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第4話

Author: 夕日
孝之はゴミ箱に入っている離婚協議書を指差し、鼻で笑った。

「離婚したいって?

里香、何をおかしくなってるんだ。美月とのことは何度も説明しただろう……」

間が悪いことに着信音が鳴り響き、孝之は眉をひそめて、落ち着かない様子で視線を泳がせた。

「福ちゃんがいなくなったんだ」

その知らせを聞いて、私は街中を走り回り、福ちゃんが行きそうな場所をすべて探した。そして、ようやく裏路地の隅で、息も絶え絶えになっている福ちゃんを見つけた。

そこは、私たちが出会った場所でもあり、別れの場所にもなった。

ただ呆然と福ちゃんを抱きかかえる。出会った時よりもさらに小さく感じた。

体は痩せ細り、眠っているだけのように、ふわりと軽かった。

私が新しく付け替えたばかりの首輪が残っていた。今は血に染まり、文字なんて読み取れない。

目元が熱くなり、堪えきれなくなった涙がこぼれ落ちる。長い間抱え込んできた感情が、そこで堰を切った。

孝之はぎこちない表情をして、隠しきれない後ろめたさを漂わせていた。

無意識に私の手を掴もうとしたが、それを振り払った。

「孝之、これがあなたの言う『ちゃんとした飼い主』のやったことなの?

どうして勝手に誰かにあげるなんてしたの?気に入らないなら、私が連れて家を出たのに。

孝之、なぜ私を解放してくれないの?

私をバカにして楽しい?それとも、それがあなたの下劣な悪趣味?」

涙で濡れた私の目を見て、孝之は初めて言葉を詰まらせた。

冷たくなった福ちゃんを抱きしめ、私は心底疲れ果ててしまったと感じる。

涙をすすり、孝之に背を向けて言った。

「離婚の話はもう結論が出たわ。早急にサインして」

そう言って力尽き、意識が遠のいた。

次に目を覚ますと、病室のベッドの上にいた。

孝之はおらず、看護師が一人、側で看病してくれていた。

私が目覚めたことに気づいた看護師が、憐れむような目をしてカルテを手渡してきた。

「ご家族の方、こんな状態でよく放置できますね……」

後半の言葉は聞き取れなかった。ただ、カルテに書かれた一行が視界に突き刺さった。

呼吸が苦しくなり、そこから逃げ出そうと起き上がったが、足元が綿の上にいるようにふらつき、あわや転びそうになった。

思考まで一緒にあてどなく彷徨っていた。

産婦人科の廊下には、美月を大事そうに抱き寄せ、嬉しそうな笑顔を見せる孝之がいた。

私はいてもたってもいられず孝之に電話をかける。着信に気づいた彼が隅へ移動し、電話に出た。

「孝之、今どこ?」

「今日は事務所で忙しいんだ。目が覚めたなら食事をとってくれ、看護師の手配はしておいたから」次の瞬間、孝之がちらりと美月の方を見て、覚悟を決めたように優しく囁いた。

「やっぱり、病室で待っていろ。すぐに会いに行く」

短く返事をし、手元のカルテを繰り返し見つめた。

そこにはこう書かれていた。【癌末期、中絶手術を推奨し、治療を開始するべきである】

その言葉一つひとつが、胸を抉る。

私はぼんやりと廊下を彷徨い歩いていると、がっしりとした胸にぶつかった。

地面に落ちたカルテを、宏介が拾い上げた。

彼が口ごもり、何度も口を開いては閉じ、ようやく声を絞り出した。

「このこと、旦那さんには伝えないつもりか?」

私は宏介を見つめ、深呼吸をした。

伝えなかったわけではない。ただ孝之にとっては、とっくにどうでもいいことなのだと分かっていた。

「いいえ、今はもう、ただ孝之から離れたいだけ。最期の時間は私らしく生きたいの。

宏介、このことは内密にして」

言葉が終わると同時に、孝之の不審そうな声が背後から聞こえた。

「何を内密にするって?」

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