LOGIN「一つ、合言葉を決めましょうか」
「あいことば、ですか?」本当にこの人は何歳なんだろう、同い年だと言われても全然納得できる。
張りのありそうな胸を腕で隠しながらそっぽを向いて、それでも何処か期待しているかのような濡れた瞳を前にして安心のために提案を一つ。「触られたくないと思ったり、これ以上は嫌だと感じたら助けてと言って下さい」
「……助けてって、言えばそこは触らないってことですか?」 「と、言うよりはそこで内心で小さく笑ってしまう。
元々この性交渉を望んできたのは早瀬さんだ、続けるか終わるかの選択は俺が持っているべきだと言うのに。「わかり、ました。優しい、んですね。ありがとうございます」
「いえいえ」すっかり忘れている。あるいは、気づかないフリをしているのか。
とはいえこれが仕方ないという理由の魅力だろう。
「それじゃ、まずはここから」
「ここ、って……ん、んぅ……」一瞬びくりと反応されたが触ったのは鎖骨の下あたり。
リンパがどうのなんて口にしないが、少なくとも胸の大きな女の人は付け根辺りがこるのは本当で。「あ、ぅ……あぁ♡」
緊張してしまった身体から力が抜ける。
そう、緊張する必要はない。
なにせこれはマッサージでありご褒美の続きなのだ。「そう、力を抜いていて下さいね。イヤな事はしませんから」
「は、ぃ……♡」うつ伏せの時にしてもらっていた時の延長上にある行為だと認識できたのだろう、胸を隠していた腕からも力が抜けていく。
「ここは、触られたくないですか?」
「え? あ、えっと……その」胸の付け根を解しながら相手に委ねる。
いやらしい、つまりは性的に見ているわけじゃないよと優しい声色を意識して言えば。「……お願い、します」
「はい、わかりました。忘れないで下さいね? 助けて、ですよ?」 「は、い」ゆるゆると腕をどけて、その大きな果実を露わにしてくれた。
……うーん、でかい。
今まで相手してきた人の中でも、ここまで形が良くて大きく張りのあるおっぱいって無かったんじゃなかろうか。いや、それはいい。
「ん……♡ ふ、あぁ……♡」
まずは側面、脇下から胸の下側にかけてをゆっくりなぞっていく。
ゆっくり、ゆっくりと侵食するように、早瀬さんがびっくりしないように、性的な愛撫だと思わないようにゆっくりと下乳へと位置をずらしていく。「あ、ぅ♡ あぁ……♡ す、ごくきもち、いいです……♡」
「ありがとうございます。気持ちよくなってくれたのなら、嬉しいですよ俺も」 「嬉しい、です、か?」 「もちろん。気持ちよくなってもらうためにしてるんですから」そうして認識をもずらしていく。
性的にかどうかは問題じゃあない、これは気持ちよくなってもらうためにしていることで、気持ちよくなることはおかしいことではないのだ。すなわち、気持ちよくなっていいモノである。
「ふ、あ♡ ん、んんぅ♡ い、いい、です♡ 本当に、すごくきもち、いい……です♡」
「ありがとうございます。やっぱり、嬉しいです」 「ん、んあっ♡ あふ、ん♡ な、なら、私も、うれ、しぃです♡」うーん、そういうこと言っちゃうか。健気というか献身的と言うか。
根は奉仕的というか尽くしたがりさんなんだろうな、肉じゃが食って美味いって言えば喜んでいたのはそういうことか。「あっ♡ ふぅ、んんぅ♡ は、ぁ♡ 管理人、さんぅ♡」
「はい? どうしました? 少し強かったですか?」 「ち、がいます♡ そ、その、もう少し強くても、だいじょう、ぶです、からぁ♡」 「……はい、わかりました」下乳を持ち上げるように優しく撫で揉みしていたらリクエストが飛んできた。
言った本人は恥ずかしそうに顔を背けてしまったけれども、なるほど肉体的には相当許してくれているらしい。じゃあ指先にも力を入れようか、横乳と腋の境目。スペンス乳腺への刺激も加えて行こう。
「ひぁんっ♡」
「っと、強かったですか?」 「だ、だいじょう、ぶです。そ、の……気持ちよくて、びっくりしちゃいました」 「あはは、ならもう少し弱めから行きますね」で、この感じようだ。
これで濡れにくい、すなわち感じにくいなんて嘘だろうとすら思う。「は、うぅ♡ ん、んんぅ♡ い、いい、です♡ きもち、いい……♡」
無意識にだろう、ついに早瀬さんの腰が浮いてきた。
あえて本人へと言いはまだしないけれど、乳首もふるふると震えながら固く大きくなってきている。「あっ♡ んぁっ♡ いい♡ いい、よぅ♡ これ、すきぃ……♡ あった、かい♡ きもち、いいよぅ♡」
やや幼くなってきたか、目もとろんとしてきて頃合いだ。
タッチングの原則、触れた指を肌から離さないようにへその方へと滑らせていく。「あ……♡ ん、ふぁ♡」
早瀬さんは何も言わない。
なんだったらこのままいざ挿入といっても受け入れられるだろう。当たり前だ、元から早瀬さんにとっての目的はソレなのだから。
いつこの雰囲気が切り替わってそうなったとしても、最初からゴールがそこにある以上受け入れなければならない。しかし、だ。
「んっ♡ は、ぅ……あぁ♡ う、うぅ♡ んくっ♡」
小さく快楽に喘ぎながら、手の動きに合わせて身を捩りぴんピンに勃起してしまっている乳首へと誘導するこの姿。
意識的にとまでは思わない。だが身体はすっかり更なる刺激と快楽を求めている。ああ、頃合いだ。
頃合いだから、いつの間にか押し付けられていた決定権をそろそろ返すことにしよう。「ひゃうっ♡」
指を鼠径部へと移動させる。
親指の位置は固定させて、手のひらと指を動かしていく。「う、あ♡ あ、あぁぅ♡」
動きに合わせて引っ張られた大陰唇が開いて、一目見てあまり使い込まれていないとわかるマンコの中身が見えた。
肝心の早瀬さんから拒絶の言葉は無い。
無いが、羞恥心が強いのだろう心地よさげに緩ませていた顔を赤く染めて、再びそっぽを向いている。「早瀬さん。わかりますか?」
「な、にを、ですか、ぁ♡」――すごく濡れていることを。
とは言わない。言わずともがなでもあるが。
膣口からはとくとくとやや粘り気のある愛液が溢れてきている。 ケツたぶを伝ってシーツにシミを作っているんだ、否応なしに理解できていなければおかしいレベルだ。「いえ。気持ちよくなってくれて、嬉しいですよ」
「は、いぃ♡ す、ごく気持ちいい、です♡」ただ、本当に理解していない可能性だってある。
包皮に包まれたクリトリス、愛液量の割にくぱつかない膣口を見れば、やっぱり早瀬さんの身体は快楽に順応していないことが伺えるなんて……まったくもってギャップばかり抱えている人だ。だからこそ、余計に。
まずは一つ、意志を確認することにしようか。「このまま、脚先へと移りましょうか? それとも――」
「んくっ♡ そ、こはぁ……♡」 「やることに変わりは無く、ただのマッサージですよ、どちらとも。気持ちよくなっていい……いや、気持ちよくなれる、ね」 「気持ちよく、なれ、る――んぁっ♡」指を性器と皮膚の瀬戸際に這わせ、セックスではなく、マッサージであるという言い訳を押し付ける。
早瀬さんはきっと、性行為となれば身体で受け入れても心では受け入れられないだろうから。
「――て、くだ、ぃ」
「……ええ、お任せください」 「ひぅ――あ、あ……んあぁぁあぁっ♡」気持ちよくしてください。
バイトの時によく聞いていた言葉だったけど、何処かちょっと違うように聞こえたのはなんでだろう。そんな疑問は湧いたけど、そっぽを向きながら早瀬さんが頷いたタイミングで、人差し指を膣の中へと潜り込ませた。
「ん、んんぅっ♡ い、いやぁ♡ そんな、ごしごし、しない、でぇっ♡」
「気持ちよくないですか?」 「わからないっ♡ わからない、ですけどっ♡ そこ、いやなん、ですぅっ♡」 「じゃあ続けますね」俺の返事に、え、嘘? みたいな目を向けられたけど、どう見ても瞳が期待に潤んでいる。
嫌よ嫌よも好きのうちとはよく言ったものだけど、やっぱりそれは真実だとよく知っているから。「う゛ぁっ♡ やっ♡ やあぁっ♡ こ、こんなのっ♡ こんなのぉっ♡ だめっ♡ だめなのっ♡ いやなのにぃっ♡」
あるいは、身体は正直だとか言うべきか。
俺の手を止めようとして伸ばされた腕が、くてんと力が抜けて横たわり、代わりに腰がついにへこへこと男を誘うように動き出す。「ひあぁぁっ♡ だめだめっ♡ やですっ♡ どうしてっ♡ どうしてこんなにっ――」
「気持ちいいのか、ですか?」 「う――そ、そうっ♡ きもち、いいんですっ♡ 気持ち良すぎるんですっ♡ こんなの知らないんですっ♡ だ、だから止めてっ♡ も、もう終わりですっ♡ おわりぃいぃっ♡」知らない、ね。
よく聞いてきた言葉ではあるが、それはいい。「早瀬さん、合言葉忘れちゃいましたか?」
「え? あ、ぅ……ん、んんっ♡」視線を合わせて聞いてみる。
はっとしたような表情は一瞬、少しだけ快楽を忘れて理性が早瀬さんの目に灯った。 けれども、中々助けての一言が口から出てこない。奥ゆかしさ、とでも言うのかね? 良いことだ。
まぁ、そうだな。ここはまだちゃんと目的があって自分を抱かせに来たってのを忘れさせられなかった俺の負けってことにしておいて。
「たす――ふやっ!? んんんんんぅっ♡♡♡ なんっ――♡」
フィニッシュに向かおうと決めた時、ちょうど助けてと言おうとしたのかタイミングがかち合った。
聞かなかったフリをしながら、もう片手をクリトリスへと持っていき、刺激を女性器へと集中させる。「やっ♡ やだぁっ♡ わたし、私ぃっ♡ 言おうとしたっ♡ 言おうとしましたっ♡ だからっ♡ だからもうらめっ♡ なかごしごしもっ♡ くりくりもしちゃだめですぅうっ♡」
と、言う割に身体を逃そうとしたりしないのが本音の部分、ということにしておこう。
「しらないっ♡ こんなの知らないんですっ♡ 初めてなんですっ♡ こわいんですっ♡ なにかきちゃうっ♡ しらないっ♡ しらないからぁっ♡ だめですっ♡ これしっちゃったらわたし♡ わたしぃっ♡」
……戻れなくなる、か?
かつてよく聞いた言葉だけに予想がつくけれど、確かにそう言った人はハマってくれたけど。何となく、違う気がする。
「まぁいいや」
「ひあぁっ♡ だめだめっ♡ どうしてっ♡ どうしてやめてくれないんですかぁあぁっ♡ くるっ♡ しらないのきちゃいますっ♡ おっきいのっ♡ ふぐっ♡ んっ♡ あっ♡ あっ♡ あぁあぁあっ♡」膣がぎゅうぎゅうと指を締め付けてくる。
指一本しか入れてないんだけどな、チンコ入れたらさぞかし気持ちのいいことだろう。まったくもって、旦那が羨ましいことだ。
「んあぁぁああぁあっ♡♡♡」
最後にクリトリスを一つまみ。
腰を跳ね上げ背中を弓なりに、イキ潮を吹き散らかして。 見事と言う外ない絶頂を早瀬さんは迎えてくれた。「――やー、エリーって歌上手いなぁ」「そ、そんなこと、ないワ。ひ、久しぶり、だったし」 実のところ健全なデートとやらをする経験が豊富というわけではない俺だったりする。「でも真顔で歌われるとは思わなかったな」「う……い、言わないデ? こういう時、どういう顔をすればいいのかわからないノ」 笑えば良いと思うよ? なんてのは何かで聞いたセリフか。「それは俺もそうだよ」 カラオケが定番、なのかはわからないがとりあえずカラオケなんてものに行ってきたわけだが、エリーも俺と似たようなものなんだなと思ったりする。 変な遊びばかりを身に着けてしまっていたんだなと改めて実感するし、あるいは健全って言葉に収まる遊びをやる暇なんてなかったんだろうとも思う。「意外、ネ」「そうか?」「そうヨ。てっきりワタシは、女そのものに慣れてる男だっテ、思ってタ」「慣れてる男を演じるのは、自信あるけどな」 そう言ってみればエリーは何処か納得したように小さく頷いた。 まさしくお互い様なんだろう。 相手に必要とされる自分であったり、相手に魅力的だと思わせる自分を作るって言うのは俺たちにとって武器の一つだ。 いや、武器なんて捉えているから、健全なんて言葉に近づけないのかもしれないが。「俺は、ありのままの素顔ってやつがわからない。見失っているとも言えるかもしれないけど」「ありのままの、素顔?」 何を自分は楽しいと思って、何を好きだと思うのか。 女の好みは? 好きな娯楽は? 改めて問いかけてみてもぱっとは思いつかない。「長く夜に居たなんて言えるほど浸かっていたわけじゃあない。それでもいつの間にか自分より相手を考えるようになって、相手に好ましく見える自分ってヤツを求めた。そうしていつの間にか自分を喜ばせることを忘れてしまった」「……それは」 言っている意味は分かるのだろう、エリーは自分に重ねるよう胸の前で手のひらを握った。「だからこのデートはさ、ほんとの意味でお互いが何を好きなのかってのを見つけるためのもんにしたい。今日だけで終わらなくていい、何度でもしよう。そうして自分が何を望んでいるのかを確かめよう」 エリーとならできると思う。 優菜でも美香でも、メイでもないエリーとなら。 自分を武器にして生きてきて、自分を見失っている俺たちだからこそ。「……もう」「うん?
エリーとの愛人契約に関して抵抗がある。 これは俺自身からすれば、夜の世界から足を洗うというメイとの約束を反故にするのではないかという部分からくるものだ。 ついでで悪いが、メイ自身もどうやら俺が誰かの愛人になるくらいなら自分がみたいな考えがある位には抵抗がある。 ならばと言うことで。「り、リナのパパ契約?」「そう。いわゆるパパ活……ってのとは少し違うだろうが、言い表すのならこれになるかと思う」 困惑半分、呆れ半分と言ったところか。 セックスの最中じゃなくても表情を動かしてくれるようになったことを喜ぶべきかはともかく、いつかの喫茶店でエリーに言えば、何言ってんだコイツみたいな反応が返って来た。「え、えっト……ワタシは、ワタシの愛人としてアナタを」「わかっている。その気持ちに嘘がないってのもしっかり伝わってる。けど、考えたんだ。条件が悪いって」「条件、ナラ。もちろん、欲しいものがあるのなら応える用意がある、ワヨ?」「俺をそれだけ求めてくれる、俺にそれだけの価値を感じてくれてるのは嬉しいよ、光栄だ。だからこそ、もう一度言うよ、俺にとっての条件じゃあない。エリーにとっての条件が悪いって」 いまいち掴み切れないのかエリーは怪訝な表情を浮かべた。「ワタシにとっての……?」「俺から見たエリーってのはやっぱちゃんとした大人ってのがある。自立した人なんても言うのか? ともあれ、エリーはちゃんと自分の脚で立っている人間だ。過去はどうあれ自分の血肉に変えて前へと進み、社会人として立派な立場を築いている」「そ、それこそ……過大評価、というものなのだけれド」 少し照れたのか視線が泳いだ。 いや、違う、それは照れではない。「わかってる。そんな立派な人間だと自分を評価していない位」「っ……」「だから俺を欲したんだ。自分の脚がぐらついた時、寄りかかる誰かとして俺を見初めた。少なくとも俺は、エリーの少しだけ見せてくれた素顔を見てそういう答えに辿り着いた」「……それ、ハ」 もちろん俺がそうだと感じたってだけの話だが、エリーの反応を見るに中らずと雖も遠からずと言った感じ。「肉欲と言えばアレかもしれないが、セックスだけで自分を立て直せるのなら十分どころかそれは凄い話だと俺は思う。けど、たかがセックスだけでエリーから保障される契約内容じゃあ貰いすぎだなって思っ
「リナちゃん、一つだけ言って良いか?」「は、はい」「キミの真っすぐさとでも言うか、興味があることに一直線って言うのは美徳と言えるけど。後先くらいは考えておこうな?」「す、すみま、セン……」 いつものように優菜を迎えに来てみれば思わぬ光景だったよねと。「まーまーせんせ。お酒は飲んでないし、ママももくにん? だったしさ」「わかってるよ。だからこれ以上は言わないさ」 助手席に座って言葉通りまぁまぁと諫めてくる優菜と、後部座席で恥じ入るように身を縮めるリナちゃんだが……。「サンシャインの人間が捕まえたから良かったもののって話なんだよ」「それは、そうかも、だけど……」「夜の世界に入るのは自由だ。だけど夜の世界に連れ込まれるのは、認めちゃダメなんだよ」「……夜の世界の人間だからこそ?」 そう言うことだ。 うちの店長としても複雑だっただろう、一度ホストとしておもてなしをしているだけにリナちゃんのあれこれなんて薄らと察していたはずだ。 察していたからこそ帰れではなく、茜ママの店を紹介してくれたんだろうけど、もしもタチの悪い人間に捕まっていたのならを想像すれば寒気しか感じない。「良くないことをしても謝れば終わりだ。でも、危ないことや取り返しのつかないことをしたのなら謝って済む話じゃなくなるんだ」 危なくて、取り返しのつかないことこそが夜の世界で隣人と言える存在だ。 だからこそ、先導する人間の胸三寸で華やかな体験も、お先真っ暗な人生も体験できてしまう。「で、ですガッ!」「エリーはそういう世界で生きていたじゃないかってか?」「う……そ、そうデス! なのにリナをここまで育ててくれましタ! 立派な、尊敬できるママでスッ!」「そんな尊敬できる母親を悲しませたいのか?」 そこまで言えばリナちゃんの表情はピシリと固まった。 俺が言うことでも言えることでもないが、少なくとも夜の危ない一面をよく知ってる人間としては言わなきゃならないだろう。「夜の世界……突っ込んで言えば惚れた腫れたが生々しく行われている世界に興味が沸く気持ちはわかるよ。何なら、そんな興味を大きくしてしまった俺にも、あるいはエリーにだって責任はあると思う、ごめんな?」「……い、エ……」「でもやっぱりリナちゃんにはまだ早い。少なくとも、自分のことを自分で責任を取れるくらいになってからじ
「す、すみまセン。えっと、その、勧めてもら、ッテ」 「え? あ、あーいや! ぜ、全然気にしなくてだいじょーぶだし! ママも良いって言ってくれたから!」 こんな時間にこんなところへ。 常識外れなことをしているって自覚はある。 あるけれど、ママと管理人さんがセックスしているところを見てから、どうにも。「と、とりあえずお酒――は、ダメっしょ。お、オレンジジュースとかで、いい?」 「お、おかまいなくっ」 「いちおー、ここお構いするお店だからそれはちょっと、だめかも?」 「う、うー……で、ではオレンジジュース、頂きマス」 落ち着かない、そわそわする。 ううん、ムズムズする、なんて言うのが日本語としては正しいのかもしれません。 ついフラフラ夜の街を歩いてしまって、そんなところをサンシャインの店長さんに声をかけられて。 ――いいお店、紹介するよ。 なんてどう考えても怪しい誘いに、乗ってしまった結果、ここにいる。「改めて。初めまして、優菜です。いつも配信楽しみに拝見しております。どうぞ本日はご歓談に預からせて頂ければ幸いです」 「へっ!? こ、こちら、こそっ!?」 急に、というか不意に。 隣の歳はそう変わらないだろう女の子が大人に見えた。いや、大人になった。「んでさっ! もしもお話できたなら聞きたいことあったし! りなちーはなんで日本の文化? にきょーみあんの!?」 「え、えぇ……?」 と思ったらまたお友達みたいになった。 わ、わけがわからないのですが……あぁ、でもこっちのほうが、なんだか楽だ。 もしかしたら、びっくりしちゃったリナの反応を見て、とか?「え、えと。文化に興味があるのはもちろん、なのですガ」 「うんうん」 「ママが、過ごしている日本って、どんなところだろう、とか、安全なのかな、とかを調べている、うちにって、いいます、カ」 「あー……なるほどねー。ママのこと大切で、大事なんだね」 あぁ、そうなのかもしれない。 何処となくサンシャインと同じような空気がある。 きっとリナのことを純粋に楽しませると言うか、リナの居心地を良くしようってくれているんだ。「はい。リナは、母子かてーと言うのでしたカ? ママしかいないかラ、でも遠くで過ごす時間も、多かったのデ」 「そっかぁ。今は一緒に住んでるの?」 「はい
「お疲れ様、優菜ちゃん。今日はあと他の子の常連さんだから大丈夫よ」「あ、ういっす!」「……大丈夫よ?」「うっ……はいっ! 承知しました!」 ついつい、じゃあねぇけど言葉遣いを間違えちった。 隣でお酌させてもらってたお客さんも笑ってら、こういうとこだぞ、アタシってば。「もう、ちょっとはちゃんとした話題が増えたって褒めようと思ってたのに」「まぁまぁ。こっちはそれ目的みたいなところあるしさ」 でもやっぱ、そんなアタシを気にってくれてる人もいて。 ママにとりなしてくれてるのが嬉しくて。「――さんのお顔に免じて、ですよ?」「はは、ママにそう言われたら大きな借りになっちゃうな。でもありがとう」「それはそれとして。まだダイチくんが迎えに来るまでは時間があるわね。優菜ちゃん、何か作ってあげるからこっちにおいで」「あ、はぁい! ありがとうございます! それでは失礼します! また、一緒にお話しさせてください」 テーブルのお客さんに頭を静かに下げてみれば、またねって言葉がむず痒い。 慣れないドレスを踏みつけないようにカウンターで簡単につまめるものを作ってくれているママのところに向かえば。「それで? 今日はちょっと上の空だけど?」「う˝……」 背中越しにお見通しですよとママに言われてしまった。「ママには、敵わないなぁ」「年季が違うのよ、年季が。優菜ちゃんがわかりやすいって言うのもあるけどね」 そんなにわかりやすいかな、アタシってば。 でもなぁ、先生にも色々バレちゃうし……わかりやすいのか、それともママやダイチさんが凄いのか。 どっちも、なんだろうな。こういうところでも、まだまだアタシはひよこちゃんなんだって思う。「ママは、誰かの愛人とかになったことあります?」「あるわよ、もちろん」「も、もちろんなんですか」 なんというか特に温度を感じない返事だった。 内心を見透かされないよう意図的にっていうか、ほんとに当たり前でしょみたいな。「じゃなきゃここまで来れなかったって言うのが私の場合は大きいけれどね」「立場を利用して、このお店とか、立場を作ったってことですか?」「そうね、そう言っても間違いじゃないわ」 間違いじゃない……ってことは、正解でもない、と。「まったく、あなたは本当に眩しいわね。他のコに面倒がられなかった? いじめられて
美香が言ったお仕事という言葉から思うに。「一番美香が納得できる言葉なんだろうなって思うんだよ」「納得? えっと、アタシやっぱまだまだバカだからわかんないんだけど」「逆に言えば、だけど。仕事って言葉じゃないと納得できないってことでもあると思うんだよな」「……あー」 優菜を茜ママの店へと送りながら、昨日美香と話したことを口にする。 エリーから愛人契約を持ち掛けられたって話に関しては、せんせはすごいなぁなんて言葉で終わったあたり、やっぱり優菜には夜の世界で生きる才能というかそういうモノがあるんだなと思ったりもしたが。「好きにはならないってコト、だよね?」「……」「えっ!? ちげーのっ!? それだとアタシもちょっち納得が!?」「や、そうじゃなくて。相変わらずというか何というか……俺からすれば優菜のが凄いってな」 まだまだ働き始めて時間が経ったわけじゃないが、これも茜ママの店で働き始めたおかげかね? 本質的な部分というか、根っこの部分を掴むのが上手いわ、正直驚いた。「む、むー?」「俺がびっくりしたってだけの話だよ気にしないでいい。ともあれ、多分そう言うことだと思う。美香の言葉を借りるなら、私が一番気持ちよくできるってのはきっと仕事以外の世界でって意味で、昼の世界で俺にとって一番気持ちよくできる場所を作るって意味もあるんだろうなって」 あるいは自負であり、素直に色々なことが言えるようになっても奥ゆかしい美香のアピールでもあるのだろう。 だから仕事以上の関係になりそうだと感じれば神経を尖らせる、敏感になる。 それでいて俺を止めようとか、やめてほしいなんては言わない美香だってのも今の俺を気持ちよくするためにって部分の一つとして、自分を納得させている。「むつか、しーねぇ」「そっか」 助手席で頭から煙を上げ始めた優菜に一つ笑っておく。「や、さ。お仕事でも色んな話聞くんだよね。それこそ、アタシが想像もできない世界の話だったり……」「逆にめちゃくちゃ、消費される側の女の子の気持ちを察せてしまうような話だったり?」「……ん」 煙を上げながらも俺の話から意識が逸れたように思えたから、軽く話を振ってみれば大当たりのようで。 ある種感受性が豊かな優菜だから、そっち方面でもやもやすることはあるだろうなと思っていたけども。「夜の街で、立ってた頃は
「――う、ん……あ、れ?」 「あぁ、起きましたか?」 「かん、りにん……さん? へっ!? きゃあっ!?」 さて、10分と少しくらいだろうか? 盛大にイった早瀬さんの意識が戻ったのは。 身を起こしてきょろきょろと周りを見渡し、状況が理解できたのか思い出せたのか、身体を隠すために再び布団へと潜り込まれてしまった。 なんともまぁお可愛らしいことなんて思いつつ、ビンタの一発が飛んでこなかったことを喜ぶことにしよう。「……どう、してですか?」 「トんでる間に好き放題しなかった理由ですか? それならマッサージで気持ちよくなってもらいたかったからであって、レイプしたかったわけじゃないからで
マッサージで得られる気持ちよさと、性的な快楽と言うものはコインの裏表のようなもの。「ふ、うぅん……管理人さん、上手、なんですね」 「実はマッサージのバイトをしてたことがありまして。ちょっとしたものでしょう?」 全てはどう認識しているかなのだ。 マッサージでマンコは濡れないが、愛撫だと頭が認識したのなら濡れていく。「そう、なんです、か?」 「ええ。知ってますか? 大学生はバイトするために大学へ行くんですよ」 「ん、んんぅ……ふふ。何、それ。初めて聞きました」 「熱心にバイトを頑張ったからか、結構お店でも人気だったんです。指名だって、多かったんですよ?」 視線も一つの接触
なんとも言えないアンバランスさ。 誘惑というには悪意とか邪気とでも言うのか、そんな邪な雰囲気が足りず。 天然というには何処となく狙っているとでも言うのか、俺の視線を胸元だなんだに向けようとさせる仕草が伺える。 だからではないが、俺としてもどうすればいいのかわからないままでなんとも気まずい感じ。 ただ、絶対的に間違いなく言える事があって。「――ご馳走様でした。めちゃくちゃ、美味かったです」「お、お粗末様でした。お口に合って、嬉しかったです」 早瀬さんが作った肉じゃがは、絶品モノだった。 おふくろの味を恋しく思うにはまだ早すぎるだろうが、この人の作るメシをおふくろの味にするだろ
漫画のような展開を喜びつつありがたがるべきなんだろうが、実際に起こってしまえばどうしたらいいのか分からなくなるというのが、偽らざる本音というもので。「あー……えっと、上がられ、ます?」「は、はいっ、その、おじゃま、します」 混乱したままの頭でありがとうございますと言えたのは良い。 が、鍋を受け取っても帰ろうとしない早瀬さんへ言えたのはそんな言葉だった。 部屋にあげてどうするんだって話なんだけど、いやでも帰ろうとされなかったし……どうしたらいいんだ。「あ、やっぱり、うちと同じ間取り、なんですね」「そのはず、ですけども……あ、あぁ、お茶淹れますね? 座ってて下さい」「い、いえい







