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第4話

作者: 満々
再び目を覚ましたとき、晩夏を包み込んだのは、ひどい眩暈と激痛、そして吐き気だった。

体を起こそうとした瞬間、看護師に強く押さえつけられる。「動かないでください。今、モルヒネを投与しています」

吐き気をこらえていたが、注射が終わった途端、晩夏は耐えきれず嘔吐した。

涙で濡れた晩夏の顔を見た看護師が、同情するように尋ねる。「ご家族に連絡しましょうか?」

晩夏は天井を見つめながら、痛みと眩暈が過ぎ去るのを待った。「家族はいません……代わりに、付き添いの介護士を手配してもらえますか」

……

介護士は晩夏に清潔な服を着せ替え、車椅子に乗せて中庭へ連れて行き、日光に当たらせてくれた。

智香は画廊の後処理に向かっており、夜には戻って一緒に夕食を取ると約束していた。

だが、介護士が晩夏を中庭へ押し出したその瞬間――

車椅子が後ろから止められた。

振り返ると、そこには研と奈々がいた。「晩夏さんも病院に来てたのね。研は私の妊婦健診に付き添ってくれてるの。まさか、私たちの後をつけてきたわけじゃないわよね?その額の小さな傷で車椅子だなんて、大げさじゃない?」

晩夏は淡々と奈々を一瞥した。「そんなことを気にするより、自分のお腹の心配をしたら?ずいぶん目立ってきてるじゃない。もうすぐ生まれるんじゃない?」

奈々は悔しさで目を赤くしたが、言い返せず、研の胸に顔を埋めてすすり泣いた。

研は何も言わず、しばらく晩夏を見つめていた。

介護士が車椅子を押して離れようとしたとき、彼は晩夏の腕を掴んだ。

晩夏は強くその手を払いのけた。

「土下座して頼んで、頭まで下げたのに、画廊は結局壊された。まだ何をしたいの?私を殺したいの?

それとも、私が早く死ねばいいと思ってる?そうすれば彼女と結婚して子供を作れるものね。

甘く見ないで、研。私はきっと長生きして、あなたが報いを受けるのを見届けるわ」

血の気のない顔に浮かんだ嫌悪の表情が、研の胸を鋭く刺した。

彼は突然笑った。「晩夏、連れて行きたい場所があるんだ」

奈々は大人しくその場に残り、迎えの車を待つことにした。

晩夏を見る奈々の目には、隠しきれない悪意が宿っていた。「研、晩夏さんは額を怪我してるんだから、優しくしてあげてね。ちゃんと落ち着いて話して、あまり怖くしないでね」

研は奈々の額に軽く口づけた。「分かった」

彼は介護士から車椅子を受け取った。

「榊原さんはまだ退院できません!」と介護士が慌てて声を上げたそのとき、彼は振り返り、淡々と言い放つ。

「俺は彼女の夫だ。少し外に連れて行くだけだ。すぐ戻る」

晩夏は研に抱き上げられ、彼のロールス・ロイス・ファントムへ乗せられた。

車内には奈々らしい小物があふれていた。

ピンク色のクッション、シートベルトに挟まれた小さなピンクのヘアクリップ――

目に入るものすべてが、奈々の存在を強く感じさせた。

ふと晩夏は思い出した。

かつて自分がうっかりショールを車に置き忘れたとき、研はそれを窓の外へ放り捨てたことがあった。

だが今の自分には、もうどうでもよかった。

車内では一言も交わされないまま、やがて郊外の古びた家屋の前で車が止まった。

入口の看板の文字を見た瞬間、背筋を冷たい恐怖が駆け上がる。

――【子どもの家】

それは、かつて晩夏自身が書いた文字だった。

晩夏の手が震え始める。唇がかすかに動いたが、言葉にはならなかった。

ただ、微笑を浮かべる研を見つめることしかできなかった。

彼女の姿を見つけた施設長が嬉しそうに声をかけてくる。「晩夏、よく来てくれたね。子供たちも会いたがっていたよ。そちらの方は?お友達かな?」

晩夏はぎこちない笑みを浮かべて答えた。「施設長、彼と少し話があります。先にお仕事を続けてください」

施設長は何度も頷く。

「晩夏、顔色が良くないね。台所に頼んで栄養たっぷりの料理を用意させよう。急いで帰らなくていい。夕飯も一緒に食べていきなさい。

お友達に案内してあげて。私は少し用事を済ませてくるよ」

施設長が離れると、晩夏は研の服の裾を掴んだ。「研……一体何を考えてる!?ここへ連れてきて」

怒りで紅潮した彼女の顔を見て、思わず彼女の頬へ手を伸ばした。

――やはり、こうでなくては。

これまであの手の女が現れるたび、晩夏もいつも同じように、自分に怒鳴り、感情をむき出しにしていた。

そして彼女を押さえ込めば、彼女は「汚い」と嫌がりながらも、結局は自分に身を委ねた。

そこまで思い至ったとき、研の体はわずかに強張った。「俺が何を望んでるか……分かってるだろ?」

「離婚でしょ。いいわ、同意する。今日すぐ署名する」

「いや」研の声は静かだった。

「晩夏、お前を手放す気はない。離婚はする。奈々の子供を婚外子にはできないからな。彼女はお前の姉によく似ている。生まれてくる子供も、きっと似るだろう。

だが、お前は行かせない。離婚しても、お前はどこにも行けない。俺の言うことを聞き続けろ。俺が飽きるまで。そうでないと……どうにも気が済まないんだ」

晩夏の頬を、静かに涙が伝った。「……そんなに私が憎いの?」

その言葉を聞いた瞬間、彼女の顎を支えていた手が、力強く締め付ける手に変わった。

容赦なく。

「とっくに分かっていただろ。なぜ今さら聞く?

俺の母親が借金を作ったのは事実だ。連中を招いたのも母だ。お前を責める理由はない。

だが、お前の姉は何も悪くなかった。俺が彼女を愛していると思い込んで、嫉妬したんだろ。だからわざと警察を呼ばなかった。

お前の醜い心のせいで、彼女は死んだ。それなのに、今さら逃げようとするのか?

これは、お前が俺に負うべきものだ」

晩夏は何も言い返さなかった。

謝罪も弁解も――この十年間、何度も繰り返してきた。

だが無意味だった。彼は、最初から何一つ信じていなかったのだから。

「もし、私が同意しなかったら?」

晩夏が言い終えたその瞬間、物陰から一台のブルドーザーがゆっくりと姿を現した。
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