【もし結婚してなかったら、私のこと、好きになってくれますか?】村田美羽(むらた みう)と名乗る女の子から、真夜中に山崎梨花(やまざき りか)の夫へメッセージが届いた。彼の返事は、たった一言だけ。【ああ】そのやり取りのスクリーンショットが届いたとき、梨花は夫の山崎翼(やまざき つばさ)と一緒にパーティーに出ていた。彼女の表情は一瞬こわばったけど、すぐにいつもの微笑みに戻った。挨拶に来た人とにこやかに話してから、梨花はそのメッセージの送り主に返事をした。【分かった】こんなの、見るからに加工された画像だわ。梨花は、まったく気にしなかった。夫は、この東都で誰よりも気高く、自分自身に厳しい人として知られている。彼は自分にとても厳しく、スケジュールは分刻み。食事も生活も、すべて計画通りに進める。何があっても、その予定が狂うことは絶対にない。身持ちもとても堅い。クラブで遊ぶなんてありえないし、お金持ちの息子たちが好むような遊びにも一切興味がない。悪い趣味というものが、何一つない人だった。感情をあまり表に出さず、自制心も強い。ベッドの上で深く求めあっているときでさえ、彼の深い瞳に余計な感情が浮かぶことはなかった。結婚するとき、翼は言った。「梨花は、俺の生涯でたった一人の妻です」梨花は、その言葉を信じて疑わなかった。梨花が15歳のとき、母親が事故で亡くなった。すると継母が、梨花より1歳年下の男女の双子を連れて家に乗り込んできて、彼女のすべてを奪っていった。継母に何度も陥れられ、ひどい暴力を受けた。そんな梨花を救ってくれたのが、翼だった。ゴミ箱に突っ込まれた梨花を、翼は優しく引っ張り出してくれた。そして、体についた汚れをそっと拭ってくれたんだ。彼の顔には嫌悪感も、上辺だけの優しさもなかった。まるで一筋の光が、梨花の心に差し込んだようだった。その瞬間、梨花はもうどうしようもなく、翼を好きになった。彼と過ごし始めたころ、梨花はまだありのままの性格で振る舞っていた。一日中、翼の後ろをついて回ってはおしゃべりをした。ありとあらゆる手を使って彼の気を引こうとしたけど、翼は嫌な顔ひとつせず、ただ黙っていた。ある日、翼が山崎家に代々伝わるお守りを梨花の手に握らせた。星のように輝く瞳で、彼は言った。「今日から、自分を磨け。お前
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