Masukさあ、調理タイムも中盤に差し掛かった。
いざ月海鮭を前にしたフレイヤだが…それを持ってきた影光に尋ねる。
「こ、こんな魚捌いたことないんだけど…どう切ればいいわけ?」
そう、あくまで包丁で魚を捌かなければいけないのはフレイヤだ。食材の用意や下ごしらえ、アドバイスなどは急遽加わったアシスタントの影光が行ってもいいが、調理の本質となる部分はメインの料理人であるフレイヤが行わなければいけない。
ましてや、相手は幻の神食材『
しかし…影光は、確信を持って言った。
月海鮭は、刃を選ぶのではない、料理人を選ぶ。そう言われる食材だ、と。
「フレイヤさん。月海鮭に理屈は通じない。必要なのは食材への敬意と、美味しいものを食べさせたいという強い気持ちのみ。君ならきっとできる。月海鮭も心を開いてくれるはず!」
「えっ?ちょ、意味が分からないんだけど…?」
「僕は月海鮭に合う最高の醤油と薬味を用意する!じゃあ、任せたよ!」
そう言って影光は醤油や薬味の準備に取り掛かる。フレイヤが何度聞いても『気持ちで行ける!』『愛があれば大丈夫!』と完全に精神論でしか答えない。
野球で例えるなら
「ビューンと球が来るでしょ、それをカキーンと打つでしょ。そしたらスゥーッとスタンドに入るってわけ」
レベルで何にも通じないアドバイスである。
ため息を吐いたフレイヤだが…まあ確かに今から伊蔵に勝つにはこの魚を刺身にするしかないだろう。諦めてとりあえず包丁を入れようとするフレイヤだが…。
包丁はあっさりその身に弾かれる。
「包丁、弾かれちゃうんですけど…?」
「それはたぶん気持ちが入ってないから!大丈夫!君ならできる!」
あ、ダメだこれ、とフレイヤは諦めて腕を組む。
気持ちで行けと言われてもどうすればいいというのか。精神論は嫌いではないが、100%精神論を自分に向けられると、こんなにも厄介なものなのか…と考えてしまう。
「月海鮭さん、なんとかお力を貸してもらえませんか?」
「…」
とりあえず話しかけてみるが、当然ながら返事はない。ただの
とりあえず撫でてみたり軽く叩いてみたりしたが、特に変化はない。
「フレイヤはいったい何をやっているんだ?」
「捌き方がわからないのか?幻の食材だから無理もないが」
「かといって撫でたり話しかけてどうにかなると思えないが…」
観客もざわざわしている。まあそれはそうだ。
一方、包丁の伊蔵はというと、刺身のラストスパートに入っていた。
(俺は刺身こそシンプルにして料理人の腕が問われる料理…いや『芸術』だと思っている。ごまかしが一切きかない料理だ)
綺麗にカットされたマグロの赤身を並べながら彩りを加え、心の中でそう呟く。刺身は芸術…それが伊蔵のプライドだった。
(だからこそ、俺はこの料理に全身全霊を懸ける!相手がオーディン様の娘であってもけっして手加減はせん!それこそが俺のプライドだ!)
地上げ屋に雇われているにしては明らかに分不相応の高い志を持って、伊蔵は気炎を上げる。あとは刺身を並べるだけ…ほとんど出来上がりのようだ。
「チッ、伊蔵め。あれほどの腕なら、わざわざあんな子供を動揺させずとも勝てただろうが。料理人の風上にも置けねえ所業だな」
「まあ、仕方ないだろう。G.O.D.からの追放が懸かっているのであれば、責めることはできないよ…我々がそれを行うかと言えば、答えはもちろん『ノー』だが」
勝負を見ている『温度管理のマキシマ』が忌々しげに呟き、それを『カレー王者の杉森』が涼やかに制す。この二人も相当な腕を持ちながら、伊蔵の戦略に疑問を持っていたのだろう。
…しかしながら、地上げ屋のおじさんだけは笑っていた。
「うははは!これで一勝は確実…。まず、あの小僧を追い出すことは確定じゃ!」
と、恥も外聞もなく言いながら。…そして、その大笑いはフレイヤの耳にも入った。
そう、自分が負ければ影光のバイト退職がまず確定する。店の名前を変えればたぶん再雇用OKとはいえ、地上げ屋のおじさんはその辺をしつこく突いてしょっちゅう店に来るようになるだろう。
そうすれば影光は気を使って再雇用に応じないかもしれないし、母もしつこく言い寄られて辟易してしまうだろう。
(母さんも、せっかく見つけた凄腕ライバルも、そんな目にはあわせないわよ!逆に私が一勝すればあの地上げ屋のおじさんは永久出禁だし!)
そう考えたフレイヤは大きく息を吐いて…包丁を大きく構え、勢いよく月海鮭に振り下ろした。
「あんたも食材なら、料理人の言うことを聞きなさい!!」
と威勢のいい掛け声を上げながら。
―すると、先ほどまで一切包丁を通さなかった月海鮭に、ストンと刃が入った。まるでフレイヤの意に従うかのように。
「あ、切れちゃった」
観客は一瞬静まり返り…そして、大喝采を上げた。
「あ、あの幻の食材と言われる月海鮭に刃を入れるとは!」
「かつて多くの料理人がチャレンジしたというが、成功した者はほんの一握りしかいなかったと言うぞ!」
「フレイヤも凄腕とはいえ、まさかこの短時間でそのレベルに辿り着くとは!?」
先ほどまで月海鮭を知らなかったくせに急にやたら詳しくなった観客が大騒ぎする。まあいつの間にか湧いてくる観客だし、そういうものなのかもしれない。
ともかく、影光は月海鮭の刺身に適した部分を順に指摘していき、フレイヤはそれに従い背、腹、尾身を捌いていく。
背身は薄く、腹身はやや厚く。尾に近い身は歯応えを残すため、角を立てるように切る。
それを見た伊蔵も満足そうに高笑いしながら最後の仕上げに入る。
「ハハハ!素晴らしいぞ、俺の相手がこれほどの逸材だったとは!!お前は血筋や肩書など放り投げても一級の料理人だ!今までの非礼や無礼を詫び、この俺もすべてを懸けて挑ませてもらう!」
先ほどまで動揺していたフレイヤだが、過集中に入ったのか影光以外の言葉は届いていないようだ。
調理時間は残りわずか、両者全力でラストスパートをかける。そして…。
「調理タイム終了!そこまで!」
「ジャスト!出来上がったわ!」
調理タイム終了と同時に、フレイヤの料理も出来上がったのである。
――――――――――
審査員に料理が運ばれていく中、フレイヤは影光に尋ねる。あんな幻の食材をいったいどこから持ってきたのか、と。
その問いに、影光は笑顔で観客席の方を指差した。フレイヤがそちらを見ると――。
「うおおおお!影光様!ナイスアシストでしたぞ!」
「ふっ、影光があの魚を切れるようになるには三年ほどかかったか。それをこの短時間であそこまで捌くとは……。あの少女も、目を見張るほどの逸材と言えるであろう」
いつものように、
「なんていうか、影光はホントお坊ちゃまなんだねえ」
フレイヤは呆れたように呟く。だが心のどこかで、自分も少しだけ、そういう環境で修行してみたい…そんな感情が芽生え始めていた。
そんな会話の後…さあ、審査員実食開始!!
さて料理勝負の決定後、いつものように湧いて出てくる審査員と観客たち。チーム戦というのはしばしば見られる勝負方式ではあるが、修羅が集う食堂こと『町食堂 かがやき』の面々が順に闘うというのはこの花宮町では最大のイベントだ。観客たちの声援もいつもより気合が入っている。だが影光としては、それよりリリスの変化の方が重要だった。彼女の真剣な表情というのは、この町に来てから一度も見たことがない。その彼女がここまでの顔をするというのは…おそらく、地上げ屋のおじさんの連れてきた専属シェフたちのいずれか、あるいは全員に起因しているのだろう。それはフレイヤも同様に感じているようだった。母の珍しい表情に戸惑い、不安を感じているようだ。ともかくまずは勝たなければ、と影光が一歩踏み出すが…。「待て、少年。俺の相手はお前ではない」同じように前に出た『包丁の伊蔵』が影光を制した。疑問に思う影光だが…伊蔵は続けて言う。「考えてもみよ、こっちは三連敗したらタワマンを作らされるのだ。それに対してそっちは三連敗しても年増の交際のみ…。しかもさっさと別れてしまえばそれまでよ。背負うリスクから考えると、こっちが対戦相手を指名しても不公平ではないと思うが?」誰が年増よ!と後ろで怒るリリス三十五歳だが…確かにそれも一理あるということで、審査員は伊蔵の要求を認める。そして伊蔵が対戦相手として指名したのは…フレイヤだった。「俺の相手は、お前…いや、貴方です。フレイヤ様」そう言うと伊蔵は恭しく頭を下げる。戸惑うフレイヤだが…そんな彼女に伊蔵はさらに告げた。「大恩ある『オーディン』様のご息女に無礼を働くこと、どうかお許しください」「えっ…?誰それ?しかも、ご息女って…?」「…やはりリリスは話しておりませんでしたか、あの裏切り者め…しかしながら勝負となれば別。全力をもってお相手させていただきます」
さあ、調理タイムも中盤に差し掛かった。いざ月海鮭を前にしたフレイヤだが…それを持ってきた影光に尋ねる。「こ、こんな魚捌いたことないんだけど…どう切ればいいわけ?」そう、あくまで包丁で魚を捌かなければいけないのはフレイヤだ。食材の用意や下ごしらえ、アドバイスなどは急遽加わったアシスタントの影光が行ってもいいが、調理の本質となる部分はメインの料理人であるフレイヤが行わなければいけない。ましてや、相手は幻の神食材『月海鮭』。生半可な包丁さばきが通る魚ではない。神食材とは調理も困難だからこそまさに『神』なのだ。しかし…影光は、確信を持って言った。月海鮭は、刃を選ぶのではない、料理人を選ぶ。そう言われる食材だ、と。「フレイヤさん。月海鮭に理屈は通じない。必要なのは食材への敬意と、美味しいものを食べさせたいという強い気持ちのみ。君ならきっとできる。月海鮭も心を開いてくれるはず!」「えっ?ちょ、意味が分からないんだけど…?」「僕は月海鮭に合う最高の醤油と薬味を用意する!じゃあ、任せたよ!」そう言って影光は醤油や薬味の準備に取り掛かる。フレイヤが何度聞いても『気持ちで行ける!』『愛があれば大丈夫!』と完全に精神論でしか答えない。野球で例えるなら「ビューンと球が来るでしょ、それをカキーンと打つでしょ。そしたらスゥーッとスタンドに入るってわけ」レベルで何にも通じないアドバイスである。ため息を吐いたフレイヤだが…まあ確かに今から伊蔵に勝つにはこの魚を刺身にするしかないだろう。諦めてとりあえず包丁を入れようとするフレイヤだが…。包丁はあっさりその身に弾かれる。「包丁、弾かれちゃうんですけど…?」「それはたぶん気持ちが入ってないから!大丈夫!君ならできる!」あ、ダメだこれ、とフレイヤは諦めて腕を組む。気持ちで行けと言われてもどうすればいいというのか。精神論は嫌いではないが、
さて、影光がこの町『花宮町』に来てから二週間が経った。かつてとは変わり、多くの客が訪れている『町食堂 かがやき』でのアルバイトは忙しくも楽しく、研鑽の日々でもあった。一応アルバイトの期間は影光が花宮町に留まる一か月間と決めていたが、延長してもいいかな…と考え始めてもいた。そんなある日…店に、ある因縁の人物が現れる。ギラギラとした下品なスーツ、禿げあがった頭、妙に整えたヒゲに似合わないサングラス…そんなファッションをした小柄な五十代ほどの男性。そう、いつもの地上げ屋のおじさんだ。「お~う、フレイヤちゃん。お母さんおるか~?」「いない。帰ったら?」その姿を見るなりフレイヤがそう発言するが、地上げ屋のおじさんは今日は客として来たと言い張る。それでも帰れと言うフレイヤに対し、影光がなだめるように言う。「まあまあ、お客さんとして来たんだから。で、ご注文は?」「おう、カレーじゃ。普通のカレー。坊主、ワレが作ったカレーを食わせてもらおうかい」まるで何かを企んでいるかのようにニヤニヤと笑うおじさんだが…。まあそのくらいなら別にいいやとカレーを作る影光と、なんか変なことを言い出したら代金を百倍、いや五百倍にしてやるからねと思うフレイヤであった。当然ながら、この時はまだほとんど誰も気づいていなかった。闇の料理組織『G.O.D.』の魔の手は静かに伸びており、それが『町食堂 かがやき』の面々を大きな陰謀の渦に巻き込んでいくことを。――――――――――目の前に運ばれた『普通のカレー』600円を一口食べる地上げ屋のおじさん。だが…彼はその一口で食べるのを止め、店員の影光を呼んだ。「ふん、お勘定や。もう食う価値もないわ。これならワシが新たに雇った専属シェフのカレーの方が圧倒的に美味いわ。坊主、才能無いのう?ワレ」「えっ…」唐突にされたダメ出しに思わず声が出る影光。しかしすかさずフレイヤが…。「はいどうも。お勘定、迷惑料込みで300万円になりまーす」「えっ」地上げ屋のおじさんに対し、何の脈絡も
調理タイム終了!まずは影光の冷やしうどん。キリリと冷えたうどんに、いりこ出汁と醤油ベースの冷たいつゆ、薄切りの酢橘と白髪ねぎ、最後の仕上げに乗せたミニトマトという清涼を感じるうどんである。影光曰く、名付けて『香徳』。讃岐うどんの『香川』と酢橘の『徳島』を合わせた、ちょっとした言葉遊びである。さて、審査員実食!審査員A曰く:「うむむっ!コシが強く、うどんの茹で方シメ方ともに不足なし!うどんの旨味を十二分に引き出している!なんと見事な見極めだ!」審査員B曰く:「むふう、このツユも見事だ!醤油といりこ出汁をベースに酢橘の爽やかさが駆け抜ける!梅肉の酸味がほのかに香り、そこにミニトマトのアクセント!これは夏にはたまらない爽快感の贈り物だ!」審査員C曰く:「かつて高級料亭で勤めていた私だが、私の店では出ないタイプの料理だ。だが、味は申し分ない!毎日食べたい料理と言えるだろう!」審査員D曰く:「ラーメンじゃないので0点」「うどんでもダメなんだ。同じ麺料理なのに。妥協しないなあ、あのラーメンおじさん」そんな審査員Dに対する影光の皮肉を流して、フレイヤの料理が出される。熱いうどんにほのかに赤いツユ、その上には堂々と座るかしわ天と、それに寄り添う温玉と大根おろし。名付けて『 C . F . H . 』!「何その名前」「え?昔漫画で見たから」そんな影光とフレイヤの会話を横目に、さあ審査員実食!審査員A曰く:「むほー!熱い!辛い!しかしこれはどうしたことだ!箸が、箸が止まらない!旨味が!辛いだけではないツユの旨味がコシの強いうどんと見事に調和している!夏でも辛さはやっぱり欲しい!」審査員B曰く:「むむむ、ただの麺とつゆの調和ではないぞ!まるで両者が宿命のライバルの如く高め合い上昇気流に乗り、より高みへ上っているのだ!そこにこのかしわ天が両者を助け、大根おろしと温玉が辛みを優しく包み、味全体をまろやかにまとめている!ま、まさにうどんの三種の神器!!」審査員C曰く:「かつて高級料亭で勤めていた私だが、このバランスは見事!一つでも味が強く、また弱ければすべてブチ壊しになる!うむむ、この若さで恐ろしいバランス感覚だ…!」審査員D曰く:「ラーメンじゃないので0点」さて、両者の料理
さて、影光が『町食堂 かがやき』に来てから一週間後…。店は、今まで閑古鳥が鳴いていたのが嘘のようにお客さんであふれ返り、大繁盛していた。近所の住民はもちろん、ちょっと離れた隣町や隣県からも来ている様子である。影光やフレイヤも今までとは打って変わって朝から夕方まで大忙しの様子だ。母のリリスはあんまりいつもと変わらない様子であるが。――ここまで急に客が押し寄せるきっかけになったのは、影光のたった一つのアイデア。『お客さんには喧嘩を売られない限り、無意味に勝負を吹っ掛けない』それだけである。それをわざわざ店の前に張り紙までして周知したところ…敬遠していた客が押し寄せたのだ。もともと味は絶品で値段もわりと安く、実年齢より十歳から十五歳は若く見えるゆるふわ系美人店主(三十五歳)が適当に接客してくれるので、そりゃ来るわ来るわの大騒ぎであった。「とほほ~こんなに忙しくなるなんて思わなかったよ」などとフレイヤもこぼすほどである。また、たまに喧嘩を吹っ掛けてくる腕自慢の修羅がいても、以下のように正当な理由を付けて断っていた。『他のお客さんの対応で忙しいから今は無理。どうしてもやるならまず食べて待ってて』客も修羅も優先度は同じ、先着順というわけである。さらに地上げ屋のおじさんも来たが『帰れ』の一言でショボーンとして帰っていった。さてそんな中、影光はというと…実は少し困っていた。店が繁盛するのは良いことだ。文句を言いながらもイキイキとしているフレイヤやその母リリスを見ると嬉しいのは事実である。だが、せっかくだからやはり料理勝負をして腕を磨きたい気持ちもある。腕自慢の修羅が勝負を断られてショボーンとして帰っていくのは、やっぱりちょっと成長の機会が失われてもったいない気がした。もっともその修羅たちも店で影光やフレイヤの料理を食べて『うう、負けた…』と諦め帰っていくので、そもそも勝負をするまでもないのかもしれないが。…そんな影光を見てフレイヤも何か思うところがあったのか、昼休憩中に影光に話しかけてきた。「勝ち負けの条件はなしで、料理勝負しようか?ほら、私もお客さんに勝負を吹っ掛けられなくてつまらないし」フレイヤが影光に気をつかっているのか、それともとにかく喧嘩をしたいバーサーカーなのかは知らないが…フレイヤなら相手に不足はない、とその申し出をありがたく承諾す
さあ、影光&フレイヤとサイラスの料理が出揃った。いよいよ、審査員の実食開始!まずは影光側から料理を出す。皿の中央には、三日月のように弧を描く半熟オムレツ。その下には、赤く艶めくチキンライスが大地のように広がっている。影光曰く…名付けて『黄金の三日月』!審査員A曰く:「ふおおっ…溶ける!フォークを入れただけで卵が溶けるぞ!黄金に輝く半熟のオムレツに色鮮やかなチキンライス…なんと鮮やかな色彩のバランスだ!」審査員B曰く:「味も申し分ない!味の強いチキンライスを卵の優しき甘さが包む!力強くも大地を踏みしめる勇者と、それを優しく見守る姫のようだ!世界を救う僕たちの旅はここから始まる、と言っているようだ!!」審査員C曰く:「かつて高級料亭で勤めていた私だが、これほどまでに調和の取れたオムライスはなかなかお目にかかれん…味、色彩、温度…全てにおいて非のつけようがない!」審査員D曰く:「ラーメンじゃないので0点」最後の評価に少しため息を吐く影光だが、審査員の反応は上々のようだ。その分、なんで審査員Dのラーメンおじさんは許されているんだろうと考え込んでしまう。(でも…誰も文句を言わないのなら、仕方ないのかもしれない。何か凄い人なのかもしれないし…)ともかく、影光は相手のサイラスの反応を見るが…。なんと、サイラスはまったく動じず静かに笑っている。まるですべて予想済み、こちらは掌の上だとでも言いたげな余裕だ。(あの人、まったく動じていない…なぜだ?自分の料理にそれほど自信があるのか?)フレイヤもまた別の意味でサイラスのことが気になっていたようで、彼の方を見る。「あれほどの人が、なんで地上げ屋の専属シェフなんてやってるんだろうね?お金で動くような人でもなさそうだし」と、やっぱりそこは疑問に思っているようである。おそらく、会場の人間みんながそれを思っているのではないだろうか。――次に、サイラスが前に出る。「では、私の番だな。ご覧いただこう。これがこのサイラスの卵料理…その名も『卵貫全席』だ」そこに出された皿は五品…それを見て観客がうおおおっ!?と声を上げる。第一の品はまるで小籠包…しかし、卵白を皮のように薄く焼き、中には卵黄の餡。第二の品は黄身の低温固め…まるで黄身漬けのようだ。第三の品







