LOGIN「えっ?!」「ほら、早く着替えてきて」そう言ってグレンはクローゼットを開ける。(なんか楽しそうだなこの人)「……わかったよ」とため息交じりに圭太が言う。こうしてグレンの好奇心を満たすために、再び女装することになった圭太であった。「しかしどれもこれもサイズが合いそうにないな。ここの服はどれもボクに合わせて作ってるしな。」そんな様子を見ながら圭太は(そういや部にある服ってこういう露出度が高かったりもろに体の線が出る服ってないな。翠さんの趣味がフリフリのドレス系だからかな?)翠の作る服のセンスの良さに圭太はちょっとだけホッとする。「……これなら多少サイズが違っても着れるかな?」グレンが取り出したのは和服のようなワンピースだった。「ゴスロリ浴衣。和とも洋ともつかない中途半端さがボク好みじゃあないけど。」「……」(俺は別にどっちでもいいんだけどな。翠さんならもう少し可愛く作りそうだけど)こんな時なのについそんな事を考えてしまう。「さあて、それじゃあ着替えてもらおうか」「ん。ここで?」「もちろんだよ。」「……いや、あんまりじろじろ見られるのは……」圭太はあからさまに嫌な顔をする。「どうしてだい?」「どうしても何も恥ずかしいだろ普通に」同性とはいえ他人にじろじろ見られながら着替えるのはどうにも抵抗がある。「ふーむ。そういうものなのかな。ボクは気にしないよ。むしろ興奮する。」「変態かよ!」「……なんてね!いいよ部屋の外出て」ニヤニヤしながら冗談とも本気ともつかないようなことを言う。「はぁ……」グレンが部屋を出ていくと、圭太はしぶしぶ服を着替え始める。(なんか例によって例の展開になってきた気が……)着替えながらちょっと嫌な予感がしてくる。「お待たせ」と言って部屋に入る。「うん。いいね。やっぱりボクの目に狂いはなかったようだ」満足げに微笑みかけるグレン。その視線が圭太の顔から胸、腰へと降りていく。「へぇ、足の毛の処理もちゃんとやってるんだね、感心感心」圭太にとっては嬉しくない褒め方をされる。「あのさぁ、あんまりジロジロ見ないでほしいんだけど……」圭太は恥ずかしそうに眼をそらす。「いやぁ中途半端な奴ってこの辺り適当だから、きっちりやってるのはマジで感心してるんだけど?」「そりゃどうも」彼
数日後の夕方。圭太が下校して、商店街を歩いていると……「君、白石圭太くんだね」と不意に背後から声を掛けられた。振り返ると、切れ長の目をした黒いスーツの少年が立っていた。「君は……?」圭太は不思議そうな顔で少年の顔を見る。(どっかで見たような気がするんだけど……?)彼にはその少年が先日部室で話題になったアイドル「グレン」であることにすぐに気づくことは出来なかった。「ちょっといいかな?」グレンはそう言ってニヤリと笑い、圭太の手を取ると、手を引っ張って走り出した。「ち、ちょっと待って!」圭太のリアクションなどお構いなしでグレンは近くの路地裏へ入り込むと、圭太を壁に押し付ける。突然のことに混乱していると、グレンは妖艶な表情を浮かべてその顔を観察するように眺めまわした。「何するんだよ!」ようやく気を取り直した圭太が大声を出すが、その直後、なんだか訝しげな表情に変わり、何も言わずに去っていった。(ななななな……何?!)圭太はその場にへたり込む。状況が全く理解できなかった。****その夜。バスローブ姿でPCを眺めるグレンがいた。「う~ん、写真を見た時点ではピンと来るものがあったんだけどなぁ……」画面を見ながら腕を組み考え込む。「実物を見ると、大したことないというか……やはり皆のいう通り、あの写真が「奇跡の1枚」だったのかな」と独り言をつぶやくと天井の方を見た。天井には、裸の女性が亀甲縛り状態で宙吊りにされている。その女性の秘部には剃ったのか脱毛したのか不明だが毛が存在せず、代わりにバラのタトゥーが刻印され、クリトリスにはピアスが開けられている。「うう……ううん」女性は猿ぐつわされた口から苦しそうに呻き声を出す。「いくら積まれたのか知らないけど、ボクに近づいてスキャンダルを起こそうとかホントにいい度胸だよね。顔の割にはやーらしぃなぁ。」グレンがさげすむように笑う。女性はただひたすら許しを請うような目つきで見つめるだけだった。「キミなんか飼う価値すらない。あとで放してやるから、キミの雇い主に『グレン様は清廉潔白です』と報告してくるといいさ。」そう言うと彼女のものと思われるスマホから自分に関する情報をすべて消して、更に差し込まれているSDカードも抜き取って2つに割った。「ああ、あとそのタトゥーは
「あん……ふぅん、ああん……」「お姉さま、ボクのくすぐりはいかが?」「ああ……グレン君ってば意地悪ね」「それだけお姉さまが魅力的ってことだよ」なにやらけしからぬ場所でけしからぬことが行われていた。グレンと呼ばれた少年は、その幼い顔立ちとは裏腹に大人の色気を漂わせている。そして今、彼の目の前で横たわっている女性もまた妖艶な雰囲気を放っていた。「ところでボクお願いがあるんだけど。」「あら、またお小遣い?それともお仕事?」「ううん、なんでもない……」グレンは笑って見せた。***場所は変わって。ある冬の朝、ロングコートに身を包んだ人物が学校の廊下をものすごい勢いで歩いている。その人物は保健室の前で足を止めると、すごい勢いでドアを開ける。そして保健室に入り込むと、静かにドアを閉める。「……朝からいきなり連絡があったと思ったら……」と怒りに満ちた顔で言い放つその人物は圭太であった。「あら圭ちゃん、おはよう」と保険医の沙由美がいつものように声をかける。「こんなことして何が楽しいんですか!?」と怒号をぶちまけながらコートを脱ぐと、その下で身に着けているものは股間の部分だけ空いたズボンのみであった。それ以外は下着すらつけられていない。「今日もかわいいわよ~圭ちゃん♪」と沙由美はウインクする。「うるさい!いい加減にしてください!」と圭太は叫ぶ。実はこのやりとりは毎朝の恒例行事になっていた。「まったくもう……どうしてこう毎回毎回ひどい目に遭わされて……」「最近の圭ちゃん、なんだか精神的に強くなってきちゃったから、たまにはこんな事も、ね」そう言って沙由美がウインクする。「ね、じゃない!大体こんな形のズボン、どこで手に入れてくるんですか?!」「『チャップスパンツ』っていうのよ。西部劇で保安官とかが履いてるでしょ?」沙由美はニヤニヤしながら怒る圭太を見ている。「そんな事どうだっていいですよ!朝、部屋からコートを着て出てきたら、家族からすごく不思議がられましたよ!」と圭太は怒り心頭といった様子だ。「でもスリルあったでしょ?」「……電車の中で『この状態で痴漢冤罪にでもなったら、問答無用で僕の人生が終わる……』と気が気じゃなかったですよ!」と圭太は嘆く。そんな圭太を見て沙由美は楽しそうだ。「で、服着ないの?」「…
数日後。沙由美の自宅マンションで真由里の歓迎会が催された。歓迎会といっても、そこまで大規模なものではなくごくふつうに部員が集まった鍋パであった。そしてなぜか圭太だけがチャイナドレスを着ている……。「あの~なぜ僕だけが……」「だって今日の主賓は真由里ちゃんだもの」沙由美はにっこりとしてこともなげに言い放った。「あーでもよかった、家に来いっていうからてっきり裸エプロンで何か作らされるのかもと……」「……そうしたいのは山々だけどあなたをキッチンに立たせるのが危険行為って分かったからよ!」「……僕そんなに料理下手ですか?」圭太は首をかしげる。「下手というより君の場合味付けが一般向けではないの!……自覚症状がないあたりが一番タチが悪いわね」沙由美が渋い顔になる。「うーん……」沙由美の講義に圭太はいまいちピンと来ていない様子であった。「とにかく君は食べる以外で絶対に料理に触らない!いいわね!」沙由美は圭太にそう厳命する。今マンションに来ているのは、圭太と沙由美を除くと真由里、葵、翠、の3人だ。つまり服飾文化研究部の部員全員である。テーブルには寄せ鍋の材料やジュースなどが並べられている。「ということで今から新入部員の藍川真由里ちゃんの歓迎会を開きます!ということで主賓の真由里ちゃん!自己紹介をどうぞ」と沙由美が言う。「は、はい!私2年C組の藍川真由里と申します!趣味はコスプレに同人のオタ活全般でサークル「ゼロ距離レインボー」を主宰しています!それから……」
あの文化祭から1ヶ月が経ったある日。一時期圭太のあの女装姿が話題を呼び、学校内外を問わず人気となったが、普段の圭太自身は、小柄ではあるが至って普通の高校生であるため、次第に皆の熱は冷めていった。しかし一部の「ちっちゃいもの大好き」な女子からは熱狂的に支持され、ひそかにファンクラブが設立されていたが、圭太本人は知る由もなかった。「うーん……」そんな圭太も、あれ以来すっかり女装にも慣れてしまい、今や完全に自分の一部となりつつあった。今日も放課後になると、部室に行って、いそいそと着替え始める。「ふぅ……」圭太は小さくため息をつく。(沙由美先生から無理矢理女装させられてから早数ヶ月……いつまでこんな生活が続くのか)もはやこの悩みも恒例となっていた。「あら、今日は早いのね? 圭ちゃん?」圭太が後ろを振り向くとそこには沙由美がいた。「あ……いえ別になんでもないです」彼は慌てて返事をする。そんな時部室のドアをノックする音がする。「失礼……します。」部員の松山翠だった。「あら! 翠ちゃんじゃない!久しぶりね!」そう言うと沙由美は翠の元へ駆け寄る。あれから保健室登校ではあるが学校に来る回数が増えた彼女だが、まだ部室を訪れる事は珍しかった。「先生……実は……入部……希望者を連れて……来ました。」「え?翠さんがですか?!」圭太が意外そうに返事をする。「あら、なぁに?その意外そうな顔は?翠ちゃんにだって友達の一人や二人いるでしょうが。」沙由美がそう言って圭太の事をジト目で見る。「す、すいませんつい……でもほんとに信じられなくて」「もう、デリカシーが無いんだから」あまりに正直に謝る圭太に沙由美が呆れたようにため息を吐く。二人のそんな様子を見て翠はクスリと笑うと、ドアの外に向かって声をかける。「ほら……入って」相変わらずの途切れな口調で誰かを呼ぶ。(あの人見知りな翠さんが……誰かを呼んでる?)圭太たちが不思議に思っていると、入ってきたのは、ショートヘアにメガネの地味な見た目の女生徒だった。その女生徒が軽く会釈すると、自己紹介を始めた。彼女の名前は、2年C組の藍川真由里と言った。「初めまして!こちらの翠殿には日ごろから大変お世話になっております!」「えっと……翠さんのお友達ですか?」突然
「で、私に何をしろと?」「だから、行きませんか?映画」ある秋の日の服飾研究部の部室で、一条葵に白石圭太がこんなことを言い始めたのがすべての発端であった。「……なぜ私が行かなければならないのかしら?」葵は不機嫌そうに圭太を見つめた。「親戚の叔父にタダ券2枚もらったんですけど、沙由美先生は今週末は用事があるって断られて翠さんの方は今日学校に来てないし……」圭太はしどろもどろになってそう言った。「なんか消去法で私にしたと言いたげね。」葵が更に冷ややかなまなざしを圭太に向ける。「あ、そんなことないですよ!ただ俺は葵さんなら映画とか好きそうだしもしかしたら一緒に行ってくれるかなぁって……」圭太は慌てて取り繕おうとする。「……」葵は呆れたように視線を逸らす。「あの、だめですか?」圭太は残念そうにおずおずと葵の方を見る。「……いいわ」「そうですよね。やっぱり葵さんはお忙しいですし……って、ええぇっ!!」彼女の予想外な返事に圭太は思わず声を上げてしまう。「だから……いいわよ。付き合ってあげるって言ってるの」葵はしかめっ面でそっぽを向いて答えた。「あ、ありがとうございます!じゃあまた週末に、よろしくお願いします!!」礼を言って部室から出る圭太を見送りながら、「……まったく気付いてないけど、これデートの常套句よ……白石君」と葵はあきれたようにつぶやいた。***そして週末。「すいません、待たせちゃいましたか?」「いえ、私もさっき来たところよ。」圭太と葵は地元のショッピングセンターにあるシネコンに来ていた。待ち合わせ場所の入り口付近に設置された予巨大モニターには今話題のロマンス巨編の予告が流れている「ええと……第4シアターか」落ち合った二人はチケットに書かれた番号の上映室に向かった。席は隣同士に配置されており座ったのだが、お互いの距離感が近いことに相手が気心の知れた圭太だとはいえ、葵はちょっとドキドキしていた。「叔父さんが無理やり置いてって、処分に困っていたので助かりましたよ。」「あなたそろそろ物事をハッキリ言いすぎるの気を付けた方がいいわよ。」二人は軽口を叩きあいながらも映画を見始めた。が、まあフタを開けてみれば、その出来は酷かった……。話題性だけを優先して、演技力皆無のアイドルを主役に据えた棒読
中間試験も終わり、6月に入ると、暦の上で夏となり衣替えで制服も夏服へと変わっていく。「ううう……やっぱりチクチクする」圭太はそうぼやきながら腕をさする。それというのも……「せっかく夏服になったんだし、身だしなみを整えないと」という名目で、圭太は股間だけでなく首から下の毛をすべてツルツルに処理することを沙由美に厳命されたからである。無論、圭太にはそんな趣味などなく嫌々であったが、沙由美に逆らえばどうなるかわからないため、泣く泣く従ったのだ。(でも文句言ったらそれこそ沙由美先生のことだ、本気で永久脱毛でもしろとか言いかねないし……)そんなことを考えながら部室に向かうとすでに
圭太は昼休みの保健室相談に来ていた。「んで、昨日はお楽しみだった?」「うぐっ……!」のっけからニヤニヤしながら言う沙由美。「あーんなことやこーんなことしちゃったわけだ~?くぅ~うらやまけしからん!このこのぉ!」「やめて下さいよ……」事実なので言い返せない圭太。恥ずかしそうに下を向くも、話題を変えようとする。「大体この前は途中からどこへ行ってたんです?!」「だから、あれは職員会議があったって言ったでしょ」(絶対嘘だ……)と思いつつも、それ以上追及したところで無駄だとわかっているのでもう何も言わないことにして、本題を切り出す。「あの……葵さんの事なんですけど……」と圭
(あれから2週間ほど経ちましたが・・・)沙由美に服飾文化研究会に強引に入部させられて早2週間、圭太は部室の簡易ベッドでお相手をしょっちゅうさせられていた……。しかも「君には女装の才能がある」と決まって女装コスプレをさせられて……。そのたびに沙由美に体を触られ、キスもされまくってしまい、圭太は恥ずかしくて死にそうになっていた。そんなある日、教室でクラスメイトで中学からの友人、神崎雄一に声を掛けられる。「お前、赤崎先生が顧問の部活に入ったんだって?」「うん、まあね」「いやぁ、あんな美人先生と一緒にいられるとは羨ましい限りだぜ」「え? いや、別にそんなことは……」「ま、俺は
ある春の日、それは突然に起きた。今年高校に入ったばかりの白石圭太はまだ新しい制服を着て初々しい雰囲気を出していた。最初は戸惑うばかりだった学校生活にも次第に慣れ、友人もでき始めた。「さて、そろそろ部活も決めないとなぁ……」などと考えながら保健室へと歩く。これは別に体の調子が悪いからではなく、そこにいる保険医の赤崎沙由美に会うためだった。物腰柔らかなその保険医はケガや病気の手当だけでなく、生徒の悩み相談にも乗ってくれている。まだ若く美人ということで憧れを抱く男子生徒も少なくない。当然圭太もその一人であり、相談を口実に会いにやってきた次第だった。(まあ、会えるかどうかは