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第9話

Author: 六月の猫
屋敷になだれ込んできたのは、まず渚だった。彼女はボディーガードを連れて、記者たちを中に引き入れた。

記者たちは絨毯の血の跡を目にすると、途端に目の色を変えて、先を争うようにシャッターを切り始めた。

渚は得意げな表情を一瞬うかべると、足早に二階へと駆け上がった。

翼は梨花を追うことはせず、ベッドに座り込んでいた。そして首の傷口を押さえて血を止めながら、無表情な顔をしていた。

渚が人々と一緒に乗り込んでくるのを見ても、眉ひとつ動かさなかった。

「まあ、大変!いったい何があったの?梨花は夫殺しでもするつもり!?」渚はわざとらしく口に手を当て、かん高い声で叫んだ。

階下にいた記者たちは、まるで血の匂いを嗅ぎつけた獣のように、一斉に階段を駆け上がってきた。

その場の誰もが目の前の光景に息をのんだ。でも、すぐに我に返ると、また一斉にカメラを構えて撮影を始めた。

「梨花はどこ?よくもこんなことができるわね。この前あなたを刺したことで、まだ懲りていなかったの?」

渚はあたりを見回しながら言った。「まったく、とんでもないわ。よくもまあ、こんなことを……

梨花、出てきて!あなたは、翼を殺すつもりなの?」

渚の声はどんどん大きくなっていき、しまいにはボディガードに屋敷の中を探すよう命じ始めた。

翼は表情を一切変えずに言った。「おばさん、ここは俺の家だ。余計なことをするな。

早く帰ってくれ」

彼が静かに視線を向けると、渚はすぐに口をつぐんだ。でも、その場から動こうとはしなかった。

実は今日、渚は匿名で電話を受けていた。翼の評判を地に落とすチャンスだと言われて、深く考えもせずに人を連れてやって来たのだ。

子供の頃から、翼は山崎家にとって最も優秀な息子だった。いつも自分を律していて、感情的になることなんてなかった。

渚が幼い頃の翼を虐待し、わざと家から追い出した時でさえ、彼は感情を乱すことがなかった。

彼女の出来の悪い息子とは、比べ物にもならない。

今、ようやく翼を完璧な息子の座から引きずり下ろすチャンスが来たのだ。渚が簡単に諦めるはずがなかった。

「私もあなたのことを心配しているのよ。お父さんは海外にいるし、おじいさんはご高齢だからショックに耐えられない。こんなことになったあなたを、放っておくわけにはいかないわ。

梨花はどこなの?あなたをこんな目にあ
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