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第58話

Autor: フカモリ
顔を上げて信行を見つめると、その瞳の中に自分の影が映っているのが見えた。

とても、はっきりとした姿が。

視線を下に落とし、数回まばたきをすると、また横を向き、彼の視線を避ける。

もし好きでなければ、もし愛していなければ、一体何のために……?

再び信行に視線を向ける。どう答えるべきか考えていると、ふと、彼の肩に目が留まる。

口紅の跡。

その肩についた口紅の跡をじっと見つめ、真琴はそれが由美の色だと気づく。

視線を戻し、再び彼の目を見つめた時、過去の思い出が蘇ってくる。

三年間、来る日も来る日も、誰もいない部屋を守り、彼に「好きではない」と言われ、「価値がない」と言われ続けた日々が。

じっと信行の目を見つめ、真琴は落ち着き払い、ゆっくりと言い放つ。

「愛のためではありません。好きだからでもありません。私が苦心してあなたと結婚したのは、片桐家のお金と権力に目が眩んだから。副社長という地位が好きだから。あなたと一緒になれば、私が一生努力しても手に入らないものが得られるからです」

その真剣な態度、句読点の一つ一つに至るまで真剣さがにじみ出ており、信行は微動だにせず彼女を見つ
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