LOGINなんとも言えないアンバランスさ。
誘惑というには悪意とか邪気とでも言うのか、そんな邪な雰囲気が足りず。 天然というには何処となく狙っているとでも言うのか、俺の視線を胸元だなんだに向けようとさせる仕草が伺える。だからではないが、俺としてもどうすればいいのかわからないままでなんとも気まずい感じ。
ただ、絶対的に間違いなく言える事があって。「――ご馳走様でした。めちゃくちゃ、美味かったです」
「お、お粗末様でした。お口に合って、嬉しかったです」早瀬さんが作った肉じゃがは、絶品モノだった。
おふくろの味を恋しく思うにはまだ早すぎるだろうが、この人の作るメシをおふくろの味にするだろう子供は、将来メシで苦労するだろうなと確信してしまうほどに。「つ、次はお米も炊いて来ますのでっ」
まぁなんとも抜けてるというか、他に用意が無くて肉じゃがだけが食卓に並んでしまったけれども。
一番腹を満たしてくれたのは何よりも、美味しいと言った時に早瀬さんがすごく嬉しそうに浮かべた笑顔……とか言うのはここじゃあ気障が過ぎるか。「次、ですか?」
「あ、ぅ……そ、その、ご迷惑、でしょうか?」そんなことは無い、次と聞いて食ったばかりだというのに腹の虫が騒いでしまう程度には期待してしまう。
「迷惑なんてとんでもない。でも、旦那さんに悪いですし……俺に奮うよりまずは、じゃないですか?」
「そ、う……ですよね」期待はする。
料理にはもちろん、出来る事ならこの微妙な雰囲気の払拭にも。あぁ、そうだな。
払拭を期待するんだ、だったらこっちからも動くべきか。「それで、早瀬さん」
「は、はい」 「ご相談は、何でしょう?」 「あ……ぅ」改めて思うが、この状況は中々に意味不明だろう。
確かに俺は前任者に比べれば圧倒的に若い男だ、親切心というか老婆心でご飯のお裾分けなんてことが起こり得るかもしれない。「ご馳走したかった、というわけじゃあないでしょう?」
「……」そういう話なら鍋を渡して終わりでよかった、でもそうはならなかった。
だったら、別の目的があったと考えるのはいたって普通の事のはずで。
若い男としての俺ではなく、管理人の俺に用事、あるいはお願い事でもあると考えるのが自然だ。それは例えば。
性接待でもする代わりに、家賃を免除してくれ、とか?
「管理人、さんっ」
「えあっ!? は、早瀬さんっ!?」なんて。
メルヘンやファンタジーよろしく、バカなことを思い浮かべた時、早瀬さんは自分のシャツをまくり上げながら立ち上がり。「だ、だだだ、抱いて下さいっ!」
何にも包まれていない大きな乳房をぼろんっと露出させ迫ってきた。
……えぇ?
いきなりというかあんまりにもな展開に頭が追い付かない。 据え膳食わぬは男の恥とはいうが、流石に人妻を据え膳というには無理があるだろう。「そ、その代わりにちょっと、えぇと……こ、今月のお家賃をお安く――あ、安心なさってください! か、管理人さんは何もしなくて大丈夫、ですから! ただ、うんって言ってもらえたら……!」
わー予想的中だー……あんまトキメキもしなけりゃ嬉しくもねぇなコレ。
その上最後のラインは自分で踏み越えろと来ましたか、ずるいね、どうも。本人は慣れていないのか若干涙目で、身体を震わせている。
というか微妙に震えてるせいで早く吸い付いて欲しいみたいに、目の前で早瀬さんの乳首がぷるぷるしてて大変理性が削られる。やばいな、ほんとヤっちまおうか。
「もちろん必要な物だって持って来てます、からっ。きっと、お――おまんこで気持ちよく、できますからっ」
「……うん?」ちょっとした違和感が誘惑らしい言葉にあった。
そのおかげで削られた理性が回復するなんて、なんともな話ではあるが。「……ふぅ。こういう時にどういう風に返事をしたらいいのかわからないんだけど、早瀬さん」
「は、はい」ポケットから慌てたように取り出された早瀬さん曰くの必要な物、コンドームかと思ったのも束の間で。
出て来たものはウェットトラスト、通称ウエトラと呼ばれる膣内潤滑油だ。 そのエッチな巨乳を使ったパイズリなんかで気持ちよくするためには、使えないというか適さない。この人、一応人妻なんだよな?
性的な知識が常識レベルにはあると思った上で、ウエトラを必要な物と言っているあたりから察するにワケアリか。……仕方ない、ね。
ちょっと前までよく使っていた言葉なのに、久しぶりに感じるな、この言い訳。「俺、迫られるってのにはあんまり興奮しないんですよ。責める側が好きなんです」
「え? あ、そ、そう、なんですね……」こんなことは止めろと言って欲しかったのか、それともされるがままで居て欲しかったのか。
どういう返事を期待していたのかは伺い知れないけれども、早瀬さんは少しだけ目を伏せて纏っていた陰を重くした。「そ、れでは、その」
「うん。寝室、行きましょうか」こういう形で女の裸を前にしたくはないんだけどな。
けどまぁ、これもある意味お悩み相談の一つではあるのだろう。マンション管理人の仕事とは、言えないかもしれないけどな。
「ど、どう、ぞ、ご自由にお楽しみくだ、さい。でも、えっと……ソレは、できれば使ってもらえると、嬉しい、です」
そう言って俺にウエトラを手渡して、ベッドの上に仰向けで早瀬さんは身体を横たえた。完全なマグロ表明だ。
だって言うのに、ただそれだけでエロさを出してくるのはやっぱ美人、というよりは大多数の男がお相手を願うくらいに可愛いからだろう。「これ、いつも使ってるんですか?」
「えっと……使ったこと、ないです、けど。ごめんなさい、私、濡れにくい、ですから。あった方が良いって、その」 「あぁうん、すみません。余計なことを聞いてしまいましたね、忘れて下さい」 「は、はい……」濡れにくいって自覚はあっても使ったことがない、ねぇ?
どうしたもんかな、この人の考えるセックスって奴をむしろ教えて欲しいもんだ。
あるいは言われたとおりマンコにウエトラ仕込んでさっさとぶち込んで終わらせるってのがいいのかも知れないが。わざわざココで、味気ないセックスをするってのも面白くない。
「っ……」
面白くなさを加えて言うのなら。
早瀬さんはさっきからずっと俺の手を見ている。こうしているのが自分の意志でかどうかは置いておくにしても、イヤイヤならばさっさと終わってと顔をそっぽにでも向けているのが普通だろうし、乗り気なら逆に俺の顔やらそれこそチンコにでも視線が行ってておかしくないだろう。
これは、まぁつまり。あまり想像したくない事情を抱えているということ。
「早瀬さん」
「えっ!? あ、はい、どう、しましたか?」だから、切り替える。認識をずらして空気を変える。
気持ちのいいセックスとやらはしたいが、ネタを握ってレイプしたいわけじゃあないのだ。「手、握りませんか?」
「手を、ですか……?」なんでと言わんばかりに首を少し傾げられてしまったが、うーん幼い仕草が良くお似合いで。
実は俺より年下だったりしない? むしろ身体つき以外中学生とか言われても納得しちゃうんですけど。「ええ。早瀬さんみたいな可愛い人を抱けるんです、俺
出来るだけ自然な流れを心がけて、早瀬さんの思っていた以上に冷たかった手を軽く握る。
そしてわざと緊張を装って指を震えさせてみれば。「……がさがさ、ですよね? ごめんなさい」
「料理、得意なんですよね?」 「え? あ、えっと……昔は、そう思って、ました」 「家庭的で、良いお嫁さんの手だと思いますよ」さわさわ、にぎにぎと。
「そんな、こと」
「肉じゃが、本当に美味しかったです。思いましたもん、早瀬さんの子供は将来苦労するだろうなって」 「苦労、ですか? それは、どうして?」 「どれだけ美人の嫁さんを貰っても、胃袋をお母さんに握られたままじゃ大変です」手にあるツボを優しく刺激しながら、何でもない話をする。
「……ふふ」
「なんで笑うんですか」 「だって」 「少なくとも、俺の胃袋は早瀬さんにもう握られちゃいましたよ? 早瀬さんより可愛くて料理上手な嫁さん見つけるのは絶対大変です」繋いでいる手が少しだけ温かくなった。すなわち少しだけ、本当に少しだけ気を許してくれたということ。
「ふふふ、もう管理人さんは、お上手ですね」
「ただの本心を言っただけなので、上手というよりは素直と言ってもらいたいですね」 「じゃあ、素直な人ですねって……もう、それだと私が可愛くて料理上手だって認めることになっちゃうじゃないですか」 「あらら、バレてしまいましたか」異常と言える状況に変わりはない。
だと言うのに、それを忘れて雑談に興じるってことは、それだけこんな会話に飢えていたということ。「――早瀬さんは、頑張り屋さんなんですね」
「え? っ……!」 「すみません。髪、触られるのイヤ、でしたか?」 「い、いいえ? そんなこと、ないですよ」そして、俺の手を注視していた理由がこれでわかった。
頭を撫でにいったわけじゃない、毛先を触ろうとしただけだ。それでも早瀬さんは手が離れた瞬間、視界の中に俺の手が入った瞬間に、身体を強張らせた。
「毛先までこんなにキレイなのに。髪、染め直さないんですか?」
「染め直したいのですけど……忙しくって」言葉遣いが少し砕けてくれたは良いけれど、やっぱ触れられたくはないよな。
日常的に、多分旦那からだろう暴力を振るわれている、なんて。
「じゃあ、そうですね。いつも頑張ってる早瀬さんに俺からご褒美を進呈します」
「ご、ご褒美?」 「要らないなんて言わないで下さいね? ご褒美をあげたら、俺も早瀬さんの身体って言うご褒美を貰うんですから」 「……もう。管理人さんは素直かも知れないけど、やっぱり上手です、特に口が」断れなくなっちゃったと、困ったように笑ってくれた早瀬さんは。
「じゃあ、ご褒美一つ、下さいな」
「ええ。それじゃあ、まずはうつ伏せになってもらって良いですか?」 「ん……わかりました」素直に言うことを聞いてくれて、うつ伏せになって力を抜いた。
よし、それじゃあ。
「安心してください、ただのマッサージですから」
たっぷり、解してあげるとしますか。
拙い、という言葉は間違っているかしら。 間違っているのだとするのなら、幼稚とでも言うのか……日本語は、難しいわね。 ただ、だから何だというのだろう。「素敵、だったわ♡」「エリーこそ」 絶頂の余韻を噛み締めながら、目の前にあるダイチへとほほ笑む。 この、心の奥が満たされたような心地がたまらない。 あの夜のような激しさもなかった。 娘の前であることなんてすぐに忘れてしまった。 ただただ、目の前にいる人を欲して。 欲した相手に満たされるという感覚が。「あぁ……」 懐かしいと言うべきなのか、初めてと言うべきなのか。 瞼を閉じれば目の端から涙が零れた。 そうだ、こうだ、セックスとは、情交とは、こうだったって。「ダイチ」「うん?」 もうきっと離れられない、離れられる自分を想像できない。 新しいパートナーを探しても、理想以上にリナの父親をしてくれる男を見つけても。 私は、エレオノーレ・ルサックという女は。「ありがとう」「どういたしまして」 これが最後の恋だと確信してしまったから。 そうしたいと、心の底から思ってしまったから。「ん……」 そんなことを思いながらダイチを見つめていると、優しく唇を重ねてくれた。 本当にずるい人だ。 素人感を出してくれたと思えばすぐにプロなことをしてくれる。「んっ!?」 どれだけ女を泣かしてきたのか、あるいは無自覚に誑し込んできたのか。 ちょっと悔しいなんて思って、ダイチの下唇を嚙んでみた。「ぷぁっ……夢の時間は終わり、ってか?」「他ならないあなたが起こしたのよ? 酷い人ね、あなたは」 ダイチの頬へと両手を添えて、額と額を重ねる。「クズな自覚はあるよ」「不幸にしちゃイヤよ?」「前向きに善処する」「もうっ、変な所で日本人にならないで」 快楽が身体から引いていく。 それでも心の中は温かいままで。「あ」「うん? どうした?」 どれだけ夢中になっていたのか、母親失格だって言うのは今更だけどリナのことを思い出した。 忘れていたのはダイチも同じだろう、ピンとこない様子の顔から眼を離してリナがいたところへ視線を移せば。「んっ♡ んんぅっ♡ ま、まぁ……♡ かんりにん、さぁんっ……♡」 ……あぁ、もう、こういう時どういう顔をすればいいのか、何と言えば良いのか。「……あー」「
ドキドキ、する。「大丈夫か?」「え、えぇ……でも」「わかってる。このまま少し止まっておくから」「……くすっ。もう、ほんとに……ありがとう」 この前とは、違う、全然違う。 何が違うのかは、わからない。わからないけれど。「むずむず、しちゃ、ぅ」 ママの管理人さんを見つめる目が。 管理人さんがママへ向ける微笑みが。 ……その二つともが、リナに欲しい、なんて、思ってしまう。「んっ……♡ あ、ぅ……ほ、ほんとに、ずる、ぃ♡」「何のことやら」「んあぁっ♡ そ、そんなところが、とって、も、ぉ♡」 何をしているのか。 よく見れば管理人さんの腰が本当に少しだけ動いている。 ぴたりとママのおまたの間でひっついて、くいくい、って。「あっ♡ んんぅっ♡」 その度、ママがぴくぴくと反応して、自分の指を咥えた唇の間からあまい吐息が漏れている。 ……気持ち、いいんだってわかる。「ね、ねぇ♡ だい、ちぃ♡」「まだだって。もっとゆっくり、ほぐしてやるから」「ひ、んっ♡ や、やだぁ♡ お、おっぱいの先、いぢめない、でぇ♡」 管理人さんは腰の動きをそのままに、ママのおっぱいを揉み始めた。 ぐにっと何度か揉んだ後、指先で固くなってるママの乳首をこりこりと。「……んんぅ」 ……あれ? 今の、声は誰のだろう?「り、な……ひ、んっ♡」 あぁ、いつの間に。 いつのまにリナは、自分の胸を揉んでるのですか。 慌てて手を離したとき、不意に管理人さんと目が合って。「う、うぅ……」 良いんだよ、気にしないよ、なんて微笑まれてしまった。 いや、だな。 見透かされてると、思う。 リナがわからない、リナの何かを、見透かされてる。 でも。「エリー?」「んっ♡ んぅっ♡ い、言っておく、ケド♡ もう母乳は、でない、かラぁっ♡」「そりゃ残念」「んあぁっ♡ だ、だかラっ♡ でない、ってぇっ♡ そ、そんなに吸わない、でェっ♡ のび、ちゃうぅっ♡」 不思議と恥ずかしくは無くなった。 当たり前に娘の前でセックスを披露するなんておかしい光景だ、そうらしい。 なら、一番恥ずかしいのはママと管理人さんで、そんな光景を前にしてリナが――。「きもち、よく……なっても、イイ、ヨネ?」 無意識にではなく、しっかりと。「んっ♡」 管理人さんの手つきを真似して、自
「キレイだよ」 構図は、この間とそう変わらない。 違うとすれば寝室の隅でじっと探るように俺たちを見つめているリナちゃんと、俺の目の前でバスタオル一枚を身に纏ったエリーが。「あ、う……」 戸惑ったように、照れたようにそっぽを向いて頬を染めているあたりだろう。「どうした? ここは、それほどでもない、とかありがとう、とか言って余裕を見せるところじゃないのか?」 「も、もう……本当に、あなたはいぢわる、ね」 揶揄うように言ってみればエリーが頬を膨らませた。 そうとも確信犯だ。 今の彼女にそんな余裕がない事なんて流石にわかっている。「きゃっ」 「悪かったよ。俺もなんだかんだ緊張してるんだ、許して欲しい」 出来るだけ優しくベッドへと押し倒す。 緊張しているって言うのは嘘じゃない。 エリーが感情を消して……と言うか、平坦でいることで本来の感情の動きを偽っていたように。 俺もまた、無自覚でプロとしてふるまうことでそう言った感情を無視できていた。「……嘘」 「だと思うか?」 恨みがましそうな目を向けられてしまったよね。 本当だよってのを伝えるために、エリーの手を取って俺の胸へと手のひらを当てれば。「あっ」 「本当、だろう?」 バクバクと緊張で跳ねている鼓動が伝わった。 伝わったから、嘘じゃないとわかったからだろう。「あ、う、うぅ……」 エリーの羞恥がより一層高まってしまったようで、頬の赤らみは顔中に広がった。「わかるよ、本当に」 「だ、だい、ち……?」 リナちゃんには聞こえないよう、エリーの耳元へ唇を寄せる。「コレが、お互い武器であり防具、だったもんな」 「……」 自分が手にしているものだから、纏っているものだから。 武器として通用してもしなくても仕方ないで割り切れるし、防具だから自分の心や気持ちにまで響かない。「剥き出しの心ってのか、感情って言うのか……やっぱり、俺も少し怖いよ」 「ダイチ……」 エリーだから、エリー相手だから言えることだろうこれは。 こと、素の自分ってヤツを育てられなかったから。 弱いまま、強い武器や防具を手にしてしまったから。「本当に、あなたは」 「うん?」 不意に、伸し掛かった俺をエリーが下から優しく抱きしめて来た。「愛しい人、ネ」 「……ありがとう」 一瞬
リナちゃんが望むのならそうするだけだ。 と言えば他責思考が過ぎるなのだろう、あるいは今までならそう言っていた。 あるいはそう言った自分の割り切り方や無自覚な部分が、ハマってくれた理由の一つと言えるのかもしれないが……中途半端に都合が良いを目指すと決めた自分でも、そこはきっちりしておくべきだと思う。 すなわち、双方良し。 お互いが、またお互いの取り巻く環境が良いと認めたことをしようという話。 全員が納得して折り合いをつけられたのなら、ということだ。 もちろんそう簡単じゃないことだと思う。 美香なんてそりゃもう嫉妬するだろうし、やっぱり一番気持ち良くできるのは自分だという回数は増える。 優菜にしても、あまり教え役としていい背中を見せることには繋がらないとも思う。 ただ、それでも。 世間様が定める普通には生きられない。 わがままだという自覚はある、結局はみ出し者でいることを許容したとも言える。 だけど。 俺は俺の普通を探して、作り上げて、その中に生きたいと思う。「――ってなわけで、どうだろう?」 さて、改めてのお話合いである。 夜、リナちゃんの前でもう一度セックスをして欲しいと他ならぬ本人に言われたと言えばエリーは。「……えぇ?」 見事な困惑の表情を浮かべた。 たっぷり5秒くらい首を傾げた後、ゆっくり視線を隣にいるリナちゃんへとエリーは移して。「シて、欲しいです」 「……」 何か言葉を紡ぐ前にリナちゃんの要望で口を防がれた。 不謹慎と言うべきなのかはわからないが、少し面白い。 正直エリーは二つ返事だろうと予想はしていたんだけどな、何を困惑する必要があるのだろうとも少し思うが。「その、ダイチ? 本当に?」 「俺からイヤだとは言わないし、思わないよ」 「う、うぅ……」 どうにも羞恥心があるらしい。 頬を染めて俺の目から視線を外し、冷蔵庫のほうへと目を泳がせた。 なんとも可愛らしい反応をしたなと言えばエリーには失礼なんだろうが、許してほしいよね。「あの日とは何かが違うセックスになる。そんな予感は俺にもあるよ」 「せ、セックスとか、えぇと、その……あ、あまり簡単に言わないで欲しいのだけれド」 「お、おお……」 そっぽを向いたままエリーは言うが、これまた予想外だ。 加えて言うのならリナち
いやまぁ、本当に。「どうしてこうなるもんかね」 「も、申し訳、ありまセン」 「いや、リナちゃんとは妙な縁が出来てるって思っただけだよ」 「それは……ハイ……」 優菜からリナちゃんの相談に乗ってあげて欲しいなんて言われたわけだが。 ――間違えなかったアタシだと思うんだ、リナちーは。 なんて言われたら断れない。 きっと、このまま間違えないようにしてあげて欲しいってことだろう。 少なくとも、変な形で夜の世界に突っ込んでしまうようなことはなくしてあげて欲しいと。「とりあえず、先に。この前キミにパパとは言ったけど、あくまでも父と娘って関係に似た何かって話だ。少なくとも俺とエリーの名前が付けられない関係はしばらく続く。その間俺は、キミのケアも考えるべきだと思っている」 相談に乗れって言われて応じたんだからこっちから話を振るのは間違いなんだろうが……。 はっきりさせておかないといけないことではあるだろう。 何よりここが定まらないとどういう話をすればいいのかが見えないままだ。「……ケア、ですカ」 「言葉を飾った方が良かったのならごめんな?」 我ながらもっと上手い言い方はあっただろうってのはわかっている。 ただ、優菜のリクエストである間違えないって部分を考えるのなら。「キミには、あまり夜の顔を見せないほうが良いと思って」 「……」 「もっとも、既にホストとしての顔も、エリーとの肉体関係者としての顔も見せてしまってるから今更と言えばそうだけどな」 間違いなく今更だ。 今更ではあるけれど、俺にとっては昼でも夜でもない、素で生きて行こうという第一歩だ。 リナちゃんにそこを許してほしいというのは間違っているだろうが……それでもである。「その……管理人、さんハ」 「うん」 「ママのことを、愛して、いるのですカ?」 ふむ。 上手くやるのなら愛していると言っておくべきだろう。 その方がリナちゃんの理解が及びやすく、納得しやすい。 でも、だ。「愛しているってのがどういう意味なのか、俺にはよくわからないよ」 「わ、わからない、ッテ!」 「少なくともエリーのことは……多くの意味で相性が良い相手だと思っている。それが好意によるものなのか、リナちゃんの言う愛ってものなのかは、わからない」
――そうなんですね、わかりました。でも私が一番大地さんを気持ち良くできますから。 せんせがアタシたちにエリーさん? との愛人契約がどうなったかを話してくれたんだけど、美香さんはそんな一言で終了だった。「やぁっぱ、あの人すげーわ」 格の違いってーのかな? 多分、同じ女ってステージで美香さんはアタシの遥か先に居る人だなって思う。 勝った負けたじゃないけれど、どうなっても先生のことを好きで居続けますというか……言葉を借りるなら一番気持ち良くできる人で居続けるって覚悟? そんなんをしてるってよくわかった。「ある意味、愛人ってーなら美香さんみたいな人を言うんだろうなー」 ぼんやりと考える。 多分美香さん自身は愛人体質ってヤツだ、それもママの店にいるような仕方なく一時的にそういう関係を作るとかじゃない、根っからの。 あの人は他人の中に居場所を作る。 アタシなんかは、ママに言われたように愛される自分ってーのを作ってくれる人を好きになるわけで。「全然、違うタイプだねー……どっちがいいとかわからんケド、同じ女でも全く別物だぁ」 昼の街を歩けば、ガラスに映った自分が半分口を開けていて、慌てて唇をきゅっと結ぶ。 アタシはどうなんだろう。 ダイチさんは、先生だ。 ダイチさんのことが大好きで、ダイチさんに認められる自分っていうのを夜の世界で作りたいなんて思っている。 だからまだ先生と生徒って間柄で、授業としてエッチもする。 そんな風に思ってたら急にダイチさんの素で抱いてくれるようになったりで……あうぅ。「む、むつかしすぎる……」 まー好きな人に求められる自分であるならそれでいっかって感じ。 結局、その人との関係なんてものはお互いが納得してりゃそれでいいわけで、エリーさんってリナちーのママと先生の関係もそうだ。 嫉妬しちゃうってトコはあるケド、関係が被らなきゃそれでいいんじゃねってところで。「……ん?」 難しいことを考えるのは、難しいことを考えられる自分になってから。 そんな風に思って何気なく視線を向けた先に。「よっすー! リナちー! んなトコで何してんの? 新しい配信ネタ探し?」「あっ……ユーナ、ちゃん」 さっきまでのアタシと同じような、むつかしー顔したリナちーがいた。「――リナちーのママは、凄い人だね」「す、すごい、人?」 近く
「――う、ん……あ、れ?」 「あぁ、起きましたか?」 「かん、りにん……さん? へっ!? きゃあっ!?」 さて、10分と少しくらいだろうか? 盛大にイった早瀬さんの意識が戻ったのは。 身を起こしてきょろきょろと周りを見渡し、状況が理解できたのか思い出せたのか、身体を隠すために再び布団へと潜り込まれてしまった。 なんともまぁお可愛らしいことなんて思いつつ、ビンタの一発が飛んでこなかったことを喜ぶことにしよう。「……どう、してですか?」 「トんでる間に好き放題しなかった理由ですか? それならマッサージで気持ちよくなってもらいたかったからであって、レイプしたかったわけじゃないからで
人間、分不相応な金の手に入れ方をしてしまうとダメだなと思う。 宝くじの一等を当ててしまった人は、抜け殻のような毎日を送るようになってしまうなんてのは本当の話なんだろう。 いや、そんな話に比べればスケールはもっと小さいし、ただの言い訳なのかもしれないけど。 大学卒業を目前に控えても内定を貰うどころか何処の面接も受けないまま卒業してしまったのは、並べられた求人票の月給を、一週間程度で稼げてしまうバイトで常識をおかしくしまったせいだと言いたい。「――ここがマンション、セルヴィスね」 スマホから案内を終了しますという音声が流れ、見上げたのは3階建て、総部屋数21のマンションがあ
うつ伏せになった体勢のまま、ひたすらに手マンを続けどれくらい経ったか。「んお゛っ♡ ら、らめらめらめっ♡ イってる♡ もうさっきからずっとイ゛――♡♡♡」 感覚では一時間は経っていないくらいの今、すっかり腰を持ち上げては俺の指に合わせて腰をくねらせ完全に出来上がってしまった。「――か、は♡ イ゛ってりゅ♡ からぁっ♡ ゆびっ♡ ゆびほじほじするのもう――ひぐぅっ♡♡♡」 ずぼずぼと同じペース、同じ力加減でお姉さんのイイ所を刺激し続ける。 変化を出すのは左手でだけ、時折クリトリスをこすったり、お腹へと手を回して外からポルチオを圧迫する程度。「お゛ほっ♡♡♡ むりっ♡ むりむりむ
「こんばんは。ご指名、ありがとうございます」 「こんばんは、ダイ君。今日も、よろしくね」 部屋に漂うアロマの香りをいい匂いだと思わなくなったのはいつだったか。 やってきたお客さんは一週間に一度のペースでやってきてくれる、俺がこの店に勤め始めた頃から俺を気に入ってくれていた40手前のお姉さん。「聞いたよ? 今日で最後なんだって?」 「そうなんです。大学卒業をキリに」 「勿体ないなぁ……ううん、寂しいな。このお店では初めてのお気に入り君だったのに」 「あはは、すみません。でも、嬉しいです」 この業界から考えれば、三年も自分にハマらせているのはそこそこ凄いことだなんて店長は言って