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22.いざ秘湯へ

last update 最終更新日: 2025-03-08 23:05:12

「あっ……! 忘れてた!」

「え? なに? 何の話?」

「目的も果たしたし、そこでちょっと提案があるんだけどいい?」

「お、雫。もしかして、出かける前に言ってたアレか?」

「え? ……アレって何?」

 ちなみに俺同様にノジャも何のことか理解できず、可愛らしいく目をパチパチさせている状態だ。

(何やら水面下で女性陣達に組み込まれているプランのようだが……。正直疲れがマックスに溜まってるので、早いとこ帰宅して、しばらくフッカフッカのオフトーンで療養したいんだけど?) 

「えっとね……。実はここから少し離れた場所に秘湯の宿屋があってね! ほら、皆疲れがピークに達してるでしょ?」

「何でも特殊な効能があってな、傷も一瞬で治してくれるらしいし、持病とかにも良く効いてファイラスいや、世界で一番の秘湯らしいぜ? 宰相情報だけどな!」 

(おお……温泉か……。どうせ帰宅途中、しばらくハンター生活が続くことだし、そんな良いとこがあるなら絶対寄るべきだよな) 

「よっしゃ! じゃ、早速行こうぜ!」

「おー!」

「なのじゃー!」

 こうして俺らは秘湯の宿屋に行くことになったのだ。

 俺達はユニコーンに跨り、青空が広がる晴天の最中アグール火山を下山し、深淵の森を抜け、広大な草原を駆け巡り突き進んでいく……。

「……爽やかな風が気持ちいいね……」

「ああ……そうだね」

「ああ! 最高だな」

「のじゃっ!」

 目的は達成しているからか、更には色々な経験を積んだからだろうか? 

 それとも新たな仲間が増えたからだろうか……?

 俺には来た時に見た景色とはまた違った風景に見えた気がした……。

 それから数時間後、遠目にだが前方に何やら建物らしきものを発見する。

 ふと空を見上げると、沈みかける太陽が見え、辺りはすっかりオレンジ色に染まっていた。

 だからか、目的地の岩肌だらけの山のふもとの景色も橙色に染まり味が出て来ているし、俺の背中におぶっていたノジャも大人しく寝息を立てていた。

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