは2人共バーサーカーなので、多く呑みそうだなと想像してビール2ケースを中心に多めに用意しておくことにした。ただ、一は乗って来た車両(カフェラッテ)の大きさを考慮して「乗らないんじゃないか」という疑念を抱いていた。勿論『アイテムボックス』を使うので車両積載量は関係ないのだが、何もかもが初めての一は脳内で騒動が起こっている。一「吉村・・・、1つ聞くがどう運ぶつもりだ?」光「運ぶと言うより入れておくって言った方がよろしいかと。」 すると突然ゲオルが2人の真後ろに音も立てず現れ、声をかけた。気配を全く感じなかったので驚いた一は白目を向いていた。ゲオル「光さん・・・、また凄い量ですね。」一「だ、だ、だ、誰だ!!」光「ここの店長でリッチのゲオルさんですよ、この世界で一番お世話になっていまして。」 一は自分の中のリッチのイメージを思い浮かべた、目の前にいる店長の風貌は明らかにイメージとかけ離れている。一の思念を呼んだのかゲオルは手で頭の後ろを搔きながら言った。ゲオル「やはりそういうイメージをお持ちでしたか・・・。すみません、普段はこうやって普通の人間の姿をしていないと生活に支障が出るんですよ。」 一は自分の中のイメージを読み取られ驚きを隠せずにいる、日本に似ている異世界に来たはずなのに日本との違いをまざまざと見せつけられた気がした。一「いや・・・、本当に凄いお方なんですね。申し遅れました、私光さんの元上司の一と申します。以後、お見知り置きを。」 ゲオルは懐から名刺を取り出し一に渡した、勿論一には日本語での表記で見えている。ゲオル「これはご丁寧に、私ここの店長のゲオルです。それにしても驚きましたよ、男性の方とお買物されているので知らぬ間にナル君と別れて新しい彼氏さんが出来たのかと。」光「何か・・・、ごめんなさい。でも一さんは既婚者ですから。」ゲオル「おっと・・・、これは失礼。」 するとレジの方から店員に呼び出されたみたいなので、ゲオルは目の前からスッと消えて業務に戻って行った。 買い込んだ酒類を『アイテムボックス』に入れていると、一が羨ましそうに眺めていたのでスキルをさり気なく『付与』してあげる事にした。光「そ

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」142

    -142 ば、バレた・・・。- 一のギルド登録が無事に終え、シューゴのもとへ戻ることにした2人。一の『瞬間移動』の練習も兼ねてそれで帰還する事にした。 まだ慣れていないみたいで、スキル使用の為前に差し出した右手がまだ震えていた。しかし、冷静になり丁寧に行った為か一発でシューゴのいる弟・レンカルドの経営する飲食店に到着した。シューゴ「あ、お帰りなさい。寄巻さんの登録も大丈夫そうですね。」光「そ・・・、それが・・・。」一「すみません、光さんにも言えてなかったのですが実は転生前に婿養子に入って「一」になったんです。」シューゴ「そうですか、でも大丈夫ですよ。まだ名札も作ってませんから。」 一は事が進みすぎて思考が追いついていない、拉麺屋台の一員として採用された事にいつ気付くのだろうか。光「大丈夫だったでしょ?お手伝いしてた時の一さん、生き生きとしてたじゃないですか。好きだったんでしょ、拉麺屋さんのお仕事。」一「うん・・・。実は子供の頃から拉麺屋さんのお店を出す事が夢だったんだ。」 そう聞いたシューゴは安心した様子で笑みを浮かべていた、とても嬉しそうな顔だ。シューゴ「寄巻さん改め一さん、その夢私と一緒に叶えませんか?」光「という事は・・・、また屋台を増やすんですか?」 シューゴは首を横に振り笑顔で答えた。シューゴ「いえ・・・、実はそろそろ店舗を出しても良いかと思ってたんです。一さんにはその手助けをして頂ければと。」 心配していた仕事が即決まったので一は安心した様子で涙を流した。一「私で宜しければ・・・。」シューゴ「こちらこそ・・・、宜しくお願い致します。」光「あの・・・、感動している時に悪いのですが何か忘れてません?」 咄嗟に口を挟んだ光を2人はぽかんとしながらじっと見ていた。光「お店を経営する事になるから、一さんも一応商人兼商業者ギルドに登録する必要が無いのですか?」 数秒の間、静寂が続いた後シューゴが笑顔で自らの頭を撫でながら照れた様子で言った。シューゴ「ははは・・・、すみません。完璧に忘れてました。今日はもう遅いので明日にしませんか?渚さんと一さんの歓迎会を兼ねて一緒に呑みましょう。実は叉焼を作りすぎちゃいまして、ビールを買って来ますのでお待ちください。」レンカルド「兄さん・・・、ビールならお店にもあるよ。」光「丁度良か

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