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第4話

Auteur: トフィー
再び目を覚ましたとき、仁美は自分が病室のベッドに横たわっていることに気づいた。

その傍らには直樹が座っていて、真っ赤に充血した目で彼女を見つめていた。

「ごめん、仁美......君をあんな場所に一人にして、全部俺のせいだ......」

彼は彼女の手を握りしめ、指先が小さく震えている。

「あの男は?」

掠れた声で尋ねると、数人の警察がドアをノックして入ってきた。

「永長さん、犯人はすでに捕まえました。供述によれば......」

直樹が視線を鋭く送ると、警官の言葉はいったん途切れ、低く続いた。

「激情による犯行で、誰かに唆されたわけではありません」

仁美は黙ってうなずいた。

「この件はきちんと処理させる。君は心配せず、休むことだけ考えていればいい」

直樹は彼女の頭を優しく撫で、スープを差し出した。

しかし、仁美は口をつけなかった。

「私、バーを出てすぐ襲われたのよ。直樹は本当に偶然だと思うの?」

直樹の手が一瞬止まり、疲れを帯びた声が落ちる。

「舞のことを嫌っているのは分かっている。でも何でもかんでも彼女のせいにするのはどうかと思うよ。しかも、彼女は病気なんだ」

スープをテーブルに置くと、彼の顔は次第に冷たくなった。

「無実の人に濡れ衣を着せるなんて、仁美はいつからそんな人間になったんだ?

病院でゆっくり休みながら、自分のことをよく反省してろ。ここ数日は忙しいから、代わりに介護士をつけておくよ」

仁美が言葉を返す前に、彼は立ち上がり、病室を出ていった。

残された背中を見つめながら、目の奥が熱くなり、胸の奥が鈍器でかき回されるように痛んで、息さえ苦しくなった。

あれほどの怪我を負ったというのに、直樹は気遣いの言葉をひと言もかけてはくれなかった。

それどころか、舞を疑った途端、怒りをぶつけてきた。

それで舞とは「友人」だけだと言えるの?

夕食を済ませたあと、彼女はスマホを手に取った。

直樹からは六十秒の音声が十数件。再生する気にもなれず、代わりにXを開く。

一番上に表示されたのは、舞の投稿。場所はスイズ。

【遠回りしても、結局あなたはまた私のそばにいてくれる。】

雪山を背景にした写真。普段は映ることを嫌う直樹が、彼女の荷物を自ら運び、珍しく舞と何枚の写真を並べて撮っていた。その腕は彼女の腰にそっと添えられ、限りなく曖昧な距離だ。

【お似合いの二人】と無邪気なコメントが並ぶ。

舞はからかうように返信した。

【ただのいい友達よ。】

その下には「お幸せに」といった祝福の言葉がずらりと並んでいた。

仁美は何気なく「いいね」を押し、ついでに一言合わせてコメントを残すと、そのままスマホの画面を閉じた。

幸い、もう愛など残っていない。だから心はもう痛まない。

退院の日、直樹は仕事を休んで迎えに来た。

「スイズで、たまたま旅行中の舞と会って、一緒に写真を撮っただけだ」

「......そう」

彼は助手席のドアを開けたが、仁美は後部座席に座った。

その空席を見て、直樹の胸に妙な不安がよぎる。

途中、沈黙は重くのしかかった。

直樹が何度も話題を振っても、彼女は気のない返事。最後には目を閉じて眠ったふりをした。

「舞のコメントは冗談だ、気にすることは......」

「気にしてない」

淡々と遮られ、彼は言葉を失う。バックミラーに映る彼女の横顔は、無表情で嘘のないように見えた。

家に着くと、彼はふと気づいた。彼女が三年外したことのない指輪がなくなっている。

「気に入らないから、外しただけ」

彼女はこれまで、一度だって指輪を外したことなどなかった。

直樹は胸の奥に湧いたざらつく違和感を必死に押し込め、あえて柔らかな声音で言った。

「気に入らないなら取り替えればいい。ちょうど、スイズで新しい指輪を買ってきたんだ」

彼はバッグから取り出し、彼女の指に赤い宝石をはめた。

「仁美の好きなルビーだ」

鳩の卵ほどのルビーは光を浴びて血のように赤く輝く。

仁美は口元を歪めて、笑みを作った。

「直樹、覚えてる?最初にくれたのはパープルダイヤモンドだったよ。私の一番好きな宝石は、ルビーなんかじゃない」

直樹の喉がひきつり、慌てて弁解する。

「すまない、俺の記憶違いのようだ。すぐに新しいのを用意する」

「もういい」

仁美はどこか疲れたように、彼を素通りしてそのまま家の中へ入っていった。

直樹が覚えているのは、いつだって自分が最も愛する人の好みだけ。

何度取り替えたところで、その最も愛する人が自分に変わることはない。

だが幸いなことに、もうすぐ彼のもとに離れるのだから。

家に入った途端、仁美のスマホが震えた。

舞からのメッセージ。

集まりの場所と日時を知らせるものだった。

その下には、彼女がダイヤモンドの指輪をはめて写真が添えられていた。

【ごめんなさい、手が滑って送っちゃった。この二つの指輪は直樹が選んでくれたの。償いのつもりらしいけど、悪くないでしょ?】

その瞬間、仁美はようやく理解した。直樹が自分に渡した指輪は、ただのおまけにすぎなかったのだ。

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